2009/12/16

秋深し~09年11月の「赤坂璃宮」銀座店の3

 そして「漢方燉烏鶏/烏骨鶏入り漢方蒸しスープ」。その料理名、単純で明快でわかりやすい。薬効のある漢方素材がふんだんに使われていますから。ですけど、なんだかなあ。もちっと詳しく内容がわかる料理名を希望。
 ちなみにこの「漢方燉烏鶏/烏骨鶏入り漢方蒸しスープ」、「烏骨鶏」以外に山芋の一種を干した「淮山」、干した「龍眼」、枸杞(くこ)の実の「杞子」、それに干椎茸などがその具材。

 以上の具材を「燉」、つまりは蓋付きの容器に入れて蒸したもの。「燉」しただけあってスープは澄んでいます。
 スープは澄んでいても、だしの味はしっかり。なんだか「烏骨鶏」だけじゃなく豚の赤身肉の痩肉を加味したようなふくらみのある味わいで、旨味がたっぷり。そこに各種漢方素材の甘味、苦味が入り混じる。
 「これ、いいよね。体にいいスープって感じで」
 「心なごみますね。ちょっとクセがあるんだけど、体にいいいって感じ、しますよね。美味しい漢方のスープを飲んでるみたい。ちょっとクセがあるんだけど、でも美味しくって、体によさそう!」
 「それよりだしの旨味、しっかりしてますね。やっぱり、長時間蒸すとスープの旨味、増すんでしょうね」
 なんて具合に皆に大好評。旨味たっぷり。それでいて、薬効あらたか。しみじみと味わい深くって、ほのぼのと心和みます。そのうち、体がぽかぽか。着込んでいた上着を脱ぎました。

2009/12/13

秋深し~09年11月の「赤坂璃宮」銀座店

 気づけば12月も半ば近く。09年11月の「赤坂璃宮」銀座店報告、おっといけないどころか、大幅に遅れてアップ。「まだ、なんですか?先月の「赤坂璃宮」!」なんて、催促のメールも頂戴して、申しわけありません。一応、用意はしてありましたが、なんだかんだでアップしそこね。
  さて「09年11月の「赤坂璃宮」銀座店」。なんと幕開けにナイスなサプライズ。  
席に着いてこのカトラリー・セッティングを見つけて、思わず「いぇい、やった!」。
 
なんと「秘製上海蟹/上海蟹の紹興酒漬け」が! その登場とともに歓声と拍手が!ほんとですから。
 ひとり半身ずつ。ですが、みそはたっぷり。

 半身の上海蟹の脚をがっしと鷲掴み。じゅるとみそを一気に吸い込んで、後はちゅばちゅば、とまあいささかはしたない食べ方ですけど、酔い蟹を味わうにはこれに限る。

 ねっとりとしていて舌にまとわるみそは濃密。紹興酒の香りが入り混じった独得の風味にうっとり。

 みそを食べた後はしっとり潤んだ蟹肉を穂先の割れたスプーンでちまちまとほじり出します。蒸し蟹の場合だと、蟹肉にはさして用なし、脚には目もくれず。ところが、酔い蟹の身、蒸し蟹と違ってとろとろの触感と紹興酒が入り混じった甘味と苦味が入り混じった味、風味が、たまりませんから。
 
 なんてことで、今日の前菜はなし。なんて思ってたら「広東焼味盆/焼き物前菜盛り合わせ」が登場。
画像、右から順に家鴨の焼き物、伊達鶏の醤油漬け、叉焼。野菜は赤蕪と蓮根。奥はXO醤を乗せたくらげです。家鴨はいつもより味が濃い。もしかして家鴨の状態にあわせてのことかも。

伊達鶏の醤油漬けはいつも通りの印象。肉の柔らかさ、味付けに特徴あり。それに、叉焼が旨かった。
 そして蓮根。なんと色が黄色。
「ねえ、山下さん。この蓮根、もともと黄色いの?それとも色づけしたの?」
「は、あの、聞いてまいりますので、ちょっとお待ちください」。

 しばらくして、「あの、蓮根は「くちなし」で色づけしたものだそうです」。
 「へぇ~「くちなし」?」と一同、感心しきり。

 色合いの美しさだけじゃなく、酢漬けの赤い蕪、蓮根の爽快な味、風味、口をかえてくれるのに格好なもの。単なるアクセントじゃない工夫があります。それからくらげ。ちょっと厚味があって、ぽりこりの触感が快感でした。

『鰤』と『鯖』

 先月の末、後楽園のJCBホールでムーンライダーズでのコンサート。アラ還親父が踏ん張って見せてくれましたが、中でもふーちゃんこと鈴木博文がめちゃくちゃにかっこよかった。シブくて味のあるロック親父そのもの。もしかして若いミュージシャンと組んでストレートなロックをやれば、ますます面白そうなんて思いました。

 その帰り、神保町の店に。ま、後楽園に出かけるってことで最初からその心積りでしたが、コンサートの終了時間が不明。おまけにその日、鼻炎で鼻がグジュグジュ。実はコンサートの半分はくたばってましたが、終わった途端、鼻グジュはストップ!

 時計を見たら9時過ぎ。なら間に合いそうってことで電話を入れました。
 「あの、ご飯があまり残って……」とおかみさん。
 「いいから、いいから、ちょこっと食べるだけだし!」 と、おかみさんの話をさえぎるせっかちな私です。

 「あのう、ご飯、あまり残ってませんし、おまけに冷たくなっちゃって」と現親方。
 「こんな時間に来ちゃったんだし。いいよ、いいよ、気にしないから」
 なんて言っても、現親方はいささか困った様子。
 「あ、お酒! お猪口じゃなくて大きいので!で、何、切ってもらおうか……う~ん」
 品書きに目をやり、白身をさがしましたが売り切れでなし。
 「しま(あじ)」はご飯つけて食べるのが良いしなあ。
 「ン!?「さば」?ねぇ「さば」切って。それから「たこ」」

 その「さば」、脂がのってて、香りもあって、絶品でした。こりゃ、あとでご飯つけて食べないと。なんてことで、ご飯つける分の「さば」、予約のつもりが、お客さん、私共だけですからその要なし。
「たこ」も旨い。いつも通り旨い。ですから、ふつうに旨い!なんて言うと、現親方に怒られますか。

 そしてご飯をつけてもらうことにして、最初は「こはだ」。それから「しまあじ」。
 食べながら気になってしようがないのが「さば」のこと。
 もうひとつ、品書き眺めててもうひとつ気になる魚がある。
 「ぶり」です。品書きの板の白さが滅多に出ないネタだってことを物語ってます。
 「珍しいね!いきましょう「ぶり」!」
これが旨かった。
脂の乗りもさることながら、肉質は緻密で、しっとりと潤んでます。そのしっとり具合、潤み具合は、日本海に生息する魚のそれ。

「これ、どこの?」
「佐渡あたり、じゃないでしょうか」
「能登半島あたりかと思ったら、さらに東か。でも、やっぱり日本海の魚の味、風味がしてるね。この潤んだしっとり加減が!」

 「また知ったかぶりしちゃって!」と横の人がうるさい。
 「なら、食べてみれば! あ、そうだ。私の分、なくなっちゃうから、もう一回「ぶり」!」
 「そしたら、さっきと違うところ、切って、ご飯つけましょうか」
 「うん、そうして、そうして!」
 「私も、もう一貫、お願いします」と、横の人。
 「ぶり」が気に入った様子です。

 そして登場したもう一回の「ぶり」。
 部位が違うと、大きさが違って少々小「ぶり」。しかも、色合いが違って、白みがかった感じです。
 「あ、私、こっちの部位の方が好き!」と横の人。「さっきのより、淡白な味なのね!」
 「うん、でも、さっきのもいいじゃん。というか、珍しいし、滅多に食べられないから、これが最後、ってこともありえるなあ!」
 「親方の頃も「いいのがあれば」ってことだったんですけど、滅多にいい物が出なかったんで、品書きの板は白いまんまなんですよ」

 それからご飯をつけて食べた「さば」。

これがまた絶品の「さば」。
脂ののり、そのまったり加減が絶妙です。
といって、しつこいくどさ、クセの強さはなし。旨味たっぷりで、しかも、妖艶な味わい、風味あり。 
「もう1回!今度いつ出会えるかわからないもん!」
しょっちゅう通えばいいんですけど、そういうわけにもいかないしなあ。 
ともあれ、「ぶり」と「さば」に打ちのめされた一夜でした。

2009/12/12

『KKミーティング』

『KKミーティング』に出席。亡き加藤和彦を偲ぶ会であり送る会でした。会場には故人に縁のある人、関係者が大勢参加。報道によれば出席者は500名程だったそうで。つい最近出会ったばかりの人に混じって、久々に出会った人も。

 「私とのステージが最後(のステージ)になっちゃったんだよね」としみじみと語るユーミン。坂崎(幸之助)くんとは「「和幸」の次のアルバム、どうすんの?なんてことを(加藤)に聞いたんだよ」なんて話を。(高橋)ユキヒロ、小原(礼)とは昔話。正やんこと伊勢正三夫妻にも久々に会いました。会の終了後、クローク前でばったり顔を会わせた今井(裕)くん、現在、陶芸家として製作活動中、と言う話に驚きました。

 会場には故人が好んだ店の好んだ料理が用意されていて、それぞれ店主自らがサーヴィス。
 岐阜の開花亭の「ビーフンとキャビア」。キャビアの塩味とビーフンを和えたごま油の甘味、それぞれに特徴的なネットり感など、味、触感の対比が印象的。神戸北野ホテルの山口さんが自ら切り分けてくれたロースト・ビーフ。さしが入った肉ですが、肉そのものの香りがしっかり。

 祇園ささ木の「太巻き」。華やいだ色合いの美しさに目を惹かれます。様々な具を出し巻きで包んであって、周りをご飯が包むという按配。具のひとつひとつの味、香りがそれぞれに際立っていて、なおかつ、全体で調和。そのバランスが見事。緻密で繊細、豪放で大胆さが一体となった素敵な太巻き。お代わりしました!

 その隣には岐阜の川原町泉屋の「鮎」3種。中でも「鮎の熟れ寿し」が美味。この日食べたものの中ではピカ一。岡山の吉田牧場のチーズはデザートに、という心つもりが行列がすごくて、ありつけず。終わり間際にほんの一切れ。

 以上以外にも様々な店が出店。そのすべてを踏破することは出来ませんでしたが、加藤(和彦)を偲ぶにふさわしい「K・Kミーティング」でありました。

2009/11/22

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の8

 そして今月の面・飯は「芥蘭腊腸炒飯/腸詰と芥蘭入りのチャーハン」。
「腊腸」というのが豚肉の腸詰。で「芥蘭」というのはアブラナ科の一種で、「チャイニーズ・ブロッコリー」と称されることもありますが、厳密には「チャイニーズ・ケール」ってことになるらしい。
 その「ケール」は「青汁」のもと。ですが「チャイニーズ・ケール」は、葉もたべますけど、むしろ茎が食べどころ。それが「ブロッコリー」の茎に味も風味も似ている。だから、「チャイニーズ・ブロッコリー」と称されるようです。そのあたり、要調査。ともあれ、パリっとした触感で、こりっとした歯応えがある。くたくたに茹でるよりも、ぱり・ぽり・こりの触感を残して調理、というのが香港/広東では一般的。
 腸詰の「腊腸」は、台湾系の料理店での前菜の定番になっていますが、香港/広東では「腸詰」だけを食べる、というのは滅多になくて、野菜、ことに「芥蘭」のような茎野菜と炒めたり、炊き込みご飯、炒飯の具にします。糯米を炒めた「炒糯米飯」には欠かせないもの。
 秋の実りの収穫を終える頃、冬を迎える前に豚や家鴨を潰して各種の腸詰を作ります。なんてところは、フランス/イタリアなどでも一般的。肉食系の民族には欠かせない行事、なんですね。ということでは、本来、「芥蘭腊腸炒飯/腸詰と芥蘭入りのチャーハン」は、秋の終わりを告げる炒飯。それが今回登場、というのは、走り物、ってことになりますか。
 そして、甜品。今月の伝統的な甜品は、嬉しいことに「中秋の名月」に欠かせない「月餅」。ところが今回の月餅、伝統的なでっかいそれではなくミニ・サイズ。それも、ペニンシュラ・ホテル(あの黒服の女史のペニンシュラ・東京じゃなくって香港)の「嘉麟樓」のミニ月餅を思い出しました。
 表皮は「酥」のさくさくの感じを残しながらで、しっとり系で、頬張るとほろほろ、はらはら崩れ落ちていく感じが堪らない。柑橘の風味がする、と思ったら、後で教えられたところによればレモンの風味、だそうで。
 ミニ月餅の正式名は「檸檬奶黄月」黄味入りの餡は、緻密で上品で洗練されたもの。これまでの伝統的な点心に特徴的だった素朴な味、風味とは対照的。点心長の久保田さんの新たな側面を発見。
 う~ん、今度、「赤坂璃宮」銀座店で、日曜のブランチに点心大会、実現してみたい、なんて思ったりしたのであります。

2009/11/21

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の7

 そして「蒜子火腩魚球煲/白身魚と豚バラ肉の土鍋煮込み」。
 袁さんのこの種の土鍋料理、いつもと変わらず料理は煮えたぎっていてふつふつと音を立てながら、熱々のまんま登場。湯気がもうもうと上がってますから画像を取るのに一苦労。しかも、湯気が少しばかり収まるのを待ってなお、ふつふつと音を立ててるんですからその熱さ、想像してもらえるはず。大変なのは料理をテーブルに運んでくるアテンドの柏木さん。
 白身魚は「めろ」。それもぶつ切りなんで「魚球」ってわけです。衣で覆われていて、衣がだし入りの煮汁をしっかり吸い込んでます。頬張ると「めろ」の身がほろりと崩れる。

 「めろ」は「銀むつ」なんて名でスーパーでみかけました。もっとも、切り身ばっかりで一匹丸ごとの「めろ」はみかけたことがありません。

 検索してみるとスズキ目に属する「マジェランアイナメ」、もしくは「ライギョダマシ」ってことで、深海魚。一時「銀ダラ」の収穫が激減し、それにとってかわるものとして一般化。ところが、その「銀だら」にしても、

厳密には「たら」じゃないというからややこしい。

 私の印象じゃ「あいなめ」というよりも「たら」に近い感じで、脂肪分はたっぷり。というものの、なんだか、茫洋としていてとぼけているような味、というイメージが支配的。ですから、塩でしっかり締めてフライになんかしたもんです。

 それが、こうやって衣にくるまれて調理されれば、ほろりと崩れる身の触感、それに茫洋とした感じも薄れ、身が引き締まる感じ。
 ということでは、下拵え、塩味の塩梅、工夫ありなんじゃないでしょうか。

 「豚バラ肉」というのは、厳密には皮付きバラ肉の焼き物の「焼肉」。「焼肉」をそのまんま食べると、焼かれた皮のぱりさく感が絶妙なんですが、この料理の場合、衣で包んである。というわけで、皮のぱりさく感はくたっとなって、しっとりじゅわりの触感。さしずめ天つゆにつけた天麩羅状態なわけです。しかも、これまただし入りの煮汁を吸い込んでいて旨い。

 それ以外に干し椎茸。旨味のある味、風味は格別。加えて、見逃せないが料理名に「蒜子」とあるように、にんにくの存在。その一粒、丸ごと煎り焼きにして風味付けにされてるわけですが、それだけじゃあない。

 丸ごと一粒のにんにく。火を通せばとんがった辛味が薄れ、甘味、旨味を醸し出す。それが、この料理の味の決め手のひとつ、なのは明らかです。煮込まれてそのエッセンスを抽出した後のにんにくは、だしがら状態のはずなのに、ほくほくとしていて旨い。

 先の例湯での「百合根」に通じるところもある。香味野菜ですから、食べる必要もないのに、そのほくほく感、甘味のかすかに残っただしがら状態のにんにく、食べたくなります。

 「あ、どうしよう。にんにく食べると、匂い、残っちゃう!けど、美味しいから、食べちゃいます!」なんて声も上がったりして。でも、この料理にはすっかりにんにくのエキス、が抽出されてるわけですから、にんにく食べなくったって、同じこと、無駄な言い訳じゃないでしょうか。

 それより、この料理の味付け、だし入りの煮汁が旨い。でも、そのだし、広東料理でのこの種の料理、炒め鍋煮込みには一般的なことですけど、「上湯」じゃなくて「二湯」、つまりは二番だし?なんて感じでしたが、袁さんに尋ねたところ、案の定「ニ湯」ってことでした。そして、味付けはオイスター・ソースの「蠔油」、中国たまり醤油の「老抽」。

 日本では鍋肌に醤油を垂らして生まれる焼け焦げの香ばしさ、風味が中華らしさの特徴のひとつとして語られたりしますけど、それっていささか粗野で乱暴な調味、調理の産物。それとは対照的な「だし」と「蠔油」、「老抽」のこくのある旨味による奥深い味わい、風味が素晴らしい。

 香港じゃあたりまえ、なんですが日本ではなかなかお目にかかれない土鍋炒め煮込み料理です。それだけでも嬉しくなっちゃいます。

2009/11/20

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の6

 袁さんの「鹽焗鶏」、その実態と真相を知るべく、後日、支配人の橋本さんを通じして質問したところ、予想外の回答が戻ってきました。

 その下拵え、鶏の中に塩、エシャロット、生姜や葱などの香味野菜、香辛料に玫瑰露酒をすり込むそうです。ところが、次のプロセス、伝統的な手法では下拵えした丸ごと一羽の鶏を紙で包んで、焼いた塩で蒸し焼き、というのが一般的。

 ですが、袁さん、塩で包んだり、蒸し焼きにはせず、「鶏肉に醤油を塗って、オーブンで焼いただけ」という回答に驚きました。だから客家料理店での伝統的な手法による「鹽焗鶏」のように塩味しっかり、濃厚でな味付けじゃなく、すっきり爽快、上品な味わいだったわけですね。なりより鶏の旨さが際立ってます。

 それに葱油風の味、香りがしたことが気になってましたが、葱油ではなく「鶏の中に葱を入れて焼いている為」とのこと。取り分けられた鶏肉の小皿にはほんのわずかばかり「だし」がありましたが「だしはつかっておりません」。すると、鶏肉の肉汁が滲み出た、ってことか、それに、今回、特別に比内鶏を使ったのは「骨から出る旨味を重視」ということによるものなんだそうです。

  そうか、袁さんの「鹽焗鶏」、塩で包んで蒸し焼きにする伝統的な手法じゃなくって、新式、改良版と思わず納得。ということは、オーブンさえあれば「鹽焗鶏」は出来るんだ!それなら、我が家でも「鹽焗鶏」が出来るかもしれない!なんて無謀に思っちゃう私であります。それも、丸ごと一羽じゃなくって、骨付きの腿肉や手羽先や手羽中を使って「なんちゃって「鹽焗鶏」が作れそうです。

 もっとも、下拵え、焼き加減の按配を見るのが厄介そう。経験と年季が必要、かも。でも、プロの料理人なら袁さんの調理法にならって「鹽焗鶏」が出来るはず。なのに、日本の広東料理店では滅多にお目にかかれないのはどうしてだろう。

 日本ではなじみのない料理、なんてことと、新式、改良型の「鹽焗鶏」の料理方法が日本ではさほど知られていない、からでしょうか。伝統的な手法でなくともこれだけ美味で風味豊かな「鹽焗鶏」が出来るのに。ことに宴会料理にはうってつけ。なんとか日本で広まってほしい広東料理の一品です。

2009/11/19

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の5

 そして「鹽焗鶏」が登場! 
 私にとっては待望の一品。「赤坂璃宮」銀座店の料理長、袁さんの手になる「鹽焗鶏」、なんとか食べられないかと願ってはいたものの、「鹽焗鶏」は鶏を一羽丸ごと使ってこその料理です。ところが、月例の「赤坂璃宮」銀座店のでメンバーはその人数、増えても5~6人。なんことから、別の機会に特別に依頼するつもりが、な、な、なんとその登場が実現。私は嬉しさに大興奮!
ところで「鹽焗鶏」。
もともとは客家料理の伝統的な一品で「正宗東江鹽焗鶏」というのが正式名。

 下拵えした丸ごと一羽の鶏を焼いた塩で包み、蒸し焼きにした料理です。そんな伝統的な調理方法とは別に、調理方法を改め、味付けを軽くした「鹽焗鶏」もあり。なんせ伝統的な調理方法では塩をふんだんに使う。場合によっては塩味が濃厚。おまけに、近頃、減塩を志向する人が多くなった、という時代の要求に応じ、工夫されるようになったもの。

 さて、「鹽焗鶏」。テーブルに運ばれてきた時の香りの素晴らしさにうっとり。焼かれた鶏の香ばしさ、鶏の皮の脂やほとばしる肉汁の香りが混然一体。それになんといっても焼き上がった鶏の皮の色合いが美しい。焦げはなし。狐色が茶色がかったその色合いは黄金色というにふさわしい。思わず生唾ゴクン!となる見事な色合いです。

 皮は「ぱり」っとしたまさに「脆」の触感。噛み締めると歯がすんなり肉に入る。ですが、その肉、歯をかすかに押し返すぐらいの弾力が潜んでます。日頃、「赤坂璃宮」銀座店で食べることの多い伊達鶏のねっとりがかった柔らかさとはちょっとばかり違います。しっとり潤みのある柔らかさ、ですね。

 肉を噛み締めればジューシーな肉汁がほとばしる。同時に、鶏肉の旨味がじんわり口中に広がっていく。もっとも客家系の料理店での伝統的な「鹽焗鶏」に特徴的な塩味の濃さ、きつさは皆無。なによりもしっとり潤んだ鶏肉の旨さ、風味が際立ってます。

 食べ進めるうち、気になったのは鶏の肉質、触感、味、風味。いつもの伊達鶏とは明らかに資質、持ち味、異なります。肉はしっとりなのに、いくらかの弾力があり、なおかつ、ジュージーで旨味がある。加えて、葱の風味のある油、旨味を感じたのも印象的でした。

 ふとメニューを見直すと「家郷鹽焗鶏/比内地鶏のオーブン焼き」なんてある。「そうか、いつもの伊達鶏とは違うわけだ!けど、なんでまた比内鶏?」

2009/11/17

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の4

 続いて「白果百合泡蝦仁/芝海老と銀杏・百合根の炒め物」。
 これぞまさしく秋ならではの一品。
 海老、銀杏、百合根に、セロリ、グリーンアスパラも素材です。

 「この百合根のほくほくした感じ、甘味がいいですね!」
 「それにこの銀杏も旨い。触感と味、風味がいいですね。
 ほら、焼き鳥屋で焼いた銀杏を食べると、香ばしくて、ぷちぷち、ぎしぎしっとしてて、噛み締めると渋みやほろ苦さがあって、独得の甘味、風味がでてくるでしょ?

 それが、茶碗蒸しだとか、ひろーす、ほらがんもどきね、あんなのに入ってて、蒸したり、煮込んだりすると、甘味がたって、噛み締めるとクリミーだったりするでしょう? それが、こうやって炒めると触感とか、味、風味がびみょーに違いますね。このぎしぎしとした触感って焼いたのに似てるけど、ぷちっと弾けるような感じじゃなくって、しっとりねっとりとした弾力があるよね。それに渋みやほろ苦さが消えて、甘味、それにクリーミーなかんじがするし」

 「銀杏もいいけど、この百合の根、ほんとに美味しい。でんぶん質ですね、この甘味。それより、百合根にしろ銀杏にしろ海老にしろ、火の通し方が素晴らしいですね。ウチジャア絶対出来ないプロの技。それに、味付け、すっきりとしてて、上品ですごく洗練されてるのね。これも、ウチじゃ絶対に不可能!」

 なんて、私が言おうとしたこと、先取りされちゃいました。
 そう、火の通しから、味付けは、まさにプロの技。それより、この手の料理、日本の一般の広東料理店だと、仕上げにとろみのあんかけ、なんてのがほとんどです。それが、中国料理、広東料理ならではの味、調理だと思いこんでる人、料理人をふくめての話ですけど、少なくない。

 はたせるかな袁さんの手になる「白果百合泡蝦仁/芝海老と銀杏・百合根の炒め物」、画像をみれば明らかなように、こってりたっぷりのとろみつけなんかなし。海老にしろ、百合根、銀杏、セロリにアスパラ、それぞれの素材の味がはっきりとわかる。

 とろみで最後に仕上て、素材を味付けで食べさせるんじゃなく、素材の持ち味を引き出し、風味を生かすのが広東料理の真髄、なんてことがこんなごくオーソドックスな炒めものの一品でよーくわかります。

2009/11/04

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の3

 「これって旨いよね。素材の味、そのまんまだし」
 「この自然な甘味って、蓮根の澱粉質でしょ?たっぷり濃厚で、風味があるのに、決してくどくないし、おしつけがましくないのね」
 「甘味、旨味、こくは豚のタンからもたっぷりだね。豚の舌の脂肪分の甘味、旨味じゃないかな。豚のタンって、焼くだけじゃなくって、こうやってスープにすると旨味のあるだしがとれるんだね」
 「それに牡蠣の味がする。メニューに書いてある「蠔豉」ってのがそれ、牡蠣を干したものです。それに「髪菜」も入ってる」
「このやわらかい髪の毛のようなものですね。これって?」
「ねんじゅも属の藍藻の一種、だったはず。陸モズクというか、いしくらげの変種だったと思います。草原などで繁殖してるのをかき集めて採取するんだけど、表土も一緒にさらっちゃうから環境問題にもなって、たしか、採集禁止にもなって、今では貴重品のはずですよ」

 その「髪菜」、広東語では「發財」の発音と似ていて、その意は「財をなす」。それに干し牡蠣の「蠔豉」は「好市」の発音と似ていて、その意は「よき市場」、つまりは、好景気ってことですね。そんなことから「髪菜」と「蠔豉」を組み合わせた料理は縁起担ぎの一品として、春節、つまりは旧正月には欠かせないメニューです。

 そればかりか豚の舌の「豬脷」の「脷」は「利」、つまりは利益、儲けがあるということに由来する広東地方独得の表現。それに「蓮根」も、丸い穴が通っていて先行きが明るい、なんて意味がある。
 つまり、今回のスープの「髪菜蠔豉豬利蓮藕湯/豚タンと蓮根のスープ」は、縁起をかついだおめでたいものづくしの一品。というわけで、本来は春節などに食べる伝統的な郷土料理。
 そういや、秋の収穫を終えたおめでたい時にも、なんて話を耳にしたことがありますが、もしかして今月登場したのはそんなわけかも。
 今度、袁さんに尋ねておきます。 

2009/11/01

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の2

 今月のスープは「髪菜蠔豉豬利蓮藕湯/豚タンと蓮根のスープ」。
 「猪利(豬脷)」とは「豚のタン」。日本では焼き肉にするのが圧倒的なようで。そういえばフレンチ、イタリアンでもたまに見かけることがあります。
 牛や豚の内蔵類。とことん食べつくしてしまう広東人の場合、焼いて食べるというよりもスープや煮込みにすることが多い。そんなわけで、今回は旬の素材、これからがうまくなる「蓮藕」つまりは「蓮根」と組み合わせたもの。
 「蓮根」も広東地方ではいろんな料理に使われます。が、スープの素材になる、なんてところが日本とはちょっと違うところ。日本で思いつく「蓮根」の料理といえば、すり流しなどは別にして、ほとんどを占めるのがしゃきしゃきの歯触りを生かした料理じゃないでしょうか。もっとも、筑前煮なんて場合にはほくほくの触感が味わえる。
 そんな「蓮根」、広東人の場合、しゃきしゃきの歯触りよりも素材の持ち味を生かして調理するというのが一般的なようです。例えば、澱粉質がたっぷり、なんて効用を生かす。そのあたり、慈姑なんかも含めて根菜類の扱いにも共通することです。
 それにこれまで何度か紹介してきた「蓮藕餅」。日本で「蓮根」の揚げ物といえば、たとえば天麩羅のそれや蓮根の挟み揚げなんてのが一般的。それが広東料理だと「蓮根」を擂り潰し、豚の挽き肉などと混ぜ合わせ、ハンバーグ状にして煎り焼きにする。
 「蓮根」を擂り潰す際に、しゃきしゃきの歯触りを残すあら微塵にするか、それとも、徹底的に擂り潰すかで、出来上がりが違います。そう、しゃきしゃきの歯触りを残した硬いか、それとも、ねっとり感のある柔らかいものになるのか。ちなみに、香港の広東料理店で「蓮藕餅」を注文すると、決まって多いのが硬目のものです。
 そんな「蓮藕餅」もさることながら「蓮藕(蓮根)」はやはりスープの具材。ことに「例湯」や「煲湯」の具材のひとつになります。長時間煮込まれた「蓮藕(蓮根)」は、ほくほくを通りすぎて「かすかす」の抜け殻状態。そのエッセンスはすっかり「湯(スープ)」の中にあり、というわけです。

2009/10/31

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の1

 今月もぎりぎりセーフで09年10月の「赤坂璃宮」銀座店。
 いや、あの、今年も芸術祭の審査員を担当。なんてことで10月に入って以来、従来のコンサート通いに取って代わって演芸場や小ホール通い。私の担当は大衆芸能部門で音楽もありなんですが、圧倒的に多いのが演芸関係。それに今年は朗読関係の催しがいつもに比べて多い。おまけに一日の内、昼、夜、別の催しがあってあっちこっち。なんてことでブログ・アップの機会、逸してました。
 そういえば先月分で未報告分もありなんですが、以上のまずはそれより月例の「赤坂璃宮」銀座店のレポート報告。

 まずは前菜の「璃宮焼味盆/璃宮特製焼き物盛り合わせ」。その内容、向かって右から皮付き豚ばら肉の焼き物の「焼肉」、家鴨の焼き物の「焼鴨」、それに「叉焼」。飛んでトマトに白菜の酢漬けにくらげ。その盛り付け、今月は角皿で登場。真ん中には稲穂と思しき飾り物も。

「あれ、今月、鶏肉がないや!」
その理由、後で判明。

それより家鴨の焼き物の「焼鴨」、皮はぱり。肉はしっとりながら適度な弾力、歯応えがあったのと、いつもより甘味のある味付けだったのが印象的。 それにくらげの歯触り、噛み応えも快感でした。

2009/10/30

「ロック・オブ・エージズ~小倉エージ・インタビュー&トーク集」

 なんてことで、この程、ミュージック・マガジン社より拙著「ロック・オブ・エージズ」が発刊の運びとなりました。
今年、ミュージック・マガジンが創刊40周年を迎えたのを機に、創刊以来、同誌と関わってきた私が同誌に寄稿してきたインタビュー、ルポ、対談、鼎談をまとめたものです。それも、一部を除き、掲載時の記事をスキャンして収録。
 ということもから、結果、事実関係やその認識など現在とは異なり、本来は修正の必要なものもありましたが、そのまま収録。創刊当時の拙い文章、内容は赤面するより他ありませんが、当時のロックの動向、そのうごめきをなんらかの形で伝えたいという意欲にかられてのもので、その取り組みを明らかにするものとして収録。
 ミュージック・マガジン誌に寄稿したインタビュー、ルポ、対談、鼎談は思いの他ありましたが、紙数に制限もあってそのすべてを収録することは出来ませんでしたが、手にとって気軽に読める、楽しんでいただけるもので出来上がりました。
 その続編もなんとか実現したいと思っていますが、とりあえずは今回の「ロック・オブ・エージズ」、ご高覧いただければと願う次第です。
 ニュー・ミュージック・マガジン時代をほうふつさせる表紙のイラストレーションを書き下ろし、装丁を手がけてくれたのは矢吹申彦さん。 あ、こんな感じの表紙、見たことあり!なんて方なら、きっと、楽しんでいただけると思います。

2009/10/23

「カフェ・ル・モンドのメニュー」

 加藤和彦の訃報を知ったのは先週の土曜日の昼過ぎ。通信社からコメントを求められてのことでした。それも「自殺されたようです」との話に、一体、何があったのか訳がわからず、言葉も出ない。というより、信じられませんでした。

 ちょうどこの2日、松任谷由実のコンサートに出かけた際、サプライズ・ゲストで登場し、新作「そしてもう一度夢見るだろう」の収録曲の「黄色いロールス・ロイス」をデュエット。終演後、バック・ステージに赴いたところ、石川セリさんと歓談中に「やあ、やあ、やあ、エージ、エージ!」とにこやかに声をかけてきたものです。セリさんとの話は中断して、しばし歓談。

 今年の初めに発表された坂崎幸之助との「和幸」の第2弾だった『ひっぴいえんど』は、はっぴえんどをはじめ60年代末から70年代初頭にかけてのロック、フォーク、ポップスを下敷きに、作品、歌、コーラス、演奏、サウンド作りにひとひねりもふたひねりも工夫を凝らした作品。当時の事情を知る、なんてことからインタビュー、解説に引っ張り出されてお手伝い。

 前後してアルバムを発表し、ライヴも実施したのがVITAMIN-Q。ユーミンの「黄色いロールスロイス」はその流れをくむもの。併せて「和幸」ともども、昨年来、バンド活動、ライヴ活動に意欲的。
 そんなことから、ユーミンのバック・ステージでの再開での話の中身は、ここ最近の動向やこれからのことについて。ことに気になるのは「和幸」のこと。

  そしたら「う~ん、あれは、仕掛けを入念にやんないとね。準備も必要だし。ま、それ以外にいろいろ、考えてることがあるんだけど……」なんてことでした。

 加藤和彦が鬱病を患っていたとは知らなかった。それは私だけでなく、内々の関係者のみが知ることだったらしい。日を追って、様々な報道がなされ、遺書の一部なども報じられ、自ら命を絶つに至った理由、経緯、事情が少しずつ明らかになったものの「何故?どうしてまた?」という疑問が頭の中を渦巻くばかりです。

 知り合って40年あまりの長きの間、常に身近にいた親しい友人ではなく、疎遠だったことの方が多い。が、時に出会って、親しい付き合いを重ねたこともあります。
 はっぴいえんどのデビュー・アルバム、通称「ゆでめん」が出来上がった日の夜、はじめて関係者以外の人間としてそれを聞かせたのは加藤和彦であり、絶賛してくれるとともに大いに勇気付けられたことは今も忘れ難い。後年、私がTVの「男の食彩」のキャスターを務めることになった際、最初のゲストとして迎えたのも加藤和彦だったが、その依頼を即座に引き受けてくれました。「和幸」の『ひっぴえんど』の解説やインタビューに借り出されたのも、そうした長年の付き合いあってのことです。

 加藤和彦が日本の音楽界、ポップ・シーンに残した業績。それを改めて振り返ってみたいと思っています。
 今、思い浮かぶ私にとって加藤和彦が生んだベスト・ソングといえば「カフェ・ル・モンドのメニュー」。「和幸」の「ひっぴえんど」のインタビューの際、さすがの坂崎幸之助もその存在を忘れていたレアな作品です。

2009/10/11

秋の訪れ!09年9月の『赤坂璃宮』銀座店の8

 最後はそれぞれ好みで選べるデザートの甜品。が、その前に、特別なデザートが登場。
 昔懐かしい甜品の一品の「椰香薄缶掌捲/ゴマとピーナッツバターとココナッツのライスクレープ巻き」。

 中国の料理名の「缶掌」は、それで一語。文字自体は点心のメニューなどで見かけることがありますが、PCでの漢字表記にはなく、漢字変換は不可能。香港や広州のサイトなどでも「缶掌」と2字で表記。

 どうやら広東語の音韻にあわせた広東語独自の表記らしく、慣用語、慣用表現としてして定着しているようですが、正しい漢字表記を!なんてことで「撐」もしくは「撑」という漢字で表記しているのもあります。どうやら、しっかり巻き付ける、って意味のようで。
 その言葉通り、ゴマやピーナッツバター、削ったココナッツを具にしてしっかりまきつけてあります。その生地、ライスペイパーなんてことからすると米の粉で出来た腸粉ってことになりますが、生の腸粉は乳白色。

 それとは違ってこれは半透明で、乾燥させたライスペイパー、そう、ベトナムの春巻きに使う半透明のライスペイパーに似ていて、それよりいくらか厚みがあります。

 この種の巻き物のデザートでは米粉にくわいの澱粉、黒ゴマあるいは白ゴマを混ぜ合わせて平たく伸ばし、きっちり巻き付けた「芝麻捲」がありますが、それって70~80年代に飲茶の点心に登場。ということからするとこの「椰香薄缶掌捲」はそれ以前からある昔ながらの伝統的な点心の一品。

 随分と以前、昔ながらの老舗の茶樓、広東料理店の早茶、午茶の飲茶巡りをしていた頃、油麻地の豪華酒樓、北角の十大、それに筲箕湾の茶樓でみかけた記憶があります。しかし、「芝麻捲」の登場とともに滅多にみかけなくなりましたが、懐古的な料理の復活とともに、昔懐かしい点心として話題に昇るようになったもの。

 ちなみに点心料理長の久保田さん、香港じゃなくって横浜のシェラトン時代に習ったそうで。ということは、日本にも紹介されていたってことになります。ともあれ、先月の「南瓜水晶包」にしろ、この「椰香薄缶掌捲」にしろ、珍しい点心を用意してくれるのが嬉しい。これからどんな点心が登場するのか、楽しみです。

2009/10/08

秋の訪れ!09年9月の『赤坂璃宮』銀座店の7

 締めくくりの「面・飯」。
今月は「鮑汁炆伊麺/鮑ソース入り煮込みそば」。
 
















「伊麺」、すなわち「伊府麺」は、卵入りの麺。「伊府麺」、日本の中国料理店、それにスーパーなどでもみかけますが、細めのものが一般的。 それが、香港だと、平べったくて少々幅広。といってきしめんほどの幅の広さでもなく、その半分ぐらい。イタリアの乾麺の「リングイネ」に近いです。そんな香港で食べる幅広の「伊麵」が登場したのに吃驚! 

 以前、食べた雲呑入りの「香港雲呑麺」の「麺」は、香港から空輸した直輸入品でしたが、もしかしてこの「伊麺」もそうなんでしょうか。 実際、麺の旨さがちがいます。すっと歯が入る柔らかさで、噛み締めるとしっとり感あり。腰のある讃岐系の麺をお好みの人にはうけないからもしれませんが、モチモチ系のうどんが好みっていう人なら、好み、ぴったりのはず。

 その柔らかさ、独得の触感は、麺自体の素材の質ってこともありますが、揚げて、煮込んであるという調理方法のプロセスによるもの、のはずです!そして、味付けは干し鮑を戻した際に生まれる鮑汁をもとにした旨味たっぷりなもの。具は韮、もやし、それにどうやらエリンギらしい触感の生茸。

  いたってシンプルな汁が少なめの煮込み麺。ですが、調理に手が込んでる。おまけに「鮑汁」は高価な調味料ですから、実は贅沢この上ない麺料理。宴会料理の締めくくりに登場ってことも少なくない。
 袁さんが調理、味付けしたこの「鮑汁炆伊麺」、旨味たっぷりでも洗練された上品な味付けで、その味加減が見事。風味豊かな麺料理。「旨い!」と一言唸って、あとは、無言。ひたすらつるつる。するすると喉元を通り過ぎていきます。

秋の訪れ!09年9月の『赤坂璃宮』銀座店の6

 「辣酒煮花螺」といえば思い出すのが「大佛口食坊」のそれ。
 香港の広東料理が最盛期を極めた80年代半ばに誕生し、各地に支店を持った「大佛口食坊」は、海鮮料理の大衆化に貢献。と同時に、新しい料理を次から次へと発表。そのひとつがこの「辣酒煮花螺」。やがて香港中に広まり、後に「大佛口食坊」は結業、すなわち、閉店しましたが名物だった看板の料理は形を変えながら現在に至ってもいろんな店で受け継がれているという次第。

 袁さんもおそらく「大佛口食坊」、もしくはその流れを組む料理を食べたことがあるはず。なんせ、80年代半ば以後、香港の海鮮料理では大人気でしたから。あ、そか、もしかしてかつて袁さんがいたという「翠園酒家」のメニューにあったのかも。もっとも、今回の「辣酒煮花螺」、香港で私がいくつかの店で食べたそれとはいささか異なる。

 まず、香港では「バイ貝」でも殻に方形の斑点模様がついた「ソウゲバイ」や格子状模様の「ヤマグチバイ」が主体。ですが、それら日本ではなかなか入手が難しい。ということで今回の「白バイ貝(エッチュウバイ」になったんでしょう。

 それに、袁さんならでは工夫がある。そのひとつは煮込み用の酒。普通は紹興酒や玫瑰露酒、広州産の焼酎の米酒を使用するのが一般的。それが袁さん、前述の通り「五粮液」、「茅台」を使用。匂いというか香りが強烈で、しかも、アルコール濃度が高い。

 さらに、豆瓣醤、辣椒醤などを取り混ぜ、辛味と旨味、こくを付けるのが香港では一般的。それが袁さん、豆瓣醤はどうやら「郫県」のものを使用してるらしい。普通、赤色、もしくは、醤油系の濃い色のものが多いんですが、赤いレンガ色、というのがそれを物語る。

 加えて「痺れ味」、これって、香港の色んな店で食べた「辣酒煮花螺」にはなかったことで、いささか趣が異なる。実は、香港人、ことに広東人ですけど、その多くが中国山椒の「花椒」が苦手。しびれ味はともかく、その香り、風味、はっきり言ってその匂いが、受け付けられない!

 「え!? 麻婆豆腐に不可欠な痺れ味を生む「花椒」が苦手?信じられない!」、なんて人もいるでしょう。が、事実です。
 かつて日本では「花椒」の入手が難しく、痺れ味にも馴染みがなかった。それが「花椒」を使った本場式の「麻婆豆腐」が紹介され(私もdancyuで早くに紹介してきたひとりです、と書いておこう!)その入手が容易になって、いまでは「花椒」の「麻」の味も生かした本場式の「麻婆豆腐」が一般的。

 中には「花椒」の「麻」の痺れ味に病みつきになってしまった人も少なくない。多少の「花椒」では物足りない!「どばっ!」と入れて、かけて、と注文する人もいるそうな。なにしろ、最近の「麻婆豆腐」、そればかりか「四川料理」の評価の一番の基準は「辣」の辛味だけじゃなくて「麻」の痺れ味が過不足なく使われていないと潔しとしない。なんて具合ですから、なんだか不思議な按配。それも食の評論家にそうした発言をする人が多くて「をいをい違うだろが」って、あ、言わないほうがいいか。穏便に、穏便に。

 やっぱり日本人は味で判断。香港の広東人はそれに加えて香りも重視、というあたりに違いがある。そう、私の知る限り香港の広東人は「花椒」の痺れ味はともかく、香りを潔しとしない、嫌い、受け付けないという人が圧倒でき。それなのに香港からやってきた袁さんのこの「辣酒煮花螺」、痺れ味がする。「花椒」の味、風味がするのは「なんでまた?」と思って当然のことでしょう!

 橋本さんに尋ねてもらいました。
 「「馬拉醤」は使用していないそうです。調味料、香味野菜は「豆板醤」、「干し唐辛子」、「生唐辛子」・「山椒オイル」、「沙爹ソース」です」とのこと。

 そうか、カレー味談義(?)のもとは「沙爹ソース」こと「沙爹醤」だと判明。 「沙爹醤」、そもそもは干し海老の「蝦米」、海老みそ(あみの塩辛)の「蝦醬」をベースに各種香味野菜、香辛料を混ぜ合わせピーナッツ油でいためて作る、というのがその基本。中国南部から東南アジアにかけての国々に素材の内容が異なるものがあります

 そして「山椒オイル」を見逃せませんでした。それこそ「花椒」を素材した調味料で、しびれ味のもと、ですから。なんてことだと辛味だけでなく、ヒネた旨味が濃厚な「郫県豆瓣醤」(あ、未確認です!)、「山椒オイル」ということなら広東料理じゃなくって四川料理じゃないですか!しかも「五粮液」、「茅台」を使う、なんてのも広東系の料理人には「ありえな~い!」(って、ちょっと若ぶったりして!)

 袁さん、多分、日本にやってきてその種の調味料に出会い、その面白さ、発見したんじゃないでしょうか。ということなら、袁さん、香港の広東系の料理人の中でも頭が柔らかくって、好奇心と冒険心にあふれ、なんでも未知の味に積極的にふれ、こで自分が納得すればしっかと受け止め、バンバン使っちゃうというなんて意欲的、しかも創作意欲にとんだ料理人、ってことになります。

 その一方で、基本は広東料理。ことに伝統的な宴会料理と「家郷菜」がその基本とばかり、その信念を貫き通す頑固さもある。それは袁さんの手になる「家郷菜」からも明らかですから。そんな「保守性」と「革新性」が混在し、やじろべえや振り子のように、あっちこっちへといったりきたり。袁さんの料理の面白さのひとつです。

2009/10/06

秋の訪れ!09年9月の『赤坂璃宮』銀座店の5

 そして土鍋の中で煮え滾る「辣酒煮花螺/白バイ貝の辛味煮」が登場。  そういえば、袁さんの料理、ことに鍋料理、いつも熱々。土鍋料理はいつも煮え滾ってます。テーブルに運ぶアテンドの柏木さん、いつも一苦労。テーブルの上に置かれた料理の画像を撮ろうとしても立ち昇る湯気にレンズが曇ってすぐさま撮影なんか出来ない。

 皆さんにお目見え、ご披露の後で一旦テーブルから下げられ、別の場所でお碗に取り分けられて、再度、テーブルに登場となるわけですが、それだけ時間が経過してもなお料理は熱いまま。というのがほとんどですから、袁さんの土鍋料理の熱さ、想像してもらえるはず。

 おまけにこの「辣酒煮花螺」、登場とともに部屋の中はむせるぐらいお酒の匂いで溢れかえる。それも中国の白酒、独得の香りです。「ン!? 「五粮液」に「茅台」?」なんて思ってたら柏木さん、テーブルに置くなり開口一番「「五粮液」と「茅台」を使ってるそうです!」。

 最初に土鍋入りで登場した時には、煮え滾る赤レンガ色した煮汁の中でアップアップ。さながら地獄絵図、石川五右衛門状態、でもないですけど少しばかり異様な光景だったのは確か。それが、小ぶりの鉢に取り分けられ、目の前にした「辣酒煮花螺」、やっと「白バイ貝」の正体確認。
 身が収まったままの貝を小皿に取り、身を取り出そうとしましたが、指で貝つかむと「アチチ!なんで、まだこんなに熱いの?」なんて思わず口走っちゃうぐらい、料理が熱い!
 仕方なしに、お絞りで貝を押さえ、ほら、蟹の脚の身をほぐす細長のフォーク状のも辛さのをねじりいれ、貝から身を引きずりだす!
 煮え滾る煮汁の中にあったことから、さぞやしっかり火が入り、身の硬さを想像していたところ、火の入れ方、ミディアム・レアぎりぎりの感じのところで止めをさしてある感じ。すっと歯が入る柔らかさ。ですが、噛み締めた歯が軽くおしかえすようなしなやかな弾力もある。
  磯の味、と、同時に、だしを口に含むと、こくのある味、旨味、それだけでなく、スパイシーでエキゾティックな味、風味が浮かび上がったかと思うと、痺れをともなう強烈な辛味が一気に押し寄せ、口中に拡がっていきます。
 のたうちまわるほどの辛さじゃない。けど、ジンジンの痺れ味もあって、舌や口腔にまとわりついて、細胞に鋭く染み込み、一瞬、頭が白くなります。前後して、汗がどっと一気にあふれ出る。しかし、こらえきれない辛さじゃない。もっぺん、あるいは、何度でも、(辛さの)快感を味わいたくなくなるようなみょーに後引きな辛さです。
 おもしろいのは、痺れる辛さ、だけじゃない。なんだかスパイシーでみょーにエキゾチック。
 「ね、これ、カレーの味、しません?」
 「するする!」
 「カレーっていうか、複合スパイスの感じね、ほら、カレー粉、実はスパイスの混合体なわけでしょ?でも、なんでスパシーなのか・・・・」
 「あの、もしかして先日の「馬来醤」が使われているからかもしれません。確かめてきます!」
と柏木さん。

2009/10/04

秋の訪れ!09年9月の『赤坂璃宮』銀座店の4

そして「豆豉蒸紅衫/イトヨリの豆豉蒸し」。その登場ととも歓声が上がりました。
 魚は「いとより」。知らないわけじゃありませんが、こんなにでっかい「いとより」との出会いは初めて。駅前のスーパーで見かける「いとより」はうんと小粒。
 手に入れても煮付けにするか、アクアパッツアにするか。煎り焼きにしてから広東白菜に杏仁なんかとともに「例湯」もどきにしたことがありますが、良かったという印象もなく、日頃は馴染みなし。

 香港や台湾あたりでは海鮮料理店の店頭にある生簀でみかけたことがあって「清蒸」でも「紅炆」でも「油浸」でもいけるよ!なんて話を耳にしながら、なんとなく乗り切れなくって未体験。
 ですが、今回、袁さんの調理した「豆豉蒸紅衫」を再認識。こんぐらい大きいと「いとより」だと「いけるワ!」。

 ひと口食べて身の「ゆるさ」に驚きました。あいなめ、ほっけの触感に通じるしっとり系の肉質。ですが、しゅわしゅわじゃなくって、ほろり、はらりとほぐれていく感じ。どうやら蒸し物、広東式の魚の唐揚げの「油浸」などにうってつけなことをすぐさま察知。

「「いとより」の持ち味、個性、特質って、こんな風だったんだ!」と認識した次第。今度は別の調理法で食べてみたい、なんてつもりにもなった程。ネットで検索すると大ぶりの「いとより」は高級魚扱い。ワ、どうしよう、今回も予算オーバー!なんていいながら、美味の誘惑には勝てない。

 技と工夫ありの味付けというのは「豆豉」(黒豆醗酵味噌)のひね味、旨味、こく。それに新鮮な唐辛子が使われていて、辛味にフルーティな味、風味がある。
 その味、風味からふと思い出したのは6月に食べた「泡椒小扇貝/帆立貝と漬け菜の蒸し物」に使われていた四川の唐辛子の漬物の「泡辣椒」、それに魚醤などで作った「赤坂璃宮」特製の「海鮮醤油」の味、風味。ふっと「陳皮」の味、風味が鼻先をよぎる。
 料理自体の見映え、味、風味、一瞬、四川の「魚香鮮魚」のよう、ですが「違うワ、この料理は!」と、即座に右だか、左の脳がその考えを「却下」!
 というのも、その味つけ、風味、なんだかエキゾティック。ついでに言えば「トロピカル!」。そう、なんだかタイの南方系の魚料理を食べてるような思いに駆られるからです。

 その要因はナンプラー/ヌクマムと思しき、特有のクセのある味、風味。「赤坂璃宮」の「海鮮醤油」って、実は、エキゾチック。明らかに東南アジア系のそれ!です。さらに魚の上に乗った小ねぎ、香菜、その緑がなんだかトロピカル。ですけど、味、風味の基本は中華風。醗酵品の酸味、ヒネ味が利いていて、すっきりさっぱりの味わい。そんな味付け、蒸す調理が「いとより」にぴったり。

 「いとより」の「ゆるい」身の水っぽいさが抜け、調味料の旨味、ひね味をしっかり吸収。しかも、ほろり、はらりの肉質としっかり馴染んでます。しかも、すっきり、爽やかな爽快感がある。

 「そうだ!」ってことで思い出したのは潮州料理の店で出会った鱸を梅醤で蒸した料理。醗酵系の酸味、ヒネ味、酸味。そこに生の唐辛子の爽快な辛さがプラスアルファ。蒸した魚の上に青葱、香菜のどっさり、なんてプレゼンテンショーンもそんな感じ。

 橋本さんに頼んで袁さんに調味料のことを尋ねたら「「「海鮮醤油」は入ってますが「泡辣椒」は使用してません。それに、赤と青のピーマン、香菜、陳皮、生唐辛子などです」とのこと。
 「なんだか漬物を使ってある感じ!」とIさん。
 「え!使ってないって?だとしたら、なんだろ、この味?」。
 「多分「豆豉」と「海鮮醤油」の醗酵したヒネ味のせい、でしょうね。それより、このすっきり、爽快で、フルーティーな辛さ、いいですね!生唐辛子のせいなんだ!」

 醤油系の味付けで仕上る「清蒸魚」だと、白いご飯の上にのっけて食べたくなる。ですけどこの「豆豉蒸紅衫」、そのまんま爽快な魚料理としてしっかり味わいました。

2009/10/03

秋の訪れ!09年9月の『赤坂璃宮』銀座店の3

 例湯は「栗子花生煲鶏脚/コラーゲンたっぷりのスープ」。 ン!? 日本語の料理名が「コラーゲンたっぷりのスープ」って、ま、このスープのエッセンスを物語るってことで、わかりやすくっていいですけど……。
 その具材、ご覧の通り、真ん中に秋の実り、栗がたっぷり。その下は棗の蜜漬けの「蜜棗」と鶏の脚の「もみじ」。あ!?!そうか「もみじ」も秋のもの、って袁さんには多分、通じないか!
 左側には「(落)花生」、ピーナッツがたっぷり。栗の上、皿の淵にずらりと並ぶんだもの、なんだと思います? 「豚のお尻です!」と、柏木さん。 「豚のお尻?って、これ尻尾、みたいじゃん・・・・初めて食べるなあ!」なんて声も。 その実態、橋本さんに確認して「豚の尻尾」だと確認。
 そういえばちょうど一年前、「赤坂璃宮」銀座店の9月のメニューにも栗を素材にしたスープが登場。そん時には栗と鶏を煮込んだ「栗子煲鶏湯」が登場。今回は栗に「鳳爪(鶏脚)」を組み合わせたもの。

 広東地方の「湯」、つまりはスープを集大成した私の座右の書のひとつには「鳳爪(鶏脚)」を素材にしたスープが各種紹介されていますが、その中に栗と一緒に煮込んだ「栗子鶏脚湯」がありました。そこでは「痩肉」と「胡桃」、「陳皮」が素材として紹介されてます。

 ということでは今回の「栗子花生煲鶏脚」、「落花生」は「胡桃」に代わるのも。それに「蜜棗」で甘味を加味。なんていっても「鶏脚」に「落花生」という組み合わせはよくあること。それよりおもしろいのは「豬尾」を加えてること。

 「鶏脚」をたっぷり使えばゼラチン質たっぷりのだしが取れます。そこに「豬尾」を加えればますますゼラチン質、さらには旨味、甘味とこくを増す。コラーゲンたっぷりというのもそんなわけか。さらに、生だと渋味の強い栗に火を通せば、持ち味の甘味が顔をのぞかせる。澱粉質もたっぷり。それにほくほくの感じになる。そんな栗のエッセンスを煮込んで抽出。さらに「落花生」、「蜜棗」のエッセンスも。
 素朴、朴訥ながら自然な甘味、さらに、旨味やこくもあるスープが旨い。すっきり、というよりも、いつものこの種のスープに比べてざらっとした感触が舌に触れるのは、栗と落花生のせいでしょうか。
 だしがらのはずの栗の実、落花生が旨い。それより「鶏脚」、「豬尾」が、たまり醤油と上湯で作ったタレにつけて食べると、これがなかなかいけます。
「乙な味、だね。特にこの尻尾、はじめて食べるんだけど、豚の耳のようにこりこりじゃなくって、とろとろの感じ、たまらない!」
「ねっとりでびろびろ。煮込んだ豚の皮、皮の裏側にこびりついた脂肪のとこも、なんともいえない味わいで。冬に備えてえさをしっかり食って、養分をしっかり溜め込んだ豚、これから、ますます旨くなりますから!」

 秋の訪れを告げる一品でありました。

2009/10/01

秋の訪れ!09年9月の『赤坂璃宮』銀座店の2

 そして「干貝青瓜餅/干し貝柱と胡瓜入り海老すり身の煎り焼き」が登場。
 干し貝柱、蝦のすり身、慈姑(くわい)、干し椎茸になんと「胡瓜」がその具材。それをつなぎでまとめ、小ぶりのお餅状に。さらに煎り焼きの「煎」で調理。さしずめ海鮮入り、胡瓜入りのミニ・ハンバーグの趣。
 私、この一品、初体験。 

 「「胡瓜」って、中国料理に使うんだっけ?」
 「うん、ほら、四川料理で豚肉の薄切りを茹でて、辛味のタレをかけて食べる「雲片白肉」ってあるでしょ?。あん時、胡瓜の薄切り、スライス、一緒に食べたことない?
  それから、胡瓜を叩き潰して辛味の醤油タレで食べる前菜、なんて言ったけ、う~ん、「麻辣黄瓜」。そうそう、北京の食堂なんかに行くと、胡瓜の前菜の冷製にいろんな味付けのがあるよ」

 「そういえば「酢豚」に「胡瓜」って入ってること、あるよね」
 「そうね。でも、「胡瓜」を炒めたる料理って、それ以外に知らないな」
 「でもないんですよ!「胡瓜」を厚めに切って、ほら、漬物の「胡瓜」の厚さぐらいに。それと「海老」を炒めた料理ってあるんですよ。

 おもしろいことに「玉葱」ね、それも、キャベツやレタスのように一枚、一枚、剥いでから「胡瓜」位の大きさに切り分け、一緒に炒めるの。すると炒めた「胡瓜」がいくらか「しんなり」して、「ぱり、さく」感、薄らぐでしょ?でも、味はすっきり。それから玉葱も火を通すとしんなり、「くた」っとなるけど、甘味を増すでしょ?どっちも、火が通って「しんなり、くた」のへたれな感じなのに、微妙に触感も違って、面白い組みあわせ」と、知ったかぶりの私です。

 そういえば、潮州料理に「胡瓜」をザクきりにして、海老のすり身とか併せて、ピザみたいに平たい円形に延ばし拡げて、お好み焼きみたいに煎り焼きにしたり、かき揚げみたいに油で揚げる「青瓜烙」って料理、お惣菜があったなあ!なんて別の話をしながら、ふっと思い出しました。

 袁さんによればこの「干貝青瓜餅」、広東地方の「家郷菜」ってことです。
 けど、潮州料理の「青瓜蝦烙」に通じものがある。「青瓜烙」のように、平たい円形や、でっかいかきあげ風じゃなくって、小ぶり丸めて、餅状に。そういえば海老のすり身にいろいろ具材を入れて、煎り焼きにする「蝦餅」は、広東料理にも、潮州料理にもあります。

 そんなことからすると「青瓜烙」、「蝦餅」のバリエーションじゃない?ってことに気づいたわけです。しかも、この「干貝青瓜餅」、焼き色しっかり付くぐらいに煎り焼きにしてあって、外側は、ぱりっとした歯触りのする「脆」の触感なのがグッドというかグレイト!

 海老のすり身、戻してほぐした干し貝柱、干し椎茸がおりなす甘味や旨味に、慈姑のさくさくの触感。さらに火が通って多少「しんなり、くた」のながらもどこか「ぱり、さく」感、すっきり爽快な瑞々しさを残してるのは「胡瓜」ならではの味、風味。しっかりその存在を主張。

 そういえば「胡瓜」も夏の名残物。
 それにしても、この「干貝青瓜餅」、火を通した胡瓜の味、風味、触感、その存在感が目立ちます。馴染みのないないものだけに、なんだかミョーな感じもする。ですが、すっきりの爽快感が意外だ!
 「家郷菜」、しかも「お惣菜」らしい一品ですが、調理、味上品です。ちょっと辛味のあるタレをつけて食べるうち、白いご飯がほしくなります。

 そうか、この「胡瓜」、生じゃなくって、浅漬けとか糠付けとか「ぱりぱり」の触感残した漬物の「胡瓜」なんか使うと、面白いかも。そういえば「沢庵」なんかもよさそうだ。実際、「沢庵」入りの卵焼きなんてあるから、そこに「海老のすり身を加えて………」
 いつの間にか《遠い目》。自分の世界に没頭してしまう私でありました。

2009/09/30

秋の訪れ!09年9月の『赤坂璃宮』銀座店

 おっといけない。今月も危うく月越えになりそうになった『赤坂璃宮』銀座店の月例報告。
 9月に入り『秋の訪れ!』、というわけで9月らしく夏の名残と秋らしい素材を使ったメニューが登場。
 
 まずは前菜、「廣東前菜盆/璃宮特製前菜」ということで焼き物を組み合わせた一品が復活。

 前中央が皮付きバラ肉の焼き物の「焼肉」、その後ろ、左から「叉焼」、伊達鶏の醤油漬けの「桶子豉油鶏」、家鴨の焼き物の「焼鴨」。その右、ちょっと離れて、鶏肉のレバーの焼き物の「蜜汁鶏肝」。

 「焼肉」の皮の「ぱり、さく」感、肉のしっとり具合。
 「叉焼」や「鶏肝」のタレの甘味の按配、「焼鴨」の皮の焼き具合、「伊達鶏の醤油漬け」のこくがあってひねた感じもする漬け汁がしっかり染み込んだ皮、その上に「葱」の微塵入りの付けタレがちょこんと乗っかっているのが面白い。そして、肉のしっとり感。

 以上、4品、見かけはこれまでの前菜と同じようですが、口して、唇や舌に触れる触感、噛み締めた時の皮や肉の質感、味付け、風味が、これまでと微妙に違うってことがわかります。

 お皿の左に添えられた野菜3種、「茄子」、「金針菜」に、なんと「はぐら瓜」。
 「はぐら瓜」は以前、埼玉、東松山の加藤紀行さんのを紹介したことがあります。「白瓜」の一種らしく、「白瓜」と「まっくぁ瓜」を交配させたもの、なんて話もあるそうで。その果肉、「白瓜」のような瓜らしいぱりっとした触感がありながら、瑞々しく潤んでいて、青い味、酸味と、なによりもフルーティーな甘さがあるのが特徴。

 今回の「はぐら瓜」、ぱり感があっても、青さ、青い味は過ぎて、瓜特有の清廉な味わいにちかく、甘味も控え目。 ほんの少しの「はぐら瓜」ですが、夏の名残。その存在をしっかり主張。

 3種の野菜は3様の味付け、切り方(包丁仕事ですね)による触感の差異、これまた、唇、舌に触れて、噛み締めてわかる、という寸法。奥の「海蜇(くらげ)」は、パリポリの噛み応え。しかもメリハリのあるきりりと引き締まった味付けと、そのパリポリ感がマッチング。

 この前菜、小さなお皿にそれぞれ一切れづつながら、それぞれの味、触感の変化が色々楽しめます!

2009/09/27

中秋節~月餅の3

 月餅については、一時、病み付きになり、中秋節の前後には四個入りの月餅の缶が山積み状態、なんてことも珍しくありませんでした。20缶とはいかないにしても、軽く10缶を越えるのはざらでした。

 どうして10缶を越える月餅があったのかと言えば、凝り性の私、評判の店の月餅を食べ比べてみたかった。ただ、それだけの理由です。蓮の実餡の「蓮蓉」も、オーソドックスな「紅蓮蓉」がいいか、「白蓮蓉」がいいか。「鹹蛋」は何個入りがいいのか。それに、小豆餡の「豆沙」、ナッツ入りの「五仁」、さらには「火腿」、「咸肉」入りなど、興味あるものはほぼすべて試しました。

 ということでの結論。まず「鹹蛋」の黄身の数ですが、8切れに切り分けて食べることを考えると、2個か3個入りがいいってことになる。もっとも、2個でも、場合によっては「鹹蛋」の居場所、ちょうど真ん中だといいんですが、そうじゃない場合、餡とのバランスが悪くなる。3個だと、まんべんなく「鹹蛋」がいきわたりますが、場所によって「鹹蛋」の分量が多くなる。

 さて、2個の「雙黄」にするか「三黄」にするか、迷うところです。ところが、店によって餡の良し悪し、というか、好みがある。それに「鹹蛋」、独得のクセがあるもの、いい店とそうでない店がある。ということで、店によって「紅蓮蓉」か「白蓮蓉」、それに「雙黄」か「三黄」を決めるという方針に決定。

 なんてことで、私の好みは「紅蓮蓉」の「雙黄」なら「恒香」、「三黄」なら「奇華」。「白蓮蓉」なら「栄華」ですが「蛋黄」にくせがある。小豆餡の「豆沙」なら「奇華」。「五仁」、「火腿」、「咸肉」なら「恒香」か「蓮香楼」、なんて、物好きもいい加減にしてくれ!と我ながら思います!

 実は「五仁」に「火腿」は「高陞」のがこれまで食べた中でベストでしたが、とうの昔になくなっちゃって、今や幻の味。そういえば、香港で広東料理店からファーストフードの店まで手広く経営する美心集団の「月餅」。

 最初の頃は、なんだかなあ?という印象だったのが、ここ最近「蓮蓉雙黄」の餡、及び蛋黄の質が向上!ファーストフード・チェーンが作る「月餅」もばかにできないもんだ!と関心したこともあります。

 香港のほとんどの広東料理店では、店独自の「月餅」を用意。本来は顧客に配るものとして用意。長い付き合いのある顧客には「月餅」が届きます。それが、やがて一般販売も開始。老舗の「月餅」に対して、それぞれ工夫あり。なんてことで、顧客でなくとも、色んな店の「月餅」が手に入ります。そういえば、香港の香港島店、九龍店でも「月餅」の一般販売を開始、なんて話を聞きました。
 
 以前、中秋節の頃に香港に滞在していた時には、部屋の中に各店の「月餅」が山積み状態。しかも、そのすべてを賞味して味比べ。なんて、私、凝り性というより、馬鹿丸出し、ですね。

 そういえば、一時、話題になったのがペニンシュラホテルの「嘉麟楼」の「迷你月餅」。毎年、必ずゲットしていたほどでした。ところが、ある時期を境に、質が落ちたんで入手を中止。最近はどうなってるんでしょうか。

 そんな広東料理店独自の「月餅」ってことでは、日本の「福臨門」のそれが悪くない。小ぶりのものと大きいもの、2種ありますが、大きいのがいいですね。日本で入手出来る「月餅」では極上、最上級のもの。その洗練された味、風味は格別です。とりあえず今年はまず小ぶりのものを賞味。大きい「月餅」が楽しみです。

2009/09/23

中秋節~月餅の2

 日本では一年中販売されている新宿の中村屋の「月餅」がことに有名。「月餅」と言えば中村屋のそれを思い浮かべられる方が今だに多い。ですが、中国ではこの時期限定のもの。しかも、地方によって特色があります。

 北方の北京、天津などの京式。中部の上海近郊、江蘇/浙江省では、前項の「蔡菜食堂」でも触れてきた通り、主要都市、隣合わせの土地でもそれぞれ料理に特色があるように、「月餅」もそれぞれ異なる。そのうち「蘇州式」の「月餅」を食べたことがあります。 さらに、私は未体験ですが、西部の四川、雲南あたりでも、独自の「月餅」があるんだそうで。

 そういえば、日頃、中国事情をご教示いただいている東山堂ベーカリーの原田さん。私が香港の師と仰ぐひとり、邱永漢さんと共同出資でパン、ペストリーの製造直販とカフェのQ’s Cafeを北京で運営。  今では日本式の美味しいパンやペストリーが話題を呼び、地元では評判の店。ですが、開店当初、北京の地元の人にはパンもペイストリーも馴染みがなく、苦労続き、だったそうで。

 ところが、中秋節の時期に、ひと工夫した斬新な「月餅」を売り出したところ、日頃のベイカリー&ペイスリー類よりも高い値段だったのにもかかわらず、好評を博し、それまでの赤字を一気に取り戻すほどの売り上げを記録、なんてことがあったそうです。

 ともあれ「月餅」となると、中国の人は目の色を変えます。伝統的なスタイルの「月餅」もさることながら、斬新な新趣のものにはすぐ飛びついて、競って手に入れようとする。値段の高さはお構いなし。むしろ、斬新、奇抜、しかも、値段の張るものほど、評判を呼んだりする。見栄っ張りな上海人はもとより、北京人も「月餅」に関してはそうだ、というのですから驚きです。

 はたして、本土の事情は詳しくは知りませんが、香港あたりでは、名月をめでながら食べるだけのものではなく、日頃、お世話になっている方への贈答品として欠かせない。言ってみれば日本の盆暮れの挨拶、お中元やお歳暮に匹敵するのもの。

 かつて庶民の暮らしが決して豊かでなかった頃も、その習慣は守られ、しかも、有名どころ、老舗の月餅を用意してお世話になった方に送ったそうです。といって、その出費、ばかりなりませんし、一時に支払うのは容易じゃない。

 そんなことから、毎月、少しずつお金を納めておいて、そのために準備する、なんて「月餅講」のようなものもあった、なんてのは、香港の食の文化史を紐解けば、明らかになります。

 さて、「月餅」。各地方ごとにそれぞれ特徴あり。とはいっても、基本は、ほぼ同じ。その皮は、それぞれに工夫を凝らし、なかには一年あまりかけて寝かせながら作る砂糖を主体にしたシロップ状の「糖浆」、「糖膠」と小麦粉などをまぜあわせたものが主体。

 そして、その餡にそれぞれ特徴がある。
 広東式でもっとも一般的なのは、香港にもその流れを汲む店がある広州の蓮香樓がその原型を生んだとされる蓮の実で作った「蓮蓉」の餡をベースに、家鴨の塩漬け卵の「鹹蛋」を加えたもの。

 ちなみに蓮の実の餡の「蓮蓉」には「紅蓮蓉」、「白蓮蓉用」、「黄蓮蓉」の三種があります。その違い、使う砂糖の種類によって違うようです。さらに具に加える「鹹蛋」が一個なら「蓮蓉蛋黄」、二個なら「蓮蓉雙黄」、さらに「三黄」、最も多いもので「鹹蛋」四個入りの「四黄」と、個数によって呼称が変ります。それに「蓮蓉」以外に小豆の「豆沙」、緑豆の「緑豆」などもあります。

 蓮の実、小豆などの餡以外に、木の実、干した果実を主体にしたもの、さらに、中国ハムの「火腿」や塩漬け肉の「咸肉」などを餡にしたものもあり。ですが、一般的に有名なのは蓮の実の餡による「蓮蓉」のもの。しかも餡はしっとり、潤んでいるのがその特徴。香港の月餅のほとんどは、以上、「広東式」に準じたもの。

 北方の「京式」では、干した果実、木の実を餡にしたもので、しかも、乾いた干し菓子風なのがその特徴。それが上海近郊の「蘇州式」では、皮が薄くて脆く、さくさくの「酥」状態。そうだ、日本の上海料理店で食べられる大根のパイ、あれに近い感じで、皮に焼き色がつき、餡に工夫があり。

 その見かけ、先に紹介した「潮州式」に近い。ですが、揚げるんじゃなくて、オーブンで焼いたものと直火焼きのものがあり、焼き色がついてます。餡は木の実、干した果実、小豆餡などによる甘味のある「甜月」、それに「火腿」、「咸肉」などの干した肉類を主体とした「咸月」がある。

私は香港の料理研究家の莉沙女史のお宅で御馳走になりました。他に蝦入りのものがあるってことで、干し蝦を餡にしたものかと思ってましたが、どうから蝦を加工したものらしいくって、私は未体験。

 そして「潮州式」の月餅。潮州は広東省の一部ですが、料理がそうであるように、独自のものがある。ことに「汕頭」のものが有名です。そんな潮州、厳密には汕頭の南、潮陽県の貴嶼地方の伝統的な餅、飽、菓子類を香港で製造、販売しているのが九龍城市の城南道にある「和記隆」。日常的な懐かしい菓子類などと同時に、婚礼をはじめ祭事に欠かせない菓子類を手広く販売。

 城南道にある販売店は、昔ながらのお菓子屋さん風の店構え。目の前にある潮州料理の「創發」に出向くたび、ついついのぞいてしまいます。

 日頃はおばあちゃん、おばちゃんがおやつのお菓子を買いに、とまあ近所御用達の風情ですが、盂蘭盆に入ってからは看板の「潮式」それも「百合酥餅」を求める人だかりで一杯。

 確か「百合芋泥餅」は、一年中、手に入れることができたはず。ですが、各種の「百合餅」がで早漏のは盂蘭盆に入ってからで、中秋節が終わるまで。最近では「鹹蛋」入りの「百合餅」を売り出してますが、どうやら昔ながらの「百合餅」の人気、評判大。 九龍城市におでかけの際、「創發」にでかけたついでに是非、のぞいてみてください。

 画像はいずれも「和記隆」のもの。パンフレットは勝手に借用なんで、問題ありの際には削除します。

2009/09/21

中秋節 月餅

 今年の中秋節は10月3日。いつもより遅めの中秋節。そんなわけで、今年は10月早々まで台風がやってきそう!なんて話、香港の人たちの日常会話で語られそう。実際、農歴(旧暦)は、その年々の季節をかなり正確に反映、なんてみんなよくいいます。

 中国本土では今年は国慶節と中秋節が重なることから、その前後の公休日を調節し、代替休日などを生んで史上最長と言われる8連休が実現。春節以来の帰郷客、さらには経済成長を反映した海外旅行客が続出、なんて話です。ということでは、それでなくとも昨今銀座、新宿あたりで目立つ中国人観光客が、一挙増大という事態になりそうで。

 ところで、中秋節といえば「月餅」です。「月餅」が生まれた逸話について・・・なんてのはネットの検索におまかせ。そして、中秋節の前後、我が家には各種の「月餅」が到着。

 まずは香港から長年の知人、Oさんが送り届けてくれた九龍の和記隆の潮州式月餅の「百合芋泥餅」。普通、月餅といえばオーブンで焼いたものが主流ですが、和記隆の潮州式月餅は揚げたもので「酥皮」、さくさくの皮、が特徴。そのため、持ち運びしてる間にさくさくの皮がもろもろに崩れ落ちます。

 日本にそのまま持ち帰るのは至難の業。危険物取り扱いの要領で、慎重に慎重を期して持ち帰ります。航空便で送ろうものなら、原型を止めぬ無残な姿に変わり果てて到着。
 その点、Oさん、抜かりなくパーフェクトなパッキングで送ってくれました。1個、わずかに一部裂傷があった以外、お店で売っているそのままの姿でのご対面。大感激です。Oさん、どうも有難うございます。

 本来は、ひと箱、一種、4個入りですが、Oさん、いつも店に交渉し、各種、一個ずつとりませて。それが、今回は、私の一番の好み「芋泥」だけの詰め合わせ!
 さくさくのパフィーな皮、しっとり、ねっとり、舌の上でとろける(まさに「綿」というにふさわしい)「芋泥」の餡の美味、しっかりと味わいました!  

2009/09/17

発見!寧波風味の家庭料理!「蔡菜食堂」は楽しくて面白くて奥深い!の6

 「雲呑」が来る間にボードを睨み、次なるメニューを算段。
 「黒醋のスペアリブ」がないなら「豚レバーの炒め」にしようか。
 それより野菜を素材にした料理かな。
  気になるのは「黄ニラとおもち炒め」。
 
 「これ「韮黄炒年糕」でしょ?「年糕」の炒めもの?」
 「そうそう「トック!」という王さんの話に、私はドギマギ。
 「え!?「トック」?韓国のお餅なの?「年糕」じゃないの?」。
 「そうそう、「年糕」よ!」 なんて聞いて、ひと安心。

 そうか!「年糕」と言うより、韓流以来の韓国料理ブームからすれば、「トック」の方が、わかりやすいかもね。とすると「トッポギは?」なんてツッコミを入れたくなる関西人の私ですが、王さん(「寧波系」)上海人ですから。

 「調理、味付けは「寧波風味」なんでしょ?「寧波」の名菜のひとつですよね「炒年糕」は!」と、いつも通り、私は知ったかぶり!
 「あの「里芋と葱油炒め」って「葱油荔芋」だっけ?」
 「いや、こう書くの!」と、私のノートの「葱油荔芋」を「葱油芋奶」と訂正。

 「そうか、「荔芋」だと「タロ芋」になっちゃうか。里芋の「芋奶」ね」。
 「そうそう!」と王さん。
 「う~ん、今日は一人だしな、時間も時間だし、2品は食べきれないかな……」
 「少なめにすることもできますよ!」と王さん。
 「でも、一品にします。「葱油芋奶」にします!」

 「里芋と葱油の炒め」は中国の家庭料理の定番的なメニューのひとつ。地方ごとに特色があって、ビミョーに調理、味付けが違ったりしますが、有名なのは浙江地方のそれ。ことに寧波の渓口、そうです!蒋介石と王さんのお母さんの故郷ですが、その渓口の奉化は、里芋の一種である「芋奶頭」の名産地。それに奉化の「芋奶頭」は評価が高い。

 奉化の「芋奶頭」を素材にした「奉化芋奶頭」は浙江省寧波の名菜のひとつに数えられるほど。それに「葱油芋奶」は、代表的な郷土料理、家庭料理。寧波風味を特徴とする「蔡菜食堂」では、本場そのままの調理、味付けのものが食べられる!と、期待も膨らみます。

 「葱油芋奶」と言えば、思い出すのは六本木、TV朝日通りの突き当たりの中国飯店。上海料理が看板の店ですが、香港、上海の食堂で食べられるような郷土料理、家庭料理のはそんなになかった。徐さん。愛想が良くって、いろいろな注文に応じてくれるんですが、たいていピントハズレ。そんな時「こんなのもあります!」ってことで出してくれたのが「葱油芋奶」。
 そんなことから、中国飯店に行く度に「排骨面」ととともにリクエスト。

 「蔡菜食堂」の「葱油芋奶」。 かつて中国飯店で食べていたそれとは違いました。中国飯店のそれは、油濃く、塩味もしっかりで濃厚な味。日本の一般的な中国料理店で出会うことの多い、味が濃くって、ぼってり、どってり、こってりの重さが特徴。

 それからすると「蔡菜食堂」の「葱油芋奶」は、すっきりと爽やか。優しくて、穏やかです。しかも、塩味、やっぱり、味の要。ですが、例えば前菜の料理の数々や「雲呑」のスープに比べれば、きりりと味を引き締めるような使い方、印象でもない。塩味は利いていても、すんなり、すっきり。

 それに油を使ってあるのに、脂っこくない。しつこさ、くどさがない。油を使いながら、その効果、効用を、しっかり見極めたような感じの調理、味付けです。それも、プロのそれ、というよりも、家庭料理のそれ、いわばお袋の味的な、工夫や技がある。

 それが証拠に、口にして、咀嚼して、喉奥から鼻筋に抜けていく香りが印象的。しかもその味付け、メリハリを利かせた「料理人の技」的な大むこうを唸らせる様なこれ見よがしなものじゃない。ま、率直に言っちゃえば、だしが弱い。家庭で作るだしの味に近い。ですが、それが、素直で実直、素朴で飾りっ気がなく、無理のない自然な味、風味を生み出してます。丁寧に、丹念に、真心こめて作った家庭料理のそのままの感じ。

 ねっとりとしていて、ホクホク。じゅわと味が滲み出る芋のうまさは格別です。 それも甘辛の芋の煮っころがしのような、田舎っぽさ素朴さをむき出しにしたものじゃない。かといって洗練の技というのでもない。

 心と体に優しい味、風味。というだけでなく、そこにはしっかり何かを見据えた跡、気配、知的な観察による工夫と努力がある。子供の頃に馴染んだ味をそのままに再現、ってことだけじゃなくて、そのひと味の工夫に蔡さんらしさ、王さんらしさがある。二人の結晶、見事な成果です。なんとも奥深い!

 ご飯と一緒に食べたくなって、白いご飯を注文。評判の焼きそば、炒飯は次回回し。こんど何人かで寧波風家庭料理によるコース料理、頼むことにします。その為に、どんな料理が他にも可能か、しっかり、下調査して質問攻めに!

 ともあれ、念願の「蔡菜食堂」デビューを果たしたのでありました。

2009/09/11

発見!寧波風味の家庭料理!「蔡菜食堂」は楽しくて面白くて奥深い!の5

 「雲呑」。見かけはぷっくりふっくらの「雲呑」。
 れんげで掬って、熱、熱に用心しながら頬張ります。
 つるんと滑らかな舌ざわりの皮(は、どうやら自家製じゃない感じ。というのも皮が均一)。ですが、雲呑の包み方に年季とワザ、というよりも慣れた日頃のやり方通り、そのまま、なんて感じなのが面白い。

 噛み締めれば、餡はねっとり、じゅわと肉汁が滲み出る。広東式の「鮮蝦雲呑」が馴染みの私は、意表をつかれた感じ。
 そう、広東式の「鮮蝦雲呑」だと、蝦のぷりぷり感が、最初に来ますから。

 つまりは餡の素材、蝦と肉の分量の違い。それに、餡の調味、練り方に工夫ありということになる。それに、香辛料が鼻腔をくすぐります。香味野菜も興味津々。生姜のひり味なんかも関係ありそう。ですが、いずれも押し付けがましくない、その按配が憎いです。
 「ね、これ「鮮蝦雲呑」ですか?」とおかみさんの王さんに尋ねました。
 「そうじゃなくって……」
 と、我がノートの「鮮蝦雲呑」の「鮮蝦」の間に「肉」の文字を書き込みました。
 「そうか!「鮮肉蝦雲呑」なのか!」。なるほど、蝦のプリプリよりも、餡のねっとり加減、肉汁が滲み出てくるワケはそんなところにあったのだ!と納得。

 私は未体験ですが「蔡菜食堂」の「餃子」。ネットなどでは評判の品。「鍋貼」の焼き餃子にしても「気をつけないと熱い肉汁が飛び出しますらから要注意!」なんていう書き込みにも納得。となると「餃子」も試したい。それよりも「湯包」を入り焼きにした「生煎包」が興味津々。

 そんな「雲呑」のスープ。
 「私は、雲呑をそのまま茹でたのが好きなんだけど、主人が作るのは「もみじ」で取っただしを使ってます」とおかみさん。

 そんな鶏の「もみじ」で採っただし。極上ってわけじゃありません。鶏肉そのものが生み出す濃密で濃厚で、ちょっとしたクセのあるだしってわけじゃない。むしろゼラチン質、コラーゲンが立っているような感じ。

 ですが、丹念にとられていて、素朴、純朴、すっきりとしていて清廉。そんなだしを塩で味付け。だしの弱さを塩味で加味。もっとも、塩味に弱い私にはいささか塩味が立つ濃い味の印象。おまけに、ちょいと垂らしたごま油の甘味、風味が利いています。

 もっとも、その塩加減、塩梅ですね、それにごま油の使い方、日本の中華のそれとはなんだか違う。明らかに違う。スープをきりりと引き締め、塩味が立つような味加減の「塩梅」。というあたり、やっぱり「寧波風味」が顔を覗かせてるってことでしょうか。

 それより、塩使い、その塩梅、使い方のセンス、日本人とは全く違います。それはプロの技というよりも、中国中部から南方にかけての家庭料理でのそれ。ほのぼのとしてなごめる味わいです。それこそ「蔡菜食堂」の人気の秘密、なのだと納得しました。

2009/09/09

発見!寧波風味の家庭料理!「蔡菜食堂」は楽しくて面白くて奥深い!の4

 隣の席で、ひとりビール手酌のアラサーリーマン兄さん。
 私と蔡さん、王さんのとのやり取りに、怪訝顔。
 というより、ただただ唖然、なんだかワケもわからず、あきれ返ったような面持ち。

 どうやら、おつまみ盛り合わせに「骨付き蒸し鶏」はすっかり平らげ、次なる一品、どうしようかと思案顔。
 「ここ、よく、お見えになるんですか?」と私。
 「ええ、ここから歩いて一分のところに住んでるもんで、ちょくちょく」
 「こういう店、中野とか、この沿線にあります?」
 「ない……ですね。ここみたいな店は」
 「って、この味、こういう感じの料理?」
 「そうです。ありそうで、ないんですよ、この店のみたいなとこ」
 「うらやましいなあ。私も近くに住んでたら、しょっちゅうきますよ。
 あの、ここね、びっくりしちゃたんだけど、「寧波」の味なんですよ」
 「………………ン?????」
 「いえ、あの「寧波」てのはですね……ま、あの上海の下で……」
 「………………はぁ?????」

 そこに王さん登場
 「次、どうします?」とアラサーリーマン兄さんに。
 「あの、黒醋のスペアリブあります?」
 「ごめんなさい!今日はなくなっちゃった。「青椒肉絲」なんかどうですか?ほら、いつもおいでになっても、ビール飲んでらして、ご飯とかあまり召し上がらないし、野菜たっぷりってことで!そう、ピーマン多めにしたのなんかどうかしら。」と、薦め上手なおかみさんの王さん。
 「そうですね。じゃ、それで!」

 キッチンに向かって注文し、再びわが席に戻ってきたおかみさん。
 「あの、今日「香菜」たっぷり入った雲呑、なくなっちゃったんだけど「海老の雲呑」なら出来ますが、如何です?」なんて、ほんとに薦め上手。

 海老の雲呑なら「鮮蝦雲呑」。私が即座に思い浮かべたのは香港、広東式のそれ。おっと「蔡菜食堂」は上海の家庭料理が看板だ。しかも「寧波風」というのが頭をもたげてきて興味津々。
「それ、いいかも!食べます!」。

 「それより、さっき話に出た「黒醋のスペアリブ」。この店で評判なんですね。それって「糖醋排骨」?」。
 「そうですよ!」。
 「「排骨」の料理っていろいろあるでしょ?上海の周りの地域でも違うし。ほら「無錫排骨」とか」
 「そうね、あれは「排骨」を甘辛い味付けで、柔らかくなるまで煮込んだ料理ね。うちのはあれとは料理方法も違って「黒醋」で味付けした「糖醋排骨」」。

 なんてことで、上海及びその周辺のそれぞれに特徴ある「排骨」や豚肉の料理話で盛り上がります。
 どうやら塩漬け豚を使った「腌篤鮮」なんてのも期待出来そうだ。

 そして「雲呑」が登場!

2009/09/08

発見!寧波風味の家庭料理!「蔡菜食堂」は楽しくて面白くて奥深い!のおまけ

 「寧波」は中国中部、浙江省の北東部、杭州湾をはさんで上海とは対岸に位置する所です。かつては上海などよりも港湾都市として開け、日本とは唐時代から交流があり、元寇、倭寇、さらには日明貿易の拠点にもなったところ。もっとも、19世紀末から20世紀初頭、交易都市として上海がとって代わり、都市としてた時代、多くの寧波人が上海に進出。上海の都市建設、繁栄に関わってきた、なんてこともあります。

 そんな上海の食、上海料理については、これまでにも触れてきたとおり、都市建設の過程で上海周辺から流入してきた労働者への簡易食、と同時に、周辺各地の特徴ある料理が持ち込まれ、形成されてきた、という歴史があります。

 簡易食の代表的なものは「上海小吃」として語られる「湯包」、それに生湯葉の「百葉」、小麦粉から作られた「面筋」。それにかん水などを使わない麺類の「饂飩」などがそれ。

 「湯泡」というのは餡入りの蒸し饅頭で、スープ入りの「小籠包」はまさにその代表的なもの。ですが「あれ(小籠包)は「南翔」のもの。断じて上海の「小吃」ではない!」とし、それより、餡入りの「湯包」、それを煎り焼きにした「「生煎包」こそが上海の「小吃」だ!」なんて主張する向きも。

 そんな上海の都市建設を担う最中に発達し、発展した簡易食も、多くは上海周辺の人々が上海にもたらした地方食を土台に誕生したもの。と言うことに関しては、異論の向きもないようで。同時に、上海周辺の地域から、それぞれ独自性のある食文化が上海に持ち込まれ、そうした料理店が相次いでうまれて、混在。それが、いわゆる上海料理を形成した、ということになるわけです。

 それにしても、面白いことには、上海周辺の地域、たとえば寧波が属する浙江省に点在する都市ごとに、その距離、わずかなものながら、それぞれ独自性のある食文化を形成。
 そうです、ほんの少し隔たりがあるだけで、まるっきり調理方法、味付けが違ったりするからです。

 たとえば、浙江省、最大の都市は杭州。洗練された独得の調理、味付けによる食文化がある。さらに、温州や紹興酒の本場である紹興、金華火腿で知られる金華など、それぞれ特有の食文化が存在という具合。

 さらに、上海周辺の地域ということでは江蘇省の存在も見逃せない。かつて都だった南京、塩を中心に物流の中心地として栄えた揚州、さらに、蘇州、無錫、醋の産地として知られる鎮江など、これまた、それぞれに特色のある食文化が存在。

 という中にあって「寧波」は、沿岸部に存在することから、海産物を素材する歴史があったこと。長江の河口周辺の地域に特徴的な醤油、味噌などの醗酵調味料を味つけの主体にしたこと。

 さらに、江蘇省に点在する都市などで嗜好された砂糖などによる「甘味」は控え目。どちらといえば塩味主体の料理が発達。それに、素朴でひなびた味、というのもその特徴に挙げられるかも。というは、私の個人的な見解も加味してのものですが。

 強引な例えですけど、かつての江戸、現在の東京の庶民の味、一般的には醤油に甘味が加わった甘辛の味がその典型じゃないと、と言う印象。しかも、昆布ではなくてかつおだしが主体。そば汁こそがその典型、ですよね。

 そういや、過日、神保町の鮨屋の若い親方、おかみさんとの話。 ひいきにしてる油揚(お揚げ)があって、川越の小野食品のそれ、なんだそうで。しかも、胡麻油仕上げのみ、花生油が入んないのが好みなんだとか。

 それはともかく、その油揚げ(お揚げ)でお稲荷(あ、稲荷鮨です)を作るとき、煮含めるだし、かつおだしだけ!なんて話を聞いて、驚きました。なんせ、神戸と大阪出身の我が家で、稲荷鮨にするにしろ「きつねうどん」の具にするにしろ、昆布とかつおのだしで煮含める、というのが基本ですから。カルチャー・ショック。

 話戻して、かつての江戸、現在の東京を支える労働力などの源になった簡易食、それに日常の食の味、東京と関東周辺のそれとはいささの差異があるようで。
 江戸の、現在の東京の一般的な庶民の味、その嗜好、傾向は甘辛味。東京周辺の関東地方の味、風味って、醤油と同時に味噌などがふんだんに使われ、甘味よりも塩味が立っていて、素朴、朴訥な趣がある。

 「上海」の料理と「寧波」の料理、その味、風味の違いは、そんな風に例えられるのではないか、なんて思ったりして。

2009/09/07

発見!寧波風味の家庭料理!「蔡菜食堂」は楽しくて面白くて奥深い!の3

 「ね、ね、蔡さんもおかみさんの王さんも上海生まれの上海育ち、なんですか?」
 「そう、二人とも。私は、淮海路の近くに住んでたのよ!」とおかみさん。
 「そうですか。ですけど、この「三鮮烤夫」の煮込みの味付けとか「五香燻鯖魚」の味付け、調理。それにピーナッツの揚げ物の「炸花生」なんですけど、上海っていうよりも、なんだか「寧波風味」なんて感じでなんで……いや、その「味道」が!」。

 「エ!?「寧波」って、私も主人も、両親は「寧波」の出身なんだけど。ここの料理はふたりのお母さんの味。「寧波の味」て言われれば、確かにそうですけど。でも、なんでそんなことがわかっちゃうの?」

 「いえ、あの、味付けとか、調理法とかもそうだけど。ほら、醤油味しっかりだけど、上海系の料理みたいに甘味が強くなくって、むしろ、塩味が立ってるでしょ?だからですけど、違うのかな?」

 キッチンに駆け出したおかみさん。
 「ね、ね、「寧波」の味がするって!」と、蔡さんに報告の声が聞こえます。
 やがて蔡さん、キッチンから登場!
 「なんで、そんなことわかるの?この「三鮮烤夫」にしても「五香燻鯖魚」にしてもそうなんだけど、特にピーナッツの揚げ物ね、これ、特別なのよ。工夫してるの」と、蔡さんはにんまり。

 「いえ、あの、ほんと、味付けが「寧波」風だから!」
 と、蔡さんの勢いに気圧されながら後ずさり、なわけないですけど。当たりだったわけです。

 それより「寧波風味」の「家常菜」、おふくろの味に出会えるなんて!
 「すげえいい店みっけ!」ってことで、嬉しくなっちゃいました。

 「実はうちの奥さんのお母さん、「寧波」の「渓口」の出身でね。蒋介石の出身地なんですよ。それに、奥さんのお母さんのお兄さんは、蒋介石と同級生!」
 なんて、いきなり「寧波」と「渓口」と「蒋介石」話が!

 なんだか、すごいことになっちゃった!

2009/09/06

発見!寧波風味の家庭料理!「蔡菜食堂」は楽しくて面白くて奥深い!の2

 ひと皿にびっしり、数々の前菜がひしめき合うようにてんこ盛り。
 とりあえず行列に並んで、自分の番になり、焦りながら目の前にある料理を手当たり次第、皿の上に並べてあっぷあっぷ、なんてビッフェパーティー初心者的趣のレイアウト!
 飾りっ気も、気取りもなし。家庭料理そのままの盛り付けなのが微笑ましい!
 画面中央が「アンチョビカレーポテトサラダ」。中国料理名は聞きそびれましたがこの店の人気メニューらしくって、「あ、それそれ、そのポテサラ、とっても美味しい!」と、勘定を終えて店を去った隣の女性グループの最後の一言!

 その左隣が「(嫩)酔鶏」。この店の鶏の料理、ボードには「骨付き蒸し鶏」というのがありました。
 「ね、これ、どういうのかな?「白切鶏」?」と尋ねたら「そうそう!」。そのつもりでいたら、皿に載かっていたのは紹興酒風味の「酔鶏」でした。
 それから、時計まわりに木耳(キクラゲ)、揚げ凍み豆腐、ピーナッツを煮込んだ「三鮮烤夫」。次いで、鯖の五香風味の揚げ物の「五香燻鯖魚」。それから漬物と烏賊の和え物の「咸菜烏賊」。さらに「榨菜」、ピーナッツの揚げ物の「炸花生」。

 まずは「三鮮烤夫」。そのうち揚げ凍み豆腐の「烤夫」を食べて、思わず「ン!?」。
 しっかりの醤油味。しかも、甘味が控え目。塩味が立ってます。きくらげの味も同様。ピーナッツの味の加減、風味が実に「鋭い!」。
 
 それから「五香燻鯖魚」。下拵えがしっかり。香辛料、調味料が利いています。それに揚げすぎ!なんて思われかねないぐらいのしっかりの揚げ具合。ところが、それが香ばしさを増す。「鯖」の風味を残しつつ、生かしつつ、「鯖」特有の脂のクセを抑えられてるのが効果的で、実に憎い。

 しかも醤油が効果的に使われ、甘味は控え目。むしろ塩味が立って、酒のつまみ、ご飯のおかずにうってつけ。酒を選ぶとしたら、とろっとしたぬめりのある「紹興酒」よりも、きりりとした「白酒」、それも「ニ鍋頭」などの焼酎こそがうってつけ。

 続いては「咸菜烏賊」。これについてはちょっとしたやり取りがありました!
 「ね、これ「いか」でしょう?だったら「咸菜魷魚」じゃないの?
 「いや「魷魚」じゃなくて「烏賊」でいいの!」とおかみさん。
 「それと、このお漬物なんだけど?」 
 「あ、それは「咸菜」!」
 「でも、「雪菜」でもなくて「芥菜」でもないし、塩漬けでひね味があるんだけど、なんだか「高菜」の漬物みたい!」
 「あ、それ「野沢菜」!」なんて話に、ズル!
  それからピーナツの揚げ物。ただピーナッツを揚げてあるだけでなく、その下拵えというのか、味付け、揚げ加減が絶妙です。このピーナッツの揚げ物に「苔菜」が一緒にあれば、文句なし…… 
 なんて思い浮かべながら「もしかして?」 と思い当たることがありました。

2009/09/05

発見!寧波風味の家庭料理!「蔡菜食堂」は楽しくて面白くて奥深い!

 某日、中野サンプラザでJEROのファースト・コンサート。
 その帰り、念願だった蔡才生さんの「蔡菜食堂」初訪問。
 随分前から「中野においしい中華の店、あるんですよ!」という噂を耳にしてました。
 そんな話を教えてくれた知人が「「dancyu」に紹介されましたよ!」ってことで、見たらびっくり、阿佐谷から数寄屋橋に場所を替えたバートランドでホール担当だった蔡さんじゃない!

 和田さんからも「蔡さんが店を出した!」なんて話を聞いてましたが、何人もの人からの「絶対にお薦め!」なんて話に興味深々。とはいえ、中野に行く機会ってそう滅多にない。山下達郎のコンサートに中野サンプラザに行った際、帰りに立ち寄ったものの、最初は満席、2度目は休日。なんてことで三度目のトライ。

 ところが、玄関の扉を開ければ、満席!
 「今日もだめか!」とあきらめかけたところ
 「あ、私達、お勘定終わったら出ますから、ちょっと待ってて!」なんて声が。
 「ま、ここ、一席あいてますから、待っててください!ここの料理、ほんとに美味しいんですよ!」
 「そう「鶏レバーのペースト」、バードランドより、もっと美味しいから!」 なんて話の展開に、私は思わずどっきり!
 蔡さんに「鶏レバーのペースト」を伝授した和田さんが聞いたら、なんて言うか!、

 「あ、そですが、あのバードランドの「鶏レバーのペースト」って、ヒントになったのがあって、吉祥寺にね・・・・」と言いかけたところ 
 「あ、「竹爐山房」でしょ?」なんて話の展開に「をいをい!」状態!
 「あ、そうか、もしかしてここの御主人とは昔からの知り合いでらっしゃるんですか?」
 なんて逆に質問されて
 「いや、あの、一応は顔見知りで」としどろもどろで、冷や汗だらだら。なんでまた?

 ふと隣をみると、瓶ビール、一人手酌のアラサーリーマン兄い。
 目の前にはつまみの皿。美味しそうなんで、思わず 「あの、それ、なんていう料理で?」と初対面の見知らぬ人でも話かけちゃう私です。
 「蔡菜食堂」では、白いボードにマジック書きで今日のお薦めのメニューが。

 ですが、全部、日本語での料理紹介(当たり前、ですよね)。
 ところが、私、日本語で書かれた中国料理のメニューだと、調理方法とか味付けとかあまりに簡単な表記すぎて、具体的な料理な内容が理解できない、想像がつかないものがある。中国語による表記じゃないと……ほんと、やな中国料理かぶれの知ったかぶりオヤジです。

 サービス担当は蔡さんのおかみさんの王梅玉さん。
 「あの、あそこに書いてある料理、こういうのですか?」
 気になる料理を片っ端から手持ちのノートに漢字で表記。
 「ン!?」なんて表情のおかみさん。
 そうか、私が書いたのは繁体字。簡体字でないと話がすすまない。焦ります!

 そこに蔡さん登場。
 「じゃ、あの、前菜、少しずつ、特別に色々、一皿に盛るから、いいでしょう?それからメニューを決めたらいいじゃん!」
 なんて言葉に、ほっとひと安心。

 で、お酒。
 リストにはビール、紹興酒、ワイン。
 好物のグルナッシュが、でも「オーストラリア?」、なら、ちょっと荒々しいかも。

 やっぱり中国の白酒がいい。
 キッチンに引っ込んだ蔡さんに代わったおかみさんに
 「あのう、白酒、ないかな?」と、リストにない酒を、無理やり強引にリクエスト。
 ほんと、やな中国酒かぶれの知ったかぶりオヤジなんです、私。

 しかも、上海の家庭料理が看板の店に来て、紹興酒じゃなくって、白酒の有無を尋ねるなんて、言語道断、ってやつですか?でも、料理にあわせて紹興酒。甕入りとかじゃなくって年代ものならいいんですけど!なんてキザですよね。知ったかぶりもいい加減にしてくれ!と、我ながら思います。

 「前菜は、やっぱり「白酒」がいいから、くぃっと一杯いきたいし!」
 「でも、白酒は出ないし、ねえ。ちょっと待って、主人に聞いてみます。もしかして「汾酒」があったかも」
 と、おかみさん。

 そこに再び蔡さんがキッチンから登場。
 「これしかないんだけど、いい? 私が普段、一人で飲んでる酒!」。
 なんと「二鍋頭!」、ではないですか!
 「二鍋頭酒」は高粱を元にして作った酒で北京はじめ北方の庶民に親しまれてるもの。「孔府」なんかも、親しまれてます。

 「え!上海人なのに、北方の焼酎、飲んでるわけ?いいです。これ、私の好物ですから。文句ないです、これこれ、これがいいです!でも、こんなの飲んでるの?」。
 蔡さん、結構、お酒がすきなのかも!
 「それより、この店に常備するようにしてよ!」
 初めて訪れたのに、あつかましくねだる私でありました。

2009/09/04

夏・真っ盛り!09年8月の「赤坂璃宮」銀座店の7

 「鳳爪排骨飯」を終えて、食事は終了。あとはデザートの「甜品」を待つばかり。
 いつも通り、トレーに各種のデザートが並べられ、好みのものをオーダー。
 その前に「かぼちゃ!」が登場。

 「ン!?」。メニューには「家郷小菓子」とあるだけ。かぼちゃを形どった掌の上にのっかりそうなミニサイズの「かぼちゃ」です。

 思わず、ひと齧り。ねっとりの触感で、口あたりは柔らかく、噛み締めると「かぼちゃ」の素朴で自然な甘味がする生菓子。その触感は「ういろう」、もしくは「すあま」系で、ねっとり。ですが、甘味がしっかり。

 橋本さんにその名前、正体を尋ねたら、名前は「南京水晶包」。「皮には白玉粉・抹茶・ヤンバル糖。餡は、南瓜・砂糖・バター・コーンスターチを使用しているそうです」との答え。

 甜点心の種類、いろいろあります。日本で知られているのはそのごく一部。ですから「中国料理ってデザートが充実してないんだよね!」なんていう人は、その実態をご存知ない知ったかぶり。これまでいろいろな甘い「甜点心」食べてきましたが「かぼちゃ」を餡に使い、しかも、かぼちゃ型に仕立てた「南瓜水晶包」は初体験。

 かぼちゃの素朴な甘味、それに、中国菓子らしく油を効果的に、というのが、日本の生菓子とは違うところ。これ、バターじゃなくってラードを使ったら、ますます香港、広東ローカル味になるんじゃないかと。

 そうか、これも「赤坂璃宮」銀座店に7月以来着任の点心長、久保田さんの仕事ですね。
 譚総料理長のもと、広東地方の家郷菜を得意とする袁さん、焼き物の高山さん、点心の久保田さんが加わった「赤坂璃宮」銀座店のこれからの展開、楽しみです。

2009/09/03

夏・真っ盛り!09年8月の「赤坂璃宮」銀座店の6

 「八寶冬瓜盅 五目入り冬瓜の器入り蒸しスープ」。
 「紅焼活水魚 すっぽんの醤油煮込み」。
 ビッグでグレートな料理が続いた後に登場したのが「鳳爪排骨飯 鶏足とスペアリブのせご飯」。

 「わお!これまたすごいじゃん!」
 何がすごいって、香港の日常の食がそのままテーブルに運ばれてきたからです。 なんていっても、香港の若い人には無縁なものかも。

 そう、かつて香港で、朝飯を食べに庶民が集う店に行けば、飲茶の点心とともに必ずあったのが、この種のご飯。今回は人数分、ひと鍋での盛り付けです。

 普通は小ぶりの丼鉢サイズの「燉盅」に一人分の量で登場。いわば香港版「丼飯」。
 どんぶり鉢状の器に、ご飯がたっぷり。その上には今回登場した具材そのまま「排骨」や「鳳爪」(早い話が鶏の爪先、通称「もみじ」)などを乗っけ、蒸したり、炊いたご飯が供されてます。今でも昔ながらの飲茶を提供する店で、見かけることがあります。

 「あ、こういうのが丼鉢に入ったご飯もの、チャイナタウンに朝食や昼、喰いにいった時にあったわ!」なんて声もあがります。
 「香港とか広東地方の料理店や飲茶の店の定番的な料理のひとつです。 こういう丼飯を食って、しっかりと腹ごしらえ。肉体労働に従事していた人の日常食。

 こういう丼飯でなければ、飲茶の点心でも「鶏球大包」という具入りの蒸かし饅頭があってね。鶏のぶつきり、家鴨の塩漬け卵の「鹹蛋」、椎茸なんが具材で、ともかくボリュームたっぷり。

 昔は赤ちゃんの頭ぐらいの大きさで、私が香港に通い始めた頃、油麻地や旺角、それに香港島の西環や上環、北角にある昔ながらの飲茶の店には、必ずありました。けど、だんだん小ぶりのものになっちゃって」。 ひとりづつ取り分けられた「鳳爪排骨飯」。
 その色あい、香りが食をそそります。
 スペアリブの「排骨」は、黒豆味噌の「豆豉」、大蒜、香味野菜などで作った「豉汁」を味付けにつかった伝統的なスタイル。豚肉から滲み出る油の甘さ、香り、風味が格別で、「豉汁」の塩味とマッチング。

 「鳳爪」はライト・ブラウンの色合い。ってことはたまり醤油の「老抽」なんかが使ってあるのかも。これまた、見かけは伝統的なスタイル。

 ですが「排骨」も「鳳爪」も、塩味、それに、醤油味が少々立った濃い目の味付け感じ。街中の大衆的な広東料理店での味に近い。なんてところがいつもの袁さんらしくない。 とはいえ「排骨」も「鳳爪」ともに、街中の店とは違うひと味、ふた味の工夫があり。

 それにご飯、油、だしを吸い込んでいるのにも関わらず、パラパラにほぐれていて、ドライな感じ。日本の粳米とは明らかに違う触感、噛み応え。糯米?にしては、粘りっ気がなし。はたしてなんだろう?
 以上、疑問を橋本さんに尋ねました。

 まず「排骨」は「豆豉」の「豉汁」を使ったもの。
 「鳳爪」はオイスター・ソースの「蠔油」に、「柱侯醤」、北京ダックを焼く時の下拵えの調味料の「片鴨醤」も加味、だそうで。 そうか、それが一味違う、こくと風味の元、だったのですね。

 それにご飯、「タイ米」を使用。日本の粳米と味、触感が違うのも当然だ。」 それより、会議の途中で、電話。ということで、部屋を抜け、終わって、部屋に戻ってみたら、部屋の中の匂いは、香港の広東料理店そのもの。それも街中の店に紛れ込んだような錯覚に陥ったほど。

 それにしても「鳳爪排骨飯」、香り、風味の強烈さ、そのインパクト、香港の広東料理店の、しかも大衆的な店の朝や昼の飲茶のそれ。楽しくて、嬉しくなります。と同時に、その味、ちょいと油の加減が大目なのと、味付けが濃い目、なのがなんだか気になる。

 いつもなら洗練された上品な仕上げにする袁さんが、あえて香港のくだけた大衆的な店の味に近い直接的な味、風味にしたのは、何故?

 その理由、橋本さんに尋ねて氷解。
 というのも「鳳爪排骨飯」、いつもは締めくくりの「面・飯」は本来は鍋が担当。それが今回に限り、この7月から「赤坂璃宮」銀座店の点心長に就任した久保田さんが担当、だってことでした。香港の店でも修行体験あり、という久保田さん、地元のあの味、病み付きになったんでしょうね。

 ついでに、焼き物の担当。先月から「赤坂璃宮」赤坂店の高山さんが銀座店に移動。
 なんてことで、先月、今月の焼き物の違いにも納得。
 橋本さんに確認して、ここで書くなんて、なんだか後出しじゃんけんみたいなことになっちゃいましたが、その変化、ビミョーに察知、っていうのは一応、先に橋本さんに尋ねた際に、報告済です。
 ともあれ香港の飲茶気分をしっかり堪能。ですが、それだけじゃなかったのです!

2009/09/01

夏・真っ盛り!09年8月の「赤坂璃宮」銀座店の5

 次いで登場したのが「紅焼活水魚 すっぽんの醤油煮込み」。
 メニューに「八寶冬瓜盅 五目入り冬瓜の器入り蒸しスープ」とともに、この料理名を見つけて、私は興奮。すっきり清廉な味わいで体内の熱を放射し、すっきり爽やかな気分にしれくれる「八寶冬瓜盅」もいいですが「紅焼活水魚」はそれを凌ぐ私の好物。

 すっぽんは滋養効果のある食べ物、だってことは多くの方がご存知のはず。精を付けるには格好。それに、甲羅の端っこ縁側の部分はコラーゲンたっぷりで美容効果は絶大。とはいえ、その形態から遠慮されがち。

 それにすっぽん、体を温める効果大ってことから、冬の料理とされがちですが、関西あたりでは夏場に精をつける料理として一般的、なんて話、以前にもしたような。そうです、スッポンを丸ごと料理した「まる鍋」はその最たるもの。とはいえ、値段のはる高級な素材ですから、そう簡単には手が出ない。

 すっぽんを素材にした代表的な広東料理といえば、やはり「紅焼水魚」。すっぽんの醤油煮込みです。はたせるかな「赤坂璃宮」銀座店、袁さんの手になる「紅焼水魚」。その基本を守りながら、独得の工夫がありました。

 素材のすっぽん、支配人の橋本さんを通じて確認したところ「最近TVなどでも話題になってる佐賀の「はがくれすっぽん」」とのことでした。そんなすっぽんのぶつ切り、さらには皮付きバラ肉の焼き物の「焼肉」、干し椎茸、筍。いずれも「紅焼水魚」には欠かせないもの。それに、干し湯葉の「腐件」も。

 その味付け、丸ごとのにんにくがごろごろ!というのがポイントのひとつ。香味野菜として効果だけでなく、火がしっかり通り、ホクホクの状態を通り越し、ねっとり柔らかくなったにんにく。これが滅法旨くって、つい頬張ってしまいます。食後のにんにくの匂いなんかのこと、気になんかしてられませんから。

 それよりも味噌の味がする。そのこく、風味からすると「柱侯醬」?それに「陳皮」の味、風味が鼻筋をくすぐる。念のため、橋本さんを通じて確認したところ、いずれもどんぴしゃでした。

 これまで「紅焼山瑞」、日本産のすっぽんを素材にした「紅焼水魚」を食べてきました、今回の「紅焼水魚」は「柱侯醬」の味噌の味が加減強め。くせのある、というよりも個性の強い野味素材に「柱侯醬」を組み合わせるのはよくあること。なんてことにならって、袁さん「柱侯醬」を加減、多めにしたのかも。

 すっぽんで一番の味わいところは、甲羅のハジっこの縁側のペロペロ。思わずむしゃぶりついて、徹底的に食べ、嘗め尽くします。皮下の脂肪分や赤身も独得の味、風味ある。そうか、人によっちゃ、そのクセ野味が苦手!なんてことで、もしかして袁さん、味噌の味、加減、多めな感じにだったのかも。

 「ひやー、どうしょ。これ、手ですよね、手!爪、爪がついてます!さすがに私・・・・」なんて悲鳴があがります。そう、手足の部分、ぶつ切りのまんま、煮込まれてますから。「そこんとこも美味しいんですから。なんなら、私、その部分ひきうけましょうか?」なんて私が声を上げるまえに、声があがる。

 すっぽんは、甲羅の縁側もそうですけど、どこの部位だって私はむしゃぶりつき、しゃぶりつくし、残るは骨のみで、すっぽんさん、なんまいだぶ!

 さて、すっぽんを食べた効果や如何に!

2009/08/30

夏・真っ盛り!09年8月の「赤坂璃宮」銀座店の4

 そして「八寶冬瓜盅 五目入り冬瓜の器入り蒸しスープ」が登場!!!!!!!!!!!!
 実はテーブルに付いて本日のメニューを見た時、この料理を見っけて思わず絶句。

 先月、懐かしい「火焔酔翁蝦/活車海老の紹興酒おどり特上スープ湯引き」をメニューにみつけ、目の前にした時も驚き、興奮しましたが、今回のそれは前回を越えるものでした。

 もともと神戸に生まれ育った人間ですから、子供の頃、夏場には「鱧」と「冬瓜」が食卓に。ことに「冬瓜」は頻繁に登場。というわけで、今になっても欠かせない夏の素材のひとつ。そんな「冬瓜」を素材した料理に香港で出会った時は嬉しかったですね。

 もっとも一般の広東料理店で食べられる冬瓜の料理の種類は限りもある。むしろ「冬瓜」の変種、未熟果の「節瓜」を素材にした料理が一般的。ところが、日本では「節瓜」の入手は難しい。

 そして「冬瓜」を素材にした料理の中でも、その極めつきとも言えるのが「冬瓜」の丸ごと一個、器に仕立て、様々な具材を入れて上湯を加え、長時間湯煎蒸しにした「冬瓜盅」。宴会料理の華にもなる豪華な一品。

 私も試したことがあります「冬瓜盅」。
 もっとも、さすがに大ぶりの「冬瓜」は、我が家にそれを蒸すだけの器具がありませんから、小ぶりの冬瓜がゲット出来た時に限ります。しかも、中の種をくりぬいた後で、冬瓜特有のあくというかクセをとる作業に手間がかかります。

 そんな「冬瓜」の下拵えだけでなく、だしの上湯作りを入念にするとなると、これまた手間隙かかります。ですが、出来上がった時の充実感、その美味は格別。とはいえ、具材の工夫はともかく、「冬瓜」の下拵え、だしの「上湯」は、素人のお手製のなんちゃって!ですから、やっぱりプロの技で仕上られた「冬瓜盅」を食べたい。 厄介なのは、そのサイズ、量からして、頭数揃った宴席じゃないと、叶えられない。

 「赤坂璃宮」銀座店のサイトの「今月のおすすめ」に「八寶冬瓜盅」を見つけて以来、興味津々。そのうちに試してみたいと思っていた料理です。なんてことで驚き、喜び、興奮もひとしお。実際、他のメンバーもテーブルに運ばれた「八寶冬瓜盅」を前にして、歓声を上げるよりも、こぼれたのは驚きのため息!でした。

 「冬瓜」の芯にある種を取り除き、果肉を残して下拵えし、具材と「上湯」を入れて湯煎蒸しにした「冬瓜盅」。切り込みのある「冬瓜」の果肉の上に乗っかっているのは、ローストした家鴨の「焼鴨」の肉片、蓮の実の「蓮子」、干し貝柱です。それに、角切り状の冬瓜の果肉が覗いて見えます。具材としては豚腿肉の「痩肉」、むき蝦に新鮮な貝柱。ということからすると新鮮な魚介を素材した「海鮮八寶冬瓜盅」という趣向です。

 その昔、具材としては干し貝柱、干し蝦などに家鴨、豚の内蔵類を入れたものが一般的だったとか。その後、新鮮な魚介を具材にしたもの、さらには、フカヒレだけのものなども登場。それについては、以前、福臨門の「生翅冬瓜盅」で紹介してきた通りです。

 具材の内容もさることながら、肝心なのはだしの「上湯」。これがすっきり、爽快、清廉な味わい。塩味、ぎりぎりの一歩手前で、控え目。まさに「清淡」、あっさりという表現がぴったり。新鮮なむきえびはともかく、この料理で新鮮な貝柱が具材になっていたのは初体験。こくのあるひねた旨味、風味を醸し出す干し貝柱とは対照的に、火が通って生みだされるほのかな甘味、なめらかな触感は、新鮮な貝柱ならではのもの。

 それよりも、だし「上湯」やら具材の旨味をふんだんに吸い込んだ「冬瓜」の果肉。口に運べば、まずはざらっとした触感。しかも、煮込まれ、いわばざっくりとスポンジ状になった「冬瓜」の果肉から、だしがじゅわじゅわと滲みでる。快感です。清々しくて爽快。心が洗われるような清廉な味わいと風味。 思わず、お代わり!

 アテンドの柏木さん、部屋にいなっくて、柏木さんを待ちきれずに、勝手に取り分け。いやしいことこの上ないオヤジです。そんな私の手前勝手な振る舞いに目を丸くしながら、スックと首を伸ばし「あ、おれも!おかわり」なんてYさん。心強い食いしん坊、いやしん坊仲間です!

 誰もが「八寶冬瓜盅」の美味、風味に唸ったのでありました。
 袁さんの手になる「八寶冬瓜盅」は、若々しく溌剌としていて凛々しく、清々しい。
 「冬瓜」の持つ素朴で純な持ち味を生かし、引き出す「上湯」の塩梅は、“家郷菜”を下敷きにしながら、プロの料理人としてのワザと工夫がある。新鮮な魚介を素材に加味、なんてところも袁さんならではの持ち味、趣向と言えるかも。

 それにしても、いつまでも熱いまんまの「冬瓜」のスープ。食べ進み、一杯を食べ終えてしばらく、ほっと心地よいなんてことより、なんだか体の熱気が次第に冷め、体中が爽快感に包まれていく感じ。
 「冬瓜」の効用を実感しました。

2009/08/29

夏・真っ盛り!09年8月の「赤坂璃宮」銀座店の3

 さて「赤坂璃宮」銀座店、袁さんの手になる「広東沙律蝦 海老の広東風サラダ」、すっきり爽やか、夏にこそふさわしい爽快で涼しげな一品。 画像でも明らかなように、茹で海老、キウイ、リンゴの賽の目切りにドレッシングが和えてあって、傍にマスカット、檸檬とライムのスライス。最初、大皿に盛られて運ばれた時、素材を覆いつくしていた「沙律醤」。みるからにぼってり、こってり、カロリー高めな印象。

 ところが、小皿に取り分けられた時には「沙律醤」の量は良い加減。涼しげどころか、口に運べばその冷ややかな口あたりに、思わず頬が緩みます。海老の甘味、さらに、キウイとリンゴを噛み締めればの自然な酸味、甘味も相まって「沙律醤」はくどさなんてみじんもなし。この料理そのものの味、風味は、すっきりとしていて爽快。

 「夏ならではの一品ですね」なんて声が聞こえます。
 誰もが、あっという間にたいらげました。
 もっとも、「夏・真っ盛り」の宴の序の口、その始まりを告げる一品に過ぎなかったのであります

夏・真っ盛り!09年8月の「赤坂璃宮」銀座店の2

 そして「広東沙律蝦 海老の広東風サラダ」。
 ワオ!懐かしい料理の登場です。 香港の広東料理が栄華を極めた80年代、一世を風靡したのが「新派広東」。
 「新派広東」にはおおよそ2派ありました。ひとつは伝統的な広東料理、郷土料理の今日的再現。要は中産階級を中心として食の消費が高まり、かつて一握りの人々だけのものだった高級素材を使った郷土料理の復活。

 たとえば、SARSの一件でアウチになってしまった「果子狸/はくびしん」などの野味料理はその典型。もうひとつは、欧米に加え、日本の和食の素材、調理方法などをとりいれた創作的な志向によるものです。

 そんな「創作的趣向による新しい広東料理」の一品として話題になったのが「沙律醤」で調味した料理。それも、一時、大衆的な広東料理のメニューにも乗っかるなど「広東新派」の代表的な料理として浸透。もっとも、その評価は賛否両論、まっぷたつに別れたものでした。

 「沙律醤」というのは、要は「サラダ・ドレッシング」ってことです。80年代、新派広東が一世を風靡した香港で、創作的な料理を模索、実践した料理人が「サラダ・ドレッシング」を積極的に起用。海老をはじめ茹でたり、揚げたりした海鮮にその種のソースを添えた。

 早い話、シュリンプ・カクテルの中華料理版的趣向、ですね。そこで目立って多かったのがマヨネーズをソースの主体、下地にしたもの。意欲的な料理人は、ただマヨネーズを使うだけでなく、いろいろ工夫を凝らした。フレッシュ・フルーツを切り刻んで海鮮ものと組み合わせる、なんてこともありました。

 ところが、そうした流行に遅れまじと、街中の広東料理店でもその種の料理が登場。なんて時、まんまマヨネーズをそのままどばあ!なんてのも登場。以前、私が「沙律醤」をマヨネーズとして紹介したのも、そんな理由があってのこと。厳密にはいろいろ種類があって、やがては「千島醤」(そうです、サザンアイランド・ドレッシング、ってことです)と具体的に表記することも。ですが、大抵の場合、基本はマヨネーズでした。

 思い出します。かつて香港に食の取材にでかけた際、仕事を終え、次なる取材の下調査をかねてとある店で食事を取ったときのこと。そこで登場したのが表面がびっしりマヨネーズが覆われた海鮮の冷菜。テーブルのど真ん中に置かれたその一皿を目の当たりにして、其の場居合わせ誰もが絶句。

 沈黙を破ったのは「誰がこんなもん注文したワケ?」 というかん高いスタッフの詰問の声。
 一瞬にして座は凍りつきました。 そこでひとり真っ青な表情をしたコーディネイター兼通訳のTさんがオドオド顔。

 「いや、あの、これ、今、香港で話題の「新派広東」の料理で、今回の企画にはにうってつけかな、ってことで。あ、あの、クーポン券がありましたので注文しましたから、これ、無料のサービスです!」と。どうやらTさん、後で聞いた話によれば、他のいくつかの雑誌の取材の折、女性誌の編集、ライターから「わ、素敵!これってヌーベル・シノワ? フルーツも使ってあるし!」なんて評判だったことから、私の取材でもウケる違いないと思ったそうで。

 「あのう、勝手に取材の料理、決めないでくれます?こっちは、きちんと下準備して、料理選んで、リストを作ってるんだし!」と言いたいのをぐっと我慢。お世話になってますから。
 凍りついた場面を和らげるには、私が率先してその料理に手をつけ、その座をとりなすしかない。なんてことで、全員(ひとりマイナス)固唾を呑んで私の一挙一動に注目。

 口にして、私は絶句。なんと評していいものか、言葉を見つけられずに、しばし沈黙。ようやくのことで「このマヨネーズ、酸味が利いてていいんじゃない?ダーキーかな?」。
 その後、マイナス一人、以外、誰ひとりとして、その皿に手をつけるものはいませんでした。

 「沙律醤」、ことにマヨネーズを調味に使った料理を斬新で奇抜な「新派広東」として売り出したのは、実は、流行に便乗した2番手、3番手の店。それを間に受けて「最新の料理です」と紹介してくれた通訳&コーディネイトのTさん。香港における、そして、中国に「沙律醤」、ことにマヨネーズがいつ、どうやって持ち込まれ、どうやって浸透していったか、なんて知識、まったく持ち合わせていなかったのですね。

 それにフルーツ、東南アジアのトロピカル系のそれや、日本、欧米からの輸入ものが広東料理で使われるようになったのは近年になってからですが、それ以前、地元、広東及びその周辺、中国各地の果物は、とっくに料理に使われ、日常化していた、ということもご存知なかったという次第です。

 マヨネーズと中国、中国料理の関わりということについては、中国におけるトマトケチャップとの関わり、その歴史にも関係して、実は面白くて興味深いテーマです。そもそのも発端は上海にあり、というのは、近代、現代における中国料理の変遷をテーマに研究を重ねる人々の間での研究課題のひとつになっている、なんて話も耳にします。

 香港の場合、ことに第二次世界大戦後、日本の統治から英領に復活して以後、自由主義社会として欧米の生活物資が輸入され、一般化していった。というような歴史的背景もあって、マヨネーズ、ま、最初は富裕階層などを中心に、後には中産階級家庭においてもキッチンの必需品ともなり、「マヨネーズ和え」というのはすでに馴染みの料理となり、だった、という事実もあったわけです。

 それが、広東料理店で「新派広東」の料理の一品の調味料として脚光を浴び、表舞台に登場。そんなところでそれを最初に起用した料理人、やはり「沙律醤」をそのまんま料理にかけて提供したわけではありません。

 素材の調理、組み合わせ、さらに「沙律醤」にひと味、ふた味、工夫を凝らした。「沙律醤」だけじゃなくって「千島醤」、そうです、サザンアイランド・ドレッシングですね、そういうのにも着目して、調味に工夫を凝らした。そんな工夫のもとに生まれたソースを様々に活用。 そういえば周富徳さんが看板料理のひとつにした「蝦のオーロラソース和え」、なんていうのはそんな香港の創作的な志向による「新派広東」をヒントに生まれたものだったのは明らかです。

 かつて「沙律醤」といえば、すなわちマヨーネーズ、だった状況は、現在では一挙に様変わり。それに大きく貢献してきたのが、実は日本から輸入した各種の市販のサラダ・ドレッシングの類。「胡麻風味」なんて、「芝麻醤」があるんだから、香港人がとっくに工夫、創作してよさそうなものなのに、日本製の市販品が登場するまで、生まれなかったなんてところが面白いです。

2009/08/28

夏・真っ盛り!09年8月の「赤坂璃宮」銀座店の1

 今年の夏、なんだか蒸し暑いだけで、すっきり、くっきり、はっきりしない夏。カキーンと青空にギンギラのまぶしい太陽!なんて感じの夏日、出会えないまんま、なんだか夜になると秋の気配。そよ風がそれを物語ってます。

 今月の「赤坂璃宮」銀座店のメニューは、なんだか変、いつとは違った今年の夏にうってつけの内容でした。汗よりも湿気がべっとり肌にまとわる蒸し蒸しの日々に、ダラ~ととウダけた体を浄化し、肉体と精神をキリリと引き締め、滋養の補給も怠りない、なんて感じの料理がずらり。
 まずは「脆皮焼腩肉 皮付き豚バラ肉のクリスピー焼き」。

 今月は各種焼き物の取り混ぜじゃなくって「焼肉」だけの前菜。「焼肉」が大好物のi-podさんに恨まれそうだ。それも「溶き芥子」と「砂糖」が小皿に添えられて登場!
仔豚の丸焼きに「砂糖」というのはよくあることです。

 カリカリに焼かれた皮の部分に砂糖をつけて食べると旨い。北京ダックも胸下の皮だけの部分なども「砂糖」をつけて食べると旨し。ですが、なんで「溶き芥子?」。

 香港では体験なし、私にとっては今回が初体験。

 そうか、これは脂身と肉の部分につけるんだ!ってことで「溶き芥子」をちょびっとつけると、脂身の旨味、甘味にピリリのひりから味が加味されて、甘味がしまります。

 そういうことか!

 そんな「脆皮焼腩肉」とともに前菜の焼き物として「辣焼猪爽肉 トントロの釜焼き」が登場。

 「トントロ」!近頃、焼肉屋で人気のメニューのひとつだそうです。近所のスーパーでもパック入りの「トントロ」をみかけます。ですが、私は日本の焼肉屋では未体験。スーパーで買ったこともありません。

 スーパーなんかで売られてる「トントロ」。その見かけ、なんだかばら肉の一部のようですが、厳密には顎から肩にかけての首根っ子の部分。ということで、頬肉などと同じく肉の部位じゃなく、モツ、内臓の類扱い。

 脂肪に包まれていて形状は平ったい。肉そのものは掌2倍程の大きさで、横からみるとその端っこは尖角状で次第に幅をましていく。といっても、厚いところで3センチほど。しかも、肉、霜降り状にサシが入ってるのが特徴で、焼いたりするとその脂がとろけ落ちる。余計な脂がおちた後の肉は、甘味ほどほど、すっきりの感じで、最初の見かけからするとさっぱりの印象。というのが人気の秘密だそうで。

 そんな「トントロ」を釜で焼くアイデアを思いついたのは、なんと袁さん。日本ではモツ、内臓扱いの部位の「トントロ」ですが、香港ではその味わいから「爽肉」、中国本土では部位の名称そのまま「頸肉」ってことで知られてきたそうです。

 で、その下拵え。「トントロ/爽肉」がの周りは脂肪。しかも、肉質はサシがたっぱり入った霜降り状態。という特徴、持ち味を考慮。ちなみに、袁さんによれば今回は「食紅・辣椒粉・砂糖・塩・蒜粉・レモングラス」で下拵えし、釜で焼いたもの。

 リッチな焼き豚!というのがその印象。霜降り状の脂が焼き落ちたものの、しっとり感のある歯ざわり、触感で、かみしめるとほのかにじんわり甘味が浮き上がる。

 一緒に用意されたのは先月の「白切鶏」のタレ同様、醤油ベースのタレできりりと肉の味、甘味を引き締める。しかもそのタレ、めりはりが利いていて、ちょっと角ばった感じ。どことなく。日本の中華料理での醤油使いに似てる印象。















 甘味はOK。ですが、もうちっとおだやかさ、まろやかさと酸味がもう少し、なんて印象。醤油が立ってるようで、付けたれとしての香り、風味がいまひとつ、なんて思いながらも「トントロ」、しかも、一味唐辛子の粉を使って辛味を特徴付けた、なんてことからすると、これはこれでokなのかも。

 なんてたって「トントロ」の登場に驚いたのでありました。

2009/08/27

閑話休題~カンピロバクターの2

 表面を炭火で炙っただけで、中はレア。さながら「たたき」状態だった「わさび焼き」が以前とは変わっちゃった、というのも「カンピロバクター」のせい、だったのですね。

 そして、新製品の「インナーマッスル」。
 考えてみりゃ「新製品」というのはなんだか変。全然変。
 「新しいメニュー」っていうのが正しい表現だったことに、こうやって書きながら気づきました。
 でも、和田さん(数寄屋橋の焼き鳥屋さんの御主人です!)そんな風に言ってましたもんで、つられて私も「新製品!」と!
 見かけ、胸肉の塩焼きのよう。ですが、噛み締めると弾けるものがある。
 「インナーマッスル」というからには筋肉だけのはずなのに、ジューシーな肉の味わいだけでなく、ひそんでいた脂が、炙って焼かれて零れ落ちる寸前に身に残っていて、ぷちぷちと弾ける感じ、なんですね。

 ここの「ソリ(レス)」が楽しみなのは、ぷくんぷくんに肉が膨らんで、噛み締めると肉汁とともに脂が弾けとぶ。あの快感をあじわいたくて、だからこそ酒を頼む前に「ソリ(レス)」がありやなしやと、思わず口がつく。

 「これ、いいじゃない!」。
 「でしょう?」といわんばかりに和田さんもニンマリ。
 「もう一本!」といいかけて
 「あ、そか!、一羽に4本だけの貴重品!」ってことに気づいて、言葉を飲み込んじゃいました。