2009/08/30

夏・真っ盛り!09年8月の「赤坂璃宮」銀座店の4

 そして「八寶冬瓜盅 五目入り冬瓜の器入り蒸しスープ」が登場!!!!!!!!!!!!
 実はテーブルに付いて本日のメニューを見た時、この料理を見っけて思わず絶句。

 先月、懐かしい「火焔酔翁蝦/活車海老の紹興酒おどり特上スープ湯引き」をメニューにみつけ、目の前にした時も驚き、興奮しましたが、今回のそれは前回を越えるものでした。

 もともと神戸に生まれ育った人間ですから、子供の頃、夏場には「鱧」と「冬瓜」が食卓に。ことに「冬瓜」は頻繁に登場。というわけで、今になっても欠かせない夏の素材のひとつ。そんな「冬瓜」を素材した料理に香港で出会った時は嬉しかったですね。

 もっとも一般の広東料理店で食べられる冬瓜の料理の種類は限りもある。むしろ「冬瓜」の変種、未熟果の「節瓜」を素材にした料理が一般的。ところが、日本では「節瓜」の入手は難しい。

 そして「冬瓜」を素材にした料理の中でも、その極めつきとも言えるのが「冬瓜」の丸ごと一個、器に仕立て、様々な具材を入れて上湯を加え、長時間湯煎蒸しにした「冬瓜盅」。宴会料理の華にもなる豪華な一品。

 私も試したことがあります「冬瓜盅」。
 もっとも、さすがに大ぶりの「冬瓜」は、我が家にそれを蒸すだけの器具がありませんから、小ぶりの冬瓜がゲット出来た時に限ります。しかも、中の種をくりぬいた後で、冬瓜特有のあくというかクセをとる作業に手間がかかります。

 そんな「冬瓜」の下拵えだけでなく、だしの上湯作りを入念にするとなると、これまた手間隙かかります。ですが、出来上がった時の充実感、その美味は格別。とはいえ、具材の工夫はともかく、「冬瓜」の下拵え、だしの「上湯」は、素人のお手製のなんちゃって!ですから、やっぱりプロの技で仕上られた「冬瓜盅」を食べたい。 厄介なのは、そのサイズ、量からして、頭数揃った宴席じゃないと、叶えられない。

 「赤坂璃宮」銀座店のサイトの「今月のおすすめ」に「八寶冬瓜盅」を見つけて以来、興味津々。そのうちに試してみたいと思っていた料理です。なんてことで驚き、喜び、興奮もひとしお。実際、他のメンバーもテーブルに運ばれた「八寶冬瓜盅」を前にして、歓声を上げるよりも、こぼれたのは驚きのため息!でした。

 「冬瓜」の芯にある種を取り除き、果肉を残して下拵えし、具材と「上湯」を入れて湯煎蒸しにした「冬瓜盅」。切り込みのある「冬瓜」の果肉の上に乗っかっているのは、ローストした家鴨の「焼鴨」の肉片、蓮の実の「蓮子」、干し貝柱です。それに、角切り状の冬瓜の果肉が覗いて見えます。具材としては豚腿肉の「痩肉」、むき蝦に新鮮な貝柱。ということからすると新鮮な魚介を素材した「海鮮八寶冬瓜盅」という趣向です。

 その昔、具材としては干し貝柱、干し蝦などに家鴨、豚の内蔵類を入れたものが一般的だったとか。その後、新鮮な魚介を具材にしたもの、さらには、フカヒレだけのものなども登場。それについては、以前、福臨門の「生翅冬瓜盅」で紹介してきた通りです。

 具材の内容もさることながら、肝心なのはだしの「上湯」。これがすっきり、爽快、清廉な味わい。塩味、ぎりぎりの一歩手前で、控え目。まさに「清淡」、あっさりという表現がぴったり。新鮮なむきえびはともかく、この料理で新鮮な貝柱が具材になっていたのは初体験。こくのあるひねた旨味、風味を醸し出す干し貝柱とは対照的に、火が通って生みだされるほのかな甘味、なめらかな触感は、新鮮な貝柱ならではのもの。

 それよりも、だし「上湯」やら具材の旨味をふんだんに吸い込んだ「冬瓜」の果肉。口に運べば、まずはざらっとした触感。しかも、煮込まれ、いわばざっくりとスポンジ状になった「冬瓜」の果肉から、だしがじゅわじゅわと滲みでる。快感です。清々しくて爽快。心が洗われるような清廉な味わいと風味。 思わず、お代わり!

 アテンドの柏木さん、部屋にいなっくて、柏木さんを待ちきれずに、勝手に取り分け。いやしいことこの上ないオヤジです。そんな私の手前勝手な振る舞いに目を丸くしながら、スックと首を伸ばし「あ、おれも!おかわり」なんてYさん。心強い食いしん坊、いやしん坊仲間です!

 誰もが「八寶冬瓜盅」の美味、風味に唸ったのでありました。
 袁さんの手になる「八寶冬瓜盅」は、若々しく溌剌としていて凛々しく、清々しい。
 「冬瓜」の持つ素朴で純な持ち味を生かし、引き出す「上湯」の塩梅は、“家郷菜”を下敷きにしながら、プロの料理人としてのワザと工夫がある。新鮮な魚介を素材に加味、なんてところも袁さんならではの持ち味、趣向と言えるかも。

 それにしても、いつまでも熱いまんまの「冬瓜」のスープ。食べ進み、一杯を食べ終えてしばらく、ほっと心地よいなんてことより、なんだか体の熱気が次第に冷め、体中が爽快感に包まれていく感じ。
 「冬瓜」の効用を実感しました。