2009/08/23

閑話休題~蒸し暑い夏。今年もいつもと違う変な夏。去年よりも変な夏の2

 「鮑、切ってくれる?」。
 「どうします?硬いとこがいいですか?それとも柔らかいとこにします?」
 「あ、ちょっと待って!塩蒸しと生があるんだ。ここで生の鮑を食ったことあったけ?」
 「何言ってんの、昔から食べてたじゃない、両方!」
 「そうだっけ?ま、いいや。最初は塩蒸し!」
 なんて按配で、千葉の大原の鮑の塩蒸しのぶつ切り。
 
 ねっとりと歯にまとわる柔らかさ。
 「ええ、そこんとこ、殻にくらいついてる根っ子のとこです。甘いでしょ?」
 「うん、甘い。だけじゃないのね、香りがいいね。ね、もうちっと鮑食べたいな」
 「じゃ、これ!どうです?歯の丈夫な人はこんくらい硬いのがお好みなんですけど」
 わお!生の鮑はコリコリ!ことに端っこのとこは堅物でコリコリ。
 「生もいいけど、やっぱ俺は塩蒸しだな」
 「食べた後で、いつも同じこと言うんだから、もう!」
 「じゃあ、たこ、切って」

 鮨に突入。
 最初はこはだ。














 しっかり2枚、身に纏ったこはだ。
 それから、しまあじ。
 いか。















 「鯵が美味しい!」と隣はうっとり顔。
 「どこ?」
 「内湾ものです。いいでしょ、今日の鯵!」
 「今日のベストかも!」
 なんて話に惹かれて
 「じゃあ、鯵!」














 なるほど。これは旨いや。
 脂が乗ってて、旨味が舌にぐんとのしかかり、香りが口中に広がります。
 「確かに、ベスト。でも、まだ食べてないものがあるし・・・
 う~ん、じゃ、ちょっと舌を変えたいから、すずき。どこ?」
 「常陸です」。
 すっきりと爽やか。
 ですが、もちっと切り方、厚みのある方が爽快感を増したかも。

 「まぐろにします。えと、最初、赤身。中トロとトロの按配どう?」
 「そですね。う~ん、じゃあ、中トロ、トロ、一貫ずつにします?」
 「そね、あとで鉄火巻き食べるし」



















 「わお、なんだこれ、いつもより、2ミリ厚いじゃん!」。
 赤身を食べて驚きました。
 「なんで2ミリなの?そんなの、わかるわけないでしょうが。知ったかぶりしちゃって!」と、隣が声を上げます。
 「だって、舌触りが違うもん。いつもより厚いから。これ、絶対に2ミリ厚い!その分、味も香りも際立ちますね」
 「そんなことあんですか?」と、隣は付け板のむこうに尋ねます。
 「ええ、まあ、夏場ですし。いつもに比べて、ちょっと厚く切ってます」。
 「へ~、そんなことあるんだ」。
 「だから言ったでしょ?どんな魚も部位や状態で、ネタの厚みは切り分けてるって。それも季節に応じて、ね。食べてりゃ、わかるでしょうが!」。

 「いえ、まあ、食べて美味しいと思ってくれるように切ってるだけですから」。
 「そうね、美味しければいいよね。でも、鮨のうんちく語る人なら、美味しさの秘密、理由を探ってほしいよね。それが仕事なんだし。わかんない人、気づかないって人っていますから。(ネタの)切り方、厚みとか、部位とかによって変えてる、季節によって切り分けてるって」。

 「お、中トロとトロ、可愛く並びましたね」



















 「なるほどね。これなら、赤身がいいや!あとで鉄火を食べるから!
 「じゃあ、たこ」
 「詰めにします?」
 「うん。それからあなご、ね!」
 「私も!」
 
 「おお!3貫並んで、大阪の鮨みたい!」
 「へー、大阪じゃ3貫なんですか?」
 「そう、一皿に3貫」
 「でもね、最近、江戸前風とかで、2貫とか、なんでだか1貫の店もあるらしい」
 「うちでもいろんなもの食べたいからって、1貫ずつにしてくれってお客さん、いらしゃいますよ」
 「あ、そう。でも、私は2貫だな。食った気しないもん」