2009/08/12

夏到来!~09年7月の「赤坂璃宮」銀座店の9

 画像を見れば一目瞭然。その出来栄えは実に見事。調理の素晴らしさを物語っています。

 実はドライ・タイプの「干炒」にしろウエット・タイプの「炒河」にしろ、香港では誰にでも親しまれた一般的、かつ、大衆的な料理です。言わば、日本で焼きそばにあたるもので、焼きそばよりも好まれ、親しまれているもの。

 で、それが食べられるのは広東料理店、もしくは、香港式の洋食を扱う餐廳や咖啡舗でのこと。ちなみに幅広ビーフンの「河粉」は、メニューに「面或粉」の表示があるようにことに潮州系の「粥麵店」で食べられるますが、ほとんどはスープ仕立てのもの。

 というのも面粥店では炒め物は扱わず、提供しないのが一般的。ですから、香港の街中の「粥麵店」で焼きそばの「炒面」に出会えることは滅多にない。その理由は、どうやら「炒面」は「料理」の範疇に入るらからのようです。

 というわけで「炒面」、焼きそばは広東料理店、もしくは、小食店でのこと。それが「河粉」の炒め物に関しては、餐廳、咖啡舗のメニューにあります。しかも、その調理、味付けは、素朴で荒々しい。「干炒」は、ベタベタに油っぽくて味付けは濃厚。「炒河」のあんかけはとろみたっぷり、といった按配。

 しかしながら、日本のソース焼きそばがそうであるように、ソースの焼け焦げ味が粗雑で乱暴な調理をカバーして、なんだか食をそそる。郷愁を覚えます。そう、香港の餐廳や咖啡舗での「干炒牛河」は、まさしく日本のソース焼きそばのそれ。郷愁を覚える懐かし味です。そんなあの味!を求めて、たまらず餐廳、咖啡舗に飛び込む人も少なくない。香港B級グルメの上位ランクに位置する一品です。

 それが、広東料理店の「干炒牛河」、あるいは「菜遠牛河」となると、いささか趣も違ってきます。料理の一品ですから、具にする素材、その吟味、味付け、調理に工夫があります。それを看板にしている料理店もあります。

 たとえば飲茶で知られる陸羽茶室の「干炒牛河」は、メニューにも載っていますが、顧客、常連客の間ではその存在を知られた評判の一品。福臨門では、一時、お昼に粥麵のメニューでそれを紹介していたこともあります。が、どちらかといえば常連客、顧客のみが知る裏メニューの一品といえるかも。もっとも、香港の広東料理店ならどこだってメニューにはなくとも、頼めば作ってもらえます。

 そして「赤坂璃宮」銀座店の「乾炒沙河粉」。牛肉じゃなくって豚肉、それにパプリカ。ピーマン、レタス、セロリの細切りにもやし。そこに、玉葱のスライスも!というのが、実に憎い!その甘味、実は「干焼炒河」に欠かせないもの、だったりしますから。

 味付けは塩味主体で醤油を味、風味づけに。押し付けがましさのない奥床しくて上品な味付けです。餐廳のそれのようにベタベタの脂っこさは皆無。しかも「干焼」とあるように調味料、だしは「河粉」に絡み付いて、余計な煮汁はありません。

 そういえば先月の「柱侯牛腩河」での自家製の「河粉」、「自家製ってこともあって、長いのがあったり、短いのがあったり、厚みがあってぼってりしていたり。そこんところはご愛嬌」なんて紹介しましたが、今月のは、長さ、厚みは均一という見事なもの。

 つるんとした滑らかな「河粉」の触感、ぷるんと弾ける噛み応えがありました。しかも噛み締めれば「河粉」にまとわる味、風味が口中に広がります。
 「これ、ほんとに旨いよね!」
 「先月食べた「河粉」は、米の粉というか、米の味、そのものだったけど、味が絡んで、格別ですね」
 「スープ仕立てで「河粉」の滑らかさ、のど越しのよさを味わうのもいいけど、こうやって炒めるとまた味わいも違って。でも、この炒め方、見事な技に圧倒されますね」と、感心しきり。

 この「乾焼炒河粉」も「赤坂璃宮」銀座店の「家郷菜」を語るに欠かせない一品なのは間違いなしです。