2009/08/08

夏到来!~09年7月の「赤坂璃宮」銀座店の5

 続いて「金杯夏果牛/牛肉とマカダミアナッツの炒め」。 先ほどの料理が「乳香脆排骨/スペアリブの香り揚げ」でしたから、続いて、魚介、豆腐、野菜を素材にした蒸し物が登場?なんて、予測してました。香港の人たちのコースの組み立てならそんな感じですから。ところが、予想に反して牛肉の料理が登場。もちろん肉好きな私としては堪らない。

 「夏果」とは「マカダミアナッツ」のことです。といって「夏」の「果実」、「果物」、「木の実」って意味じゃない。「夏威夷(ハワイ)」の特産品ってことから「夏威夷果」、それを略して通称「夏果」。ですが、やっぱりこの夏の季節にあわせて「夏」にちなんだ「木の実」ってことなんでしょう。

 そんな「夏果」と「牛肉」と野菜を炒めあわせた一品。野菜は赤いパプリカ、ベビー・コーン、アスパラ。それに干し椎茸という内容。

 画像を見ればご覧の通り、牛肉、野菜のいずれとも、マカダミア・ナッツの大きさに合わせて切り揃えられています。結果、それぞれに鮮やかな色合いが目を捉えて離さず、食欲をそそるという按配。中国料理の基本で重要なポイントである「色・香・味」の「色」、見た目の美しさを絵に描いたよう。

 その味付け、塩味主体でシンプル。食べてみて「蠔油」つまりは「オイスター・ソース」の味が浮かび上がるという寸法。「蠔油」の効果的な使い方、味付けの加減、按配が上品で奥床しい。

 野菜のひとつひとつの味、香り、風味もしっかり浮かび上がる。ですが、一番面白いのはやはりマカダミア・ナッツ。ナッツにしては、サイズ大きめで、パリポリの噛み応え。そこにオイスター・ソースの旨味、風味が絡んで、ひと味違った印象。

 それに比べて、サイコロ上の牛肉は、表面がかりっとした焼き加減。噛み締めると柔らかくって、ジューシーな肉汁がほとばしる。そう、牛肉を噛み締めるたび、なんだか、ステーキを食べてるみたいに、リッチでゴージャズ、贅沢をしている気分になりました。

 で、牛肉や野菜を盛り込んだバスケット。普通、じゃがいもで作った「巣篭もり」ですけど、今回は色合いが違います。「食べられますから、是非どうぞ」と、山下さん。「小麦粉とカスタードで作った特製のバスケットなんです」。

 バスケットの端っこをパリッと割って、口に入れてみたら、甘い。なんだか、デザートの一品の脇役として登場しそう。アイスクリームやソルベを盛り付けるバスケットみたい。やがて、その甘さと、塩味、こくのあるオイスター・ソース風味の牛肉、それにマカダミア・ナッツの相性がぴったり、なんてことに気づきました。

 この「金杯夏果牛/牛肉とマカダミアナッツの炒め」。一見、創作料理風。食の雑誌、女性雑誌の編集担当氏やフードライターの方々が「新派」の趣なんて紹介しそうですが、素材の組み合わせ、味付け、調理は、広東料理の伝統的な郷土料理の手法にのっとったもの。こうした盛り付け、調理、味付けは香港ならではのものです。