この日「赤坂璃宮」銀座店に到着してテーブルに着き、用意されたメニューに並ぶメニューを見ながら「あ、夏到来、ね!」なんてニヤケ顔。ですが、そこに「火焔酔翁蝦/活車海老の紹興酒おどり特上スープ湯引き」を見つけ出し、思わず目を疑いました。一瞬、顔が引きつりました!
「え、こんなのありなの!」と、その驚き、尋常じゃありませんでした。
「火焔酔翁蝦」。
懐かしい料理です。80年代半ばに香港で花開いた広東料理、海鮮料理を代表する一品です。海老を茹でる「白灼蝦」をヒントに、酒、紹興酒や玫瑰露酒などを注ぎいれて火を放ち、アルコールを飛ばして、上湯を注ぎ足して、蒸し焼き状の「焗」で調理したもの。アルコールを飛ばす際に燃え上がる炎の様を「火焔」と称し、パーフォーマンスとしてアピール。
私の記憶が正しければ、湾仔にあった「麒麟閣」が発端で、次いで誕生した「麒麟新閣」、香港ホテルに生まれた「麒麟金閣」に受け継がれていったんじゃないかと思います。あ、もしかして、野味料理全盛の最中、それを看板にする料理店がはじめたのかも。舊資料をさぐれば、真相判明。ですが、今、その余裕はなし。
ともあれ、80年代後半から90年代の初頭にかけて高級ホテル内にある料理店、街中の高級料理店がこぞってそれにならった料理を提供。最初は「紹興酒」だったのが「玫瑰露酒」など、酒の種類を違えてそれぞれオリジナルの「火焔酔翁蝦」だと主張し、アピール!というのが香港らしいですよね。
懐かしい思い出はさておき、活けの車海老だってことだし、予算のことを考えればびびります。ですが、食欲には勝てない。
「これがご用意した活けの車海老です!」
柏木さんが、調理前の活け蝦を見せてくれました。
一斉に歓喜の声、というより、ため息交じりの驚愕の声があがります。
「これにお酒を注ぎ入れ、火をつけましてアルコールを飛ばしまして、その後、上湯を注ぎ入れまして、湯引きにいたします。あの、ここでアルコールに火をつけて調理したり、上湯を入れて湯引きしますと汁が飛び跳ねたりしますので、別の場所で調理したものをお持ちしますから」と、柏木さん。
そうか!残念。紹興酒に火がついて燃え上がる火焔のパーフォマンス、見られないのはちょっとどころが、かなり惜しくて残念ですけど、いたしかたないっすね。
私は何度も経験ありですが、おそらく、初体験の皆さんにそれをお見せしたかった
ですけど、別の場所で調理された活車海老が目の前に運ばれた途端、皆さん、目を丸くして驚異の声。火焔のパーフォマンスなど、どうでもよかった感じ。ま、ごらんになれば、それはそれなりに、いや、大きく盛り上がったことは間違いなし。 「火焔酔翁蝦/活車海老の紹興酒おどり特上スープ湯引き」。
熱々の蝦を手にとって殻を剥き、たれをちょっとつけて頬張ります。噛み締めるとぷりっとした噛み応え。茹でたえび、独得のもの。さらに歯を入れると、蝦肉の甘さに紹興酒の味が加味されて風味格別。
誰もが蝦の殻を剥き、たれをつけて食べるのに夢中。蟹を食べる時には、誰もが無言になるなんていいますが、蟹だけじゃないですね。蝦もそう。それよりこの蝦、上湯で湯引きされたせいか、肉質そのものがリアルに浮かび上がる。
蝦は火を通すと、旨味を増しますが、同時に、蝦自体の持ち味というのも、くっきりはっきり浮かび上がる。活け蝦、ってことに興奮し、産地、聞きそびれました。
それにしても、豪華、贅沢この上ない一品だ。感動の嵐、竜巻が襲い掛かり、会議は沈黙、いずこへやら。
やばいや、これは!会議どころの話じゃなくなりますもん!