2010/02/28

春節~春到来 10年2月の「赤坂璃宮」銀座店の3

 続いて「山菜炒蝦仁/芝海老と山菜の炒め」。

 大皿でお披露目の後、小皿に取り分けられて登場の際「ご入用かと思ってお持ちしました」と柏木さん、小えび(アミ類など)の醗酵味噌の「蝦醤」をテーブルに用意してくれました。
 「海老の炒め物」に「蝦醤」は欠かせません。しかも、袁さんのように下拵えや調理、塩味はじめ調味料の加減、按配が控え目、という香港スタイルの料理には、ほんのちょっぴりの各種の「醤」が欠かせない。海老をはじめ海鮮の魚介類の油通しの「油泡」や炒め物には「蝦醤」や「蠔油/オイスターソース」がうってつけ。ことに海老と「蝦醤」の相性が抜群です。なんてことで、この種の料理があるとすぐさま「蝦醤」を頼みます。なんてこと、覚えててくれた柏木さんの心配りに感謝!
 海老の炒めものに「蝦醤」をちょっぴりつけて食べるのは初体験だったYさん。
 「おお!なるほど、こりゃいいわ。味が引き立つ。それより、このエビミソだけでもちびびちび舐めたくなりますね。旨いわ、これ!」と、すっかり病みつきの様子。
 「うんうん、わかります。ですけど「過ぎたるは~!」ですから、ほんのちびっとだけに抑えておくのがベスト!」と、止めを刺す私です。
 海老の炒め方、火の通り、甘味が立った味の旨さもさることながら、一緒に炒め合せた「うど」、「きくらげ」、「行者ニンニク」の触感、味、風味が面白い。
「うど」はほんのちょっぴりほろ苦い。
「これって、ほんと春の味、ですね!」と声が上がります。
「きくらげ」はぱりぱりの歯触り、噛み応えで、滋味深い味わい。
「行者ニンニク」は青さと辛味が入り混じった味、風味。噛み締めれば精の強さがじわじわと押し寄せてくる。
 その名、山籠もりして修行を行う修験者が食べていたことに由来するとかで、食べ過ぎると精がつき過ぎるなんてことから、食べることを禁じられていた、なんてのが面白い。
 ニンニク同様に強い匂いを放っているのがその特徴ですが、生食はともかく、火を通すと独得の風味をもたらします。
 ともあれ、春の到来を満喫した一品でした。

2010/02/26

春節~春到来 10年2月の「赤坂璃宮」銀座店の2

 スープは「芥菜肉片湯/からし菜と豚肉の蒸しスープ」。
 「お、嬉しい!」なんて思ったのは香港、広東地方ではごく一般的、惣菜的なシンプルこの上ないスープだからです。
 まず「芥菜/からし菜」ですがアブラナ科の一種で小芥菜と大芥菜があります。その種子からとるのが芥子、ってことからもわかるように独得の辛味があります。もっとも、日本では「芥菜」の変種で「大芥菜」が「高菜」として一般的。は日本で言う高菜。

 今回のスープに使われた「芥菜」は広東地方原種の「包心芥菜/結球高菜」。色鮮やかな緑の葉もさることながら、薄緑がかった根元の茎の部分(芥菜胆)の部分を様々に調理するのが香港、広東地方では一般的。これからが旬の時期を迎えます。

 そんな「芥菜」のもっとも簡単な料理方法が豚肉、それも脂身の少ない腿肉などの赤身肉の「痩肉」の薄切りと一緒にさっと煮てスープ仕立てにした「芥菜肉片湯」。誰にだって出来るお手軽なスープ料理です。とはいえ、袁さんの手になる「芥菜肉片湯」、やはりプロの技、一工夫がありました。

 「ね、このスープ、すごく美味しい!しっかり旨味があるのに、すっきりしていて、上品だし。これ、「鶏だし」で作るのかな?」
 「ン!?、そうかな。「鶏だし」独得のくせとか味がしないから。ほら、鶏丸ごと一羽使った鶏だしだと、皮の部分から脂もでるし、コラーゲン質とかも一緒に煮出されるでしょ。そういう感じじゃないよね。
 それに、ここ(「赤坂璃宮」)とか福臨門とかホテルの高級店だと鶏は丸ごと一羽使って、豚の赤身肉や火腿で「上湯」をとるけど、日本の中華料理のだしって、一般的には鶏がら主体の「毛湯」を作ってから、鶏や豚の挽き肉を加えて澄んだ旨味のある「清湯」を採ることが多いから。 それからすると、このだし、旨味はあってもクセがないし、ほのかにフルーティーな酸味がするから、豚の赤身肉の「痩肉」で採っただしか、もしくは二番だしの「二湯」じゃないのかな?」と知ったかぶりの私です。

 そのあたり、聞きそびれてました。そしたら橋本さんから連絡あり。
 「スープは蒸しスープと言うよりは沸かしスープが良いと思います。漢字表記は滾湯です。10分程強火で煮ます。素材等につきましては、肉片・芥菜・咸蛋・二湯・塩・生姜です」とのこと。

 そうか「二湯」を使った「滾湯」だったのですね。
 それにしても具材を鍋に入れ、「滾湯」ってことですから、ぐらぐらの感じで煮立てたスープだと、ざらっとした触感になりますが、滑らかで、きめ細かな舌触り。おまけに雑味なしでクセやくどさがなく、すっきりとした味わいと口当たり。「上湯」だけじゃなくって「二湯」も上質、かなりのもの、なんてことがわかります。

 なんて話をしながら、れんげで掬ったスープに塩漬け玉子の「鹹蛋」の黄味!
 「おおこれは「鹹蛋」の黄味。
 ということはこの料理「鹹蛋芥菜肉片湯」だ!

 「鹹蛋」入りの「芥菜肉片湯」と言うのがいかにも香港/広東ローカル、地元ならではの味です。
 塩味の効いた「鹹蛋」の黄味は、ほっくり、ねっとり。旨味濃厚です。
 「これもこのスープの味の決め手のひとつになってたんだ!」と納得しました。

2010/02/25

春節~春到来 10年2月の「赤坂璃宮」銀座店の1

 農歴(旧暦)の新年、春節は過ぎましたが、農歴ではまだまだ正月、松の内。昨年には小正月にあたる「元宵祭」に欠かせない「盆菜」の登場に驚きました。そして、今月の「赤坂璃宮」銀座店での会議、春節間近の日でのことでしたから年越しの料理なども登場。
 まずは「広東焼味盆/璃宮特製焼き物前菜」。

 右から鶏の肝と豚脂の焼き物の「金銭鶏肝」。その下が珍しく豚の舌、付け根あたりの部位の寄せ物。煮凝り状になっていて、その形態、それに味付け、風味は牛脛の「五香醤牛展」に似ています。中国名は聞きそびれましたが、その味、風味からするともしかして「五香醤豬脷」?
 舌の脂分の甘味、旨味を醤油が引き締めている感じ。こくのあるしっかりした味付けで、ガツンとくる旨さが印象的。
 「この舌、旨~い!ビールが欲しい!」なんて声も上がります。

 鶏肉二切れは紹興酒漬けの「酔鶏」。紹興酒だぶだぶの感じじゃなく、食べて、噛み締めて、ほんのり、うっすら紹興酒の味、風味が浮かび上がる。なんてあたりが素晴らしい。上品で洗練された調理です。そしてお馴染み皮付き豚ばら肉の焼き物「焼肉」。

 野菜は人参。春らしく菜の花。菜の花のほろ苦さとごま油の甘味、こく、風味とのマッチングが面白い。それからトマトの甘酢漬け。
 「これ、家で試してみたけど、こんな風に上手く出来ない!」なんて声が上がる評判の品。今度レシピを尋ねておくことにします。
 そしてぱりぽりの歯触りが快感を覚える「海蜇」。

 がつんとくる旨さの舌の寄せ物の冷製。上品で洗練された「酔鶏」。それに酢漬けのトマト。久々に前菜の話題で盛り上がりました。

 追記  支配人の橋本さんから連絡あり!訂正です。舌の寄せ物の冷製は「豚」じゃなくって「牛」の舌。料理名は「紅米谷炆牛脷」。「紅米谷」というのは糯米の一種の「赤米」で、牛の煮込みの色づけに使う、なんてのは青山「エッセンス」の藪崎友宏さんのサイトにありました。

2010/02/16

久々に西新宿の「山珍居」へ

 旧聞に属する話です。先月、毎年恒例のとある新年会。ここ数年はビッフェ・ディナーでしたが、今年はいつもと趣向を変えて円卓囲んで中華、ということになりました。とはいえコース仕立ての宴会料理じゃつまらない。そこで思いついたのが「鍋」。

 以前、一度きりですが中華風仕立てのしゃぶしゃぶ鍋、ということで海鮮鍋、肉類鍋の2種の鍋を用意し、それぞれお好きな鍋というビュッフェ・スタイルの鍋をやったことがあります。
 「私は海鮮!」、「僕は肉!」とひとつの鍋にかかりっきりの人もいれば、2種の鍋を行ったり来たりという人もいる。人それぞれ、好み色々、千差万別。2種の鍋に皆さん満足。ですが鍋だけではやはり物足りない、というのが参加した人の意見。そうです、鍋って、つけたれや締めの面、ご飯に工夫がなきゃ、同じ味が続く訳で、最後は飽きちゃいますから。

 そんな経緯もあって今回はどんな鍋にするか。流行物なら半分は澄まし仕立て(清湯)で、半分はどっさりの唐辛子が入りでスープが真っ赤の辛味仕立てで「鴛鴦」(もしくは「太極」)火鍋。ことに最近は四川系の店の極辛痺れ仕立て「麻辣火鍋」が大人気。ですが、メンバーの中には辛い鍋は苦手、なんて人もいる。

 中華風のしゃぶしゃぶならやはり「仔羊」か「羊」の「涮羊肉」。ですが「羊」はさすがに(肉じゃなくて脂の)クセが強すぎて「ちょっと勘弁!」。ですけど「ジンギスカン鍋ならOKよ!」なんて人もいて、一体どういうこと?  ともあれ、仔羊肉のしゃぶしゃぶなら神田の龍水樓ですが、20時半までに宴会が終わらなきゃいけない、という時間制限が枷になる。

 そうだ!と思い出したのが西新宿の「山珍居」。「(台湾式)火鍋」があったことを思い出しました。
 「台湾料理」といえば腸詰の「香腸(煙腸)」、蜆の醤油漬けやにんにく炒め、粽にビーフンの各種の料理などが知られてます。最近になってそぼろ肉煮込みかけご飯の「魯肉飯」や「(台南)坦仔面」なども紹介されるようになりましたが、ほとんどの店、日本人好み、日本に親しまれた幅広い各種の中国料理/中華料理もメニューに並べたミクスド・チャイニーズ。しかも小皿で提供なんてのが看板のようで。

 もっとも、台湾に旅してみれば明らかなように、台湾の大衆食堂や夜店の屋台でみかける小吃の類からするとその数は少なく、おまけに、現地風の味、風味のものには滅多に出会えない。調理と味付けだけが強調されていて、風味、香りに乏しいのがほとんど。それに本省人系ということでは、福建、客家系をルーツにする料理が本筋のはずですが、なかなかみかけない。

 そういえば一時、新宿の歌舞伎町におもしろい台湾料理の店を見つけましたが、近寄り難い事件が起きたりいろいろあって疎遠になりました。そうだ随分前、東銀座にもしばし通った店がありましたっけ。高橋健太郎の話によれば横浜にいい店あるそうです。それとは違う店があるってことも、他の情報で仕入れました。

 ともあれ、そんな中で西新宿の「山珍居」は稀なる店。異色の店といえるかも。かつて台湾に渡来した福建人の料理をルーツに、台湾の風土、土壌を反映して形成された郷土料理に出会えます。それも、共産党との戦いに敗れて本土から台湾に逃れ、台湾省を中華民国の本拠とした本土からの外省人が持ち込んだ中国各地の地方菜とは一線を画するものです。かつて清国が日本に割譲し、日本の統治下となった(第二次世界大戦)前後の台湾の郷土料理を継承、というのが面白いところです。

 創業は戦後の昭和22年。店の佇まい、店内の趣きからして、昔懐かしい中華料理店のそれ。昭和の名残をとどめてます。多くの文化人に愛されてきた証は店内に掲げられた色紙の数々が物語る。私は長谷川伸の短冊の一筆に目が釘付け。
昭和の名残りが「山珍居」にありました!

2010/02/14

恭喜發財!

 本日は農歴(旧暦)の1月1日。春節を迎えました。
 毎年、新年が明けてからこの春節の日頃まで正月気分。
 昔、旧暦にちなんでか1月の15日は小正月。松の内はそれまでのつもりでしたが、東京にやってきて、こっちでは7日あたりで松の内は明けちゃう、なんてことを知りました。

 ちなみに農歴にも小正月にあたる「元宵節」があります。春節から15日目、最初の満月を迎える日、その日がすぎればお正月が明けます。
 春節にちなんで除夜の日に「年糕」作りをと思いましたが、今年は餃子を作りました。
 嬉しいことにさる方から「ひがしや」の旬のお菓子を頂戴。
 おいしいお茶を飲みながら、今宵、ゆっくり賞味いたします。

2010/02/04

節分~丸かぶり寿司

 節分です。恒例の丸かぶり寿司、今年も作りました。

 うちのかみさんTVの某「ハナマル~」でどこかの寿司屋の御主人の「丸かぶり寿司は七福神に由来したもんですから具材は七種~」なんて話に吃驚仰天。
 あのうそれってどこの「丸かぶり寿司」?
 「丸かぶり寿司」って、その具、玉子以外は精進ものというのが昔からの慣わしなんですが。
さて、これから豆まきです!


2010/02/01

「なんちゃって白玉粉」繁盛記

  「ねえ、今晩何にする?シャモ肉の切り身を戻して治部煮にしょうかと思ったら、生姜を切らしてるのよ。それから、冷凍のあさり、賞味期限が切れてるんだけど!」
 
 ボブ・ディランの『モダーン・タイムズ』に耳を傾けながら「シンガー=ソング・ライターとしてのボブ・ディラン」なんてテーマを抱えて構想中に携帯に電話あり。
 「え!? う~ん、生姜がない?なら、焼き鶏、塩焼きにすれば?
 あさり?う~ん、おつゆにすれば? 味噌汁は食べたくない。やです。
 あ、そうだ、あさりのチゲ!豆腐あったっけ?ない?そうか、ちょっと考える!」
 とまあ「シンガー=ソング・ライターとしてのボブ・ディラン」どころの話じゃない。

 ふと思いついたのは「トック」。韓国式お餅の「トック」。
 「大根餅」を作るために水に浸して、乾燥させておいた「糯米」の残り。カップ2杯ほどある。
 フード・プロセッサーのスライサーにかけて「なんちゃって白玉粉」にして「白玉」にしてお汁粉でも、という心積もりでしたが、急遽、予定変更。

 「トック」にしてあさり汁仕立ての「トックチゲ(なんてあるんでしょうか、韓国に)」か、なんなら「トッポギ」にすればいい!と、思い立った次第。そうです、豆腐の代わりに「トック」。
 早速、乾燥させた「糯米」、スライサーにかけて「なんちゃって白玉粉」作り。2日間乾燥させただけあって水っ気ほどんどなし、「なんちゃって白玉粉」どころか粗目の「白玉粉」。それを水で溶いて「トック」作り。
 
 ところが、かみさん、水加減、テキトーにやったもんで、ユルユル状態。
 「どうしよう?」
 「小麦粉を足すか?」
 「冷蔵庫に残ってる粉、なんかない?豆の粉とかあるはずだけど、北京で買ってきたのが」
 「うん?ちょっとまって。あ、これ、もうダメ。無駄にしちゃったね。でも「浮き粉」がある!」
 「それ入れちゃお!」

 なんてことで残ってた「浮き粉」を追加。小麦粉の澱粉ですから、いい感じになるかも。
 「なんちゃって白玉粉」と「浮き粉」を水で溶いてこねて棒状にしてのち、輪切りにして熱湯にほうりこめば「なんちゃってトック」の出来上がり。
 ここんとこ「なんちゃって!」続きです。

 「なんちゃってトック」が出来上がったところで、チゲもどきトッポギの開始。
 これまた「なんちゃってトックチゲ」、「なんちゃってトッポギ」。
 東京ねぎ、白ねぎです、端っこについた緑の部分、裏側とろとろ。そのとろ味こそが旨味を生む。なんてことで、緑の部分、細切りに切り刻んでふんだんに使います。

 鍋に胡麻油を適宜。塩漬けの豚のばら肉を微塵切りにして放り込み、せっせとねぎの緑の部分をいためます。本来は大蒜の芯を取り、微塵切りにしてくわえますけど、今日はパス。ねぎがくったりしたら、韓国産の中辛の唐辛子の粗いのを大匙で2杯ほど放り込み、だしを加える。ほんとは牛筋を煮込んだ時にでるだしがいいんですが、今日はないんで煮干、干し魚で作った雑味だし。さらに水を加えて煮詰めます。

 そこに「トック」を放り込み、しばらく煮込んで「あさり」を放り込む。
 あさりの口が開いたら火をとめる。
 味を見たら、なんか足りない。
 とりあえず、味を整えるために「あさり」は別皿に取り出します。

 「う~ん、韓国なら「アミの塩辛」加えそうだから、蝦膠を少々入れるか!」
 「蝦膠」は「蝦醤」の一種、アミの塩辛のようなもので、固形状。
 塩味と醗酵味を加えるつもりで「蝦膠」です。けど、分量は控え目。
 そして「あさり」を戻して出来上がり!
「すっごく美味しい。旨味がしっかり出てるし、味が結構、複雑。いい香りだし、風味があるのねえ」
「塩漬けの豚でしょ?それに「蝦膠」を足したし、醗酵したひね味、利いてるね。でも、こういう料理ってやっぱり「だし」が肝心だね。けど、これだと昆布とかつおぶしでひいた「だし」じゃなくって、アゴとかじゃことか、干し魚でひいた「だし」がぴったりみたい」

「でも、一番美味しいのは「白玉!」
「「なんちゃってトック」、ね!」
 フード・プロセッサーで作る「なんちゃって白玉粉」。
 こんなに活用範囲が広いとは!
 加藤紀行さんの「糯米」に感謝です!

大根餅格闘記

 宅配で届いた大根。優に2・5キロはありそうなぐらい太くて、でっかくて、長い。ところが半分に切り分けたところ、やけに水っぽいところもあれば「鬆(す)」が入ってるところもある。
 「煮物には向いてないみたいだし、大根餅(蘿蔔糕)にしない?」とうちのかみさん。
 「そうすれば!」と相槌を打ったら「え~!? 私が?締め切り抱えて制作で忙しいからだめ!作ってよ!」なんて言われて、不承不承、私が調理を担当。

 ですが「大根餅」、なんだかんだで手間がかかるし、時間もかかる。レシピは私が信頼する香港のミセス欧陽の「中国名菜・飲茶」をもとに、少々アレンジ。「蘿蔔糕」のところを見ると、素材に「米の粉」。別のレシピだと「白玉粉」でもOK。

 「上新粉、あったっけ?でなきゃ、白玉粉で作るか。にしても、ねえねえ、白玉粉あったけ?」と言いながら「待てよ、白玉粉って「糯米」から作るんじゃなかったけ?」
 そうです、我が家には埼玉の東松山の加藤紀行さんから届いた「糯米(餅米)」が常備してある。

 ちなみに、上海蟹の時期の頃、日本の福臨門の各店で出る「糯米飯」は加藤さんの「糯米」を使ったもの。福臨門御用達ってわけで、上質で、なによりも旨くって風味がある。なんてことより、この時期、加藤さんの「糯米」が我が家では欠かせない。香港土産の「臘腸」、「潤腸」とともに腸詰の炊き込みご飯にしたり、「糯米」の炒飯の「生炒糯米飯」にしたり、おこわ飯にしたり、粳米と一緒に炊いたりもします。
 それで「白玉粉」、ほんとは石臼で挽いて作るのが一番。しかも、水洗いして、水に漬けること一昼夜。それから、水とともに石臼で挽き、出来上がった乳液状のものを濾し、圧縮脱水して天日乾燥、というのが本来のプロセス。

 けど、まず我が家には石臼がない。それに、圧縮脱水やら天日乾燥なんて気の遠くなるような面倒な話。そこんとこ、なんとかお手軽にできないものか。そしたらミキサーで「白玉粉」なんてのを検索で見つけ「なら、もしかしてフード・プロセッサーで可能かも!」と思いついた次第。

 フード・プロセッサー、我が家にありながら、なんでこれまでそんな風にして「白玉粉」を作る方法に気づかなかったのかと反省。もっとも、いきなり「糯米」をフープロにというわけにはいかない。まず「糯米」を水洗いし、一昼夜、水につけてふやかします。それから水切りし、乾燥させてから、新たに水を加えながら「糯米」を挽く、というのが本来のやり方。 ですが、「水気があるうちにフープロにかけちゃったほうが、フープロの難点、熱を持ったりするのを防げるかも!」と、手前勝手な都合のいい解釈。

 ところが、フープロのスライサーにかけましたがやっぱり水気を含んでる。で、晒に取って水を搾り出す。これが難行。思いがけず、というか当然なんですが、手間隙かかりました。ということで「なんちゃって「白玉粉」」が一応は出来上がり。

 ちなみに、分量外、残った「なんちゃって白玉粉」を、こねて、鍋で煮て出来上がった白玉、挽きがたりなくてざらとした感触は残ってるものの、市販の白玉粉なんかよか格別に旨い。なんてことで、フープロでの「なんちゃって白玉粉」作りにはまりそう。

 さて、「なんちゃって白玉粉」が出来たところで次なる作業が待ち構えている。
 まず、3時間ほどかけて戻しておいた干し椎茸、干しえび、腸詰、ベーコン代わりの塩漬けの豚バラ肉を、ずべて5ミリ角ほどの粗微塵に。これまた根気の要る作業です。
 中でも腸詰を粗微塵にするのがちょいと面倒で厄介。「生炒糯米飯」を作る時にもこの具材を切り刻む作業があるんですが、適当にやっつけ、手抜きすると料理の出来栄えに大きく影響するもんで、念入りに。時間、結構どころか、かなり食われる作業です。

 それから大根。2キロ全部、糸状におろす!なんてやってられない。
 けど、大根は糸状におろした方が旨いのに決まってる。しかし、今回の大根、すでに難ありですから、加藤さんの糯米で作った「なんちゃって白玉粉」と、具材と味付けに命をかけて、大根の処理はお手軽に。なんてことでフープロのシュレッダーで手抜き処理。ですが、これまたやってみると大変な量。ボウル一杯に山盛り状態。それが、どんどん水が出てくる。その水を捨てても、やっとボウル一杯分ぐらいになりました。

 次いで、油を3匙ほど流しこんだ鍋の中に、シュレッダーをかけた大根、放り込んで煮ます。最初は大根からの水分がどんどん出てって、煮る!状態。そのうち、水が次第になくなって、鍋底の大根が焦げ付く感じになる。それを防ぐにはしゃもじでせっせと炒め合わせるしかない。しかも、狐色になるまで、とレシピにある。それが時間のかかること、時間のかかること。40分くらい、かかりっきり、だったでしょうか。
 
 さて、炒めた大根に粗微塵に切り刻んだ具材を混ぜ合わせ、さらに絞って絞ってもなお水気の残った「なんちゃって白玉粉」を加える。そこで味付け。油、塩、で調味するんですが、その辺は、レシピを参考にしながら、按配見計らい、分量は控え目に。それを容器に入れて、蒸す作業と相成るわけです。
 
 蒸し時間、レシピの指示は何と1時間半!さすがに1時間半、鍋の側で付き合ってなんかいられない。けど、途中、蒸し器の水が足りなくならないように水足しなんかもするわけです。幸いにして、読まなきゃいけない本や聞かなきゃいけないCDがあったんで、蒸し上がるまで鍋の側でお付き合い。そういや、こないだは、豚のリエットを作るのに、ぐつぐつ弱火で蒸し煮、2時間鍋の側でお付き合いなんてのもやったっけ。

 途中「そうだ!「大根餅」が蒸し上がるまでの時間に、水に漬けた分量外の「糯米」や、分量外の残った具材を使って「臘味蒸糯米」、おこわ飯を作っちゃえ!」と、急遽、思い立ちました。なんせ「中華風蒸しおこわ」を作るのにも蒸し時間、40分程かかりますから、作業併行も可能です。

 ところが、おこわが出来上がったというのに、肝心の「大根餅」はまだ蒸しあがらない!
 おこわ食べ食べ(これが抜群に旨かった!おこわはしっかり蒸すのに限ります)、鍋の側で面倒を見続けます!
 蒸し上がったのは深夜の3時。
 ふ~、やれやれ!と大きなため息。

 一体、蒸し上がるまでにどんくらいの時間と労力を費やしたことか。
 しかも「大根餅」、蒸し上がったあとで、熱をとってから冷蔵庫に入れて、冷やして固める作業がある。

 もっとも、冬場ですから、一晩、台所に放置して冷ます事でOkなんて勝手に解釈。案の定、うまくいきました。
 
 本日、出来上がった「腊味蘿蔔糕/大根餅」を食べました。
 美味でした。旨かった。風味がありました。苦労した甲斐がありました。
 自画自賛と思われるかもしれませんけど、ほんとに上出来!

 「私が作るより上手いじゃない!今度から「大根餅」の担当に決まり、ね!」と(容赦のない誉め)言葉を貰ったりして!