2010/02/01

大根餅格闘記

 宅配で届いた大根。優に2・5キロはありそうなぐらい太くて、でっかくて、長い。ところが半分に切り分けたところ、やけに水っぽいところもあれば「鬆(す)」が入ってるところもある。
 「煮物には向いてないみたいだし、大根餅(蘿蔔糕)にしない?」とうちのかみさん。
 「そうすれば!」と相槌を打ったら「え~!? 私が?締め切り抱えて制作で忙しいからだめ!作ってよ!」なんて言われて、不承不承、私が調理を担当。

 ですが「大根餅」、なんだかんだで手間がかかるし、時間もかかる。レシピは私が信頼する香港のミセス欧陽の「中国名菜・飲茶」をもとに、少々アレンジ。「蘿蔔糕」のところを見ると、素材に「米の粉」。別のレシピだと「白玉粉」でもOK。

 「上新粉、あったっけ?でなきゃ、白玉粉で作るか。にしても、ねえねえ、白玉粉あったけ?」と言いながら「待てよ、白玉粉って「糯米」から作るんじゃなかったけ?」
 そうです、我が家には埼玉の東松山の加藤紀行さんから届いた「糯米(餅米)」が常備してある。

 ちなみに、上海蟹の時期の頃、日本の福臨門の各店で出る「糯米飯」は加藤さんの「糯米」を使ったもの。福臨門御用達ってわけで、上質で、なによりも旨くって風味がある。なんてことより、この時期、加藤さんの「糯米」が我が家では欠かせない。香港土産の「臘腸」、「潤腸」とともに腸詰の炊き込みご飯にしたり、「糯米」の炒飯の「生炒糯米飯」にしたり、おこわ飯にしたり、粳米と一緒に炊いたりもします。
 それで「白玉粉」、ほんとは石臼で挽いて作るのが一番。しかも、水洗いして、水に漬けること一昼夜。それから、水とともに石臼で挽き、出来上がった乳液状のものを濾し、圧縮脱水して天日乾燥、というのが本来のプロセス。

 けど、まず我が家には石臼がない。それに、圧縮脱水やら天日乾燥なんて気の遠くなるような面倒な話。そこんとこ、なんとかお手軽にできないものか。そしたらミキサーで「白玉粉」なんてのを検索で見つけ「なら、もしかしてフード・プロセッサーで可能かも!」と思いついた次第。

 フード・プロセッサー、我が家にありながら、なんでこれまでそんな風にして「白玉粉」を作る方法に気づかなかったのかと反省。もっとも、いきなり「糯米」をフープロにというわけにはいかない。まず「糯米」を水洗いし、一昼夜、水につけてふやかします。それから水切りし、乾燥させてから、新たに水を加えながら「糯米」を挽く、というのが本来のやり方。 ですが、「水気があるうちにフープロにかけちゃったほうが、フープロの難点、熱を持ったりするのを防げるかも!」と、手前勝手な都合のいい解釈。

 ところが、フープロのスライサーにかけましたがやっぱり水気を含んでる。で、晒に取って水を搾り出す。これが難行。思いがけず、というか当然なんですが、手間隙かかりました。ということで「なんちゃって「白玉粉」」が一応は出来上がり。

 ちなみに、分量外、残った「なんちゃって白玉粉」を、こねて、鍋で煮て出来上がった白玉、挽きがたりなくてざらとした感触は残ってるものの、市販の白玉粉なんかよか格別に旨い。なんてことで、フープロでの「なんちゃって白玉粉」作りにはまりそう。

 さて、「なんちゃって白玉粉」が出来たところで次なる作業が待ち構えている。
 まず、3時間ほどかけて戻しておいた干し椎茸、干しえび、腸詰、ベーコン代わりの塩漬けの豚バラ肉を、ずべて5ミリ角ほどの粗微塵に。これまた根気の要る作業です。
 中でも腸詰を粗微塵にするのがちょいと面倒で厄介。「生炒糯米飯」を作る時にもこの具材を切り刻む作業があるんですが、適当にやっつけ、手抜きすると料理の出来栄えに大きく影響するもんで、念入りに。時間、結構どころか、かなり食われる作業です。

 それから大根。2キロ全部、糸状におろす!なんてやってられない。
 けど、大根は糸状におろした方が旨いのに決まってる。しかし、今回の大根、すでに難ありですから、加藤さんの糯米で作った「なんちゃって白玉粉」と、具材と味付けに命をかけて、大根の処理はお手軽に。なんてことでフープロのシュレッダーで手抜き処理。ですが、これまたやってみると大変な量。ボウル一杯に山盛り状態。それが、どんどん水が出てくる。その水を捨てても、やっとボウル一杯分ぐらいになりました。

 次いで、油を3匙ほど流しこんだ鍋の中に、シュレッダーをかけた大根、放り込んで煮ます。最初は大根からの水分がどんどん出てって、煮る!状態。そのうち、水が次第になくなって、鍋底の大根が焦げ付く感じになる。それを防ぐにはしゃもじでせっせと炒め合わせるしかない。しかも、狐色になるまで、とレシピにある。それが時間のかかること、時間のかかること。40分くらい、かかりっきり、だったでしょうか。
 
 さて、炒めた大根に粗微塵に切り刻んだ具材を混ぜ合わせ、さらに絞って絞ってもなお水気の残った「なんちゃって白玉粉」を加える。そこで味付け。油、塩、で調味するんですが、その辺は、レシピを参考にしながら、按配見計らい、分量は控え目に。それを容器に入れて、蒸す作業と相成るわけです。
 
 蒸し時間、レシピの指示は何と1時間半!さすがに1時間半、鍋の側で付き合ってなんかいられない。けど、途中、蒸し器の水が足りなくならないように水足しなんかもするわけです。幸いにして、読まなきゃいけない本や聞かなきゃいけないCDがあったんで、蒸し上がるまで鍋の側でお付き合い。そういや、こないだは、豚のリエットを作るのに、ぐつぐつ弱火で蒸し煮、2時間鍋の側でお付き合いなんてのもやったっけ。

 途中「そうだ!「大根餅」が蒸し上がるまでの時間に、水に漬けた分量外の「糯米」や、分量外の残った具材を使って「臘味蒸糯米」、おこわ飯を作っちゃえ!」と、急遽、思い立ちました。なんせ「中華風蒸しおこわ」を作るのにも蒸し時間、40分程かかりますから、作業併行も可能です。

 ところが、おこわが出来上がったというのに、肝心の「大根餅」はまだ蒸しあがらない!
 おこわ食べ食べ(これが抜群に旨かった!おこわはしっかり蒸すのに限ります)、鍋の側で面倒を見続けます!
 蒸し上がったのは深夜の3時。
 ふ~、やれやれ!と大きなため息。

 一体、蒸し上がるまでにどんくらいの時間と労力を費やしたことか。
 しかも「大根餅」、蒸し上がったあとで、熱をとってから冷蔵庫に入れて、冷やして固める作業がある。

 もっとも、冬場ですから、一晩、台所に放置して冷ます事でOkなんて勝手に解釈。案の定、うまくいきました。
 
 本日、出来上がった「腊味蘿蔔糕/大根餅」を食べました。
 美味でした。旨かった。風味がありました。苦労した甲斐がありました。
 自画自賛と思われるかもしれませんけど、ほんとに上出来!

 「私が作るより上手いじゃない!今度から「大根餅」の担当に決まり、ね!」と(容赦のない誉め)言葉を貰ったりして!