2011/02/19

新年宴会パート2~BISTRO KHAMSAの4

奈々先生のメインの料理は「仔羊のハンバーグ」。
円錐形のぼてっとした形状で、切り分けると中はピンク色。肉汁がじゅわっと滲みでる。
「わ、美味しそう!仔羊のハンバーグ、主人が良く作るんだけど、ぜ~んぜん違う感じ。さすがプロだけあって、とても綺麗に仕上がってる。今度、こんな風にメンチカツ風に作ってみてよ!」と、私にせがむうちのかみさん。
「渡邊シェフの料理って「顔つき」が良いのね。見るからに「美味しい!」ってわかるもの」。

そして、郭さんとシェアすることになった私のメインの「本日の特別な料理」。「ビーフ・ウェリントン」でした。これが見事な逸品! 渡邊シェフが「BISTRO KAMSA」で最後の日を迎える何日か前、店のブログに以下のような告知。

「お料理はBeef Wellingtonです!青森牛のモモ肉を下焼きしてマッシュルームのペーストと、埼玉の加藤さんが送ってくださったスーパーほうれん草の、焦しバター炒めでお肉を包み、さらにパイ生地で包んでオーブンで焼きます。ソースは切れを持たせたマデラ酒のソース、調子に乗ってトリュフも入れちゃいます。裏メニューでコッソリとご用意いたします。オーダー時にタツローさんに「ねえ、あれある?例のおパイで包んだお肉?」と聞いてください。おパイで包んだお肉はふんわり柔らかくマッシュルームの香りに包まれ、スーパーほうれん草の甘さの中にある渋みが赤身の渋みとあいまって、食べた瞬間、悶絶即イキ完全無修正です。絶対旨いに決まってます、これが不味かったら、ワタシ相当腕が無い事になります。メニューに載ってませんからね~ブログ限定です。あと、個人的には気に入っているブルーチーズ風味のクレメダンジュもよろしくお願いします」とまあ、勝手に引用。すんません、渡邊シェフ!

うちのかみさんの言じゃないですが、ほんとに料理の「顔つき」が素晴らしい!画像でもわかる通り、青森産の腿肉、刺しが入ってます。その塩梅、レアな焼き加減が見事です。舌の上でとろける脂が甘い。まったりこくのある濃密な甘さです。それに赤身の部分、いちぼを思わせる味、風味がある。

その上に見えるのが埼玉、東松山の農業、加藤紀行さんの日本ほうれん草。焦がしバターで炒めたもの。実は、過日、BISTRO KHAMSAに出かけた際、我が家に到着したばかりのほうれん草を持参。
「加藤さんから届いたほうれん草、もうなくなっちゃったんでしょ。だからちょっとだけ持って来ました……で、もし出来れば、食べさせてもらえないかな?」

馴染みの常連客でもないのに頼み込んだわがままオヤジの私です。そして「青首鴨のパイ包み」に添えて登場した加藤さんのほうれん草、やっぱり焦がしバターで炒めたものでしたが、私には塩味が強すぎた。

ところが、今回の「ビーフ・ウェリントン」での加藤さんのほうれん草、その濃い味、特有の鉄分、えぐみ、甘味、ほうれん草の持ち味を見事に引き出した塩加減、塩梅です。しかも腿肉の脂の甘さ、赤身のほのかな血の味と見事にマッチング。

ぬめり感のある炒めた微塵のマシュルームとのアンサンブルも面白い。もしかしてマッシュルームに、アンチョビとか塩漬けのオリーブとか、醗酵したひね味が隠し味としてプラスアルファされてれば、どうなんだろう……なんてことも思いましたが、そうか、ほうれん草や腿肉とのアンサンブルてこともありますから、ごちゃごちゃ言っちゃいけないか。

この「ビーフ・ウェリントン」。素材それぞれの持ち味を生かした調理、アンサンブル、味付け、香り、風味の素晴らしさに脱帽!

渡邊シェフにメールでエールを送ったところ「なんとか最後にもう一波乱起こしたいなと思い、三振覚悟でやってみました」なんてありました。

本塁打、ホームランです、見事なホームラン!うちのかみさん達、御夫人方との一緒のランチじゃなけりゃ、ワンポーションそのまま丸ごと一皿食べられたのになあ、なんて後悔しきり。どうやらシェアした郭さんも同じ気持だったようです。

BISTRO KHAMSAから独立した渡邊シェフ、新しい店「Le Berkeley」の開店準備中。これが渡邊シェフのブログです。その店名、かつて料理人として渡米した際、お気に入りだった街にちなんだもの。

渡邊シェフ、70年代のウエスト・コースト・ロック好き。グレイトフル・デッドやジャクソン・ブラウン、トム・ウェイツ命!なんてところが、嬉しいなあ。ますますエールを送りたくなります

新年宴会パート2~BISTRO KHAMSAの3

うちのかみさんのメインの「さつきポーク肩ロースのコンフィ」。

格子の網目がついてます。
ってことは、じっくり低温で揚げたあと、網で焼いたってこと?

実は、以前食べた時、塩味、ベタっと重い感じだったので料理を注文する際、「塩味控え目に」とメートルの鈴木さんのお願いしました。

「どう、塩味、塩加減?」
「うん、塩味、利いてるんだけど、前みたいに重くないの。香りがあるし、それに「軽い!」」と、うちのかみさん
「そうそう、お肉、ほんとに美味しいの。香りもあるし、これ、すごく「軽い」よね、いくらでも食べられちゃう!」と杉山洋子女史。

うちのかみさん、私のメインが来るまでに「さつきポーク肩ロースのコンフィ」をぱくぱく食べちゃって、シェアしてくれたのは丹念に切り分けたさつきポーク肩ロースの脂身だけ!
その脂身を食べて、塩梅を想像。
「うん、いい感じみたいね……」(トホホ!)

いつぞや評判のビストロでのこと。
「あらかじめ仕込んであるパテやテリーヌは冷製だろうからいいですけど、メインの料理の塩加減、控え目にお願い出来ますか?」とメートル氏に尋ねました。
「キッチンに尋ねてきます!」
、そんな返事の後で席に戻ってきたメートル氏
「あの……出来ないそうで。ウチのやり方、味加減でお出ししていますので」
とかなんとか、そんな返事に思わず口あんぐり。

「客の口にあわせるのは料理人の技量のうちなのに」と思わずひとりごち。
なんて言うと
「ビストロの料理って、塩味が強いのは当たり前じゃないの?フランスのパリあたりのビストロの塩味の強さ、日本の比じゃないから」という声が聞こえてきそうです。
もっとも、それはフランスの地の素材に併せてのもんでしょうし、塩味がきつくっても素材の旨味を引き出し、香り、風味もあるんじゃないですか?

追い討ちをかけて
「ウチではフランスの○○産の仔羊、△△産の家鴨、□□産の鳩を使ってますから」
なんて声も聞こえてきそうです。だからフランス、それにフランスのビストロそのままの味付けってわけですか? それってどうなんだろう。

味付けは同じかもしれませんが、素材の旨味、料理としての香り、風味がなくては意味は無し、なんじゃないかあなんて思う私です。
「素材はどこそこの○○産」って口上でも、味付け本意。素材を見極め、旨味、風味を生かし、料理としての香りがなければ「素材はどこそこの○○産」なんて口上は単なるブランド信仰、フランドを売り物にしてるだけじゃないでしょうか。

件の店の前菜の「田舎のパテ」や「フォアグラのテリーヌ」、その顔つき、見映えは雑な印象で、頬張ってみてがっつりの旨さ、勢いはあるものの、下拵えが乱雑できめ細かさ緻密さに欠けてました。それも味付け本意で、塩味、べったりとして重かった。

素材の味、旨味はほどほど。何よりも香り、風味が乏しい。思わず、改めて「メインの料理、塩加減、控え目に」なんてお願いしたかったのですが……。
無駄な話をあきらめてべったり塩味の重い濃厚な味をワインで紛らわしながら楽しみました。

日本の中国料理の大半は、実は、そんな按配。素材の旨味、香り、風味を引き出すよりも「中国料理ならではの味付け」が主流を占めます。辛くって、近頃は痺れ味が必須になった日本の四川料理などその最たるもの。プロのフードライターばかりかブロガーや彼らの見解に批判的な人を含め、ご意見のほとんどもそんな風、ですから。

「素材のブランド信仰」、しかも「味付け本意」な料理。日本の中国料理だけじゃなくってフランス料理、イタリア料理の店でも似たような体験、件の店に限らず、これまでたくさんありました。
私が出会った渡邊シェフの料理、そんな問題点をほぼクリアー。

「塩味が利いてても(料理に)香りがある。それに「軽い」」と、うちのかみさんは大満足。
杉山洋子女史も同意見。不参加だったあぐり女史に料理の「軽さ」を熱弁、だったそうです。

2011/02/18

新年宴会パート2~BISTRO KHAMSAの2

うちのかみさんの中国語教室の新年会。奈々先生とご主人の郭充さん。郭さんはフォトグラファー。昨年末他界した父君の郭博さんは建築家。フォトグラーファーとしても素晴らしい写真集を出版。それについてはいずれまた。
それからかみさんのジュエリー仲間の杉山洋子女史。うちのかみさんに私、という顔ぶれ。

着席間もなくメートルの鈴木さん「あの、うちのブログ、ご覧になりました?今日は特別に用意した料理がありまして、ひと皿分はご用意してございますが」。「あ、あれですね!」と「BISTRO KHAMSA」のブログをチェック済の私は思わずにんまり。ランチタイムに出かけても夜のアラカルトを所望、なんてわがままオヤジのごーまんぶりをご存知のメートルの鈴木さん。

ですけど、今回、私だけが夜のアラカルトからチョイス、というわがままは通らない感じなんで、はてどうするか。他の皆さん、ランチのメニューを見て何を選ぶかそれぞれ盛り上がり。
いろいろ検討の末、それぞれメニューが決定。

かみさんは前菜に「スモークサーモンのキッシュ」、メインはメニューにはありませんでしたがリクエストで「さつきポーク肩ロースのコンフィ」。
「あ、それ、美味しいって言ってた料理でしょ?私もそうしようかな。それに前菜は「自家製生ハムのさらだ仕立てにする!」と杉山洋子女史。「迷うわね……うん、私は「田舎風パテ」、メインは「仔羊のハンバーグ」と奈々先生。
「前菜は「スモークサーモンのキッシュ」にしよう。メインは……」と思案中の郭さん。

で、私。前菜、アラカルトから選び出したかったんですが、皆さんに合わせてランチ・メニューから前菜は「田舎風パテ」。
メインはどうしようか。というもの「本日の特別メニュー」が気が気でない。

メートルの鈴木さんに本日の特別料理、プラスアルファの値段でランチ・コースに組み入れ可能かってこととポーションを尋ねたところ
「う~ん、キッチンに尋ねてきます」。
そんな返事の後ですぐさま
「ランチコースの組み入れは大丈夫です。それにポーションですがお二人でシェアもできますが……」。

「おお、ラッキー!なら、ね、郭さん私とシェアしない?」
とまあ、郭さんに強引にシェアを押し付ける格好でメインは「本日の特別メニュー」に決定
「本日の特別な料理」というのは、実は渡邊シェフ、独立してオーナー&シェフとして店を持つことになったため、この日は「BISTRO KHAMSA」最後の日。というわけで用意した料理だったわけです。

さて、かみさんの前菜の「スモークサーモンのキッシュ」。
シンプルで素朴そう。ですが見るからに美しい。
こりゃ旨そうだ。付け合せのサラダも瑞々しい感じです。

ひと口頬張ってしばらく、うっとりとして「お・い・し・い」とウチのかみさん。
その味は……シェアしてもらえませんでした。

そして、私の「田舎風のパテ」。

これも見るからに美しい。緻密な肉質、ピンク色の艶やかな色合い。食をそそります。ひと口頬張れば、舌に触るざらっとした感触。肉質しっかり。それが噛み締めるとしっとり、ねっとり。塩味が利いてますが塩梅の加減、良いです。肉の甘味や旨さ、さらにはしっかり香り、風味がある。

パテ型のケース丸ごと一本テイクアウトして、朝、昼、晩、食べ続けたい感じです。「田舎風のパテ」、いろんなところで食べました。デリで買いました。自分でも作ってみました。そんな中で、私好みの味、香り、風味、ということではマイ・ベスト・スリーに入る一品。

「これ、すごく美味しい。香りがあるのがいいよね」と、シェアしたうちのかみさん。

2011/02/15

新年宴会パート2~BISTRO KHAMSA まずは長い前説

うちのかみさんが習ってる中国語の恒例の忘年会。
昨年末、先生の奈々さんのご主人のご家族に不幸があって中止に。
年を越えて新年会を開催と相成り、私も参加。
場所は中目黒の「BISTRO KHAMSA」。私同様、渡邊洋司シェフにぞっこんのかみさんのチョイスです。

うちのかみさん、友人とのランチに利用済。その時食べた「カスレ」を絶賛。
もっとも量もたっぷりなので全部は食べきれず、ナイショでお持ち帰り。
私も食べましたがかみさんが絶賛もなるほど、料理が旨いというだけでなくしっかり香りがあって風味が豊か。その味付けもさることながら「いんげん豆」に打ちのめされました。

「これ、すごいでしょ!この豆の茹で加減と味付け!」と、うちのかみさん興奮しきり。
絶妙の茹で加減です。すっと歯が入る滑らかな触感。
噛みしめるとはらりほろり身が崩れる。というぐらいにふっくらほくほく。
豆の素朴な甘味、旨味、風味がじんわり浮かび上がる。
しかも豆の旨さを引きたてる塩加減、その「塩梅」が見事。
「やっぱり渡邊シェフって、只者じゃないね!」とその夜は盛り上がりました。

そして私、実は正月の半ば、知人と「BISTRO KHAMSA」で昼食。
予約の際
「あのプレートランチや昼のコース、デジュネですか?季節柄、ジビエを食べたいんで、夜のアラカルトから選べればうれしいんですけど」
慇懃にわがままオヤジぶりを発揮。
電話を受けたのはどうやらアテンドの三好さんのようでした。

そんなリクエスト、予約の際にメモされていたらしくって、着席早々
「ジビエをご希望だそうで!」とメートルの鈴木さん。
手渡してくれたのはアラカルトも記された夜のメニュー。
わがままオヤジをくすぐる心憎いサービスです。

そして出会ったのが「ブータンとリンゴのコンポート、エスペレット風味のクルート」。
「ブータンノワール」なら豚の血入りのソーセージ。
ですが、この料理の場合、腸詰ではなくってパテ仕様。
これがヒット。三塁打というにふさわしいヒット。
なんでホームランじゃないの、って?
ま、それはともかく「渡邊シェフは只者じゃない!」と、ますます確信。
渡邊シェフの料理への取り組み、その姿勢、料理センス、技量を物語る一品でした。「ブータンとリンゴのコンポート、エスペレット風味のクルート」。豚の血入りのパテをリンゴのコンポートをはさんだトリプル・デック仕立て。さらにその表面を覆う薄い膜がある。あ、そか、これが「エスペレット風味のクルート」なのね。オーブンで焼かれたのか焦げ焦げでぱりぱり、さくさく。中国料理用語で言えばまさしく「脆」の触感です。

表面を覆う焦げ焦げのぱりぱり、クルートですが、後で渡邊シェフに尋ねてグリュイエールチーズ(どこのだ?)に生パン粉、バターを混ぜ合わせ、たっぷりの白胡椒とエスペレット唐辛子で仕上げ、冷蔵庫で締めたもの、だそうです。
エスペレット唐辛子?ネットで検索、バスク地方特産の唐辛子と知った次第。辛味は控え目、なんですけど、旨味がある。韓国唐辛子の中辛の手前の感じ、良質のカイエンペッパーかな? と、自分のしってる知識にたぐりよせて納得、なんてのがわがままオヤジです。

その表面、クルートね、それがオーブンで焼かれ焼かれて、塩味、醗酵味のひね加減が凝縮。そして、上下2層のブータン、豚の血入りのパテ、豚の血のざらっとした触感と鉄分しっかり。しかも、独特の甘味、コクがある。

その甘味、こくの正体。豚の背脂と玉葱だってことは私だってわかります。しかし、プラスアルファの何かがある。と思ったら、ミルク、牛乳でした。ちなみに、渡邊シェフがナイショで伝授してくれたレシピ。
私には再現不可能ですけど、それによれば

「1、背脂を細かく角切りにして鍋で溶かし、脂が溶けたら、みじん切りのタマネギを入れ、シュエします。

 2、次に牛乳、コーンスターチ、塩、白胡椒、黒胡椒、ナツメグ、キャトルエピスを加え、よ〜く火を通します。牛乳はよく火を通すと甘くなります、そうする事でシンプルなブーダンにボディーがつきます。

 イメージ的にタマネギが下半身、牛乳がお尻、腰回りです、火を加える事によりがっしりとさせます。この料理の場合、下半身は弱めです、アメリカ人みたいな体型にします」。

「ン!? タマネギが下半身、牛乳がお尻、腰回り」なんだか表現がエロチック。想像しちゃいますから(って、なにを?)ン!? もしかして渡邊シェフって……好きモノ(って、なにが?)「下半身は弱め」な「アメリカ人みたいな体型」って、をいをい。わかるようなわからんような解説、しかし、ニュアンスはばっちり。

ともあれ、豚の血入りのパテ、ざらっとした触感と鉄分が漲る感じ。そのぼってり、どっしりの甘さ、こく。リンゴのコンポート、火を通したリンゴのしっとりねっとりの触感、火を通したリンゴのフルーティな味わい、酸味が旨味に変化。

豚の血のパテとリンゴのポンポートが混然一体となって織り成す多彩で重層的な甘味、旨味とコク。塩味しっかり、なのに味わいは「軽い」。「わ、すげえや」と感嘆。アルザスかゼータクしてイケムと一緒なら、味わい、香り、ますます増幅!なんて思いました。

で、なんでホームランじゃなくて三塁打のなの?というのは、豚の血とリンゴのコンポートとの重層的な甘味、旨味、こくを包み込む、繋ぎ止めるひと味の甘さ、旨味、風味があるんじゃない?なんて思ったからですが……。まあ、知ったかぶりのわがままオヤジの戯言、ってことで!

けど、良かったなあ。「スタンダール風ソーセージ」の味、旨味、風味も抜群でしたが、この「ブータンとリンゴのコンポート、エスペレット風味のクルート」、ずしんとキャッチャーミットに収まる直球まっしぐら、って感じの渡邊シェフの意気込み、意欲、そのまんま全開。それでいて「軽い!」、なんてところが最高に素敵でした。

2011/02/11

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の5

「わ、もう、とっくにお腹が一杯、なのに~」という声も聞こえます。
すでに「發財好市」のあたりからそんな声もちらほらでしたが、「蒜茸炒菠菜」はなんとしても皆さんに食べてもらいたかった。
「もうお腹が一杯!」なんて方には無理強い状態。その甲斐あってお情けでお付き合いのひと口、のはずが加藤さんの味が濃くって頑丈な「ほうれん草」の旨さに、根っ子の甘味に取り付かれ、ほぼ全員がひと皿完食。

そこに登場してきたのが、締めくくりの面・飯の「鮑汁炆伊麵/伊府麵ときのこの鮑ソース煮込み」。私の好みの麵料理です。
「わ、どうしょう」なんて声とともに「麵とデザートは別腹ですから!」なんて声も。
「鮑汁炆伊麵」の「伊府麵」、日本ではなかなかお目にかかれない幅広い麵です。
特別に製造を依頼したか、それとも、香港から調達したものなんでしょうか。
その幅広の「伊府麵」、触感は「きしめん」に似てますけど、つなぎに玉子を使ってあるはずで、小麦粉にプラスアルファの味、風味あり。しかも「きしめん」を茹でると表面は半透明のつるんとした膜に覆われてますが、この「伊府麵」、いきなりざらっとした舌触りで、弾力のある噛み応え。
それも「干焼」仕立て、と言うのでしょうか。しっかりたれが麵に絡みつくまで炒められてます。そのたれ、甘味、旨味、こくと美味なる磯の香、風味がある。「鮑汁」、つまりは干し鮑を戻すときに生まれた煮汁のせいです。

プラスアルファ、オイスターソースの甘味、旨味、こくや、中国たまり醤油の「老抽」の味、風味もほのかに浮かび上がる感じ、なのですが、実際はどうなのか、袁さんに尋ねなきゃ。ともあれ、旨味、甘味、しっかり。伝統的な広東料理に特徴的な旨味、甘味にまったりとしたこくがある。しかも、後味はすっきり。そして「軽い」。というのは、料理人の調理、味付けの技なのは明白です。

そしてデザートの「甜品」。
いつもは各種「甜品」が並んだデザートプレートの披露がありますが、今回は温かい汁粉の「合桃露湯圓」で統一。
胡桃仕立てのお汁粉で、「湯圓」、つまりは団子が2個。
そのひとつずつ味、風味が異なります。なんてところが憎い。

さらに、新年には欠かせない「年糕」も登場。
白玉粉を主体にココナッツなどが加味されたもの。香港、というか広東式の「年糕」。
ういろうに似た触感。噛み締めれば歯にしがみつく感じのねっとり、粘着質な感じ。
香港の「年糕」、家ごとに、また、店ごとに味、風味が違います。久保田さんの手になる「年糕」。素朴で昔懐かしい味わいと風味。

久保田さんの「懷舊点心」、そのひとつひとつに技があります。「懷舊点心」と語るにふさわしく、昔懐かしい点心の味、風味をきっちり再現。
「懷舊点心」を中心にした飲茶ランチかディナー、なんとか実現したくなりました。

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の4

次いで「粉絲蒸花蝦/活け海老と春雨の蒸し物」。

「わ、すごい!」と声が上がります。場が一気に華やぎます。
色鮮やかな美しい料理。というだけでなくお皿のど真ん中に「もう、どうにでもして!」なんて感じで横たわる一匹の「えび」が、目を捉えて離さない。見るからに旨そうです。
開かれた「えび」の腹の上には粗い小口切りの青ネギ。板の仕事、橋詰さんがいた頃とは変わりました。

それにしても「花蝦」ってなんだろう?大ぶりの車えびという感じですが、何というえびなのか、産地はどこなのか、橋本さん、山下さんに聞きそびれました。ともあれ、「活け海老」のにんにく風味の蒸し物、これまでにも登場しました。私の好きな料理のひとつです。

以前触れてきたように、海老にも旬があります。それに香港周辺で収穫される海老、タイ、マレーシア、ベトナムの東南アジア沿岸で収穫されて香港に届く海老と、日本の各地で収穫された海老は、その資質、味、風味が異なります。それも日本産の海老、香港のように茹であげた「白灼蝦」などではなく、何がしかの調理、調味をした方がその持ち味、生きるんじゃないでしょうか。

その調理のひとつがにんにくで蒸した「蒜茸蒸」。新鮮な魚介はなんでもそうですがちょっとばかり下拵えして、焼くなり、蒸すなり、茹でこぼすなど、火を通すと触感が異なり、味、旨味、風味が凝縮。活けの生の海老はこりっとした硬い歯触りですが、火を通せば身も締まります。

蒸せば(ま、蒸し加減にもよりますけど)、こり感よりもぷり感が際立ち、しかも肉質しっとり。ジューシーな味わいになります。それに甘味が立ち、旨味も凝縮。そこにたれをかけて仕上たのが「蒜茸蒸蝦」。
身も旨いですが、殻も旨い。殻ごとむしゃぶりつきたくなるほど旨い。さらにはたれ、海老の甲羅や身から出るエキスをたっぷり含んでいるので、これまた旨い。ご飯にかけて食べたくなるほど旨い。

今回の「粉絲蒸花蝦」、添えられた「粉絲」つまりは春雨が、にんにくで蒸した海老の殻や身のエキスのまじったたれをしっかり吸い込んでいる、という按配。つるつる、とろとろの春雨が、これまた旨い。
もともと「蒜茸蒸蝦」は、にんにくのみじんとたれで仕上ただけの料理でしたが、香港ではこんな風に春雨を添えて蒸すのがここ最近のトレンドにもなっている様子。海老の旨さをとことん堪能出来る一品でした。
そして「蒜茸炒菠菜/ほうれん草ににんにく風味炒め」が登場。

ほうれん草は埼玉、東松山の農業、加藤紀行さんのほうれん草。譚さん、袁さん、それに宴会の参加者に是非とも食べてもらいたい、ってことで加藤さんにお願いしたものです。
「根っ子が旨いですから、根っ子つきのままで味わってみて下さい」と支配人の橋本さんを通じて譚さん、袁さんに伝言。そしたら、根っ子付きのままで登場。

「これ、旨い。ほうれん草の味も濃いけど、根っ子が甘くて旨いね!」
宴会の参加者から絶賛の声しきり。
冬場、加藤さんから届くほうれん草を食べてる私ですが、味が濃くって風味のある加藤さんのほうれん草の持ち味、香りを生かしたこの調理、味付けの見事さに感心。
ほうれん草の葉はしっとりとした滑らかな歯触り。根はほくっとしていて噛み締めると甘味が際立ちます。
塩味はぎりぎりの手前の加減で、だしの味が生きてます。それに、後味でにんにくの風味が浮かび上がる。
洗練された気品のあるほうれん草炒め。
プロの技に脱帽しました。

2011/02/09

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の3

それから「發財大好市/干し牡蠣と髪菜の煮込み」。
待ってました、これこれ!(と、歓声を上げたのは私だけ!)伝統的な広東料理、豪華素材を使った一品で、新年には欠かせない料理です。

この「發財好市」、素材の「發髪」と「發財」、つまりは「財を成す」というの言葉と音が似ていること。さらに素材の「蠔豉」、干した牡蠣ですが、その音は「好市」、つまりは「好景気」、言ってみれば「商売繁盛」という意味の「好市」と似ている。なんてことから「髪菜蠔豉」の料理名を縁起を担いで「發財好市」としたもの。

素材の要は「瑶柱」、すなわち干し貝柱。干貨素材ではふかひれ、干し鮑、燕の巣などには劣るものの、魚の浮き袋の「花膠」などとともに並び称される。実際、干し貝柱の値段からすれば、贅沢な素材であることは明らかです。

その「瑶柱」、戻し方については料理本やサイトなどでも紹介されていますが、おっとどっこい、紹介されてるように簡単なものじゃないんですね。あ、私の体験ですが。その戻し方次第で、旨さ、こく、風味、断然違いますから。

料理本のレシピ通りにやってみても、香港の広東料理店で出会うそれとはいつも「なんだかなあ!」と、似て非なる感じ。なんてことで丸福食堂こと福臨門の呉錦洪さんや我が兄弟、周中師傳に願いを請い、教えられたレシピを元に工夫を重ねました。

袁さんが戻した「瑶柱」も、香港の広東料理ならではのもの。甘味、旨味、ひね味、風味があります。今度、尋ねてみなきゃ。

そんな「瑶柱」、「髪菜」ともに、この料理の味の要なのが丸ごとのにんにく。
ほくほく、ねっとりで、特有のくせをわずかに残した甘味、旨味、風味があります。
干し椎茸もしっとりとしていて、噛み締めればじゅわっと旨味、風味が口中にほとばしる。
そして味付け。だしは二番だしの「二湯」かな?それにしては上品で旨味があります。調味料はオイスターソースの「蠔油」、中国たまり醤油「老抽」。こくのある甘味、旨味、風味は伝統的な広東料理に特有のもの。塩味が利いていますが、角張ったものではなくて、おだやか。

そして、小皿に取り分けられた「發財好市」の下に見えるのは小松菜の炒めもの。実は埼玉、東松山の農業、加藤紀行さんの「小松菜」です。今年の加藤さんの「小松菜」、味が濃厚で風味が豊。ほうれん草を凌ぐほどの見事な出来栄え。譚さん、袁さんに試食して貰うおうと加藤さんに依頼して送り届けて貰ったものですが、まさか、こうして登場してくるとは思いもよりませんでした。

譚さん、袁さん、加藤さんの「小松菜」の味の濃さ、香り、風味に着目、ってことらしくて急遽「跟菜」ということで、いわば付け合せってことで登場。しかも、こくのある味付けの「發財好市」の干し貝柱、髪菜、干し椎茸やにんにくとの相性は抜群。それらに負けない強さがありました。

この種の伝統的な広東料理独特の調味、日本の広東料理店でも出会えますが、オイスターソースの味ばかりが際立った濃厚な味付け、だったりします。ですが、この「發財好市」、まったりした濃厚なこくがある。なのに、後味はすっきり軽い。新年宴会だからこそのこの一品に出会えただけでも満足至極。その味付け、風味、そして、調理の技に感服。

2011/02/08

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の2

そして「雪蛤蟹燴翅/カエルの皮下脂肪と蟹肉入りフカヒレスープ」。

ふかひれの料理は宴会料理には欠かせない一品。ことにふかひれは干貨素材の中でも最も馴染み深い素材ですから、皆さんの目の輝きも違います。
近頃、ふかひれの料理といえば姿煮がもてはやされますが、それが一般化したのは経済成長以後のこと。かつて香港でも宴会ではふかひれの散翅を使ったふかひれのスープが一般的でした。ということでは懷舊菜的趣向によるもの。
さらに、ふかひれだけでなく蟹肉が添えられていますが、もうひと素材加えられてました。
「ね、このカエルの皮下脂肪、って一体なんなの?」なんて声があがります。
「「雪蛤」は「蛤士蟆」とも言うんですが「蛙」の一種です。そのメスの「输卵管」を乾燥せたもので「雪蛤膏」とも言うんですけど、冬場を迎える前に養分を蓄えてあることから、薬効もあるというんで料理に使われるんですよ。コラーゲン質なんで美顔によいって言われてますけど。料理よりもデザートの素材に使うことが多いです」とひとウンチク。

スープはすっきりとした澄まし仕立て。だしの「上湯」の味、風味を生かした上品で洗練された一品。
ふかひれの「ぷり、ぷち」感と雪蛤の「こり、ぽり」感、という歯触り、舌触りの対比も、味わい所。かつて香港で地元の友人の宴会に招かれた時にであった懐かしいふかひれのスープでした。

そして「馬拉醤帶子/ホタテ貝のマレーシアソース炒め」。

帆立貝の貝柱のちょい厚目のスライス、「鱸」のすり身を素材にした「魚餅」の薄スライスと、赤と黄色のパプリカ、アスパラガスの炒めもの。さっと油通したらしい帆立の貝柱は、ねっとり、しっとりの触感。噛み締めると甘味、旨味が際立ちます。
「鱸」のすり身を素材にした練り物の「魚餅」は、関西で言う天ぷら、さつま揚げに似たような触感、味、風味。香港の潮州系の面粥店などではおなじみのものですが、ざらとした肉質、味、風味もしっかり、なのは自家製だからでしょう。私の好みの素材です。今度、自分でも作ってみよう。

色鮮やかな野菜は、それぞれに触感、味、風味が異なります。それらを「馬拉醤」で調味したもの。
「馬拉醤」、これまでにも新鮮な魚介の炒めもの、蒸し物にたびたび登場。醗酵味のこくのあるひね味がして、さらにはホット&スパイシー。ほのかな感じで、こく、旨味、ひね味、辛味が浮かび上がるという按配で、調味料の扱い、袁さんならではの行き過ぎない「手前加減」。

ところで「馬拉醤」。以前、紹介したように「蝦膏」と呼ばれるアミの塩辛の「蝦醤」を固形化したものや干し蝦の「蝦米」などに香味野菜、さらには唐辛子か唐辛子味噌などを加味して作るスパイシーな味噌。 なんですけど、今度、袁さんの使う「馬拉醤」の正体、確認をとってみましょ。

2011/02/05

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会

毎年恒例、仕事仲間の新年宴会。今年は「赤阪璃宮」銀座店と相成りました。
当初、宴会の幹事から場所の相談を依頼された私ですが、予算を考えて一瞬は思案。
もっとも「赤坂璃宮」銀座店にはリーズナブルに広東地方の郷土料理を楽しめる「家郷菜コース」というのがある。それを下敷きにしてプラスアルファの予算で実現が可能なんじゃないだろか。おまけに日頃の月例の会議のメンバーは4人か5人。それが新年宴会では頭数も増え、総予算も膨らみます。

中国料理店ならどの店だって「ご予算に応じて!」とあるように、一応の予算を用意すれば、料理の内容を改め、品数を軽減してもらいながら宴会の実現は可能なはず。それこそ、中国料理店ならではの魅力です。なんてことで「赤坂璃宮」銀座店の橋本支配人に相談をもちかけたところ「大丈夫です!」と承諾を得ました。
まずは前菜の「璃宮焼味盆/璃宮特製焼き物前菜」。

前列、右から伊達鶏の冷製、家鴨の焼き物の焼鴨、叉焼、皮付き豚ばら肉の焼肉。日頃お馴染みの品々。ですが「赤坂璃宮」銀座店初体験の参加からは「わっ、綺麗だね!」と驚きの声。その新鮮な感動の様子に気分が盛り上がる。いずれもひと切れずつですが、4種、皮と身の触感、味、風味の変化の妙が楽しめる。それにひとつひとつが肉厚。切り方が分厚くって、それぞれの印象は強烈です。

もっとも、伊達鶏の冷製、いつも気になるんですが、皮はともかく身はしっとりとしてるもののちょっと身が緩い。この身の緩さ、素材自体の特質なのか、もう少し身に締まりのある調理、工夫の余地ありなんじゃないかと思います。

家鴨の焼き物の焼鴨。これもいつもに比べると皮が緩い。もっとも、身のほうはしっかり火が通っていて、しっかりとした噛み応え。も少しレアな火の加減でもよかったかも。ってことは、皮の下拵え、火の通し方が課題でことでしょうか。

叉焼の表面は焼きがしっかり入って、甘味のある味付け。肉質しっかりで、噛み応えあり。ですが、ちょっと火の通し、私の好みからすると行き過ぎ、なので身のしっとり感が乏しいのがちょっと残念。
皮付き豚ばら肉の焼肉。さくさくとした皮と塩味が利いた肉が旨い。厚みもあって実に食べ応えがあって満足。さらに周りを囲む付け合せ類、なかでも干し椎茸のマリネ、しっとりとした触感とじゅわとあふれ出す干し椎茸の味わい、風味が印象的でした。
そして「椒塩鮮石斑/ハタのスパイス揚げ」。

「わ、でっかい!」。
大皿の端にでんと居座るハタの頭と尻尾。それからもこのハタの大きさがうかがえます。
ハタの身は、三枚に卸して、極太の切り身に。その切り身も肉厚。その見映えからすれば「油浸」の調理なのは明らかです。

「油浸」は、言わば「唐揚げ」なんですが、その下拵え、揚げ方、火の通し加減に特徴あり。皮もついた身の表面はかりっとクリスピー。しかも、さくっとした触感があります。さらに、噛み締めれば皮のぱりさくとは対照的に、身はしっとり。

身がはらり、ほろりと崩れ、ジューシーな味わいがほとばしる。甘味、旨味があります。それも、塩味、塩使いの按配が、脂がたっぷり乗ったハタの身が持つ特有の甘味、旨味を引き立てる。
この「油浸」の調理、中国各地にもありますが、ほとんどは「草魚/鯇魚」はじめ淡水の川魚がその素材。広東地方、ことに香港では海鮮の魚の調理に応用。中でも「油浸」で調理した老虎魚など、まさに絶品。

ハタもその素材には格好なもので、はらり、ほろりと崩れる身のしっとり具合、舌触りの滑らかさ、脂の乗った身の甘さ、旨味、風味はたまらないほど美味。単なる「唐揚げ」じゃなくって、魚の旨味、風味が存分に味わえます。ですが、日本では、それも広東料理店ではなかなか出会えない。というのは、やはり下拵え、火の通し方など調理に技があり。袁さんの技、実に見事です。

そんな「油浸」で下拵えしたハタの切り身に、にんにく、パプリカの微塵切りを揚げてまぶしてあります。
塩、胡椒や唐辛子、にんにくのヒリ辛味を利かせたもので、これまでにも紹介してきた「避風塘」風スタイル。
大ぶりのハタを調理したダイナミックな料理ですが、緻密で洗練された味、風味。それを引き立てるスパイスの利いた味付けも絶妙でした。

2011/02/04

節分 春節

今日は節分。例年通り太巻きをこさえました。
なんでも節分の「丸かぶりの恵方巻き」、今では全国的なイベントになったそうで。
ラジオに耳を傾けていると、その由来、曰く言われのもったいぶった紹介、うんちくあいついで紹介されてましたけど、そのほとんどが「をいをい!」なんて疑問沸騰。

もっとも、私、子供の頃、神戸にいた頃ですが「丸かぶりの恵方巻き」の体験なし。それが、うちのかみさん、大阪出身、しかも商いの一家に生まれ育ち、長年続けてきた習慣が我が家に持ち込まれた、という次第。

その具は干し椎茸、干瓢、押し(高野)豆腐、三つ葉、出し巻き玉子。
出し巻き玉子を除けばすべて精進仕立て。ですから巷で話題の「具は七品」とか「海鮮巻き」などとは縁遠い。
そういえば東京の太巻き、その具がそれぞれに存在を主張。しかも甘味が強くて味が濃い、というのが特徴ですが、我が家の太巻きはそれとは対照的。
干し椎茸は戻しただしに三温糖、薄口醤油で味をつけます。
干瓢、押し豆腐、出し巻き玉子のいずれとも、鰹節と昆布でとっただしが味の要。やはり三温糖と薄口醤油で味を調えます。
ですが、すべて薄味仕立て。
具の味、それぞれに存在を主張するのではなくて、具のすべてが寄り添うようにして、ひとつの味、一体味を形成、というのが特徴です。
そして、海苔。これも太巻きの味、風味の要。
我が家では伊勢の木野本海苔店から答志島産の「乾のり」を調達。

答志島産の海苔は「男海苔」。
浅草海苔のような「女海苔」とは対照的にその味、風味はがっしりとしていて、素朴で力強くて逞しい。しかも、精進仕立ての具の楚々とした純な味わいと見事にマッチング。
洗練された上品な味、風味を醸し出します。ことに「乾海苔」は巻物、それも精進ものとの相性がぴったり。魚介なら「焼き海苔」がいいですね。
ちなみに木野本海苔店の「乾のり」、10枚ひと束、400円。 消費税をプラスして、さらに取り寄せの送料込みでも、10枚ひと束、500円にもならないわけで、絶対のお買い得。 なんていっても「男海苔」になじみがあっての話、ってことになりますが。

そして本日は春節。
春節ならではの料理、実は過日、仕事仲間の恒例の新年宴会で出会えました。
その報告は後日にまた!