2011/02/11

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の4

次いで「粉絲蒸花蝦/活け海老と春雨の蒸し物」。

「わ、すごい!」と声が上がります。場が一気に華やぎます。
色鮮やかな美しい料理。というだけでなくお皿のど真ん中に「もう、どうにでもして!」なんて感じで横たわる一匹の「えび」が、目を捉えて離さない。見るからに旨そうです。
開かれた「えび」の腹の上には粗い小口切りの青ネギ。板の仕事、橋詰さんがいた頃とは変わりました。

それにしても「花蝦」ってなんだろう?大ぶりの車えびという感じですが、何というえびなのか、産地はどこなのか、橋本さん、山下さんに聞きそびれました。ともあれ、「活け海老」のにんにく風味の蒸し物、これまでにも登場しました。私の好きな料理のひとつです。

以前触れてきたように、海老にも旬があります。それに香港周辺で収穫される海老、タイ、マレーシア、ベトナムの東南アジア沿岸で収穫されて香港に届く海老と、日本の各地で収穫された海老は、その資質、味、風味が異なります。それも日本産の海老、香港のように茹であげた「白灼蝦」などではなく、何がしかの調理、調味をした方がその持ち味、生きるんじゃないでしょうか。

その調理のひとつがにんにくで蒸した「蒜茸蒸」。新鮮な魚介はなんでもそうですがちょっとばかり下拵えして、焼くなり、蒸すなり、茹でこぼすなど、火を通すと触感が異なり、味、旨味、風味が凝縮。活けの生の海老はこりっとした硬い歯触りですが、火を通せば身も締まります。

蒸せば(ま、蒸し加減にもよりますけど)、こり感よりもぷり感が際立ち、しかも肉質しっとり。ジューシーな味わいになります。それに甘味が立ち、旨味も凝縮。そこにたれをかけて仕上たのが「蒜茸蒸蝦」。
身も旨いですが、殻も旨い。殻ごとむしゃぶりつきたくなるほど旨い。さらにはたれ、海老の甲羅や身から出るエキスをたっぷり含んでいるので、これまた旨い。ご飯にかけて食べたくなるほど旨い。

今回の「粉絲蒸花蝦」、添えられた「粉絲」つまりは春雨が、にんにくで蒸した海老の殻や身のエキスのまじったたれをしっかり吸い込んでいる、という按配。つるつる、とろとろの春雨が、これまた旨い。
もともと「蒜茸蒸蝦」は、にんにくのみじんとたれで仕上ただけの料理でしたが、香港ではこんな風に春雨を添えて蒸すのがここ最近のトレンドにもなっている様子。海老の旨さをとことん堪能出来る一品でした。
そして「蒜茸炒菠菜/ほうれん草ににんにく風味炒め」が登場。

ほうれん草は埼玉、東松山の農業、加藤紀行さんのほうれん草。譚さん、袁さん、それに宴会の参加者に是非とも食べてもらいたい、ってことで加藤さんにお願いしたものです。
「根っ子が旨いですから、根っ子つきのままで味わってみて下さい」と支配人の橋本さんを通じて譚さん、袁さんに伝言。そしたら、根っ子付きのままで登場。

「これ、旨い。ほうれん草の味も濃いけど、根っ子が甘くて旨いね!」
宴会の参加者から絶賛の声しきり。
冬場、加藤さんから届くほうれん草を食べてる私ですが、味が濃くって風味のある加藤さんのほうれん草の持ち味、香りを生かしたこの調理、味付けの見事さに感心。
ほうれん草の葉はしっとりとした滑らかな歯触り。根はほくっとしていて噛み締めると甘味が際立ちます。
塩味はぎりぎりの手前の加減で、だしの味が生きてます。それに、後味でにんにくの風味が浮かび上がる。
洗練された気品のあるほうれん草炒め。
プロの技に脱帽しました。