「わ、もう、とっくにお腹が一杯、なのに~」という声も聞こえます。
すでに「發財好市」のあたりからそんな声もちらほらでしたが、「蒜茸炒菠菜」はなんとしても皆さんに食べてもらいたかった。
「もうお腹が一杯!」なんて方には無理強い状態。その甲斐あってお情けでお付き合いのひと口、のはずが加藤さんの味が濃くって頑丈な「ほうれん草」の旨さに、根っ子の甘味に取り付かれ、ほぼ全員がひと皿完食。
そこに登場してきたのが、締めくくりの面・飯の「鮑汁炆伊麵/伊府麵ときのこの鮑ソース煮込み」。私の好みの麵料理です。
「わ、どうしょう」なんて声とともに「麵とデザートは別腹ですから!」なんて声も。
「鮑汁炆伊麵」の「伊府麵」、日本ではなかなかお目にかかれない幅広い麵です。
特別に製造を依頼したか、それとも、香港から調達したものなんでしょうか。
その幅広の「伊府麵」、触感は「きしめん」に似てますけど、つなぎに玉子を使ってあるはずで、小麦粉にプラスアルファの味、風味あり。しかも「きしめん」を茹でると表面は半透明のつるんとした膜に覆われてますが、この「伊府麵」、いきなりざらっとした舌触りで、弾力のある噛み応え。
それも「干焼」仕立て、と言うのでしょうか。しっかりたれが麵に絡みつくまで炒められてます。そのたれ、甘味、旨味、こくと美味なる磯の香、風味がある。「鮑汁」、つまりは干し鮑を戻すときに生まれた煮汁のせいです。
プラスアルファ、オイスターソースの甘味、旨味、こくや、中国たまり醤油の「老抽」の味、風味もほのかに浮かび上がる感じ、なのですが、実際はどうなのか、袁さんに尋ねなきゃ。ともあれ、旨味、甘味、しっかり。伝統的な広東料理に特徴的な旨味、甘味にまったりとしたこくがある。しかも、後味はすっきり。そして「軽い」。というのは、料理人の調理、味付けの技なのは明白です。
そしてデザートの「甜品」。
いつもは各種「甜品」が並んだデザートプレートの披露がありますが、今回は温かい汁粉の「合桃露湯圓」で統一。
胡桃仕立てのお汁粉で、「湯圓」、つまりは団子が2個。
そのひとつずつ味、風味が異なります。なんてところが憎い。
さらに、新年には欠かせない「年糕」も登場。
白玉粉を主体にココナッツなどが加味されたもの。香港、というか広東式の「年糕」。
ういろうに似た触感。噛み締めれば歯にしがみつく感じのねっとり、粘着質な感じ。
香港の「年糕」、家ごとに、また、店ごとに味、風味が違います。久保田さんの手になる「年糕」。素朴で昔懐かしい味わいと風味。
久保田さんの「懷舊点心」、そのひとつひとつに技があります。「懷舊点心」と語るにふさわしく、昔懐かしい点心の味、風味をきっちり再現。
「懷舊点心」を中心にした飲茶ランチかディナー、なんとか実現したくなりました。