2011/02/09

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の3

それから「發財大好市/干し牡蠣と髪菜の煮込み」。
待ってました、これこれ!(と、歓声を上げたのは私だけ!)伝統的な広東料理、豪華素材を使った一品で、新年には欠かせない料理です。

この「發財好市」、素材の「發髪」と「發財」、つまりは「財を成す」というの言葉と音が似ていること。さらに素材の「蠔豉」、干した牡蠣ですが、その音は「好市」、つまりは「好景気」、言ってみれば「商売繁盛」という意味の「好市」と似ている。なんてことから「髪菜蠔豉」の料理名を縁起を担いで「發財好市」としたもの。

素材の要は「瑶柱」、すなわち干し貝柱。干貨素材ではふかひれ、干し鮑、燕の巣などには劣るものの、魚の浮き袋の「花膠」などとともに並び称される。実際、干し貝柱の値段からすれば、贅沢な素材であることは明らかです。

その「瑶柱」、戻し方については料理本やサイトなどでも紹介されていますが、おっとどっこい、紹介されてるように簡単なものじゃないんですね。あ、私の体験ですが。その戻し方次第で、旨さ、こく、風味、断然違いますから。

料理本のレシピ通りにやってみても、香港の広東料理店で出会うそれとはいつも「なんだかなあ!」と、似て非なる感じ。なんてことで丸福食堂こと福臨門の呉錦洪さんや我が兄弟、周中師傳に願いを請い、教えられたレシピを元に工夫を重ねました。

袁さんが戻した「瑶柱」も、香港の広東料理ならではのもの。甘味、旨味、ひね味、風味があります。今度、尋ねてみなきゃ。

そんな「瑶柱」、「髪菜」ともに、この料理の味の要なのが丸ごとのにんにく。
ほくほく、ねっとりで、特有のくせをわずかに残した甘味、旨味、風味があります。
干し椎茸もしっとりとしていて、噛み締めればじゅわっと旨味、風味が口中にほとばしる。
そして味付け。だしは二番だしの「二湯」かな?それにしては上品で旨味があります。調味料はオイスターソースの「蠔油」、中国たまり醤油「老抽」。こくのある甘味、旨味、風味は伝統的な広東料理に特有のもの。塩味が利いていますが、角張ったものではなくて、おだやか。

そして、小皿に取り分けられた「發財好市」の下に見えるのは小松菜の炒めもの。実は埼玉、東松山の農業、加藤紀行さんの「小松菜」です。今年の加藤さんの「小松菜」、味が濃厚で風味が豊。ほうれん草を凌ぐほどの見事な出来栄え。譚さん、袁さんに試食して貰うおうと加藤さんに依頼して送り届けて貰ったものですが、まさか、こうして登場してくるとは思いもよりませんでした。

譚さん、袁さん、加藤さんの「小松菜」の味の濃さ、香り、風味に着目、ってことらしくて急遽「跟菜」ということで、いわば付け合せってことで登場。しかも、こくのある味付けの「發財好市」の干し貝柱、髪菜、干し椎茸やにんにくとの相性は抜群。それらに負けない強さがありました。

この種の伝統的な広東料理独特の調味、日本の広東料理店でも出会えますが、オイスターソースの味ばかりが際立った濃厚な味付け、だったりします。ですが、この「發財好市」、まったりした濃厚なこくがある。なのに、後味はすっきり軽い。新年宴会だからこそのこの一品に出会えただけでも満足至極。その味付け、風味、そして、調理の技に感服。