2009/09/11

発見!寧波風味の家庭料理!「蔡菜食堂」は楽しくて面白くて奥深い!の5

 「雲呑」。見かけはぷっくりふっくらの「雲呑」。
 れんげで掬って、熱、熱に用心しながら頬張ります。
 つるんと滑らかな舌ざわりの皮(は、どうやら自家製じゃない感じ。というのも皮が均一)。ですが、雲呑の包み方に年季とワザ、というよりも慣れた日頃のやり方通り、そのまま、なんて感じなのが面白い。

 噛み締めれば、餡はねっとり、じゅわと肉汁が滲み出る。広東式の「鮮蝦雲呑」が馴染みの私は、意表をつかれた感じ。
 そう、広東式の「鮮蝦雲呑」だと、蝦のぷりぷり感が、最初に来ますから。

 つまりは餡の素材、蝦と肉の分量の違い。それに、餡の調味、練り方に工夫ありということになる。それに、香辛料が鼻腔をくすぐります。香味野菜も興味津々。生姜のひり味なんかも関係ありそう。ですが、いずれも押し付けがましくない、その按配が憎いです。
 「ね、これ「鮮蝦雲呑」ですか?」とおかみさんの王さんに尋ねました。
 「そうじゃなくって……」
 と、我がノートの「鮮蝦雲呑」の「鮮蝦」の間に「肉」の文字を書き込みました。
 「そうか!「鮮肉蝦雲呑」なのか!」。なるほど、蝦のプリプリよりも、餡のねっとり加減、肉汁が滲み出てくるワケはそんなところにあったのだ!と納得。

 私は未体験ですが「蔡菜食堂」の「餃子」。ネットなどでは評判の品。「鍋貼」の焼き餃子にしても「気をつけないと熱い肉汁が飛び出しますらから要注意!」なんていう書き込みにも納得。となると「餃子」も試したい。それよりも「湯包」を入り焼きにした「生煎包」が興味津々。

 そんな「雲呑」のスープ。
 「私は、雲呑をそのまま茹でたのが好きなんだけど、主人が作るのは「もみじ」で取っただしを使ってます」とおかみさん。

 そんな鶏の「もみじ」で採っただし。極上ってわけじゃありません。鶏肉そのものが生み出す濃密で濃厚で、ちょっとしたクセのあるだしってわけじゃない。むしろゼラチン質、コラーゲンが立っているような感じ。

 ですが、丹念にとられていて、素朴、純朴、すっきりとしていて清廉。そんなだしを塩で味付け。だしの弱さを塩味で加味。もっとも、塩味に弱い私にはいささか塩味が立つ濃い味の印象。おまけに、ちょいと垂らしたごま油の甘味、風味が利いています。

 もっとも、その塩加減、塩梅ですね、それにごま油の使い方、日本の中華のそれとはなんだか違う。明らかに違う。スープをきりりと引き締め、塩味が立つような味加減の「塩梅」。というあたり、やっぱり「寧波風味」が顔を覗かせてるってことでしょうか。

 それより、塩使い、その塩梅、使い方のセンス、日本人とは全く違います。それはプロの技というよりも、中国中部から南方にかけての家庭料理でのそれ。ほのぼのとしてなごめる味わいです。それこそ「蔡菜食堂」の人気の秘密、なのだと納得しました。