隣の席で、ひとりビール手酌のアラサーリーマン兄さん。
私と蔡さん、王さんのとのやり取りに、怪訝顔。
というより、ただただ唖然、なんだかワケもわからず、あきれ返ったような面持ち。
どうやら、おつまみ盛り合わせに「骨付き蒸し鶏」はすっかり平らげ、次なる一品、どうしようかと思案顔。
「ここ、よく、お見えになるんですか?」と私。
「ええ、ここから歩いて一分のところに住んでるもんで、ちょくちょく」
「こういう店、中野とか、この沿線にあります?」
「ない……ですね。ここみたいな店は」
「って、この味、こういう感じの料理?」
「そうです。ありそうで、ないんですよ、この店のみたいなとこ」
「うらやましいなあ。私も近くに住んでたら、しょっちゅうきますよ。
あの、ここね、びっくりしちゃたんだけど、「寧波」の味なんですよ」
「………………ン?????」
「いえ、あの「寧波」てのはですね……ま、あの上海の下で……」
「………………はぁ?????」
そこに王さん登場
「次、どうします?」とアラサーリーマン兄さんに。
「あの、黒醋のスペアリブあります?」
「ごめんなさい!今日はなくなっちゃった。「青椒肉絲」なんかどうですか?ほら、いつもおいでになっても、ビール飲んでらして、ご飯とかあまり召し上がらないし、野菜たっぷりってことで!そう、ピーマン多めにしたのなんかどうかしら。」と、薦め上手なおかみさんの王さん。
「そうですね。じゃ、それで!」
キッチンに向かって注文し、再びわが席に戻ってきたおかみさん。
「あの、今日「香菜」たっぷり入った雲呑、なくなっちゃったんだけど「海老の雲呑」なら出来ますが、如何です?」なんて、ほんとに薦め上手。
海老の雲呑なら「鮮蝦雲呑」。私が即座に思い浮かべたのは香港、広東式のそれ。おっと「蔡菜食堂」は上海の家庭料理が看板だ。しかも「寧波風」というのが頭をもたげてきて興味津々。
「それ、いいかも!食べます!」。
「それより、さっき話に出た「黒醋のスペアリブ」。この店で評判なんですね。それって「糖醋排骨」?」。
「そうですよ!」。
「「排骨」の料理っていろいろあるでしょ?上海の周りの地域でも違うし。ほら「無錫排骨」とか」
「そうね、あれは「排骨」を甘辛い味付けで、柔らかくなるまで煮込んだ料理ね。うちのはあれとは料理方法も違って「黒醋」で味付けした「糖醋排骨」」。
なんてことで、上海及びその周辺のそれぞれに特徴ある「排骨」や豚肉の料理話で盛り上がります。
どうやら塩漬け豚を使った「腌篤鮮」なんてのも期待出来そうだ。
そして「雲呑」が登場!