「腊腸」というのが豚肉の腸詰。で「芥蘭」というのはアブラナ科の一種で、「チャイニーズ・ブロッコリー」と称されることもありますが、厳密には「チャイニーズ・ケール」ってことになるらしい。
その「ケール」は「青汁」のもと。ですが「チャイニーズ・ケール」は、葉もたべますけど、むしろ茎が食べどころ。それが「ブロッコリー」の茎に味も風味も似ている。だから、「チャイニーズ・ブロッコリー」と称されるようです。そのあたり、要調査。ともあれ、パリっとした触感で、こりっとした歯応えがある。くたくたに茹でるよりも、ぱり・ぽり・こりの触感を残して調理、というのが香港/広東では一般的。
腸詰の「腊腸」は、台湾系の料理店での前菜の定番になっていますが、香港/広東では「腸詰」だけを食べる、というのは滅多になくて、野菜、ことに「芥蘭」のような茎野菜と炒めたり、炊き込みご飯、炒飯の具にします。糯米を炒めた「炒糯米飯」には欠かせないもの。
秋の実りの収穫を終える頃、冬を迎える前に豚や家鴨を潰して各種の腸詰を作ります。なんてところは、フランス/イタリアなどでも一般的。肉食系の民族には欠かせない行事、なんですね。ということでは、本来、「芥蘭腊腸炒飯/腸詰と芥蘭入りのチャーハン」は、秋の終わりを告げる炒飯。それが今回登場、というのは、走り物、ってことになりますか。
そして、甜品。今月の伝統的な甜品は、嬉しいことに「中秋の名月」に欠かせない「月餅」。ところが今回の月餅、伝統的なでっかいそれではなくミニ・サイズ。それも、ペニンシュラ・ホテル(あの黒服の女史のペニンシュラ・東京じゃなくって香港)の「嘉麟樓」のミニ月餅を思い出しました。
表皮は「酥」のさくさくの感じを残しながらで、しっとり系で、頬張るとほろほろ、はらはら崩れ落ちていく感じが堪らない。柑橘の風味がする、と思ったら、後で教えられたところによればレモンの風味、だそうで。
ミニ月餅の正式名は「檸檬奶黄月」黄味入りの餡は、緻密で上品で洗練されたもの。これまでの伝統的な点心に特徴的だった素朴な味、風味とは対照的。点心長の久保田さんの新たな側面を発見。
う~ん、今度、「赤坂璃宮」銀座店で、日曜のブランチに点心大会、実現してみたい、なんて思ったりしたのであります。