2009/11/20

秋半ば&待望の「塩焗鶏」~09年10月の「赤坂璃宮」銀座店の6

 袁さんの「鹽焗鶏」、その実態と真相を知るべく、後日、支配人の橋本さんを通じして質問したところ、予想外の回答が戻ってきました。

 その下拵え、鶏の中に塩、エシャロット、生姜や葱などの香味野菜、香辛料に玫瑰露酒をすり込むそうです。ところが、次のプロセス、伝統的な手法では下拵えした丸ごと一羽の鶏を紙で包んで、焼いた塩で蒸し焼き、というのが一般的。

 ですが、袁さん、塩で包んだり、蒸し焼きにはせず、「鶏肉に醤油を塗って、オーブンで焼いただけ」という回答に驚きました。だから客家料理店での伝統的な手法による「鹽焗鶏」のように塩味しっかり、濃厚でな味付けじゃなく、すっきり爽快、上品な味わいだったわけですね。なりより鶏の旨さが際立ってます。

 それに葱油風の味、香りがしたことが気になってましたが、葱油ではなく「鶏の中に葱を入れて焼いている為」とのこと。取り分けられた鶏肉の小皿にはほんのわずかばかり「だし」がありましたが「だしはつかっておりません」。すると、鶏肉の肉汁が滲み出た、ってことか、それに、今回、特別に比内鶏を使ったのは「骨から出る旨味を重視」ということによるものなんだそうです。

  そうか、袁さんの「鹽焗鶏」、塩で包んで蒸し焼きにする伝統的な手法じゃなくって、新式、改良版と思わず納得。ということは、オーブンさえあれば「鹽焗鶏」は出来るんだ!それなら、我が家でも「鹽焗鶏」が出来るかもしれない!なんて無謀に思っちゃう私であります。それも、丸ごと一羽じゃなくって、骨付きの腿肉や手羽先や手羽中を使って「なんちゃって「鹽焗鶏」が作れそうです。

 もっとも、下拵え、焼き加減の按配を見るのが厄介そう。経験と年季が必要、かも。でも、プロの料理人なら袁さんの調理法にならって「鹽焗鶏」が出来るはず。なのに、日本の広東料理店では滅多にお目にかかれないのはどうしてだろう。

 日本ではなじみのない料理、なんてことと、新式、改良型の「鹽焗鶏」の料理方法が日本ではさほど知られていない、からでしょうか。伝統的な手法でなくともこれだけ美味で風味豊かな「鹽焗鶏」が出来るのに。ことに宴会料理にはうってつけ。なんとか日本で広まってほしい広東料理の一品です。