「猪利(豬脷)」とは「豚のタン」。日本では焼き肉にするのが圧倒的なようで。そういえばフレンチ、イタリアンでもたまに見かけることがあります。
牛や豚の内蔵類。とことん食べつくしてしまう広東人の場合、焼いて食べるというよりもスープや煮込みにすることが多い。そんなわけで、今回は旬の素材、これからがうまくなる「蓮藕」つまりは「蓮根」と組み合わせたもの。
「蓮根」も広東地方ではいろんな料理に使われます。が、スープの素材になる、なんてところが日本とはちょっと違うところ。日本で思いつく「蓮根」の料理といえば、すり流しなどは別にして、ほとんどを占めるのがしゃきしゃきの歯触りを生かした料理じゃないでしょうか。もっとも、筑前煮なんて場合にはほくほくの触感が味わえる。
そんな「蓮根」、広東人の場合、しゃきしゃきの歯触りよりも素材の持ち味を生かして調理するというのが一般的なようです。例えば、澱粉質がたっぷり、なんて効用を生かす。そのあたり、慈姑なんかも含めて根菜類の扱いにも共通することです。
それにこれまで何度か紹介してきた「蓮藕餅」。日本で「蓮根」の揚げ物といえば、たとえば天麩羅のそれや蓮根の挟み揚げなんてのが一般的。それが広東料理だと「蓮根」を擂り潰し、豚の挽き肉などと混ぜ合わせ、ハンバーグ状にして煎り焼きにする。
「蓮根」を擂り潰す際に、しゃきしゃきの歯触りを残すあら微塵にするか、それとも、徹底的に擂り潰すかで、出来上がりが違います。そう、しゃきしゃきの歯触りを残した硬いか、それとも、ねっとり感のある柔らかいものになるのか。ちなみに、香港の広東料理店で「蓮藕餅」を注文すると、決まって多いのが硬目のものです。
そんな「蓮藕餅」もさることながら「蓮藕(蓮根)」はやはりスープの具材。ことに「例湯」や「煲湯」の具材のひとつになります。長時間煮込まれた「蓮藕(蓮根)」は、ほくほくを通りすぎて「かすかす」の抜け殻状態。そのエッセンスはすっかり「湯(スープ)」の中にあり、というわけです。