左側には「(落)花生」、ピーナッツがたっぷり。栗の上、皿の淵にずらりと並ぶんだもの、なんだと思います? 「豚のお尻です!」と、柏木さん。 「豚のお尻?って、これ尻尾、みたいじゃん・・・・初めて食べるなあ!」なんて声も。 その実態、橋本さんに確認して「豚の尻尾」だと確認。
そういえばちょうど一年前、「赤坂璃宮」銀座店の9月のメニューにも栗を素材にしたスープが登場。そん時には栗と鶏を煮込んだ「栗子煲鶏湯」が登場。今回は栗に「鳳爪(鶏脚)」を組み合わせたもの。
広東地方の「湯」、つまりはスープを集大成した私の座右の書のひとつには「鳳爪(鶏脚)」を素材にしたスープが各種紹介されていますが、その中に栗と一緒に煮込んだ「栗子鶏脚湯」がありました。そこでは「痩肉」と「胡桃」、「陳皮」が素材として紹介されてます。
ということでは今回の「栗子花生煲鶏脚」、「落花生」は「胡桃」に代わるのも。それに「蜜棗」で甘味を加味。なんていっても「鶏脚」に「落花生」という組み合わせはよくあること。それよりおもしろいのは「豬尾」を加えてること。
「鶏脚」をたっぷり使えばゼラチン質たっぷりのだしが取れます。そこに「豬尾」を加えればますますゼラチン質、さらには旨味、甘味とこくを増す。コラーゲンたっぷりというのもそんなわけか。さらに、生だと渋味の強い栗に火を通せば、持ち味の甘味が顔をのぞかせる。澱粉質もたっぷり。それにほくほくの感じになる。そんな栗のエッセンスを煮込んで抽出。さらに「落花生」、「蜜棗」のエッセンスも。
素朴、朴訥ながら自然な甘味、さらに、旨味やこくもあるスープが旨い。すっきり、というよりも、いつものこの種のスープに比べてざらっとした感触が舌に触れるのは、栗と落花生のせいでしょうか。
だしがらのはずの栗の実、落花生が旨い。それより「鶏脚」、「豬尾」が、たまり醤油と上湯で作ったタレにつけて食べると、これがなかなかいけます。
「乙な味、だね。特にこの尻尾、はじめて食べるんだけど、豚の耳のようにこりこりじゃなくって、とろとろの感じ、たまらない!」
「ねっとりでびろびろ。煮込んだ豚の皮、皮の裏側にこびりついた脂肪のとこも、なんともいえない味わいで。冬に備えてえさをしっかり食って、養分をしっかり溜め込んだ豚、これから、ますます旨くなりますから!」
秋の訪れを告げる一品でありました。