皆さんにお目見え、ご披露の後で一旦テーブルから下げられ、別の場所でお碗に取り分けられて、再度、テーブルに登場となるわけですが、それだけ時間が経過してもなお料理は熱いまま。というのがほとんどですから、袁さんの土鍋料理の熱さ、想像してもらえるはず。
おまけにこの「辣酒煮花螺」、登場とともに部屋の中はむせるぐらいお酒の匂いで溢れかえる。それも中国の白酒、独得の香りです。「ン!? 「五粮液」に「茅台」?」なんて思ってたら柏木さん、テーブルに置くなり開口一番「「五粮液」と「茅台」を使ってるそうです!」。
最初に土鍋入りで登場した時には、煮え滾る赤レンガ色した煮汁の中でアップアップ。さながら地獄絵図、石川五右衛門状態、でもないですけど少しばかり異様な光景だったのは確か。それが、小ぶりの鉢に取り分けられ、目の前にした「辣酒煮花螺」、やっと「白バイ貝」の正体確認。
仕方なしに、お絞りで貝を押さえ、ほら、蟹の脚の身をほぐす細長のフォーク状のも辛さのをねじりいれ、貝から身を引きずりだす!
煮え滾る煮汁の中にあったことから、さぞやしっかり火が入り、身の硬さを想像していたところ、火の入れ方、ミディアム・レアぎりぎりの感じのところで止めをさしてある感じ。すっと歯が入る柔らかさ。ですが、噛み締めた歯が軽くおしかえすようなしなやかな弾力もある。
磯の味、と、同時に、だしを口に含むと、こくのある味、旨味、それだけでなく、スパイシーでエキゾティックな味、風味が浮かび上がったかと思うと、痺れをともなう強烈な辛味が一気に押し寄せ、口中に拡がっていきます。
のたうちまわるほどの辛さじゃない。けど、ジンジンの痺れ味もあって、舌や口腔にまとわりついて、細胞に鋭く染み込み、一瞬、頭が白くなります。前後して、汗がどっと一気にあふれ出る。しかし、こらえきれない辛さじゃない。もっぺん、あるいは、何度でも、(辛さの)快感を味わいたくなくなるようなみょーに後引きな辛さです。
おもしろいのは、痺れる辛さ、だけじゃない。なんだかスパイシーでみょーにエキゾチック。
「ね、これ、カレーの味、しません?」
「するする!」
「カレーっていうか、複合スパイスの感じね、ほら、カレー粉、実はスパイスの混合体なわけでしょ?でも、なんでスパシーなのか・・・・」
「あの、もしかして先日の「馬来醤」が使われているからかもしれません。確かめてきます!」
と柏木さん。