2009/04/28

やったね!「蝦醤鶏」~4月の「赤坂璃宮」銀座店の7

 そして「南乳温公齋/各種野菜の南乳風味土鍋煮込み」。
 日本語の料理名にある通り、各種野菜の炒め煮込みです。「南乳温公齋」の「齋」という言葉が物語るように「精進仕立て」、つまりは肉っ気なし。

 野菜は白菜、筍、しめじ、ミニ・コーン、慈姑(くわい)。さらに、干椎茸、雲耳(きくらげ)、腐竹(干し湯葉)、どれに粉絲(はるさめ)を加え、「南乳」の風味で炒め煮込みした料理です。
 「南乳」は塩漬け醗酵の「腐乳」に紅麹を加味したもの。乳白色の「腐乳」とは異なり、赤い色あいなのが特徴。旨味、こくをつけるのには格好な調味料で、その用途は多種多彩。広東料理でも頻繁に使われます。

 「温公」とは「南乳」の別名というか通称名、ってことです。で、その「温公」、もとを正せばどうやら北宋の儒学者の司馬光の異名、というか尊称、だそうで。それがいつの頃から「南乳」のことを「温公」と称するようになったのか、定かではありません。

 そして「温公煲」誕生の由来については、諸説あり。たとえば、その「温公」がとあるところで出会った「南乳」で味付けした野菜の炒め煮込がいたく気に入り、野菜だけでなく乾燥させた金針菜や雲耳など、野菜よりも高価で旨味、風味のある乾燥野菜素材、さらには茸類などを加えた料理をお抱えの料理人に命じて作らせたのが「温公煲」のそもそもの起源だという説。

 それから、70年代、華僑日報の社長がとある店の料理長に野菜の料理を注文したところ、料理長が作ったのが「南乳」風味のこの料理。社長の名前が「温」だったのにちなんで「温公煲」と呼ばれるようになった、なんて話もあるそうで。

 中国料理で野菜の料理といえば、まず思い浮かぶのが青菜の炒め物というのが一般的じゃないでしょうか。茄子や瓜の類、大根、人参、蓮根、芋などの根菜類も野菜ですが、やはり青菜、葉物のイメージ濃厚。そういえば最近は「通菜(空芯菜)」を「腐乳」風味で味付けした「腐乳通菜」が人気の一品だそうで。そんな青菜の炒め物もいいですが、葉物は白菜のみ。他は、根菜類、乾燥野菜や茸類を加え、「南乳」で味付けし「だし」を加えて炒め煮込みしたのがこの「南乳温公齋」。

 くせのある味、風味の「南乳」がだしの味にこくと風味をプラス・アルファ。その使い方、量の加減、按配も程々で、むしろ「醤油」の味、風味が表立ってる感じで「だし」の旨さが光ってます。それにほんのり甘口。こんな野菜料理、野菜の炒め煮込みをコースに加えるのも一興。広東料理、家郷菜の代表的な野菜料理、精進料理で、家庭でも作られることの多い一品です。