2009/04/11

立春宴~早春の広東地方の郷土料理の4

 この季節、貝が旨い。蛤か浅蜊を素材にした料理が食べたい。どちらでも良いものがあればと、手配を依頼。蛤なら去年「蛤蜊蒸蛋」にしましたから今回は「金銀蒜茸蒸蛤蜊」で。浅蜊も大ぶりのものなら「蒸蛋」仕立てで食べてみたい。
 それとも、今回は新鮮な魚介の類の料理がないからオーソドックスな海鮮風の炒めものでも悪くないなあ とまあ、そのあたりは素材の調達次第で調理、味付けはおまかせにしました。 そして登場したのが「豉椒炒蜆」。浅蜊をピーマン、パプリカなどとともに黒豆味噌の「豆豉」を素材にした調味料の「豉汁」風味で炒めたもの。いつもの福臨門のこの種の料理に比べ、とろみ付けが少しばかり厚くて重い。その分、味つけは濃い目で、メリハリが利いています。それも、香港の街中で深夜遅くまで開いている大衆的な海鮮料理専門の店、それに鯉里門、流浮山、西貢、南Y島や長洲の船着場の近辺にある海鮮料理の店で食べた料理の数々の思い出が蘇るような「懐かしい味」、なのが面白い。

 火を通せば、ぼってりとした身も露わに妖しい艶っぽさをふりまく蛤。その味わい、風味は濃密で色濃い。浅蜊はそんな蛤とは対照的。素朴で直截的な磯の味、風味がする。そう、浅蜊は、言わば木綿の肌触り。そんな浅蜊の持ち味を黒豆の醗酵味噌の「豆豉」が引き立てる。それに、ちょいと唐辛子の辛味が利いていて、スパイシー。なんてところがますます食をそそる。

 「これ、いいじゃないですか。この味、この風味!」と、青木さんは大はしゃぎ。 広東地方、香港の、ざっくばらんで気取のない直球勝負の海鮮料理の味を海鮮料理の醍醐味を存分に味わい、楽しみました。