濃厚で甘酸っぱくて、辛味じんわり!
「ですから、酢豚ね、酢豚のあの甘酸っぱさに、辛味と味噌味の旨味、こくが加わったような感じなんです!」
と力説しても
「なんだか、想像がつかない!」と、メンバーには話が通じない。
そんな時
「私、それ、香港で食べたことがあるかも!」と、右手が上がりました。
「麵屋さん、だったか。食べた具入りの麵がそんな感じ。炸醬面、みたいなんだけど、炸醬面にしては甘いような、酸っぱいような……日本の炸醬麵と違って、独得の味つけなんだけど、炸醬麵のような……!」
「それ、それ、そういうの!、多分、きっとそれよ!」
思わぬ援軍の登場に勇気付けられ、つい声高になってしまう私です。
そして、いよいよ「炸醤撈麵/香港式炸醬麵」が登場。
「香港式にスープもご一緒に、ということですので!」と、アテンドの山下さん
「わお!この色あい、この香り!」と、ひとり盛り上がる私です。
「あれ?これ、私が香港で食べたのと、ちょっと雰囲気、違うかも……?」
「あ、もしかして、これより赤色がかってるって言うか、レンガ色を赤くした感じで?」
「う~ん、そうかな……?」なんて会話の横では
「これ?これですか?」といささか怪訝顔。
しかし「違うかも?」の人も、怪訝顔の人も、ひと口食べてしばらく、皆さん、破顔一笑。
「そうかこの味!なんですね、なるほど!」と、声が上がります。
「美味しい。だけじゃなくって、不思議で、おもしろい味ですね。甘酸っぱくて、辛味がじわっとくるなんて。それに、クセになりそうな味、なんですね」なんて声も上がる。
甘酸っぱくて、やがて辛味がじんわり。おもしろいっていうだけじゃなく、なんだか懐かしい味。昔ながらの中華料理の味、なんてところが私にとっては堪らない。
それより、気になったのはその味付け、調味料。香港で食べたそれとは、少しばかり趣がちゃいます。なんていうか、甘味、酸味、辛味だけでなく、ひねた味噌の味、醗酵味が、旨味、コクをましてる感じです。
甘味は、おそらくケチャップに間違いなし。それに、ケチャップには酸味もあり。さらに、その酸味、火を通すと、思わず「ブフっ!」とむせちゃうウースター・ソースのそれ。なんだか「リーペリン」ぽいんだけど、甘味、コクがあるってことは「A1ソース」かなあ。いずれも香港の広東料理店や、中華式洋食を供する「餐廳」の料理、味付けの必需品。
で、辛味。色合いからすると、赤色の若い「豆板醬」でもなし。
やっぱり唐辛子味噌の「辣椒醬」?
それにしては、ひねた味、味噌の味、こくを感じる。
「桂林醬」だったら、辛味、もっと鮮烈なはず。
ということは、「海鮮醬」か「磨豉醬」を加えてこくを増してるのかも。
でも、それにしては、ひねた味がする!
とまあ、私の味覚センサーが活発に稼動し、その味、風味のもと、出所を探って記憶と照らし合わせます。といっても、それは瞬時の出来事。
後で大藤さん経由、袁さんに尋ねたところ、調味料は
「A1ソース、豆板醤、トマトケチャップ」、とのこと。
「わお! 香港の「炸醬麵」のようにケチャップや豆板醬をふんだに使ってる印象はなかったなあ」、と私はひとりごち。
それより、ひねた味噌の味が、旨味、こくを増してる感じだったので
「「海鮮醬」、「磨豉醬」を使ってますか?」と尋ねたところ、いずれも使っていないとの返事が返ってきました。私もいい加減。知ったかぶりを痛感。
でも、そうしたら、ひねた味噌味、旨味、こくの元は、一体、何なのだろう?
そこんとこが気になって、もしかして「「豆板醬」?赤い色の若いものじゃなくって、れんが色のひねたものですか?」と、大藤さんを経由して袁さんに再々度質問。
すんません、袁さん、大藤さん。毎度、お手数かけます!
そしたら戻ってきたのが
「成都 郫県(ピーシェン)豆板醤を使用しております」という返事。
成る程。「れんが色でひねた味のやつだ!」と、そこで納得。
併せて質問したのは「京式」、「京都式」の「炸醬麵」ですか?
それとも「香港炸醬麵ですか?と尋ねたら、
「袁的には香港(広東)スタイルです」とのことでした。
麵と乗っかった具をかき混ぜて食べる。そして、スープを口にする、というオーソドックな食べ方もいいですが、麵と具をぐちゃ混ぜにして、食べてしばらく、麵と具にスープを注いで食べるのも悪くない。
日本にありそで、横浜あたりにありそで、ないんですよ、この「炸醤撈麵/香港式炸醬麵」。
それとも私が知らないだけ、なんでしょうか。でも、これからは「赤坂璃宮」銀座店で出会えます。もしかして、事前予約が必要かも。 ですが「炸醤撈麵/香港式炸醬麵」が食べられるなら、事前予約もいとわない。
いまどきの若い人たちぶりっこすれば、「これ、マジ、やばいっす!」