蒸した糯米の上に「えび」、「貝柱」、「いか」のぶつ切りがのっかってます。
言わば「海鮮おこわ飯」。
私、糯米の炒飯の「生炒糯米飯」は、何度も体験あり。冬場には干しエビ、するめ、腸詰の「臘腸」「潤腸」、たまに干し貝柱なども加えた「糯米飯」は頻繁に作ります。ですが、新鮮な魚介を具にして蒸した糯米に乗せたこの「閩南糯米飯」は初体験。「閩南」ってことは福建、それも漳州あたりの伝統菜、なんでしょうか?そういえば「閩南」の食文化の影響下にある台湾でも各種の「糯米飯」がありますが、そのひとつなんでしょうか?
それにしても「えび」、「貝柱」、「いか」のぶつ切りが、なんとも豪華、贅沢でリッチな感じです。で、面白いのはこの「閩南糯米飯」のたれ。ニンニク、醤油の味、香りにプラスして、甘くてコクのある濃厚な味、香りを放つものがある。それも「脂っぽい」。
確実に醤油と脂が入り混じった味、香りです。こってり、というまでいきませんけど、独得のこくがある。なんてことから思いつくのは「ラード?」。でも「これ、ラードじゃないなあ!」。
その正体を知りたくて大藤さんを経由して袁さんに質問。
そしたら、たれは「海鮮豉油」ってことで、水、生抽、砂糖、老抽、芫茜、なんだそうです。
「ン!? ニンニクも脂ぽいものもなし?」、なんて思ったら
「蒸した糯米、バターとニンニクで炒め、別鍋で焼いた茸、海鮮を載せて、再び、蒸す」
なんてことで「そうか!」と納得。
そうです「バター」。それこそ、脂、甘味、コクのもとだったわけですね。残ってるご飯をバター、ガーリックで炒めたガーリック・ライス、頻繁に作るのに、その味、わすれてるなんて、私も大ボケ。
ともかく、バター、にんにく、生抽、老抽などで調味したたれの味、風味は大いに食欲をそそります。それに、えび、貝柱、いかなどの海鮮の具材にもぴったり。
締めくくりの「甜品」は「元朗水果涼粉/フツーツ入り仙草ゼリー」。画像でご覧の通り、果物たっぷり。それに、仙草ゼリーのほろ苦さがマッチングという爽やかなデザート。その料理名に「元朗」、すなわち、香港の新界にある町の名が!なんてのがにくい。
そうです、今回は料理の内容、素材、調味料にちなんだ「大澳」、「東麗」、「閩南」、「元朗」と、地名を織り込んだ料理がずらりだったのでありました。
「南乳」は塩漬け醗酵の「腐乳」に紅麹を加味したもの。乳白色の「腐乳」とは異なり、赤い色あいなのが特徴。旨味、こくをつけるのには格好な調味料で、その用途は多種多彩。広東料理でも頻繁に使われます。
口をぱっくりあけたあいなめに驚いたわけじゃありません。贅沢で豪華な一品、だったものですから。けど、嫌いじゃないです。というより、大好きです。
さて「東麗蒸鮮魚」、白菜の漬物の「冬菜」と共に蒸したもの。「冬菜」の醗酵した酸味、ひね味に、ニンニクの甘味、風味が加味された旨味が味わい深く、風味も格別。しかも、魚は「あいなめ」。
砂肝、野菜の下拵え、加えて、炒め方、火の通りの按配。美味しくって風味がある。なんてことないような炒め物ですけど、まさしく「板」と「鍋」のプロの「技」が発揮された一品でした。
いつもの「例湯」と同じく、スープと具は別皿に盛られて登場。白濁したスープは「杏仁」と豚の肺の「豬肺」を煮込んだ「杏仁豬肺湯」を思わせます。
れんげでスープを掬うとお碗の底に寝そべっていた「百合根」が顔をのぞかせる。口に含めば甘い味、それも、くどくなくてスッキリの甘味のあるスープとともに、ぐちゅぐちゅになった「百合根」のざらっとしていてねっとり、ほっくりほくほくの触感が舌にぐんとのしかかる。
見かけは唐揚げ。食べて見ると、さっくりの噛み応えで、しっとり感あり。噛み締める内に「これ、なんだか普通の唐揚げじゃない唐揚げだ!」ってことがじわじわと浮かび上がる。思わずこぼれる「これ、美味しい!」のひと言。お互い、顔を見あわせて「うん、うん」とうなずく様が物語るのは、誰もが同じ思いをした証、じゃないでしょうか。
それにしても料理名、まんま「蝦醬鶏」じゃなく「大澳香酥鶏」と言うのが泣かせます。素敵な、いや、「粋」な料理名だ。
これが「一碗水」の「蝦醬鶏(翼)」。「ラ・ベカス」の渋谷さん、香港の食については詳しくてうるさいって話、伺ってますが、そのお墨付け得たのが評判を呼んだそもそものきっかけだった、なんて話も聞きました。
成る程、目の前に現れた前菜を見て納得。その内容、いつもとは少しばかり違いました。右から「牛展」、「鶏肝」、「叉焼」に「白菜」の漬物。「赤坂璃宮」銀座店の「牛展」は初めて。牛スネ肉の冷製です。
今回の「青木宴」。中でも印象に残ったのは「肘子燉生翅」。しっかりの塩味で男性的、なのに荒々しくはなく、清々しく溌剌とした爽快感があったこと。「荔蓉香酥鴨」の芋のさっくり、ねっとりと、家鴨の皮のパリっと肉のジュシーな歯ざわり、触感、味、風味の対比。芋のこくのある甘味、家鴨の野性味を生かした洗練の技。
というわけで今回の「立春宴」、実施までの時間、ゆとりがなく、素材の調達、基本的なコースの組み立ては福臨門におまかせ。多謝!
「わお、チーズ!なんでまた?」と、思わず目を丸くした私です。
我家では塩をひとつまみ入れた熱湯を沸かし、花生油をひと垂らししてから「砂糖さや」を投げ入れて、茹で上げます。その茹で加減、マヨネーズなんかで食べるときには、噛み応えのあるほどほどの硬さ、しんなり感を残した感じ。胡麻和えや、オイル&ビネガーで食べるなら、柔らか目に茹でるのが好みです。
素材の持ち味を引き出し、味、風味を加味する「上湯」。それに、火の扱い、つまりは「鍋」の技の見事さ。「こんなの家でなんか作れこない!」と、思い知ったのであります。
「筍」はさくっとした歯触り。若々しく、清々しい、春の味です。風味もよくってかなりの美味。それよりも「豬」。なんせ、肉喰い、野味が生きがいの私です。
それより、この豬のばら肉を気に入った福臨門の徐さん。なんと「東坡肉」風の煮込み料理にしたそうな。豬の脂、それに、このフルィーティーな肉の持ち味を生かした料理なのに違いない。
そして登場したのが「豉椒炒蜆」。浅蜊をピーマン、パプリカなどとともに黒豆味噌の「豆豉」を素材にした調味料の「豉汁」風味で炒めたもの。いつもの福臨門のこの種の料理に比べ、とろみ付けが少しばかり厚くて重い。その分、味つけは濃い目で、メリハリが利いています。それも、香港の街中で深夜遅くまで開いている大衆的な海鮮料理専門の店、それに鯉里門、流浮山、西貢、南Y島や長洲の船着場の近辺にある海鮮料理の店で食べた料理の数々の思い出が蘇るような「懐かしい味」、なのが面白い。
ほんとは丸ごと一羽の盛り付けなんですが、今回は少人数だったので半身仕立て。
そうそう、香港の飲茶の点心に「芋角」ってのがあります。「荔浦芋」もしくは「たろ芋」を茹でて、あるいは蒸して、擂り潰して、豚の挽き肉などを混ぜあわせ、掌におさまるぐらいの形にまとめ、揚げた点心です。蜂の巣状ですが、その見かけ、味、風味はまるで中華風のコロッケ。
お碗によそわれたふかひれ、スープとは別に、一緒に「燉」されていた「火腿」が皿に盛られて並べられます。それをそのまま味わうのもよし。そのエキス、ふかひれのスープに滲み出て「だしがら」のはず。ですが、そのまま食べればまだまだ旨味が残っている。

そうか、小豆のお汁粉を作る際、塩を加えて味をひきしめたり、甘味を引き立てる、なんてやりますが、もしかしてそれと同じ要領、というか考えなのかもしれませんね。
「わお!この色あい、この香り!」と、ひとり盛り上がる私です。
「炸醤撈麵/香港式炸醬麵」は、とにかく旨い。メリハリが利いていて、パンチがあります。甘酸っぱくて、辛味じんわりの味、風味は誰にでも納得、郷愁を覚える懐かしい味、中華ならではの味。ジャンクな味。そうだ、B級グルメの極めつけ的一品に数えられるかも。この料理も「赤坂璃宮」銀座店の看板の麵料理のひとつになるかもしれません。
左の具を面にいれると、こんな按配に!
肉を主素材に味噌味で仕上たこってりの味付け。見た目、結構、濃い、というか早い話が「えぐい」感じ。で、口にすると、甘くて、酸っぱくて、最後に辛味がじんわりと浮かび上がる。その料理名「京醬肉麵」から、その正体、「京都式炸醬肉麵」と判明。