2009/12/18

秋深し~09年11月の「赤坂璃宮」銀座店の4

 続いて「粉絲蒸海貝/ホタテ貝と春雨のガーリック蒸」。
 ホタテ貝の殻を器にして、半身に切り分けた帆立貝の貝柱、ひもなどとともに、生湯葉をそえてにんにく風味で蒸したもの。

 ホタテ貝の貝柱がでっかい。蒸して火が入ったホタテ貝の貝柱、頬張って噛み締めると歯をかすかに跳ね返す弾力がある。といって、硬いそれじゃなくって、噛み締めればすっと歯が入る。生のねっとり感が消えて、貝柱の繊維質がかすかに感じられるぐらいの火の通りかた。絶妙です。

 ひもがうまい。表面の皮、というか膜は張っていてぷるんの触感。噛み締めるとねっとり感を残した肝の旨味が舌の上でほどけていく感じ。この火の通り方も絶妙です。

 そして添えられた生湯葉、噛み締めると生湯葉に含まれた煮汁がじゅわっと口中に広がる。その触感が快感。素材の生湯葉の持ち味、風味を生かした味付けが憎い。春雨も煮汁を含んでしっとり加減。

 大蒜風味ってことですが、大蒜のひり辛味は抑えられていて、甘味、風味がほのかに、なんてところが面白い。決め手はたれというか煮汁ですが、会議に夢中だったもんでどんな調味料を使っているのか、聞きそびれました。醤油だけじゃなくてかすかに醗酵味がかんじられたことからすると、赤坂璃宮特製のナンプラー入りの海鮮ソースが使われていたのかも。

 押し付けがましくない上品で洗練された味、風味の「粉絲蒸海貝/ホタテ貝と春雨のガーリック蒸」。そういえばホタテ貝、中国にもあるそうですけど、香港で流通しているホタテ貝のほとんどは日本産のそれ。香港で貝柱を素材にした料理というのは、ホタテ貝じゃなくってたいらぎがほとんどです。そのたいらぎとホタテ貝の貝柱、貝柱だけをとりだせば見かけは似ていますけど、味わい、風味は違います。
 
 ということではこの「粉絲蒸海貝/ホタテ貝と春雨のガーリック蒸」は、日本の素材を広東料理の手法で調理した日本独自のもの。日本でしか食べられないものと言えるでしょう。