2010/05/11

旬の「アイナメ」、こってりの「うつぼ」~10年4月の「赤坂璃宮」銀座店の7

 「本日凍甜品/本日のデザート」は6品から好みのものを選択。私は下の中央の「湯水」に注目。羅漢果、百合根、蓮根がその素材。冷たい「凍」と温かい「熱」があるってことで、当然、「熱」を選びました。

それを待つ間に久保田さんの今月の「懷舊点心」が登場。
なんと「叉焼酥」。玉子の黄味を塗ったらしきパイ生地の黄金色の照り、輝きがなんとも懐かしい。その上には(あれ?ピーナッツだったけ?の)トッピング。
 噛み締めればまさに「酥」、さくさくさっくりの触感。同時に、醤油味、塩味、甘味、こくのある旨味が入り混じった中味の叉焼餡が口中に広がります。
 甘味も塩味もちょっと濃い目、というのが昔懐かしい。

 以前にも話したように香港の飲茶の点心、こと近年、70年代半ばに美心集団の翠園酒家、次いで美麗華集団の「翠亨邨茶寮」の出現とともに変化。「陸羽茶室」は別格として、「蓮香楼」、「得雲」、「高陞」などの伝統的な老舗の茶楼での点心を現代的に変容させ、シェラトンやリー・ガーデン・ホテル内に誕生した料理店がそれに倣ったもの。

 80年代半ば、ユニコーン・グループの各店や東海グループ、ことに、「麗晶軒」、「凱悦軒」、「嘉麟楼」などの超高級ホテル内レストランの登場とともに飲茶の点心は劇的な変化を遂げたのでありました。

 そんな時代区分からすると今回の「叉焼酥」。伝統の味、風味を残しつつ、70年代半ば以後から80年代にかけて洗練を見せ始めた初期ホテル系内レストランでの頃のものを思い出します。パイ生地出来栄え、その触感、中味の餡の甘味、塩味、旨味、こくのバランスがそんな感じ。

 ほんと、私、あの頃、って80年代ですけど、には香港に出向けば、主に朝、昼は飲茶。老舗の茶楼を片っ端から塗りつぶし。香港島の東西、九龍半島の付け根まででかけたものでした。 思い出すのは84年か85年だったか、ブルータスの香港の食取材にアドヴァイザーとして同行。

 「新派広東」の紹介が主な目的でしたが、その際、一緒したカメラマンの西川治さん、新しいもの、流行物好きな香港人の間で話題だった東海海鮮酒家の新派趣向の料理、リー・ガーデン・ホテル内の彩紅館だったか。洗練された雰囲気、新派系飲茶の点心がお気に召さず、おカンムリ。

 そこで西川さんを油麻地の豪華酒樓へ。勤め前の労働者、サラリーマンは言うに及ばず、おじいちゃんおばあちゃんが朝早くから席を陣取り長居するといった庶民的風情この上ない店。味も脂っこくてこってり濃厚。西川さん「これぞ飲茶!」とばかり、その雰囲気、伝統的で昔ながらの点心がお気に入り。バシバシ写真を撮影されました。