「湯」は「是日例湯/アイナメとクレソンのスープ」が登場。
「アイナメ」を煎り焼き、つまりは「煎」して、クレソン、蜜棗、百合根とともに煮込んだスープです。嬉しいです。私は狂喜乱舞。
実はこの日を先立つこと何日か前、かみさんに請われてかみさんと友人何人かの食事、「赤坂璃宮」銀座店に袁さんの「家郷菜」を依頼。 その幕開けに登場したのがこの「アイナメとクレソンのスープ」。
「湯」は日常素材を使った「例湯」で、と橋本さんを経由して袁さんにお願いしたところ、「袁さん、アイナメとクレソンのスープは如何ですか、とのことなんですが」という橋本さんからの返事。
「アイナメ」、日本の素材、ことに海鮮料理では様々に調理可能で、その資質、中国料理の各種の調理にぴったり。ですが、この季節、つまり晩春から夏前にかけては、身も大きなり、値もはります。そんなことで、どうしょうかと思案しましたが、袁さんにまかせたところ、かみさんの宴では「アイナメとクレソンのスープ」が登場。その出来栄え、優しい味、風味の豊かさは、香港の味、香り、そのままだったと大感激。
ぐやじい思いでいたら、この日の「湯」で「アイナメとクレソンのスープ」が登場。狂喜乱舞のわけはそんなことにもあります。
なんといっても「アイナメ」がでかい。「煎」の焼き色を残しながら、スープとして煮込んでなおその勇姿を残す「アイナメ」に感激。
「あ、これ、この甘味、コク、百合根ですか?」と、鋭いひと声!
そう、スープから具を取り出し、別の皿に分けて、スープはスープ。具は上湯とたまり醤油仕立てのたれで食べるのが、こうした「例湯」の食べ方。ですが、今回、具を載せた皿には百合根の姿なし。しかし、碗に取り分けられたスープの底に百合根が潜んでました。百合根の澱粉質、その甘味、それもコクになるぐらいぼってりの感じでスープ自体に入り混じり、舌の上にはざらっとした触感が残ります。
甘味には蜜棗のそれも入り混じり、少しばかり苦味もある。
苦味ってことではクレソンもそうですね。 とはいえ、主役はやっぱり「アイナメ」。
その美味、こくのある旨味、風味。白濁したスープはその証。 海の魚だけあって、磯の香り、塩の味がする。ですが、海水魚特有の臭みはしっかり抑えられてます。生姜もそうなのかな。それ以外に、もしかして陳皮なんかも?そのあたり、袁さんに尋ねてみないと、真相はつまびらかにはなりません。
優しく、穏やかな口あたり。ですけど、味は濃厚で、どっしり。甘味、ほっくりとしたこく、深みのある味わいに、苦味がふいと頭をもたげます。なんて風に、味、風味、香りが様々に変化。
具は具で旨い。もしかしてエキスをすべてスープに取られて、味わいもなし?なんて思った「アイナメ」の身、たれをつけて食べてみると、その存在を主張するように、旨味が残っていたのにも驚きました。なにしろでかい「アイナメ」でした。
日本の素材を使って、香港の味、風味を再現、という袁さんの腕、技に感心しながら、「アイナメ」、その調理、味付けで、様々な美味、風味を生み出す日本の中国料理における貴重な魚、その存在を再認識しました。
ちなみに「アイナメ」、中国では身に六本の縦の側線が身にあることから「六線魚」って言うそうです。