2010/05/04

旬の「アイナメ」、こってりの「うつぼ」~10年4月の「赤坂璃宮」銀座店の1

 今月も月を越しちゃいました10年4月の「赤坂璃宮」銀座店報告。
 まずは「璃宮焼味盆/璃宮特製焼き物前菜」。 
 一見、いつも通りのようでいて、先月来、一皿の焼き物の構成、趣き、雰囲気、色あい、素材の切り方(つまりは板仕事)、添えられた野菜、その切り方、素材の組み合わせ。これまでの前菜と違います。見映え通り、味わい、風味も。
 右から順に鶏のレバーの蜜汁仕立ての「鶏肝」、叉焼、とんとろの辛味の焼き物、その下が豚の脛肉の冷製の寄せ物の「仏蹄」。その下にトマトの薄切り。野菜は人参、かぶ、萵苣薹(ちしゃとう)、もうひとつは失念、という組み合わせ。

 何がこれまでの前菜と違うのか。
 それは、切り方、並べ方、素材の組み合わせから歴然です。「どうだ!」なんて感じの堂々の勢い、威勢のよさ、強烈な主張、インパクトがなくって、なんだかおっかなびっくり、おそるおそるの感じなんです。

 もしかして今回も先月に続いて前菜担当は平林さん? その名前、なんだか覚えあり。以前、「赤坂璃宮」の譚さんが「チューボーですよ」に出演した際、譚さんが「未来の巨匠」ってことで紹介したあの長野出身の「平林クン」?

 北京ダックに添える「蝦片」を揚げ、梅干の果肉と種を選りえ分けてから、果肉を「梅醤」に、なんて作業をやってた「平林クン」?そうか、「平林クン」、焼き物担当ってことで、梁さん、金山さんのもとで修行してきたわけですね。

 さて、今月の前菜。鶏のレバーの焼き物の「鶏肝」、「蜜汁」の按配はほどほどで、鶏レバーの焼き加減もしっとりした触感を残してます。ですが、焼きむらがあって、裏の部分は焦げ加減。なんてことで、噛み締めると苦味が浮き立ちます。

 叉焼は余分な「蜜汁」が残ったまんま。つまりは焼き不足?それに、叉焼の肉の厚みからすると、その幅、加減、細め。唇や舌に触れる感触、なんだか物量感に乏しくって、しっかり食べた気がしない。この叉焼の厚みからすると、あと5ミリ、いや、3ミリかもしれませんけど、も少し幅のある切り方だと、幅、厚みのバランスがとれて「叉焼」を味わった気分になります。
 前菜に「叉焼」はたった一切れ。
 ですから、その存在、主張を明確にするには、も少し幅のある切り方がいいんじゃないでしょうか。

 辛味仕立てのとんとろ。辛味OK、焼き方もOK。
 ですけど、噛み締めれば、下拵えの塩味、ちょい不足気味な感じで、辛味との重層的な味、風味に欠けてます。

 それから「仏蹄」。下拵えの滷水の漬け込み、煮込み不足なのか、味、風味、メリハリにかけます。
 それに、切り方が厚い。唇、舌に触れる感触、ぼってりなんで、味、風味が茫洋な感じになっちゃいます。「仏蹄」はゼラチン、コーラゲン質が味わいところ。厚みがあるよりも薄い切り方の方が、唇、舌に触れるぷるん、とろりとした滑らかな感触と噛み応え、それに 味、風味も引き立つじゃないかと思うんですけど。

 そして野菜。萵苣薹(ちしゃとう)。
 私、最初、ブロッコリーの芯?なんて間違えちゃって、山下さんに萵苣薹だと教わりました。とまあ、私もいい加減。そんな萵苣薹と名前を失名した黄色の野菜。その切り方、触感、OKです。
 ですが、銀杏きりの人参、酢漬けのかぶは、形状ではなく、その厚み、切り方、も少し薄くしたほうが、触感の繊細さ、浮き立って、美味しく感じられるじゃないでしょうか。

 焼き物の味、野菜の組み合わせは基本的にはOKなんですが、その切り方、幅、厚みの按配、バランスにもうひと工夫欲しいなあ、というのが私の印象。

 実は中国料理の蝕感。唇、歯、舌に触れる蝕感、噛み応えというのは、重要なポイント。私が中国料理のコースを組み立てる時、素材、調理、味付けともに、重視しているのが触感、その変化です。
 柔らかさ、硬さっていうのは噛み締めてからの触感、味わいどころ。

 その前に、唇、歯、舌に触れる一瞬、その瞬間の感触の印象、案外重要です。素材に則した幅、厚みを計算した巧みな「切り方」のバランス次第で、味、風味、その印象、大いに違いますから。ことに前菜はその点を無視できない。たとえば、 海蜇(くらげ)なんかその最たるものでしょうね。幅、厚みの切り方で味わい、風味、異なりますから。そんな素材の切り方、つまりは「板」の技、重要なポイントだと思うんですが、なんだか意外に見逃されがち。

 未来の巨匠、「平林クン」、頑張って!応援します!