続いて「湯」かと思ってたら「椒塩天使蝦/天使海老のスパイス揚げ」が登場。
ご覧の通り「黄金色」に輝く「天使海老」。しかも、大蒜、葱、赤唐辛子の微塵切りの揚げ物がたっぷりまぶしてあります。 ということは煎り焼きして塩・胡椒で味付けによる舊式の「椒鹽煎蝦」ではなく、「避風塘」式のもの。だから日本の料理名「スパイス揚げ」にも納得。
そういえば香港のスーパーなどでは調味料として塩、胡椒を混ぜた「椒鹽」が売られてます。もっとも、大抵は「味精」入りですので要注意。自分で作るのに限ります。
この「避風塘」スタイルの「椒鹽煎蝦」。
もともとは台風などに備えた船舶の避難所が設けれらた銅羅湾の船溜まりの一角に誕生し、庶民の憩いの場となった船上屋台、水上夜総會の一軒が始めた「避風塘炒辣蟹」がその発端。「喜記」がその最初の一軒、という説がもっぱらです。
「喜記」を始めた廖偉雄さんが語るには、漁に出て暮らす水上生活者は体力を消耗し、汗も大量にかくってことから辛味のある味、風味、濃い目の味付けを好む。それなことから大蒜、唐辛子などをふんだんに使った独自の調理方法を考案。それを改良したのが「避風塘風味」。
最初は蟹が素材だったのが、海老、蝦蛄(しゃこ)を素材にした料理が登場。 その後、銅羅湾の船溜まりの水上屋台は無許可営業によるものもあって政府が取り締まり、営業休止の処分に。海鮮料理で評判だった「喜記」、粥で評判だった「興記」などは店舗を構えて営業開始。
それまでに香港の主に大衆的な海鮮料理店ではその「避風塘」スタイルを真似た、というか、ぱくった料理が続出。一挙して広く紹介されることになった、という経緯があります。
基本は大蒜、唐辛子、葱、葱頭他、香味野菜を微塵にして揚げたもの。中にはパン粉を加えるなど、それぞれに店ごとに創意と工夫あり。
袁さんの「避風塘」スタイルの作り方、上品で洗練されてます。この種のスパイス、下手な店だと「味精」たっぷりな上に、油の質、揚げ方がお粗末で、しびれるだけじゃなくて胸焼けを起こしますから。
それより、驚いたのは「天使海老」。
「この殻、柔らかい!殻つきのまんま食べられちゃう!」なんて声が上がります。
画像撮影で食べることに遅れをとった私。
早速、口にしてみるとなるほど、殻が柔らかい、というよりも、薄い。 新しい殻に脱皮したみたいに薄くって、ぱりと言う歯応え以上に、さくさくのソフトな噛み応え。 しかも、なにより殻がうまい。
天使海老に限らず、この「椒鹽焗蝦」にしろ「豉油皇蝦」にしろ、鍋使いの上手い料理人が調理すれば、殻ごとそのままぽりぱり食べられます。それに、殻はぱりぽり、中の身は火が通っていながら、生のようなねっとりの触感を残しながら、噛み締めれば甘味、旨味が浮き立ちます。
ですが、この天使海老、薄い殻の味、風味が抜群。おまけに、身も甘い。ねっとり感を残した巧みな調理にも感心。ですが、身そのものの旨味、風味、ということに関しては、ちょっとばかり、茫洋、ぼんやりとした感じ。そうか、だから袁さん「避風塘」スタイルの味付けにしたんでしょうか?
それにしても「天使海老って?」と、実は私、初体験。
食べた時、山下さんか柏木さん、それに橋本さんに詳しく聞けばよかったんですが、会議に夢中で聞きそびれ。
ネットで検索したらニュー・カレドニア産の養殖の海老。品種、育て方、特別なようですね。ということは「基圍蝦」の一種、ってことですか。
「椒塩天使蝦/天使海老のスパイス揚げ」。殻の薄さ、その美味、味、風味に魅せられました。