2009/03/27

家郷小菜と香港炸醤麺~3月の「赤坂璃宮」銀座店の2

 そして「湯(スープ)」。かと思いきや、先に「椒鹽白鱔球/穴子のスパイス揚げ」が登場。 先月は「しゃこ」と揚げた「琵琶豆腐」という組み合わせでしたが、今月は、「穴子」に、春らしく「筍」の揚げ物が添えてある。それも、香味野菜の微塵を揚げたチップスをまぶした「避風塘」スタイル。

 先月の「しゃこ」はお寿司屋さんに持ち込んで下拵え、なんて凝ったものでしたが、今回の「穴子」も同様に、下拵え工夫を凝らした、なんてことでした。ちなみ「穴子」は長崎産。吟味して選んだものだそうです。

 そんな「穴子」、衣のついた表面が「さくさく」の揚げ加減。歯ざわりがなんとも心地よい。しかも、表面はしっかり揚がってるのに、その中身、アナゴですけど、根魚独得の緻密なあの「しゅわしゅわ」の肉質、それに火を通した結果の程ほどの「ねっとり」感があります。噛み締めると「さくさく」、次いで「じゅわじゅわ」、さらにジューシー!しかも、根魚独得の臭みを感じさせません。絶妙です。

 こんな揚げ方、中国料理の手法のひとつ。とくに、ふわっとした衣をつけて揚げる「酥炸」は、中華風フリッターなんてことで知られてます。
 でも、この「椒鹽白鱔球/穴子のスパイス揚げ」、衣は薄め、フリッターのように膨らんでいなくて、「さくさく」の「酥」よりも、どちらかといえば「ぱりぱり」、「かりかり」の「脆」の感じ。

 中国料理では代表的な調理方法。鶏の唐揚げなんてそうですよね。それに、関西などに行けばいまだに人気の「豚肉の唐揚げ」なんかもそう。
 ちなみに、「豚肉の唐揚げ」。関西では豚のてんぷら、なんて言ったりもしますが、てんぷら屋ではなく中華料理屋でしか食べられない定番の料理のひとつ。私が知らない、気づかなかっただけなのか、東京ではみかけたことがありません。

 豚の唐揚げって、おそらくは「椒鹽排骨」のバリエーション。かつてはスペアリブがそんなに流通していなかったことから、豚肉でそれを代用したんじゃないでしょうか。最後にぱん粉を絡めて揚げる「とんかつ」とは違って、分厚い肉じゃなくってごく普通の豚肉の薄切りに衣をつけて揚げただけのもの。

 ところが、日本の中国料理店でおめにかかる鶏の唐揚げにしろ、豚の唐揚げにしろ、しっかり揚がって表面は「ぱり」あるいは「さく」ですが、中の素材もしっかり火が通り過ぎて、肉がパサついている、なんてことがほとんど。ですから、この「椒鹽白鱔球/穴子のスパイス揚げ」には、揚げ方の按配、火の扱い、それが生み出す香りのよさ、素晴らしさに驚いたわけです。

 しかも、先月の「しゃこ」と比べれば、表面の衣の「さく」加減、同じなのに、噛み締めた時の素材の触感、「しゃこ」にはむちっとした弾力、「穴子」はしゅわっとソフトでねっとり感も。どちらかといえば「しゃこ」よりも「穴子」に軍配、かな。


 そういえば、一緒に出た筍の揚げ物。これは「ぽりはり」の弾力のある歯ざわりが快感。ってことでは「穴子」、それに、先月「しゃこ」と一緒だった「琵琶豆腐」の揚げ物の触感とは対照的。もちろん、味、風味もです。

 それよりも、この「椒鹽白鱔球/穴子のスパイス揚げ」は、新鮮な海鮮素材による贅沢な一品。香港あたりの日頃の食事でも、惣菜的な料理にこうした一品を加えるなんて、よくあること。食事が盛り上がります。