2011/02/19

新年宴会パート2~BISTRO KHAMSAの4

奈々先生のメインの料理は「仔羊のハンバーグ」。
円錐形のぼてっとした形状で、切り分けると中はピンク色。肉汁がじゅわっと滲みでる。
「わ、美味しそう!仔羊のハンバーグ、主人が良く作るんだけど、ぜ~んぜん違う感じ。さすがプロだけあって、とても綺麗に仕上がってる。今度、こんな風にメンチカツ風に作ってみてよ!」と、私にせがむうちのかみさん。
「渡邊シェフの料理って「顔つき」が良いのね。見るからに「美味しい!」ってわかるもの」。

そして、郭さんとシェアすることになった私のメインの「本日の特別な料理」。「ビーフ・ウェリントン」でした。これが見事な逸品! 渡邊シェフが「BISTRO KAMSA」で最後の日を迎える何日か前、店のブログに以下のような告知。

「お料理はBeef Wellingtonです!青森牛のモモ肉を下焼きしてマッシュルームのペーストと、埼玉の加藤さんが送ってくださったスーパーほうれん草の、焦しバター炒めでお肉を包み、さらにパイ生地で包んでオーブンで焼きます。ソースは切れを持たせたマデラ酒のソース、調子に乗ってトリュフも入れちゃいます。裏メニューでコッソリとご用意いたします。オーダー時にタツローさんに「ねえ、あれある?例のおパイで包んだお肉?」と聞いてください。おパイで包んだお肉はふんわり柔らかくマッシュルームの香りに包まれ、スーパーほうれん草の甘さの中にある渋みが赤身の渋みとあいまって、食べた瞬間、悶絶即イキ完全無修正です。絶対旨いに決まってます、これが不味かったら、ワタシ相当腕が無い事になります。メニューに載ってませんからね~ブログ限定です。あと、個人的には気に入っているブルーチーズ風味のクレメダンジュもよろしくお願いします」とまあ、勝手に引用。すんません、渡邊シェフ!

うちのかみさんの言じゃないですが、ほんとに料理の「顔つき」が素晴らしい!画像でもわかる通り、青森産の腿肉、刺しが入ってます。その塩梅、レアな焼き加減が見事です。舌の上でとろける脂が甘い。まったりこくのある濃密な甘さです。それに赤身の部分、いちぼを思わせる味、風味がある。

その上に見えるのが埼玉、東松山の農業、加藤紀行さんの日本ほうれん草。焦がしバターで炒めたもの。実は、過日、BISTRO KHAMSAに出かけた際、我が家に到着したばかりのほうれん草を持参。
「加藤さんから届いたほうれん草、もうなくなっちゃったんでしょ。だからちょっとだけ持って来ました……で、もし出来れば、食べさせてもらえないかな?」

馴染みの常連客でもないのに頼み込んだわがままオヤジの私です。そして「青首鴨のパイ包み」に添えて登場した加藤さんのほうれん草、やっぱり焦がしバターで炒めたものでしたが、私には塩味が強すぎた。

ところが、今回の「ビーフ・ウェリントン」での加藤さんのほうれん草、その濃い味、特有の鉄分、えぐみ、甘味、ほうれん草の持ち味を見事に引き出した塩加減、塩梅です。しかも腿肉の脂の甘さ、赤身のほのかな血の味と見事にマッチング。

ぬめり感のある炒めた微塵のマシュルームとのアンサンブルも面白い。もしかしてマッシュルームに、アンチョビとか塩漬けのオリーブとか、醗酵したひね味が隠し味としてプラスアルファされてれば、どうなんだろう……なんてことも思いましたが、そうか、ほうれん草や腿肉とのアンサンブルてこともありますから、ごちゃごちゃ言っちゃいけないか。

この「ビーフ・ウェリントン」。素材それぞれの持ち味を生かした調理、アンサンブル、味付け、香り、風味の素晴らしさに脱帽!

渡邊シェフにメールでエールを送ったところ「なんとか最後にもう一波乱起こしたいなと思い、三振覚悟でやってみました」なんてありました。

本塁打、ホームランです、見事なホームラン!うちのかみさん達、御夫人方との一緒のランチじゃなけりゃ、ワンポーションそのまま丸ごと一皿食べられたのになあ、なんて後悔しきり。どうやらシェアした郭さんも同じ気持だったようです。

BISTRO KHAMSAから独立した渡邊シェフ、新しい店「Le Berkeley」の開店準備中。これが渡邊シェフのブログです。その店名、かつて料理人として渡米した際、お気に入りだった街にちなんだもの。

渡邊シェフ、70年代のウエスト・コースト・ロック好き。グレイトフル・デッドやジャクソン・ブラウン、トム・ウェイツ命!なんてところが、嬉しいなあ。ますますエールを送りたくなります

新年宴会パート2~BISTRO KHAMSAの3

うちのかみさんのメインの「さつきポーク肩ロースのコンフィ」。

格子の網目がついてます。
ってことは、じっくり低温で揚げたあと、網で焼いたってこと?

実は、以前食べた時、塩味、ベタっと重い感じだったので料理を注文する際、「塩味控え目に」とメートルの鈴木さんのお願いしました。

「どう、塩味、塩加減?」
「うん、塩味、利いてるんだけど、前みたいに重くないの。香りがあるし、それに「軽い!」」と、うちのかみさん
「そうそう、お肉、ほんとに美味しいの。香りもあるし、これ、すごく「軽い」よね、いくらでも食べられちゃう!」と杉山洋子女史。

うちのかみさん、私のメインが来るまでに「さつきポーク肩ロースのコンフィ」をぱくぱく食べちゃって、シェアしてくれたのは丹念に切り分けたさつきポーク肩ロースの脂身だけ!
その脂身を食べて、塩梅を想像。
「うん、いい感じみたいね……」(トホホ!)

いつぞや評判のビストロでのこと。
「あらかじめ仕込んであるパテやテリーヌは冷製だろうからいいですけど、メインの料理の塩加減、控え目にお願い出来ますか?」とメートル氏に尋ねました。
「キッチンに尋ねてきます!」
、そんな返事の後で席に戻ってきたメートル氏
「あの……出来ないそうで。ウチのやり方、味加減でお出ししていますので」
とかなんとか、そんな返事に思わず口あんぐり。

「客の口にあわせるのは料理人の技量のうちなのに」と思わずひとりごち。
なんて言うと
「ビストロの料理って、塩味が強いのは当たり前じゃないの?フランスのパリあたりのビストロの塩味の強さ、日本の比じゃないから」という声が聞こえてきそうです。
もっとも、それはフランスの地の素材に併せてのもんでしょうし、塩味がきつくっても素材の旨味を引き出し、香り、風味もあるんじゃないですか?

追い討ちをかけて
「ウチではフランスの○○産の仔羊、△△産の家鴨、□□産の鳩を使ってますから」
なんて声も聞こえてきそうです。だからフランス、それにフランスのビストロそのままの味付けってわけですか? それってどうなんだろう。

味付けは同じかもしれませんが、素材の旨味、料理としての香り、風味がなくては意味は無し、なんじゃないかあなんて思う私です。
「素材はどこそこの○○産」って口上でも、味付け本意。素材を見極め、旨味、風味を生かし、料理としての香りがなければ「素材はどこそこの○○産」なんて口上は単なるブランド信仰、フランドを売り物にしてるだけじゃないでしょうか。

件の店の前菜の「田舎のパテ」や「フォアグラのテリーヌ」、その顔つき、見映えは雑な印象で、頬張ってみてがっつりの旨さ、勢いはあるものの、下拵えが乱雑できめ細かさ緻密さに欠けてました。それも味付け本意で、塩味、べったりとして重かった。

素材の味、旨味はほどほど。何よりも香り、風味が乏しい。思わず、改めて「メインの料理、塩加減、控え目に」なんてお願いしたかったのですが……。
無駄な話をあきらめてべったり塩味の重い濃厚な味をワインで紛らわしながら楽しみました。

日本の中国料理の大半は、実は、そんな按配。素材の旨味、香り、風味を引き出すよりも「中国料理ならではの味付け」が主流を占めます。辛くって、近頃は痺れ味が必須になった日本の四川料理などその最たるもの。プロのフードライターばかりかブロガーや彼らの見解に批判的な人を含め、ご意見のほとんどもそんな風、ですから。

「素材のブランド信仰」、しかも「味付け本意」な料理。日本の中国料理だけじゃなくってフランス料理、イタリア料理の店でも似たような体験、件の店に限らず、これまでたくさんありました。
私が出会った渡邊シェフの料理、そんな問題点をほぼクリアー。

「塩味が利いてても(料理に)香りがある。それに「軽い」」と、うちのかみさんは大満足。
杉山洋子女史も同意見。不参加だったあぐり女史に料理の「軽さ」を熱弁、だったそうです。

2011/02/18

新年宴会パート2~BISTRO KHAMSAの2

うちのかみさんの中国語教室の新年会。奈々先生とご主人の郭充さん。郭さんはフォトグラファー。昨年末他界した父君の郭博さんは建築家。フォトグラーファーとしても素晴らしい写真集を出版。それについてはいずれまた。
それからかみさんのジュエリー仲間の杉山洋子女史。うちのかみさんに私、という顔ぶれ。

着席間もなくメートルの鈴木さん「あの、うちのブログ、ご覧になりました?今日は特別に用意した料理がありまして、ひと皿分はご用意してございますが」。「あ、あれですね!」と「BISTRO KHAMSA」のブログをチェック済の私は思わずにんまり。ランチタイムに出かけても夜のアラカルトを所望、なんてわがままオヤジのごーまんぶりをご存知のメートルの鈴木さん。

ですけど、今回、私だけが夜のアラカルトからチョイス、というわがままは通らない感じなんで、はてどうするか。他の皆さん、ランチのメニューを見て何を選ぶかそれぞれ盛り上がり。
いろいろ検討の末、それぞれメニューが決定。

かみさんは前菜に「スモークサーモンのキッシュ」、メインはメニューにはありませんでしたがリクエストで「さつきポーク肩ロースのコンフィ」。
「あ、それ、美味しいって言ってた料理でしょ?私もそうしようかな。それに前菜は「自家製生ハムのさらだ仕立てにする!」と杉山洋子女史。「迷うわね……うん、私は「田舎風パテ」、メインは「仔羊のハンバーグ」と奈々先生。
「前菜は「スモークサーモンのキッシュ」にしよう。メインは……」と思案中の郭さん。

で、私。前菜、アラカルトから選び出したかったんですが、皆さんに合わせてランチ・メニューから前菜は「田舎風パテ」。
メインはどうしようか。というもの「本日の特別メニュー」が気が気でない。

メートルの鈴木さんに本日の特別料理、プラスアルファの値段でランチ・コースに組み入れ可能かってこととポーションを尋ねたところ
「う~ん、キッチンに尋ねてきます」。
そんな返事の後ですぐさま
「ランチコースの組み入れは大丈夫です。それにポーションですがお二人でシェアもできますが……」。

「おお、ラッキー!なら、ね、郭さん私とシェアしない?」
とまあ、郭さんに強引にシェアを押し付ける格好でメインは「本日の特別メニュー」に決定
「本日の特別な料理」というのは、実は渡邊シェフ、独立してオーナー&シェフとして店を持つことになったため、この日は「BISTRO KHAMSA」最後の日。というわけで用意した料理だったわけです。

さて、かみさんの前菜の「スモークサーモンのキッシュ」。
シンプルで素朴そう。ですが見るからに美しい。
こりゃ旨そうだ。付け合せのサラダも瑞々しい感じです。

ひと口頬張ってしばらく、うっとりとして「お・い・し・い」とウチのかみさん。
その味は……シェアしてもらえませんでした。

そして、私の「田舎風のパテ」。

これも見るからに美しい。緻密な肉質、ピンク色の艶やかな色合い。食をそそります。ひと口頬張れば、舌に触るざらっとした感触。肉質しっかり。それが噛み締めるとしっとり、ねっとり。塩味が利いてますが塩梅の加減、良いです。肉の甘味や旨さ、さらにはしっかり香り、風味がある。

パテ型のケース丸ごと一本テイクアウトして、朝、昼、晩、食べ続けたい感じです。「田舎風のパテ」、いろんなところで食べました。デリで買いました。自分でも作ってみました。そんな中で、私好みの味、香り、風味、ということではマイ・ベスト・スリーに入る一品。

「これ、すごく美味しい。香りがあるのがいいよね」と、シェアしたうちのかみさん。

2011/02/15

新年宴会パート2~BISTRO KHAMSA まずは長い前説

うちのかみさんが習ってる中国語の恒例の忘年会。
昨年末、先生の奈々さんのご主人のご家族に不幸があって中止に。
年を越えて新年会を開催と相成り、私も参加。
場所は中目黒の「BISTRO KHAMSA」。私同様、渡邊洋司シェフにぞっこんのかみさんのチョイスです。

うちのかみさん、友人とのランチに利用済。その時食べた「カスレ」を絶賛。
もっとも量もたっぷりなので全部は食べきれず、ナイショでお持ち帰り。
私も食べましたがかみさんが絶賛もなるほど、料理が旨いというだけでなくしっかり香りがあって風味が豊か。その味付けもさることながら「いんげん豆」に打ちのめされました。

「これ、すごいでしょ!この豆の茹で加減と味付け!」と、うちのかみさん興奮しきり。
絶妙の茹で加減です。すっと歯が入る滑らかな触感。
噛みしめるとはらりほろり身が崩れる。というぐらいにふっくらほくほく。
豆の素朴な甘味、旨味、風味がじんわり浮かび上がる。
しかも豆の旨さを引きたてる塩加減、その「塩梅」が見事。
「やっぱり渡邊シェフって、只者じゃないね!」とその夜は盛り上がりました。

そして私、実は正月の半ば、知人と「BISTRO KHAMSA」で昼食。
予約の際
「あのプレートランチや昼のコース、デジュネですか?季節柄、ジビエを食べたいんで、夜のアラカルトから選べればうれしいんですけど」
慇懃にわがままオヤジぶりを発揮。
電話を受けたのはどうやらアテンドの三好さんのようでした。

そんなリクエスト、予約の際にメモされていたらしくって、着席早々
「ジビエをご希望だそうで!」とメートルの鈴木さん。
手渡してくれたのはアラカルトも記された夜のメニュー。
わがままオヤジをくすぐる心憎いサービスです。

そして出会ったのが「ブータンとリンゴのコンポート、エスペレット風味のクルート」。
「ブータンノワール」なら豚の血入りのソーセージ。
ですが、この料理の場合、腸詰ではなくってパテ仕様。
これがヒット。三塁打というにふさわしいヒット。
なんでホームランじゃないの、って?
ま、それはともかく「渡邊シェフは只者じゃない!」と、ますます確信。
渡邊シェフの料理への取り組み、その姿勢、料理センス、技量を物語る一品でした。「ブータンとリンゴのコンポート、エスペレット風味のクルート」。豚の血入りのパテをリンゴのコンポートをはさんだトリプル・デック仕立て。さらにその表面を覆う薄い膜がある。あ、そか、これが「エスペレット風味のクルート」なのね。オーブンで焼かれたのか焦げ焦げでぱりぱり、さくさく。中国料理用語で言えばまさしく「脆」の触感です。

表面を覆う焦げ焦げのぱりぱり、クルートですが、後で渡邊シェフに尋ねてグリュイエールチーズ(どこのだ?)に生パン粉、バターを混ぜ合わせ、たっぷりの白胡椒とエスペレット唐辛子で仕上げ、冷蔵庫で締めたもの、だそうです。
エスペレット唐辛子?ネットで検索、バスク地方特産の唐辛子と知った次第。辛味は控え目、なんですけど、旨味がある。韓国唐辛子の中辛の手前の感じ、良質のカイエンペッパーかな? と、自分のしってる知識にたぐりよせて納得、なんてのがわがままオヤジです。

その表面、クルートね、それがオーブンで焼かれ焼かれて、塩味、醗酵味のひね加減が凝縮。そして、上下2層のブータン、豚の血入りのパテ、豚の血のざらっとした触感と鉄分しっかり。しかも、独特の甘味、コクがある。

その甘味、こくの正体。豚の背脂と玉葱だってことは私だってわかります。しかし、プラスアルファの何かがある。と思ったら、ミルク、牛乳でした。ちなみに、渡邊シェフがナイショで伝授してくれたレシピ。
私には再現不可能ですけど、それによれば

「1、背脂を細かく角切りにして鍋で溶かし、脂が溶けたら、みじん切りのタマネギを入れ、シュエします。

 2、次に牛乳、コーンスターチ、塩、白胡椒、黒胡椒、ナツメグ、キャトルエピスを加え、よ〜く火を通します。牛乳はよく火を通すと甘くなります、そうする事でシンプルなブーダンにボディーがつきます。

 イメージ的にタマネギが下半身、牛乳がお尻、腰回りです、火を加える事によりがっしりとさせます。この料理の場合、下半身は弱めです、アメリカ人みたいな体型にします」。

「ン!? タマネギが下半身、牛乳がお尻、腰回り」なんだか表現がエロチック。想像しちゃいますから(って、なにを?)ン!? もしかして渡邊シェフって……好きモノ(って、なにが?)「下半身は弱め」な「アメリカ人みたいな体型」って、をいをい。わかるようなわからんような解説、しかし、ニュアンスはばっちり。

ともあれ、豚の血入りのパテ、ざらっとした触感と鉄分が漲る感じ。そのぼってり、どっしりの甘さ、こく。リンゴのコンポート、火を通したリンゴのしっとりねっとりの触感、火を通したリンゴのフルーティな味わい、酸味が旨味に変化。

豚の血のパテとリンゴのポンポートが混然一体となって織り成す多彩で重層的な甘味、旨味とコク。塩味しっかり、なのに味わいは「軽い」。「わ、すげえや」と感嘆。アルザスかゼータクしてイケムと一緒なら、味わい、香り、ますます増幅!なんて思いました。

で、なんでホームランじゃなくて三塁打のなの?というのは、豚の血とリンゴのコンポートとの重層的な甘味、旨味、こくを包み込む、繋ぎ止めるひと味の甘さ、旨味、風味があるんじゃない?なんて思ったからですが……。まあ、知ったかぶりのわがままオヤジの戯言、ってことで!

けど、良かったなあ。「スタンダール風ソーセージ」の味、旨味、風味も抜群でしたが、この「ブータンとリンゴのコンポート、エスペレット風味のクルート」、ずしんとキャッチャーミットに収まる直球まっしぐら、って感じの渡邊シェフの意気込み、意欲、そのまんま全開。それでいて「軽い!」、なんてところが最高に素敵でした。

2011/02/11

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の5

「わ、もう、とっくにお腹が一杯、なのに~」という声も聞こえます。
すでに「發財好市」のあたりからそんな声もちらほらでしたが、「蒜茸炒菠菜」はなんとしても皆さんに食べてもらいたかった。
「もうお腹が一杯!」なんて方には無理強い状態。その甲斐あってお情けでお付き合いのひと口、のはずが加藤さんの味が濃くって頑丈な「ほうれん草」の旨さに、根っ子の甘味に取り付かれ、ほぼ全員がひと皿完食。

そこに登場してきたのが、締めくくりの面・飯の「鮑汁炆伊麵/伊府麵ときのこの鮑ソース煮込み」。私の好みの麵料理です。
「わ、どうしょう」なんて声とともに「麵とデザートは別腹ですから!」なんて声も。
「鮑汁炆伊麵」の「伊府麵」、日本ではなかなかお目にかかれない幅広い麵です。
特別に製造を依頼したか、それとも、香港から調達したものなんでしょうか。
その幅広の「伊府麵」、触感は「きしめん」に似てますけど、つなぎに玉子を使ってあるはずで、小麦粉にプラスアルファの味、風味あり。しかも「きしめん」を茹でると表面は半透明のつるんとした膜に覆われてますが、この「伊府麵」、いきなりざらっとした舌触りで、弾力のある噛み応え。
それも「干焼」仕立て、と言うのでしょうか。しっかりたれが麵に絡みつくまで炒められてます。そのたれ、甘味、旨味、こくと美味なる磯の香、風味がある。「鮑汁」、つまりは干し鮑を戻すときに生まれた煮汁のせいです。

プラスアルファ、オイスターソースの甘味、旨味、こくや、中国たまり醤油の「老抽」の味、風味もほのかに浮かび上がる感じ、なのですが、実際はどうなのか、袁さんに尋ねなきゃ。ともあれ、旨味、甘味、しっかり。伝統的な広東料理に特徴的な旨味、甘味にまったりとしたこくがある。しかも、後味はすっきり。そして「軽い」。というのは、料理人の調理、味付けの技なのは明白です。

そしてデザートの「甜品」。
いつもは各種「甜品」が並んだデザートプレートの披露がありますが、今回は温かい汁粉の「合桃露湯圓」で統一。
胡桃仕立てのお汁粉で、「湯圓」、つまりは団子が2個。
そのひとつずつ味、風味が異なります。なんてところが憎い。

さらに、新年には欠かせない「年糕」も登場。
白玉粉を主体にココナッツなどが加味されたもの。香港、というか広東式の「年糕」。
ういろうに似た触感。噛み締めれば歯にしがみつく感じのねっとり、粘着質な感じ。
香港の「年糕」、家ごとに、また、店ごとに味、風味が違います。久保田さんの手になる「年糕」。素朴で昔懐かしい味わいと風味。

久保田さんの「懷舊点心」、そのひとつひとつに技があります。「懷舊点心」と語るにふさわしく、昔懐かしい点心の味、風味をきっちり再現。
「懷舊点心」を中心にした飲茶ランチかディナー、なんとか実現したくなりました。

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の4

次いで「粉絲蒸花蝦/活け海老と春雨の蒸し物」。

「わ、すごい!」と声が上がります。場が一気に華やぎます。
色鮮やかな美しい料理。というだけでなくお皿のど真ん中に「もう、どうにでもして!」なんて感じで横たわる一匹の「えび」が、目を捉えて離さない。見るからに旨そうです。
開かれた「えび」の腹の上には粗い小口切りの青ネギ。板の仕事、橋詰さんがいた頃とは変わりました。

それにしても「花蝦」ってなんだろう?大ぶりの車えびという感じですが、何というえびなのか、産地はどこなのか、橋本さん、山下さんに聞きそびれました。ともあれ、「活け海老」のにんにく風味の蒸し物、これまでにも登場しました。私の好きな料理のひとつです。

以前触れてきたように、海老にも旬があります。それに香港周辺で収穫される海老、タイ、マレーシア、ベトナムの東南アジア沿岸で収穫されて香港に届く海老と、日本の各地で収穫された海老は、その資質、味、風味が異なります。それも日本産の海老、香港のように茹であげた「白灼蝦」などではなく、何がしかの調理、調味をした方がその持ち味、生きるんじゃないでしょうか。

その調理のひとつがにんにくで蒸した「蒜茸蒸」。新鮮な魚介はなんでもそうですがちょっとばかり下拵えして、焼くなり、蒸すなり、茹でこぼすなど、火を通すと触感が異なり、味、旨味、風味が凝縮。活けの生の海老はこりっとした硬い歯触りですが、火を通せば身も締まります。

蒸せば(ま、蒸し加減にもよりますけど)、こり感よりもぷり感が際立ち、しかも肉質しっとり。ジューシーな味わいになります。それに甘味が立ち、旨味も凝縮。そこにたれをかけて仕上たのが「蒜茸蒸蝦」。
身も旨いですが、殻も旨い。殻ごとむしゃぶりつきたくなるほど旨い。さらにはたれ、海老の甲羅や身から出るエキスをたっぷり含んでいるので、これまた旨い。ご飯にかけて食べたくなるほど旨い。

今回の「粉絲蒸花蝦」、添えられた「粉絲」つまりは春雨が、にんにくで蒸した海老の殻や身のエキスのまじったたれをしっかり吸い込んでいる、という按配。つるつる、とろとろの春雨が、これまた旨い。
もともと「蒜茸蒸蝦」は、にんにくのみじんとたれで仕上ただけの料理でしたが、香港ではこんな風に春雨を添えて蒸すのがここ最近のトレンドにもなっている様子。海老の旨さをとことん堪能出来る一品でした。
そして「蒜茸炒菠菜/ほうれん草ににんにく風味炒め」が登場。

ほうれん草は埼玉、東松山の農業、加藤紀行さんのほうれん草。譚さん、袁さん、それに宴会の参加者に是非とも食べてもらいたい、ってことで加藤さんにお願いしたものです。
「根っ子が旨いですから、根っ子つきのままで味わってみて下さい」と支配人の橋本さんを通じて譚さん、袁さんに伝言。そしたら、根っ子付きのままで登場。

「これ、旨い。ほうれん草の味も濃いけど、根っ子が甘くて旨いね!」
宴会の参加者から絶賛の声しきり。
冬場、加藤さんから届くほうれん草を食べてる私ですが、味が濃くって風味のある加藤さんのほうれん草の持ち味、香りを生かしたこの調理、味付けの見事さに感心。
ほうれん草の葉はしっとりとした滑らかな歯触り。根はほくっとしていて噛み締めると甘味が際立ちます。
塩味はぎりぎりの手前の加減で、だしの味が生きてます。それに、後味でにんにくの風味が浮かび上がる。
洗練された気品のあるほうれん草炒め。
プロの技に脱帽しました。

2011/02/09

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の3

それから「發財大好市/干し牡蠣と髪菜の煮込み」。
待ってました、これこれ!(と、歓声を上げたのは私だけ!)伝統的な広東料理、豪華素材を使った一品で、新年には欠かせない料理です。

この「發財好市」、素材の「發髪」と「發財」、つまりは「財を成す」というの言葉と音が似ていること。さらに素材の「蠔豉」、干した牡蠣ですが、その音は「好市」、つまりは「好景気」、言ってみれば「商売繁盛」という意味の「好市」と似ている。なんてことから「髪菜蠔豉」の料理名を縁起を担いで「發財好市」としたもの。

素材の要は「瑶柱」、すなわち干し貝柱。干貨素材ではふかひれ、干し鮑、燕の巣などには劣るものの、魚の浮き袋の「花膠」などとともに並び称される。実際、干し貝柱の値段からすれば、贅沢な素材であることは明らかです。

その「瑶柱」、戻し方については料理本やサイトなどでも紹介されていますが、おっとどっこい、紹介されてるように簡単なものじゃないんですね。あ、私の体験ですが。その戻し方次第で、旨さ、こく、風味、断然違いますから。

料理本のレシピ通りにやってみても、香港の広東料理店で出会うそれとはいつも「なんだかなあ!」と、似て非なる感じ。なんてことで丸福食堂こと福臨門の呉錦洪さんや我が兄弟、周中師傳に願いを請い、教えられたレシピを元に工夫を重ねました。

袁さんが戻した「瑶柱」も、香港の広東料理ならではのもの。甘味、旨味、ひね味、風味があります。今度、尋ねてみなきゃ。

そんな「瑶柱」、「髪菜」ともに、この料理の味の要なのが丸ごとのにんにく。
ほくほく、ねっとりで、特有のくせをわずかに残した甘味、旨味、風味があります。
干し椎茸もしっとりとしていて、噛み締めればじゅわっと旨味、風味が口中にほとばしる。
そして味付け。だしは二番だしの「二湯」かな?それにしては上品で旨味があります。調味料はオイスターソースの「蠔油」、中国たまり醤油「老抽」。こくのある甘味、旨味、風味は伝統的な広東料理に特有のもの。塩味が利いていますが、角張ったものではなくて、おだやか。

そして、小皿に取り分けられた「發財好市」の下に見えるのは小松菜の炒めもの。実は埼玉、東松山の農業、加藤紀行さんの「小松菜」です。今年の加藤さんの「小松菜」、味が濃厚で風味が豊。ほうれん草を凌ぐほどの見事な出来栄え。譚さん、袁さんに試食して貰うおうと加藤さんに依頼して送り届けて貰ったものですが、まさか、こうして登場してくるとは思いもよりませんでした。

譚さん、袁さん、加藤さんの「小松菜」の味の濃さ、香り、風味に着目、ってことらしくて急遽「跟菜」ということで、いわば付け合せってことで登場。しかも、こくのある味付けの「發財好市」の干し貝柱、髪菜、干し椎茸やにんにくとの相性は抜群。それらに負けない強さがありました。

この種の伝統的な広東料理独特の調味、日本の広東料理店でも出会えますが、オイスターソースの味ばかりが際立った濃厚な味付け、だったりします。ですが、この「發財好市」、まったりした濃厚なこくがある。なのに、後味はすっきり軽い。新年宴会だからこそのこの一品に出会えただけでも満足至極。その味付け、風味、そして、調理の技に感服。

2011/02/08

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会の2

そして「雪蛤蟹燴翅/カエルの皮下脂肪と蟹肉入りフカヒレスープ」。

ふかひれの料理は宴会料理には欠かせない一品。ことにふかひれは干貨素材の中でも最も馴染み深い素材ですから、皆さんの目の輝きも違います。
近頃、ふかひれの料理といえば姿煮がもてはやされますが、それが一般化したのは経済成長以後のこと。かつて香港でも宴会ではふかひれの散翅を使ったふかひれのスープが一般的でした。ということでは懷舊菜的趣向によるもの。
さらに、ふかひれだけでなく蟹肉が添えられていますが、もうひと素材加えられてました。
「ね、このカエルの皮下脂肪、って一体なんなの?」なんて声があがります。
「「雪蛤」は「蛤士蟆」とも言うんですが「蛙」の一種です。そのメスの「输卵管」を乾燥せたもので「雪蛤膏」とも言うんですけど、冬場を迎える前に養分を蓄えてあることから、薬効もあるというんで料理に使われるんですよ。コラーゲン質なんで美顔によいって言われてますけど。料理よりもデザートの素材に使うことが多いです」とひとウンチク。

スープはすっきりとした澄まし仕立て。だしの「上湯」の味、風味を生かした上品で洗練された一品。
ふかひれの「ぷり、ぷち」感と雪蛤の「こり、ぽり」感、という歯触り、舌触りの対比も、味わい所。かつて香港で地元の友人の宴会に招かれた時にであった懐かしいふかひれのスープでした。

そして「馬拉醤帶子/ホタテ貝のマレーシアソース炒め」。

帆立貝の貝柱のちょい厚目のスライス、「鱸」のすり身を素材にした「魚餅」の薄スライスと、赤と黄色のパプリカ、アスパラガスの炒めもの。さっと油通したらしい帆立の貝柱は、ねっとり、しっとりの触感。噛み締めると甘味、旨味が際立ちます。
「鱸」のすり身を素材にした練り物の「魚餅」は、関西で言う天ぷら、さつま揚げに似たような触感、味、風味。香港の潮州系の面粥店などではおなじみのものですが、ざらとした肉質、味、風味もしっかり、なのは自家製だからでしょう。私の好みの素材です。今度、自分でも作ってみよう。

色鮮やかな野菜は、それぞれに触感、味、風味が異なります。それらを「馬拉醤」で調味したもの。
「馬拉醤」、これまでにも新鮮な魚介の炒めもの、蒸し物にたびたび登場。醗酵味のこくのあるひね味がして、さらにはホット&スパイシー。ほのかな感じで、こく、旨味、ひね味、辛味が浮かび上がるという按配で、調味料の扱い、袁さんならではの行き過ぎない「手前加減」。

ところで「馬拉醤」。以前、紹介したように「蝦膏」と呼ばれるアミの塩辛の「蝦醤」を固形化したものや干し蝦の「蝦米」などに香味野菜、さらには唐辛子か唐辛子味噌などを加味して作るスパイシーな味噌。 なんですけど、今度、袁さんの使う「馬拉醤」の正体、確認をとってみましょ。

2011/02/05

'11年1月の「赤坂璃宮」銀座店~新年宴会

毎年恒例、仕事仲間の新年宴会。今年は「赤阪璃宮」銀座店と相成りました。
当初、宴会の幹事から場所の相談を依頼された私ですが、予算を考えて一瞬は思案。
もっとも「赤坂璃宮」銀座店にはリーズナブルに広東地方の郷土料理を楽しめる「家郷菜コース」というのがある。それを下敷きにしてプラスアルファの予算で実現が可能なんじゃないだろか。おまけに日頃の月例の会議のメンバーは4人か5人。それが新年宴会では頭数も増え、総予算も膨らみます。

中国料理店ならどの店だって「ご予算に応じて!」とあるように、一応の予算を用意すれば、料理の内容を改め、品数を軽減してもらいながら宴会の実現は可能なはず。それこそ、中国料理店ならではの魅力です。なんてことで「赤坂璃宮」銀座店の橋本支配人に相談をもちかけたところ「大丈夫です!」と承諾を得ました。
まずは前菜の「璃宮焼味盆/璃宮特製焼き物前菜」。

前列、右から伊達鶏の冷製、家鴨の焼き物の焼鴨、叉焼、皮付き豚ばら肉の焼肉。日頃お馴染みの品々。ですが「赤坂璃宮」銀座店初体験の参加からは「わっ、綺麗だね!」と驚きの声。その新鮮な感動の様子に気分が盛り上がる。いずれもひと切れずつですが、4種、皮と身の触感、味、風味の変化の妙が楽しめる。それにひとつひとつが肉厚。切り方が分厚くって、それぞれの印象は強烈です。

もっとも、伊達鶏の冷製、いつも気になるんですが、皮はともかく身はしっとりとしてるもののちょっと身が緩い。この身の緩さ、素材自体の特質なのか、もう少し身に締まりのある調理、工夫の余地ありなんじゃないかと思います。

家鴨の焼き物の焼鴨。これもいつもに比べると皮が緩い。もっとも、身のほうはしっかり火が通っていて、しっかりとした噛み応え。も少しレアな火の加減でもよかったかも。ってことは、皮の下拵え、火の通し方が課題でことでしょうか。

叉焼の表面は焼きがしっかり入って、甘味のある味付け。肉質しっかりで、噛み応えあり。ですが、ちょっと火の通し、私の好みからすると行き過ぎ、なので身のしっとり感が乏しいのがちょっと残念。
皮付き豚ばら肉の焼肉。さくさくとした皮と塩味が利いた肉が旨い。厚みもあって実に食べ応えがあって満足。さらに周りを囲む付け合せ類、なかでも干し椎茸のマリネ、しっとりとした触感とじゅわとあふれ出す干し椎茸の味わい、風味が印象的でした。
そして「椒塩鮮石斑/ハタのスパイス揚げ」。

「わ、でっかい!」。
大皿の端にでんと居座るハタの頭と尻尾。それからもこのハタの大きさがうかがえます。
ハタの身は、三枚に卸して、極太の切り身に。その切り身も肉厚。その見映えからすれば「油浸」の調理なのは明らかです。

「油浸」は、言わば「唐揚げ」なんですが、その下拵え、揚げ方、火の通し加減に特徴あり。皮もついた身の表面はかりっとクリスピー。しかも、さくっとした触感があります。さらに、噛み締めれば皮のぱりさくとは対照的に、身はしっとり。

身がはらり、ほろりと崩れ、ジューシーな味わいがほとばしる。甘味、旨味があります。それも、塩味、塩使いの按配が、脂がたっぷり乗ったハタの身が持つ特有の甘味、旨味を引き立てる。
この「油浸」の調理、中国各地にもありますが、ほとんどは「草魚/鯇魚」はじめ淡水の川魚がその素材。広東地方、ことに香港では海鮮の魚の調理に応用。中でも「油浸」で調理した老虎魚など、まさに絶品。

ハタもその素材には格好なもので、はらり、ほろりと崩れる身のしっとり具合、舌触りの滑らかさ、脂の乗った身の甘さ、旨味、風味はたまらないほど美味。単なる「唐揚げ」じゃなくって、魚の旨味、風味が存分に味わえます。ですが、日本では、それも広東料理店ではなかなか出会えない。というのは、やはり下拵え、火の通し方など調理に技があり。袁さんの技、実に見事です。

そんな「油浸」で下拵えしたハタの切り身に、にんにく、パプリカの微塵切りを揚げてまぶしてあります。
塩、胡椒や唐辛子、にんにくのヒリ辛味を利かせたもので、これまでにも紹介してきた「避風塘」風スタイル。
大ぶりのハタを調理したダイナミックな料理ですが、緻密で洗練された味、風味。それを引き立てるスパイスの利いた味付けも絶妙でした。

2011/02/04

節分 春節

今日は節分。例年通り太巻きをこさえました。
なんでも節分の「丸かぶりの恵方巻き」、今では全国的なイベントになったそうで。
ラジオに耳を傾けていると、その由来、曰く言われのもったいぶった紹介、うんちくあいついで紹介されてましたけど、そのほとんどが「をいをい!」なんて疑問沸騰。

もっとも、私、子供の頃、神戸にいた頃ですが「丸かぶりの恵方巻き」の体験なし。それが、うちのかみさん、大阪出身、しかも商いの一家に生まれ育ち、長年続けてきた習慣が我が家に持ち込まれた、という次第。

その具は干し椎茸、干瓢、押し(高野)豆腐、三つ葉、出し巻き玉子。
出し巻き玉子を除けばすべて精進仕立て。ですから巷で話題の「具は七品」とか「海鮮巻き」などとは縁遠い。
そういえば東京の太巻き、その具がそれぞれに存在を主張。しかも甘味が強くて味が濃い、というのが特徴ですが、我が家の太巻きはそれとは対照的。
干し椎茸は戻しただしに三温糖、薄口醤油で味をつけます。
干瓢、押し豆腐、出し巻き玉子のいずれとも、鰹節と昆布でとっただしが味の要。やはり三温糖と薄口醤油で味を調えます。
ですが、すべて薄味仕立て。
具の味、それぞれに存在を主張するのではなくて、具のすべてが寄り添うようにして、ひとつの味、一体味を形成、というのが特徴です。
そして、海苔。これも太巻きの味、風味の要。
我が家では伊勢の木野本海苔店から答志島産の「乾のり」を調達。

答志島産の海苔は「男海苔」。
浅草海苔のような「女海苔」とは対照的にその味、風味はがっしりとしていて、素朴で力強くて逞しい。しかも、精進仕立ての具の楚々とした純な味わいと見事にマッチング。
洗練された上品な味、風味を醸し出します。ことに「乾海苔」は巻物、それも精進ものとの相性がぴったり。魚介なら「焼き海苔」がいいですね。
ちなみに木野本海苔店の「乾のり」、10枚ひと束、400円。 消費税をプラスして、さらに取り寄せの送料込みでも、10枚ひと束、500円にもならないわけで、絶対のお買い得。 なんていっても「男海苔」になじみがあっての話、ってことになりますが。

そして本日は春節。
春節ならではの料理、実は過日、仕事仲間の恒例の新年宴会で出会えました。
その報告は後日にまた!

2011/01/28

2010年のニュー・ディスカバリー

年をあけてしばらく、いつもなら昨年出会ったベスト・メニューを紹介するところです。ですが、昨年の6月来、中性脂肪過多のために栄養士から食事指導を受けて食生活を改善、なんてことが年末まで続きました。

そんなことから外食の回数は一気に減少。ことに夜の外食は控え目にし、打ち合わせや会食は昼の食事に変更。とはいうもののランチのコースなどでは飽き足らず、夜のメニューから料理をお願いし、しかもフルヴォリュームでという按配ですから、不埒この上ない私です。

もちろん毎月通っている「赤阪璃宮」銀座店では昨年も新しい発見が続出。料理長の袁さんならではの料理を堪能しました。ですが、月越えどころか年越えになってしまった昨年の7月から12月まで「赤坂璃宮」銀座店の料理、未掲載のままですから、そいつを先に片付けないことには袁さんの料理の2010年ベスト・メニューも紹介できない。

いつのまにか億劫になってしまった新しい店、新しい料理の開拓も、コンサート通いの合間をみつけてトライしました。ことに芸術祭関連の催しでは日頃縁のない東京の下町や東部にでかける機会が多いものですから、目ぼしい店をチェック。ですが、なんだか口にあわなくって全滅でした。

そんな中で昨年の私のニュー・ディスカバリー、最大のヒットだったのは中目黒のBISTRO KHAMSA/ビストロ ハムサ。若きシェフ、渡邊洋司さんの手腕にぞっこんとなりました。

BISTRO KHAMSAは目黒川沿いのビルの5階にあります。室内はエキゾチックなモロッコ風の風情、佇まい。気取りなく寛げます。女性客が目立って多い、というのがちょっとばかり意外でした。かみさん、それに甥っ子夫婦と初めて訪れたのは週末のランチタイム。

プリフィックのランチコースは前菜、メインともに5品からの選択。周りを盗み見すればヴォリュームはたっぷりの様子。しかも、大半の女性客、ヴォリューム満点の料理をガッツリ、あ、いけない、しっかりぱくぱく、なんていうのが頼もしい。

プリフィックのランチコース、メニューには興味をそそるものがありましたが、店のサイトの画像やメニューで知った夜のディナーのアラカルトから選べないものか。なんてことでアテンドのメートル(後に鈴木さんと知りました)に相談。初めて訪れた店でいきなりのわがままなんて、しゃあねえオヤジ(私)です。

「どんな料理をご希望でしょうか。ご用意出来るもの、出来ないものがありますので」
「お店のサイトの画像やメニューにあったブータン・ノワールとかパテ・アンクルートとか、どうかなと思って」といじましくせびる私です。
「あ、あれはブータン・ノワールではなくてスタンダール風黒ソーセージですが、ご用意出来るかと思います」
「わ、嬉しいな!それから、パイ包みの寄せものの冷製、パテ・アンクルートだっけ。あれはどうです?」 「ご用意できるかどうか、尋ねてきますので」とキッチンの奥に引っ込んだ鈴木さん「いずれも大丈夫です!」なんて返事。嬉しいじゃないですか。盛り上がります。

メインはプリフィックのメニューから私は「豚肩ロースのコンフィ、パセリ風味」、かみさんは「仔羊のクスクス」、甥っ子夫婦は「豚肩ロースのコンフィ、パセリ風味」と「古白鶏とオリーヴとレモンのタジン」を選択。あ、前者が甥っ子のかみさん、後者が甥っ子のチョイスです。

目の前に現れた前菜の「スタンダール風黒ソーセージ」。
ぶっといソーセージが「でん!」と無造作に皿のど真ん中。
ビストロの料理特有のざっくばらんな気取りのなさ、のように見えて、その見映え、料理の顔つきが綺麗で美しい。
仕事が綺麗で丁寧です。細やかな神経が行き届いてます。
思わず、うっとり。ナイフを入れるのがためらわれるほど。
さらに、食べてびっくり。切り分けたソーセージ、最初はざらっ、次いで、ねっとりの触感。あふれ出す旨味、こく、風味が堪らない。塩味はしっかり利いています。しかも、緻密で繊細で洗練されていて、その味わいは奥床しくて上品。風味、香りが鼻腔に広がっていきます。
ガツンとくる簡潔で率直なビストロ料理の域を脱した重層的な味わい、風味の豊かさに「参りました」。
そして「鴨やフォアグラがごろごろ入ったパテ・アンクルート」。
これまた見映えが美しい。料理の顔つきが綺麗です。整ってます。ごくんと生唾、大いに食をそそられます。
はたせるかな、フォアグラや肉のごつごつの塊と練った肉の触感の組み合わせが絶妙。それぞれの旨味、風味が際立ってます。
塩味しっかり、これはちょいと塩味がべたっと重たい感じでしたが、そのきっちりとした下拵え、調理、味付けは丁寧で緻密。
洗練された上品な味、風味でした。
そしてメインの「豚肩ロースのコンフィ、パセリ風味」。

「もしかして!」
思ったとおり、肉はナイフすっとが入る柔らかさ。それでいて、ナイフを押し返すしなやかな弾力あり。
頬張れば肉質はしっとりとしていて、もちもちっとした触感あり。
さらに、肉汁がじわっとあふれ出す感じで、噛み締めれば噛み締めるほど肉の旨さがほとばしる。
コンフィ、ってことは低温で揚げたってことですよね。そんな低温での調理がこの柔らかさ、肉の旨さを引き出したってことか。 それより、ジューシーで旨味のある豚肉の豊饒な味、風味にこれまた「参りました」。と、同時に「ン!?」なんて思ったのは、我が家で作るなんちゃってパンチェッタにも通じる味、旨味、香り、風味を感じ取ったからです。

塩を擂りこんで、マリネして、寝かせてあるわけ?そう、塩味しっかりで、これもちょいと塩味がべたっと重い。ですがそれ以上に、肉の旨味、風味を感じます。しかもそれがじわじわひたひた押し寄せて、旨味が口中に広がっていきます。風味が鼻腔をくすぐります。

後で渡邊シェフに伺ったところ、案の定、塩をまぶして、マリネして、1週間ほど寝かせてあるそうです。やっぱそうか。それを80℃の低温で時間をかけてコンフィ、ってことでした。
今度、改めてレシピをたずねなきゃ。我が家で作るなんちゃってパンチェッタも工夫次第で・・・とは上手くいかないか。

肩ロースのコンフィ、素材の旨さを引き出す下拵え、低温でじっくりという調理、そのアイデア、出来栄えの見事さ、なんといってもその旨さと風味に感心しました。

2011/01/08

冬の鍋

冬になると鍋物の登場頻度が高まります。昨日も豚シャブでした。埼玉、川越のはぎちくのロース、肩ロース、埼玉の東松山の農業、加藤紀行さんちのほうれん草、水菜、白菜の漬物、豆腐、白滝といった組み合わせ。

正月の間は川越の小野食品のなごり雪がありましたが、すでに跡形もなし。ということで豆腐は駅前のスーパーで調達。ですが、なごり雪を知ってしまえば「あ~あ!」とため息仕切り。美味しいものに出会え、知った幸せに付きまとう罪作りな不幸ってやつです。なごり雪、思いついたらすぐさま入手できなのはなんとも口惜しい。

冬の鍋物、ことにこの時期、一番の好みは常夜鍋。それも加藤さんの日本ほうれん草が入手可能な時だけの限定版。我が家の常夜鍋は簡単で豪快。鍋にたっぷりの日本酒を注ぎ入れ、火をつけてアルコールを飛ばし、豚肉、ほうれん草を入れてしばし煮込むという按配。

豪快、というのは日本酒を入れた鍋に火を入れてアルコールを飛ばす際、いつものことながら慌てふた めいてしまうほど炎がぼーぼーと高く立ち昇る。はじめてその光景を見た人はあっけにとられ、ただただボーゼン!

日本酒だけで昆布とかでだしはひかないの?と尋ねられますが、はぎちくの豚肉、ロースにしても肩ロースにしても旨味たっぷりで味が濃厚。おまけに冬場のはぎちくの豚肉はなおのこと味が濃い。ですから豚肉だけでいいだしが生まれます。

おまけに加藤さんの日本ほうれん草の味も濃厚。はぎちくの豚肉との相性は抜群です。そんな次第ですから、たれは柑橘に醤油というお手軽ぽん酢仕立て。大根に唐辛子をはさみこんで卸したもみじ卸しか、薬味大根ならそのまま卸したものを用意するだけ。

ところが加藤さんの日本ほうれん草が入手出来ないとなると、普通のほうれん草、漬物の白菜や水菜、豆腐、白滝、ねぎ、くずきりなどを用意して豚しゃぶになります。それにしてもこんなに豚しゃぶを食べることになるとは思いもよりませんでした。

しゃぶしゃぶを食べるようになったのは東京にやってきてからのこと。神戸にいた頃、鍋物といえば季節を問わず、まずはすき焼き。遠方から親戚が我が家を訪れると中華料理を食べに出かけるか、我が家ですき焼きというのがおもてなし。それに、中華料理を食べた翌朝、すき焼きを用意、なんてことも珍しくありませんでした。

「え!? 小倉家では朝からすき焼きを食べるの!」と、うちのかみさん、我が家の食生活で面食らった出来事のひとつ。お好み焼きも豚肉を使わず、牛肉か牛筋の煮込みだった、ってことも。大阪出身のうちのかみさんのお好み焼きの定番は豚玉ですから。

もちろん今でも牛筋は駅前の川上デリでゲットしてお好み焼き用にこんにゃくと煮込んだり、関東炊きの具にもします。ですが、美味しい牛肉、なかなか手に入りませんから、最近はかみさんからの影響もあって豚玉ってことが多いです。

すき焼きも、冬場、それも一月半ばを過ぎる頃、前にも話したと思いますが、父親の猟の収穫や猟仲間の収穫のお裾分けの雉や鴨をすき焼き仕立てで食べてました。肉に散弾銃の玉が残っていて、思わずガリなんてことも。それが豬の肉だと味噌仕立ての牡丹鍋。余ったお肉は母親が即席のなんちゃってハムを製造。とまあ、肉食育ちの私であります。

水炊きってことになると鶏肉。ですから豚肉はとんかつはともかく、鍋物ばかりか惣菜類でもほとんど縁がなし。それが東京にやってきて豚肉を食べる頻度が増えたのは、美味しい牛肉にありつけず、豚肉の方がましなものが入手可能なこと。香港に出向くようになって豚肉の使い方、その良さを認識するようになったからです。

さて、常夜鍋が作れなくって豚しゃぶ、ってことになると常夜鍋とは違ってたれはさっぱり系よりも濃厚なのが好み。もっぱら用意するのは溶き玉子に、練り胡麻、腐乳、桂林醤を混ぜ合わせ、自家製辣油をたらしたなんちゃって中華風。

香港の火鍋、打邊爐のたれをヒントに考案したもの(なんて言うのも大げさですが)、北京の涮羊肉のたれをヒントに花椒や五香粉などを加えることもあります。香港の火鍋のたれ、もともとは溶き玉子に腐乳を少々、というのが一般的。潮州系になると潮州辣椒醤や沙爹醤を加えたりします。それが80年代半ば以後だったか、譚詠麟も経営参加していた天々火鍋で独自の沙爹醤を提供するようになって以来、新しいタイプの沙爹醤が大流行。

私も最初それに倣っていましたが、天々火鍋の特製のたれ、練り胡麻味がポイントと判明したことや北京のとある涮羊肉の店のたれに出会って以来、練り胡麻をべースにするようになりました。
そこで欠かせないのが辛味の醤、それに、腐乳です。
これがお気に入りの腐乳です。
どこのものかは……ナイショです。
なんて言っても、ご存知の方にはバレバレですね。

辛味の醤、といえば四川の豆瓣醤があるでしょ?なんて言われそうですが、赤色がかった若い豆瓣醤は辛味は強いものの味、風味が今ひとつ。れんが色したひねものの豆瓣醤がベスト。

最近でこそ郫県のひねものの豆瓣醤が簡単に入手できるようになりましたが、90年代頃までひねものは本土に出かけた際、入手するしかありませんでした。それに香港の広東系の辣椒醤、広西省の桂林辣椒醤、潮州系の辣椒醤や沙爹醤など、ほとんど日本では入手不可能。最近ではスーパーなどで有名ブランドの李錦記やユウキ食品の各種の調味料が並んでますが、欲しい!と思う辣椒醤、桂林醤、蝦膠の類など、肝心なものが見つからない。

それに豚しゃぶのたれには本土のひねものの豆瓣醤もいいですけど、パンチの効いた辛味と風味ということなら、やっぱり桂林辣椒醤。日本では入手不可能です。そんなことから、香港に出かければせっせと買い漁り、手荷物でもって帰るか、香港に出かける友人、知人に調達を依頼。そんな時、やっぱり香港は近くて遠い、なんて思います。

これがお気に入りの桂林醤とXO醤。
どこのものかは……ナイショです。
なんて言っても、ご存知の方にはバレバレですね。

2011/01/03

初日の出

謹賀新年 あけましておめでとうございます。
元旦、いつもより早い時間に目が覚め、新聞を眺めまわすうちふと思い立ったのが初日の出。
近くの野川の川べりなら初日の出を見られるのに違いない、なんて思って出かけたところすでに何人もの人が初日の出を待機。
陽の出は6時51分ってことでしたが初日の出を見られたのは7時10分。驚いたのは太陽のでっかさ。いつも天空に見上げる太陽は金柑ぐらいですがでっかいりんごぐらいの大きさ。まぶしさにくらくらしながらしばし初日の出を見続けました。初日の出、見たい見たいと思いながら、今まで果たせなかっただけに感慨もひとしお。
それから氏神の氷川神社に初詣。素朴で鄙びたその風情、佇まいはなんとも味わい深くて愛着を覚えます。
そして家に戻っておせちとお雑煮。
我が家のお雑煮、元旦はかしわにほうれん草、人参、大根の澄まし仕立てで、餅は茹で餅。京人参を調達できなかったのがちょいと残念。それから高麗川の高麗神社に初詣。訪れるたび思うことですが、高麗神社、吸い寄せられるようなオーラがあります。
二日目のお雑煮はかみさんの実家にならって白味噌仕立て。具は豆腐、雑煮大根、里芋、人参で、餅は焼餅。京人参は調達出来ませんでしたが、雑煮大根、緻密でしっとりした味わいが格別でした。
白味噌仕立てで具も簡素。素朴なようでいて奥深く、心洗われるような味わい、風味があります。

2010/12/27

師走の2

そして、大物どころのコンサートをいくつか紹介。
まずは人見記念講堂での井上陽水。バックはキーボード二人にギターという構成で、ベース、ドラムスの参加はなし。う~ん、これまでにもバックの構成を色々模索、実践という経歴のある井上陽水。ですが、リズムの要になるはずのベース、ドレムレスというのはなんとも意外。狙いは浮遊するようなアンサンブルだったんでしょうか。

ところが、開幕しばらくPAの按配が悪くって、一体どうしたの?と慌てふためきます。ですが、弾き語りからあたりから調子を取り戻し、あの朗々としていて妖しい魔力を秘めた歌声を堪能。新作『魔力』が抜群に素晴らしくって、面白くって、楽しみにでかけたんですが、いまひとつ盛り上がれず。

それから竹内まりやの10年ぶりのコンサート。ウェストがしっかり締まったすらっとした長身の細身姿もさることながら、喉、声の強さや声量、細やかな表現にぞくっと身震いするような表情の豊かさに圧倒されました。

日頃は主婦業に専念し、その合間をみつけて作詞、作曲活動、という彼女ですが、何よりも彼女の歌、歌声が魅力的。カラオケ歌って鍛えてます、なんてのではなくてストイックに歌を追求、なんて日頃の隠れたる努力や鍛錬、心がけがなければあの歌声はありえない!と思いました。

そして、今年は『夜会』がお休みの中島みゆきは全国巡演のコンサート・ツアー。その選曲がなかなか憎い!新作『真夜中の動物園』も素晴らしかったですが、歳をとればとるほど歌に深みがましていく、なんてのを目の当たりにしました。

そうそう、幕開け早々、聞こえてきたドラムスに耳をとられました。その音、まぎれもなくジム・ケルトナーのそれ。「え!どこどこ?」と思わず目を凝らしたら、なんとドラムスは島ちゃんこと島村英二。スネアのスナップのちょいルーズな感じ、ロール、フィルインの深いニュアンス、キックのずしりとくる深さと重み。ジム・ケルトナーじゃなくって、島ちゃんそのものでした。

残念ながらムーンライダーズやあがた森魚のステージは見られずじまい。
ですが、来年1月発売される鈴木慶一とムーンライダーズの『火の玉ボーイ』の最新リマスタリング作とあがた森魚の『俺の知らない内田裕也は俺の知ってる宇宙の夕焼け』の解説を執筆。ことにあがた森魚の新作、めちゃお気に入りです。

師走の1

ども、ごぶさたでした!今年も残すところあと57日。なんてことではぽっかり穴が開いたままになってる『赤坂璃宮』銀座店の7月から11月の月例報告、年明けになってしまいそう。その前に今月のを早いうちに報告いたします。

ところで、私といえば実は11月半ば過ぎからとっくに師走モード。今年も芸術祭の審査員を担当しましたが、審査会を終わってすぐさまコンサート通いが復活。毎年、年末になるとコンサート・ラッシュです。おまけに雑誌はじめ諸々の今年1年間を振り返る企画に加えて、来年早々の正月特番やら1月発売の再発企画の手伝いなどもあって師走を通り越して新年モード。

さて、コンサート。まずは久々にヴァン・ダイク・パークスとの再会が実現。『De La FANTASIA 2010』でのことでした。細野晴臣グループ、高橋ユキヒロ率いるTYTYT、クレア&リーズンなどなど参加のオムニバス・コンサート。楽しみは噂のトクマル・シューゴ。色々楽器を持ち替えたりするトイ・オーケストラ的趣きのバンドを従え、エレキ・ギターの弾き語り。

ですが、定評あるはずのギター、椅子に座ってギターの手元を見ながらの演奏で、なんだかリズムが落ち着かないままま一気呵成に弾きまくり。カレイドスコープ風に音像世界が広がり、つぶやくような歌と独特の歌詞世界、なんていうアルバムとは違ってライヴ仕立て。

ですが、ライヴ・ハウス・サイズの演奏で、内にこもって小ぢんまりのまま、歌と演奏のアプローチ、ホールの隅っこまでは届かないし、客席に飛び込むような感じもなし。それにしてもどうして椅子に座って弾くのか疑問。なんてこと、バック・ステージで当人にも尋ねました。

高橋ユキヒロ率いるTYTYTは高橋幸宏、宮内優里、高野寛、権藤知彦というスペシャル・ユニット。私好みのエレクトロニカ。ギターをサンプリングしてギターを足していく宮内優理と伸び伸びと歌う高野寛が光ってました。細野グループには鈴木茂も参加。今の気分そのままというオヤジならではの味わいが地味で滋味深い。高田漣君のマンドリンも「わ、すげ、やる!」なんて感じで、当人の思惑はさておきヤンク・レイチェルを思い出したりして。

面白かったのは細野グループの演奏のシャッフルのニュアンス。踏ん張りのある重さよりもハーフ・シャッフぽい軽さがあって、そこんとこ今風。若いメンバーのノリ、グルーヴを生かしたもの。あとで高田漣君に「あれって、なんで?」と尋ねたら「細野さんの好みなんです」なんて話に、ナルホド。昔そのままじゃなくって今風に、という訳ですね。

それから、今、私が注目のグループ、クレア&リーズンズ。話題のブルックリンからで「チェンバー・ポップス」なんてことだけど流行遅れのオヤジ(私ですけど)は「何、それ?」って感じですから、始末に終えません。フォーキーな要素にヴァイオリン、チェロによるクラシック的な要素をブレンド。ボヘミアン的な素朴さもありますが、とてもエレガントで知的。

ハイ・インテレクチュアル・ミュージックという感じです。それにどこかイギリス(かぶれ)風なんてもの興味をそそる。ウェスト・コーストでは絶対にありえないグループ。絶対的にイースト・コースト、それも《ザ・シティ》や《ニュー・イングランド》っぽい感じ「うん、その通りかも!」とクレアも言ってました。

そして、ヴァン・ダイク。「ジャンプ」に始まり「オポチュニティー・フォー・トゥ」やら「カム・アロング」に続いて「オレンジ・クレイ・アート」が!「F・D・R・イン・トリニダード」なんてのも。それに「英雄と悪漢」。さらにはかの名盤『ソング・サイクル』からの「ジ・アッティック」。アンコールが「オール・ゴールデン」というマニア泣かせのセット・リスト。

歳はとりましたが歌もピアノも実にパワフル。以前にもましてパワフル。それに、今回最大の収穫はクレアを除くリーズンズの3人のヴァイオリン、チェロ、ベースによるアンサンブルの素晴らしさ。ストリングスが命、というヴァン・ダイクはこれまでの来日公演の度、それを実践すべく日本でストリングスを調達。 ですけど、日本で調達したストリングスの《ノリ》というか《グルーヴ》はなんだかいまひとつ。

そんな問題をクレアの亭主のオリヴィア、チェロのジョン、ベースのボブのたった3人でカバー。ヴァン・ダイクが求めるストリングスでグルーヴ!を見事具現化、というスリリングな演奏、サウンド展開が絶妙でした。画像はヴァン・ダイクとトクマル君の記念写真を盗み撮り。

2010/11/13

「赤坂璃宮」銀座店記憶メモの1~真夏間近~10年6月の「赤坂璃宮」銀座店の4

 締めくくりの面・飯、今回は「欖角牛炒飯/オリーブと牛挽き肉のチャーハン」。 これが絶品!旨味しっかり、風味絶妙、見事なまでに美味なる炒飯でした。
 「欖角」というのは通称チャイニーズ・オリーヴ、厳密にはオリーブとは種類の異なる「橄欖」の実の果肉を塩漬けにしたもの。
 「欖角」は魚や豚肉などの蒸し物、煮込み物にも使います。漬物のようにひねた味がするもので、ほのかに渋味、えぐ味があるのと、噛み応えのある触感なのがその特徴。それを牛挽き肉とともに炒め合わせて作った炒飯です。
 そういえば牛挽き肉の炒飯、ホテル内の広東料理店でたまに見かけることがありますが、街中の中国料理店ではなかなかおめにかかれない。あっても、牛挽き肉とレタスの炒飯、ぐらいじゃないでしょうか。思い出したのが尾山台にある「華門」の牛挽き肉とレタスの炒飯。随分とご無沙汰してますが、忘れ難い美味です。ご店主はホテルの料理店の出身で、料理は緻密で丹念。久々にでかけてみようかしらん。
 話戻って、「欖角牛炒飯/オリーブと牛挽き肉のチャーハン」。
 香港で食べる牛挽き肉の炒飯は、牛肉の肉質、味も違い、牛肉そのものに特有のくせがあるせいか、今回のような「欖角」や漬物と一緒に炒め合わせ、なんてことが多いようです。
 日本の牛肉も、ご存知の通り特徴とくせがある。肉質は柔らかいものの、脂肪過多気味でその脂肪こそがくせの元。そんなこともあって「欖角」との組み合わせ、相性は抜群。「欖角」の塩味、ひね味が、牛肉の脂分、くせをかき消すとともに、旨味と風味を加味。
 むろん、それだけではありません。鍋、つまりは火の扱い、油の使い方、素早い炒め方の技、あってのもの。旨味たっぷりの味の良さだけでなく、風味、馥郁とした香りの素晴らしさたるや圧倒的。パンチの利いたメリハリのある味付け、さらには「鑊氣/鍋の気」溢れる勢いに打ちのめされました。
 一期一会ではないですが、出会った料理はその時限りのもの、なんてことから、あの美味をもう一度なんてことにはそう執着しない私ですが、この「欖角牛炒飯/オリーブと牛挽き肉のチャーハン」は別格。もっぺんすぐさま食べたい!なんて思ったほど。その内、リクエストすることにします。

 そしてデザートは緑豆の汁粉仕立ての「緑豆爽」。

 本来は冷製ですが、頼み込んで温めたバージョンをリクエスト。
 ニッキと生姜入りで、素朴でひなびた甘味が、ほのぼのとした気分にさせてくれます。
 その登場を待つまでに現れた今月の懐舊点心は「蓮香皮蛋酥」。
 オーブンで焼かれた皮はさくさくと触感。ピータンの独特のクセのある味、風味がなかなかに滋味豊かで味わい深い。その昔、昼になれば飲茶の点心目当てにあっちこっちの料理店をはしごした頃のことを思い出します。
 昔懐かしい点心を再現してみせてくれる点心料理長の久保田さんの存在は貴重です。

「赤坂璃宮」銀座店記憶メモの1~真夏間近~10年6月の「赤坂璃宮」銀座店の3

 そして「茄汁天使蝦/天使海老のトマト風味煮込み」。

「天使海老」は「10年4月の「赤坂璃宮」銀座店」で登場済。そん時は「椒鹽天使蝦/天使海老のスパイス揚げ」ってことで、それも揚げたニンニク、ネギなどの微塵切りをたっぷりつかった「避風塘」でした。
 それも「天使海老」、殻が柔らかい、というよりも、薄い。新しい殻に脱皮したみたいに薄くって、ぱりと言う歯応え以上にさくさくのソフトな噛み応え。その殻が旨い。その身についてはねっとりとした触感で甘味あり。ですが、なんだかちょっと茫洋。そんなことから袁さん、「避風塘」スタイルの「椒鹽」の調理法で、なんて私は想像し、納得。
 そして今回は「トマト風味煮込み」。そう、「茄汁」なんてあるようにケチャップ味付けです。微塵のネギなどの香味野菜とケチャップの甘味、酸味が煎り焼きで下拵えした天使海老の殻の旨味、身の味を引き立てる。それも、ケチャップ特有の味がなんだか、広東風。そういえば上海で食べた「干焼明蝦」に近い感じ。  
そうそう、日本のエビチリ、ケチャップを使うバージョンが広まってますが、あれって陳健民さんが日本人のトマト・ケチャップ好みを察知して四川式の「干焼蝦仁」をアレンジ、なんてことになってますが、どうやら陳さん、上海か香港でそのスタイルに出会ったじゃないかと私は想像。
 この「茄汁天使蝦/天使海老のトマト風味煮込み」を食べて思い出したのが中国北方、沿岸部で一般的な「干焼明蝦」。ケチャプではなく蝦のミソをたっぷり使った料理で、油に溶けた赤いミソの色合いが鮮烈で、見るからに食をそそります。
 「干焼明蝦」はかつて神田の龍水樓の看板料理でしたが、近年、ミソがたっぷり入った有頭の高麗海老の入手が難しくなっていらい、知る人ぞ知る幻の料理に。たまに入手することがあって、ありつけることもあるらしい。
 そんな一人がバードランドの和田さん。 「小倉さんにはナイショにしといてね!」と店主の箱守さんに言い含められたそうで。をいをい、それはないぜ箱守さん、プンプン!
 ついでながら赤坂で宮廷料理、北方の料理を看板にする「涵梅舫」の「大正蝦の山東風煮込み」もまさにそれ。「涵梅舫」ではマストの料理ですが、最近はご無沙汰です。
 続いて野菜料理で「蝦醤炒通菜/空芯菜の海老味噌炒め」。
「空芯菜」の炒め物、ごくオーソドックスな炒め物で、家庭でもよく作ります。
大蒜の微塵や生の赤唐辛子、さらには赤ピーマンなどを加えて海老(厳密にはアミ)の塩漬けの醗酵味噌の「蝦醤」で風味付け。
とはいえ、瞬時の内に空芯菜を炒め合わせるだけの技量、技が問われる料理。仕上げに「だし」を加えて煮含めますが、その「だし」も上質のものに限ります。
 手軽に家庭で作れるようでいて、上手く美味しく作るには難しく、厄介なしろもの。私なんて、いつも「いざ!」とはりきりますけど、出来あがりは決まってなんちゃって「空芯菜炒め」なんで、後悔しきり。
 今回の「蝦醤炒通菜/空芯菜の海老味噌炒め」、煮浸しとまではいかないにしてもいつもより仕上げの「だし」の分量、少々多めの感じで、空芯菜もくたっとした仕上がり。
 「蝦醤」控え目、「だし」味の美味、存在感が際立つ一品でした。

2010/10/31

「赤坂璃宮」銀座店記憶メモの1~真夏間近~10年6月の「赤坂璃宮」銀座店の2

 続いて「梅菜蓮煎餅/漬け菜と蓮根入り豚挽き肉の煎り焼き」。

 「蓮藕餅/蓮根入り豚挽き肉の煎り焼き」は09年5月にも登場。 もっともあの時は「家郷蓮藕餅」ってことでした。
 それも豚挽き肉に小ぶりの蓮根、擂り下ろした蓮根に、海老の擂り身が混ぜてあありました。
 小ぶりの賽の目に切り分けられた「蓮根」の「バリ!ボリ!」の触感、噛み締めれば豚肉と海老のすり身の旨味、さらには擂り潰した蓮根のざらっとした触感とほのかに泥臭くえぐみがあり、なんて按配でした。

 ところが今回の「蓮藕餅」、前のとは違ってました。蓮根は賽の目に切られていて、ばりぼりの触感とほくほくした味わいを残してます。さらに、豚挽き肉に擦り下ろした蓮根に「梅菜」加えてあります。
 「梅菜」、そうです客家料理で御馴染みの中国の南方に多い漬物で、芥子菜を一度漬け込んでから天日干しにし、さらに漬け込んだもの。醗酵したひね味に甘味が加味されているのがその特徴。

というわけで前回の「家郷蓮藕餅」とは味も風味も異なります。
「これ、ご飯と一緒にたべたくなりますね!」
なんて話も出るぐらい、よりお惣菜的な一品です。
 こういう「蓮藕餅」、どうしてだか日本の広東料理店でお目にかかれないのがホントに残念。
 続いて「冬菜蒸鮮魚/冬菜とイシモチの蒸し物」

 「冬菜」は細長い形状の「天津白菜」をニンニクと一緒に塩漬けにしたもの。もともとは白菜の塩漬けだったものが、他に香辛料を加味するようになったとか。それもニンニク入りのものが評判を呼び、北方から南方の広東地方、東南アジアの華人社会に広まっていった、といった歴史もあり。

 とまあ、09年4月に「東麗蒸鮮魚」を紹介した時に触れてきたとおり。
 あの時の魚は「あいなめ」でしたが、今回は「いしもち」。
 そういえば、「冬菜」、天津産の「冬菜」だったのにちなんで料理名「東麗」となってましたが、今回はそのまま「冬菜蒸鮮魚」。
 「いしもち」はスーパーで見かけることも多く、手に入れば煎り焼きした上に生姜の千切り、さらには大根の千切りをたっぷり加えて長時間煮込みます。するとスープは白濁。「いしもち」の味、風味を吸い込んだ大根が旨い。
 今回の「冬菜蒸鮮魚」、「冬菜」のひね味を吸い込んでいます。
 ところが塩味がしっかり、かと思えば、むしろほのかな感じ。しかも、塩味だけじゃなくて、独特の甘味もある。どうやら赤坂璃宮特製の「海鮮ソース」を隠し味にしのばせてある様子。それがなんとも効果的で、味わい複雑、しかも、重層的。なんとも心憎い味付け、風味です。
 もとより、魚を蒸すって案外難しい。魚の火の通し加減、それも切り身ならともかく、丸ごとの魚一匹を蒸すとなると、その見極めが厄介。素人にはなかなか出来ない技。年季、経験を要します。

 そんな蒸し加減も絶妙なら、隠し味を忍ばせた味付け、風味も文句なし。素朴な家庭料理なんですが、ひと手間、ふた手間かければ、こんなにも美味に! なんて、袁さんの手腕に脱帽です。

2010/10/11

「赤坂璃宮」銀座店記憶メモの1~真夏間近~10年6月の「赤坂璃宮」銀座店

 今頃になって6月の「赤坂璃宮」銀座店での月例のメニュー紹介なんて、間の抜けた話ですが、やっぱり、記録に留めておきたい。ですが、4ヶ月送れですからいつもより手早く簡潔に。
 まずは「前菜四拼盆/前菜四種の盛り合わせ」。
 画像、右から文旦、豉椒鶏、叉焼、焼肉、みょうが、金糸瓜、パプリカ。奥が海蜇。

 「ウォ、肉の切り方、前よか厚くなってる!」なんて声が上がります。
 そうです、伊達鶏の辛味醤油漬け、皮付き豚バラ肉の焼き物、切り方が分厚くなってしっかりした歯応え。

 TVのバタラエティや食関連の番組で、タレントや芸人の食べ歩き、それも肉の試食で開口一番「柔らかい!」とのたまう御仁の多いこと多いこと。

 「柔らかい」ってのが「美味」の表現に定着してしまったのには恐れ入ります。 そうした方々がほめそやす「柔らかさ」ってのは、実は肥育された牛肉だからじゃないですか?
 本来、肉は噛み応えのある弾力があるもの。それを噛み締めてこそ、肉の味わい、風味があるのをご存知ないらしい。

 もっとも「美味」ではなく「美食」の観点、しかも、中国の宮廷料理の歴史を紐解けば「柔らかさ」というのは、様々な触感の中でも重要なポイント、だったのは事実。
 なんせ、宮廷のやんごとなき方々の多くは生(性)への執着から滋養強壮になるものはなんでも。

 とはいえ、多くは御老齢なんてことから、柔らかい触感というのは必須の条件のひとつだったわけです。なんてことからすると「柔らかさ」をほめそやす、タレント、芸人の方々は、やんごとなき方々と嗜好が御同様? な、ばかな!

 ところで、今回の前菜、叉焼、焼肉の皮のパリ感、噛み応えはしっかりで味わいあり。
 ですが、辛味醤油漬け、前々からちょいと気になってことですが、皮が薄く、皮裏の脂肪質も足りないせいか皮のぱり、さく感が乏しいのと、肉質が緩い。すっと歯が入るような弾力がないのが物足りない。

 付け合せの「くらげ」は、ぽりぱりの触感が良かった。もっとも、少々塩加減が強めなのがきになります。
 野菜類はそれぞれ少量ながら、金糸瓜、パプリカ、素材の生かし方、ばっちりでした。
 それから文旦、沙田柚の「柚皮」を元に、それと種類が同じ日本の文旦の皮を干したものを戻したんでしょうか。 詳細は尋ねませんでしたが、味付けはともかく、じゅわしゅわの触感「鋭い!」と思いました。

 そして「湯」。いつもなら季節の具材を取り入れ、日常素材と組みあせて長時間煮込む「老火湯」か、湯煎蒸しにする「燉湯」ですが、今回は「蟹肉冬瓜羹/蟹肉と冬瓜のスープ」

 「蟹肉」に、体熱をさげてくれる効果のある「冬瓜」を組み合わせたもの。

 「火腿」の千切りがさりげなくその存在を発揮。
 しかし、なんといっても「だし」、それも上質の「上湯」の旨さ、風味が光っています。

 洗練された気品、風格のある奥行き深い味わいが、食べ進むごとにじわじわひたひた押し寄せてくる。もうお手上げ!

 「わ、これすごいや!」と、思わず唸ってしまう見事な「湯」でした。

2010/10/05

2010年の中秋節

 あっという間に10月です。8月半ばに「中性脂肪過多~血がどろどろ」をアップしたまま、9月のブログはすっ飛ばし!その間、お見舞いのメールやら電話、それにブログ・アップの催促も頂戴しました。嬉しい限りです。
 で、件の中性脂肪過多、栄養士指導による食事を実施中。ですけど「結構、手前勝手に都合よく解釈してやってんじゃない?」なんて鋭い突っ込みも!「を、を!中らずと雖も遠からず」とまあ、その辺りの返事は曖昧に。
 もっとも、知人から豆腐や豆乳、湯葉に大豆、頑丈な夏野菜の支援もあり、食事内容に気を配り、一度にばか喰いというのはやめて分食を心がけたことからか、再検査、再々検査の結果は良好。数値、一気に10分の1にまで落ちました。
 「やった、これで食事制限もなくなる!」と喜んだのも束の間
 「いい感じですね。この調子で年末まで食事は栄養士の指導通りに続けてください!」と、代謝科の先生がキッパリ。
 そ、そうですか、そうですか。
 実は再検査、再々検査の間に医師からの助言もあって血液だけでなく各種検査を実施。胃、それに大腸の内視鏡検査と相成りました。近頃、胃カメラって喉からじゃなく鼻から挿入なんですね。ところが、私、鼻の粘膜、過敏症で弱いせいか、内視鏡を鼻から通すのが痛くって痛くって大変でした。以前のように喉から検査してもらうほうがよっぽど楽。
 もっとも、PCのモニターに映し出される胃カメラ探検の模様、これがなかなかの見もの。思わず食い入るように見つめてました。わが胃ながら、ピンク色してぬめっとした感じの胃壁がなんとも旨そう!刺身にして喰う、そうだ、韓国式のアレで……なんて具合です。
 「そろそろ胃にはいりま~す」とか、「ここから十二指腸ですから」なんて話を聞くと 「を!ここが「肚尖」か!」と豚の胃の食道と十二指腸の連結部を素材にした「肚尖」の料理の数々が思い浮かびます!
 大腸の内視鏡検査では2日前から食事制限。おまけに3時間かけて胃、大腸をすっからかんにする洗浄液を2リットルも飲まされたのに難儀しましたが、内視鏡での大腸内探検もこれまた見ものでした。
 ブログ休載中、中性脂肪過多の話と共に問われることが多かったのが月例の「赤坂璃宮」銀座店の報告。読んでくれてる人がいるってだけでも嬉しくなります。実は下書きも画像も用意して準備万端。ところが色々あってアップしないまま放置状態と相成った次第。それも6月以後未掲載なんてことになってしまいました。ですから、これから3ヶ月分、おいおいと。
 そういえば、「赤坂璃宮」の飯田橋店も再訪。これがまたなかなかの内容でした。他にも打ち合わせの際には目ぼしい店を選んで、とまあ食事制限ありの食事療法施行中の身の上ながら、道を踏み外すことも度々で。
 おまけに、今年も中秋節の前には月餅が続々到着。中性脂肪過多にはもっての他のはずですが、旨い月餅はこの時期でないとありつけませんから、その機を逃せない。
 蓮の実餡の蓮蓉、白い蓮の実餡の白蓮蓉に、塩漬け玉子の鹹蛋が2個入りの雙黄、3個入りの三黄。伍仁(糖蓮子、瓜子仁、杏仁、芝麻、欖仁)に火腿、糖冬瓜などによる伍仁金華火腿など、各種が勢ぞろい。
 私の一番の好みは、以前、紹介しましたが九龍城市城南道の「和記隆」の「百合芋泥月餅」。
 しっとり、ねっとりのタロ芋餡の自然で素朴な甘さは格別です。
今年は平ったい餅状の「月糕」もゲット。
 一緒に届いたマカオの英記特製の「荔枝紅茶」とともに味わいました。


 広東式の月餅ってことなら、今年は榮華の「三黄白蓮蓉」の白蓮蓉の味わい、風味がことの他、素晴らしかった。ですが、止めを刺すのが丸福食堂の雙黄蓮蓉。
 外側の糖皮は薄く、しっとりとしていて柔らかい。しかも、さくっとした触感で、ほろり、はらりと糖皮が脆く崩れていく。
 蓮の実餡は、しっとりとしているだけでなく、ねっとりとしていて、緻密で濃密。香港の蓮の実餡はほとんどが羊羹のように練ってこってりの弾力があったりしますが、丸福食堂のは滑らかで、舌の上で餡が溶けていきます。
その味、風味は洗練を極めたもの。品格があって奥深く、なんと言っても官能的。厳選されたクセのない鹹蛋の美味も他に見あたらない。世界一の月餅です。
 そんなことから中性脂肪過多なんぞ忘れて月餅ぱくぱく。うちのカミさんもやめられなくて、体重が一気に増加と嘆くことしきり。ならやめればいいのに。けど、やめられませから、旨い月餅は。
 で、肝心の中秋の名月、デジカメ携え、深夜の街を徘徊。ところが、今年は夜空を見上げても曇り空に覆われていて拝めずじまい。デジカメのシャッターを切っても写っていたのは真っ暗闇ばかり。
画面の端っ子に道端の木々のテッペンの連なりが写っておりました。