続いて「梅菜蓮煎餅/漬け菜と蓮根入り豚挽き肉の煎り焼き」。
「蓮藕餅/蓮根入り豚挽き肉の煎り焼き」は09年5月にも登場。 もっともあの時は「家郷蓮藕餅」ってことでした。
それも豚挽き肉に小ぶりの蓮根、擂り下ろした蓮根に、海老の擂り身が混ぜてあありました。
小ぶりの賽の目に切り分けられた「蓮根」の「バリ!ボリ!」の触感、噛み締めれば豚肉と海老のすり身の旨味、さらには擂り潰した蓮根のざらっとした触感とほのかに泥臭くえぐみがあり、なんて按配でした。
ところが今回の「蓮藕餅」、前のとは違ってました。蓮根は賽の目に切られていて、ばりぼりの触感とほくほくした味わいを残してます。さらに、豚挽き肉に擦り下ろした蓮根に「梅菜」加えてあります。
「梅菜」、そうです客家料理で御馴染みの中国の南方に多い漬物で、芥子菜を一度漬け込んでから天日干しにし、さらに漬け込んだもの。醗酵したひね味に甘味が加味されているのがその特徴。
というわけで前回の「家郷蓮藕餅」とは味も風味も異なります。
「これ、ご飯と一緒にたべたくなりますね!」
なんて話も出るぐらい、よりお惣菜的な一品です。
こういう「蓮藕餅」、どうしてだか日本の広東料理店でお目にかかれないのがホントに残念。
続いて「冬菜蒸鮮魚/冬菜とイシモチの蒸し物」
「冬菜」は細長い形状の「天津白菜」をニンニクと一緒に塩漬けにしたもの。もともとは白菜の塩漬けだったものが、他に香辛料を加味するようになったとか。それもニンニク入りのものが評判を呼び、北方から南方の広東地方、東南アジアの華人社会に広まっていった、といった歴史もあり。
とまあ、09年4月に「東麗蒸鮮魚」を紹介した時に触れてきたとおり。
あの時の魚は「あいなめ」でしたが、今回は「いしもち」。
そういえば、「冬菜」、天津産の「冬菜」だったのにちなんで料理名「東麗」となってましたが、今回はそのまま「冬菜蒸鮮魚」。
「いしもち」はスーパーで見かけることも多く、手に入れば煎り焼きした上に生姜の千切り、さらには大根の千切りをたっぷり加えて長時間煮込みます。するとスープは白濁。「いしもち」の味、風味を吸い込んだ大根が旨い。
今回の「冬菜蒸鮮魚」、「冬菜」のひね味を吸い込んでいます。
ところが塩味がしっかり、かと思えば、むしろほのかな感じ。しかも、塩味だけじゃなくて、独特の甘味もある。どうやら赤坂璃宮特製の「海鮮ソース」を隠し味にしのばせてある様子。それがなんとも効果的で、味わい複雑、しかも、重層的。なんとも心憎い味付け、風味です。
もとより、魚を蒸すって案外難しい。魚の火の通し加減、それも切り身ならともかく、丸ごとの魚一匹を蒸すとなると、その見極めが厄介。素人にはなかなか出来ない技。年季、経験を要します。
そんな蒸し加減も絶妙なら、隠し味を忍ばせた味付け、風味も文句なし。素朴な家庭料理なんですが、ひと手間、ふた手間かければ、こんなにも美味に! なんて、袁さんの手腕に脱帽です。