2011/01/08

冬の鍋

冬になると鍋物の登場頻度が高まります。昨日も豚シャブでした。埼玉、川越のはぎちくのロース、肩ロース、埼玉の東松山の農業、加藤紀行さんちのほうれん草、水菜、白菜の漬物、豆腐、白滝といった組み合わせ。

正月の間は川越の小野食品のなごり雪がありましたが、すでに跡形もなし。ということで豆腐は駅前のスーパーで調達。ですが、なごり雪を知ってしまえば「あ~あ!」とため息仕切り。美味しいものに出会え、知った幸せに付きまとう罪作りな不幸ってやつです。なごり雪、思いついたらすぐさま入手できなのはなんとも口惜しい。

冬の鍋物、ことにこの時期、一番の好みは常夜鍋。それも加藤さんの日本ほうれん草が入手可能な時だけの限定版。我が家の常夜鍋は簡単で豪快。鍋にたっぷりの日本酒を注ぎ入れ、火をつけてアルコールを飛ばし、豚肉、ほうれん草を入れてしばし煮込むという按配。

豪快、というのは日本酒を入れた鍋に火を入れてアルコールを飛ばす際、いつものことながら慌てふた めいてしまうほど炎がぼーぼーと高く立ち昇る。はじめてその光景を見た人はあっけにとられ、ただただボーゼン!

日本酒だけで昆布とかでだしはひかないの?と尋ねられますが、はぎちくの豚肉、ロースにしても肩ロースにしても旨味たっぷりで味が濃厚。おまけに冬場のはぎちくの豚肉はなおのこと味が濃い。ですから豚肉だけでいいだしが生まれます。

おまけに加藤さんの日本ほうれん草の味も濃厚。はぎちくの豚肉との相性は抜群です。そんな次第ですから、たれは柑橘に醤油というお手軽ぽん酢仕立て。大根に唐辛子をはさみこんで卸したもみじ卸しか、薬味大根ならそのまま卸したものを用意するだけ。

ところが加藤さんの日本ほうれん草が入手出来ないとなると、普通のほうれん草、漬物の白菜や水菜、豆腐、白滝、ねぎ、くずきりなどを用意して豚しゃぶになります。それにしてもこんなに豚しゃぶを食べることになるとは思いもよりませんでした。

しゃぶしゃぶを食べるようになったのは東京にやってきてからのこと。神戸にいた頃、鍋物といえば季節を問わず、まずはすき焼き。遠方から親戚が我が家を訪れると中華料理を食べに出かけるか、我が家ですき焼きというのがおもてなし。それに、中華料理を食べた翌朝、すき焼きを用意、なんてことも珍しくありませんでした。

「え!? 小倉家では朝からすき焼きを食べるの!」と、うちのかみさん、我が家の食生活で面食らった出来事のひとつ。お好み焼きも豚肉を使わず、牛肉か牛筋の煮込みだった、ってことも。大阪出身のうちのかみさんのお好み焼きの定番は豚玉ですから。

もちろん今でも牛筋は駅前の川上デリでゲットしてお好み焼き用にこんにゃくと煮込んだり、関東炊きの具にもします。ですが、美味しい牛肉、なかなか手に入りませんから、最近はかみさんからの影響もあって豚玉ってことが多いです。

すき焼きも、冬場、それも一月半ばを過ぎる頃、前にも話したと思いますが、父親の猟の収穫や猟仲間の収穫のお裾分けの雉や鴨をすき焼き仕立てで食べてました。肉に散弾銃の玉が残っていて、思わずガリなんてことも。それが豬の肉だと味噌仕立ての牡丹鍋。余ったお肉は母親が即席のなんちゃってハムを製造。とまあ、肉食育ちの私であります。

水炊きってことになると鶏肉。ですから豚肉はとんかつはともかく、鍋物ばかりか惣菜類でもほとんど縁がなし。それが東京にやってきて豚肉を食べる頻度が増えたのは、美味しい牛肉にありつけず、豚肉の方がましなものが入手可能なこと。香港に出向くようになって豚肉の使い方、その良さを認識するようになったからです。

さて、常夜鍋が作れなくって豚しゃぶ、ってことになると常夜鍋とは違ってたれはさっぱり系よりも濃厚なのが好み。もっぱら用意するのは溶き玉子に、練り胡麻、腐乳、桂林醤を混ぜ合わせ、自家製辣油をたらしたなんちゃって中華風。

香港の火鍋、打邊爐のたれをヒントに考案したもの(なんて言うのも大げさですが)、北京の涮羊肉のたれをヒントに花椒や五香粉などを加えることもあります。香港の火鍋のたれ、もともとは溶き玉子に腐乳を少々、というのが一般的。潮州系になると潮州辣椒醤や沙爹醤を加えたりします。それが80年代半ば以後だったか、譚詠麟も経営参加していた天々火鍋で独自の沙爹醤を提供するようになって以来、新しいタイプの沙爹醤が大流行。

私も最初それに倣っていましたが、天々火鍋の特製のたれ、練り胡麻味がポイントと判明したことや北京のとある涮羊肉の店のたれに出会って以来、練り胡麻をべースにするようになりました。
そこで欠かせないのが辛味の醤、それに、腐乳です。
これがお気に入りの腐乳です。
どこのものかは……ナイショです。
なんて言っても、ご存知の方にはバレバレですね。

辛味の醤、といえば四川の豆瓣醤があるでしょ?なんて言われそうですが、赤色がかった若い豆瓣醤は辛味は強いものの味、風味が今ひとつ。れんが色したひねものの豆瓣醤がベスト。

最近でこそ郫県のひねものの豆瓣醤が簡単に入手できるようになりましたが、90年代頃までひねものは本土に出かけた際、入手するしかありませんでした。それに香港の広東系の辣椒醤、広西省の桂林辣椒醤、潮州系の辣椒醤や沙爹醤など、ほとんど日本では入手不可能。最近ではスーパーなどで有名ブランドの李錦記やユウキ食品の各種の調味料が並んでますが、欲しい!と思う辣椒醤、桂林醤、蝦膠の類など、肝心なものが見つからない。

それに豚しゃぶのたれには本土のひねものの豆瓣醤もいいですけど、パンチの効いた辛味と風味ということなら、やっぱり桂林辣椒醤。日本では入手不可能です。そんなことから、香港に出かければせっせと買い漁り、手荷物でもって帰るか、香港に出かける友人、知人に調達を依頼。そんな時、やっぱり香港は近くて遠い、なんて思います。

これがお気に入りの桂林醤とXO醤。
どこのものかは……ナイショです。
なんて言っても、ご存知の方にはバレバレですね。