2007/11/26

中国料理におけるメニューの選択、コースの組み立て(その3)、ついでに、ミシュランガイド東京版「ミシュランガイド東京2008」(その1)

 香港の料理店にも少人数向けのコースがある。
 その昔、いや、今でもそうかも、上海系の大衆的な店には「客飯」と言って一人用のいわば定食メニューがあった。それに、九龍の工場街の近くの大衆的な小食店では昼も夜も、「湯」に料理2品、ご飯付き、なんて定食セットもあった。

 で、高級料理店などで少人数向けのコース料理が提供されるようになったのは、80年代の半ば過ぎからのこと。そのきっかけを作ったとも言えるのが、今ななき凱悦飯店の2階にあった「凱悦軒」でのことで、なんと、一人用のセット・メニューを用意。

 それ以後、一流ホテル内の中国料理店で、社用族の昼食目当てに「商務套餐」、つまりはビジネス・ランチってことで2~4人用のコース料理が用意されるようになった。さらに、街中の料理店で「二人世界」など、2人用のコース料理も登場。

 香港の人たちの中にも、メニューを選んでコースを組むのが面倒だ、って人がいるからこそ、登場したもの、じゃないでしょうか。それに、香港人だからって、誰もがメニューを簡単に選べ、コースを組み立てられるわけでもない。旨い物、美味しい物を知ってるわけでもない。 香港には旨い店もあれば、まずい店もある。口にあった料理があるってことだけで、それ以外はあえてコメントはしないのが香港人。

 そんな1人用のコース、それに「商務套餐」にしろ「二人世界」にしろ、やはりその基本は、宴会用のコース料理の縮小版。それも、店の看板料理が必ず組み込まれている、ということからすると、店の事情に詳しくないビギナーや観光客にはうってつけ。

 しかし、看板料理や、ふかひれや干貨素材を使った料理じゃなく、もうひとひねりのコース設定はないかな、という人も多いんじゃないかと思います。が、その場合には、やはり、自分でメニューを選んで、コースを組み立てるしかない。いや、その「コースを組み立てる」っていうこと自体が、問題というか、厄介で面倒なんでしょう。

 そういえば、人伝えに聞いたフランス人、それも中国料理、中華料理に出かけた際のメニューの選択、コースの組み立てっていうのが、おもしろい。

 まずは、前菜、メインという組み立てがその基本。日頃の食事の習慣にならってのことです。それに、日本人にしろ、本場の中国の人にしろ、店にまで食べにでかけ、何人かと料理をとるとなると、それぞれめいめい好みの料理をあげながら、皆で分け合ったりするのは、ごく日常茶飯ですよね。

 それが、さすが個人主義の発達した国、フランス、ことにパリあたりだと、自分が注文した料理は自分が食べるだけ。他人に分けたり、他の人の料理に手を出す、なんてことは滅多にしない、ってことです。前菜にこれ、メインはこれと決めたら、一人で最後までその皿、料理を食べ続ける。

 いや、噂には聞いていたことですが、それが真実に近い話だと知ったことがありました。
 私の知人でフランス在住の料理研究家。東京に戻ってきた際、「北京ダック」にぴったりなワインを持って帰ってきたから「北京ダック」の美味しい店を紹介してよ、と言う話に、一応はセッティングしたのですが、その「北京ダック」の食べ方を知ってびっくり。

 餅で包んだ北京ダックがずらりと並んだ一皿を、そのワインとあわせてひたすら食べるって、ことでした。
 普通、日本でなら、それに、本場の中国だってそうですけど、「北京ダック」を食べるといってもせいぜい1人で2~3包み。欲張って5~6包みってとこでしょうが。
 5~6包みも食べるのは、私以外に滅多にいないって!
 けど、フランス、パリの中国料理店では、それが当たり前、というのですね。
 しかも、一皿ですから、5~6包みだけじゃないようで。

 さすが、私の知人は日本人ですから、同席した人と一緒に食べるってことでしたが、普通はそうじゃないらしい。
 前菜はこれ、メインはこれと決めて、それらの料理をひとりで最後まで食べつくす。
 というフランス式中国料理の食べ方の美学。パリに行ってその実態を確めたいと思います。

 そうか、今、街中で噂の「ミシュランガイド東京2008」の覆面審査員も、そうやって東京の中国料理店を審査したのかも。いや、日本人の審査員もいたそうで。ってことからすると・・・・・・

 「あ、私、コースにします!」と日本人の審査員。
 「あ、そ、なら、私はアラカルト」と、フランス人の審査員。
 「あ、それうまそうですね」と日本人の審査員
 「だめ、これ私がとった料理なんだから!」とフランス人の審査員。
 な、ことがあったりして!
 というのは私の想像!

 で、その結果が、あれ! ってわけですか?

 ン!? 味で評価? 
 なら、なんであの店が入ってなくて、この店が?

 サーヴィスで評価?
 なら、この店、料理のサーヴィス、見栄え重視、というわりに、器は貧弱。
 取り分けの皿は冷めてるし、なんでも皿に取り分けりゃ、いいってもんじゃないし、
 汁ものを皿に取り分けりゃ、料理が冷めるってこともわかんないの?
 
 独創性?
 あれ、れ?
 ここの看板の料理、他の店で食べたことのあるコピー じゃ・・・・
 
 そうか、和風中華にアレンジ、という独創性か!
 そこまで見抜くとは、さすが、ミシュランの覆面審査員!

 とまあ、その辺の話は、後日また!