2009年に出会った美味、ひとつ忘れてました。
KK・ミーティングで食べた岐阜の泉屋の「鮎の熟れ寿し」。
「寄る年波には、勝てないんでしょ?」と小野哲あたりからツッコミがありそうだ。
今年に入って岐阜の泉屋の泉善七さんから「子持鮎熟れ寿しの【ごはん】を練りこんで作ったガナッシュ『白練りショコラ』が完成いたしました。一度ご賞味いただきたく、熟れ寿しとともにお送りしたいのですが」というメールが到着。
「そうだ!KK・ミーティングで食べた「子持ち鮎の熟れ寿し」、KK・ミーティングで出会った美味の中ではピカ一、だったことを思い出し、そればかりかあの味、旨味、風味までがしっかり甦りました。
「子持鮎熟れ寿しの【ごはん】を練りこんで作ったガナッシュ『白練りショコラ』の話はKK・ミーティングの際、試作中だと泉さんから伺いながら「はて、どんなもん?」と想像がつかず。
届いた『白練りショコラ』。食べて、なんでまた「熟れ寿し」のご飯がチョコレートになるの?」という素朴な疑問が解消。早い話、狙いは「チーズ風味のチョコ」にあったんだと食べて即座にわかりました。納得。要は「熟れ寿し」の塩味、醗酵味、ひね味をチョコレート作りに生かしたもの、なんじゃない?ってことです。
もっとも、チョコはホワイト。塩味、醗酵味、ヒネ味を生かす為なのか、こってり濃厚なチョコの甘さはうんと控え目(と私には思えました)。それは塩味とのバランスを考えてのことだろうし、近頃、甘味控え目のチョコレート、ケーキが人気、その需要も高いですから、そのあたりも狙い目、なんて思ったりして。ですが、チョコにしろケーキにしろ、こってりぼってり甘いのが好みの私ですから、正直いってホワイトチョコは少々物足りない。
そして「子持ち鮎の熟れ寿し」。
「KKミーティングの時に提供したもの(3年前 2007年製)とは年代が違い、昨年漬け上がったいわゆる「新モノ2009年製」ものです。微妙に味が違うと思います」と泉さん。
確かに「微妙に味が」違いました。「微妙に」どころか、しっかり味、風味が違いました。
KKミーティングの時に食べた3年前ものは、口にすればぐじゅ、ぼて、どてっとした重量感が舌にのしかかる。まろやか、というのを通り越したような濃密で濃厚、熟した味、風味が舌にまとわる。その味わい、妖艶でなまめかしくて・・・エロティック!
まさしく「まったり」というの表現がぴったりな感じ、でした。
それに比べて「新モノ2009年製」。鮎の身、レアというか生な舌触り、味わい。しかも清廉で清々しい。おまけに、熟れ寿しのご飯、きりっとシャープ、とんがったような鮮烈な味わい。しかも、ひりっとした辛味まじりのさわやかで爽快な刺激感がありました。
その爽やかでシャープな爽快感に、思わず冷酒がほしくなり、試したところ、これがぴったり。
「いや、まてよ!これならもしや!」と、本醸造をぬる燗で食べ合わせたところ、熟れ寿しが口の中でほどける感じになり、きりっとした印象がゆるやかに。清々しい爽快感がほどけていく感じがたまらない。
それにしても子持ちの鮎の熟れ寿し、とっても素敵です。鮒寿しでの鮒などとは明確に異なる鮎の素材の味。それに、泉屋の「子持ち鮎の熟れ寿し」の寿し、ご飯そのものが鮮烈で爽快。独得の味、風味があります。
以上のような感想、泉善七さんに伝えたら、「ホワイトチョコ」「ゴルゴンゾーラチーズのレシピを応用して作り上げました」とうご返事。お!私の解釈と見解、まんざら間違でもなかったんだと判明。
それから泉屋には「鮎のパテ」があります。それもKK・ミーティングでであったもの。
泉さんによれば数寄屋橋の「バードランド」の「レバーパテ」をイメージして、鮎の内臓の「うるか」で作ったもの。もっとも、発端ともかく、出来上がった「鮎のパテ」、「うるか」を素材にしてあるだけに、塩味、ひね味、それに旨味しっかり。というだけでなく、甘味やら苦味やらその味わいは複雑で微妙。ねっとりの触感が次第にほどけて味わい、旨味が変化していく宇宙的な広がりに「う~ん」と唸って後の言葉が出ない。
「子持ち鮎の熟れ寿し」も凄いですけど「鮎のパテ」も格別の味わい。
清廉で爽快。泉屋の「子持ち鮎の熟れ寿し」や「鮎のパテ」にはそんな表現があてはまるんじゃないでしょうか。