正月2日目。日高市の高麗神社へ初詣。
昨年、初めて訪れ、高麗神社が放つオーラに惹かれ、今年も参拝。今年もなんだか不思議に高揚感を味わいました。我が家から往復5時間ほどの旅の後は新年の挨拶まわり。
そして本日は、年賀状の整理や明日からの仕事始めの準備。
そういえば、昨夏、NHKのFM放送40周年記念の一環として特別復活した「クロスオーバー・イレブン」が好評を呼んで、「クロスオーバーイレブン2010新春」として再々復活。1月4日から8日まで放送されます。
さて、昨年、撮影した画像整理の傍ら、思いついたのが昨年出会った美味の選出。
まずは「福臨門酒家」銀座店で9月に食べた「迷你佛跳牆」。
ブログでの紹介はしませんでしたが、昨年、出会った忘れ難い味のひとつ。
久々に味わった「佛跳牆」。
「迷你」とあるようにこれまで食べた「佛跳牆」とはいささか異なりました。
福臨門のブログでの紹介によれば、たとえばふかひれ、本来は「生翅」を使うところ「荷包翅」に替えてあるのと、干し鮑のサイズが小ぶりなのが「迷你」の由来、だそうで。
ふかひれ、干し鮑以外の素材は、魚の浮き袋、なまこ、スッポン、鶏肉、干し椎茸、豚のアキレス腱、干し貝柱など10種。
その昔、香港のいくつかの店、それに本土でも「佛跳牆」を体験しましたが、その極め付け、極上の「佛跳牆」は福臨門のそれでした。中でも忘れ難いのは86年だったか、週刊文春でマスヒロ先生を香港に案内という企画を実施した際、福臨門九龍店のマネージャーの梁保先生が考案した一人用の「佛跳牆」。本来は大きな燉盅で多人数分作る「佛跳牆」を、小ぶりの燉盅を使い、一人用にしたもの。
今回の「迷你佛跳牆」、その流れを汲むものといっていいでしょう。もっとも、中味に関してはいささかの変更あり。魚の浮き袋、なまこ、スッポン、干し貝柱は同じですが、豚ではなく鹿のアキレス腱だったこと。それに髪菜や幾種かの漢方素材が入っていたことがその違いかな。
それにもうひとつ、スープ、つまりは上湯が少なめ。実はそこんとこ、今回の「迷你佛跳牆」の特徴のひとつになって新たな効果を発揮。
「佛跳牆」の素晴らしさ、修行中の坊さんがその匂いに惹かれて塀を跳び超えた、なんて料理名の由来通り、馥郁とした「香」が官能的。
心身を惑わせる煩悩の権化というにふさわしい。
まずはふかひれ。確かに「生翅」に比べれば翅絲は細め。ですが、ぷりぷちの歯触り、噛み応えで、しかも、分量もたっぷり。う~ん、たまんねえ。
次いで鮑を取り出し、別皿でナイフとフォークで切り分ける。32頭(って鮑の大きさです)ってことですが、なんだか31頭の感じ。
しっかりフォークで押さえてないと切り分けられないぐらいの粘着度。その断面はほのかにピンクがかった好みの戻し具合。噛みしめれば歯にすっと入る柔らかさ。しかも、歯や歯茎にまとわりついて離れない。そのねっとり感の妖艶な触感に身震い!ほんとですから。
干し鮑ってほんとエロティック。最良のキスを味わっているような触感に身悶え!濃密な磯の香の最良のエッセンスを凝縮した味わい、風味が堪らない。
そして魚の浮き袋。歯がすっと入る柔らかさは干し鮑にも似てます。ですが、ぷるんと弾けて跳ね返すようなしなやかな弾力あり。しかもねっとり感の粘着性とともに、独得の繊維質でちゅういーな触感あり。しかも、噛み締めれば、これまた磯の味、風味がする。それも干し鮑とは異なる磯の香り。
なんて具合に具材のひとつひとつ、味、風味を堪能するうち、唇、腔内はべろべろねっとりのコラーゲンの膜が幾重にも張り付いて離れない。以前、食べた「佛跳牆」よりもスープが少なめ。だったのはふかひれ、干し鮑、魚の浮き袋にスッポンや豚のアキレス腱が生み出すコラーゲンの濃度、密度を高めるためのものだってことに気づきました。
「迷你佛跳牆」、その料理名からするとエコ(って、エコロジーじゃなく、エコノミーな)デフュージョン的イメージですけど、そんなもんじゃない。「佛跳牆」の真髄である「香」だけでなく、味、風味に加え「コラーゲン」の効用、効果を美味化した「ネオ・クラシック」的思考による伝統料理の今日的展開の極意、極めつけなのだと確信しました。