前菜は「前菜焼味盆/璃宮特製焼き物前菜」だけ、と思ったらもう一品登場。
「「辣鶏」でございます。今、当店では「三重県産の食材フェアー」をやっておりまして、これは「熊野地鶏」を使いました「辣鶏」です。いつもより、辛味は控え目、とのことですので」とアテンドの山下さん。
帰宅して「赤坂璃宮」銀座店のサイトを調べたら、ありました「三重県産の食材フェアー」の告知。「的矢の牡蠣」、「伊勢えび」、「尾鷲産の真ハタ」、「熊野地鶏」の数々が。もっとも期間は1月13日~25日までってことでした。
さて、目の前の「辣鶏」。 前菜というよりも見事な一品。「サプライズ・1」の登場です。
「辣鶏」。その見かけ、色艶、照り具合からすると「脆皮(炸)鶏」。
もっとも、一見、油をかけて最後の仕上げをしたように見えますが、よくよく観察してみれば皮の張り(突っ張り具合)や色艶からすれば、釜焼きのようでもある。
「はて?????」という疑問符が、頭の中をあっちこっち、右往左往しながら行ったり、来たり。
「これ、旨いワ!皮のぱりぱりも旨いけど、肉が甘いの!」
なんて話に口に鶏肉を頬張ったままの皆さん、黙々と食べながら相槌のうなづき。
一呼吸あって「「熊野地鶏」ってこんなに甘くって旨いんだ!」
という声が相次ぎます。
良い鶏、美味しい鶏に出会った時の私の定番的表現
「歯がすっと肉に入って、噛み締めると柔らかいのにしなやかな張りと弾力があって、ジューシーな肉汁がほとばしる!」。
そんな風だけじゃなく、肉の旨味、確かに甘さが際立っていたのに驚きました。
けど、それってもしかして、熊野地鶏自体の肉質の良さ、旨さだけでなく、素材の持ち味を生かした下拵え、抜群の火の通し方、調理の腕にも関係ありなんじゃない?
なんてことで、またまた「はて?????」という疑問符が頭の中をあっちこっち。どうも油で下揚げし、仕上げにもう一回揚げ、皮の張り、艶を出す従来の基本的な「脆皮鶏」の料理方法ではなさそうだ。というのも、ぱりぱりに仕上げられた鶏の皮、その裏側についた脂(要は皮下脂肪ですけど)、それが皮の裏側を焼き、肉も焼いている様子。
肉を噛み締めていると、皮下の肉を皮下のが焼き上げた、というようなびみょーな味、風味を感じます。おまけに、肉を食べた時の甘さには、肉質そのものの甘さだけじゃなく、脂の甘さ、下拵えの際に「水飴/麦芽糖」が塗り込められているからじゃない?なんて考えが頭をよぎる。ま、「脆皮鶏」も下拵えの際、「水飴」、「麦芽糖」なんかが使われます。
それよりこの「辣鶏」、普通に油で揚げた鶏肉、早い話が鶏の唐揚げとは、火の通り、肉質の感じが違います。「これ旨い!」と直感的に思いながら、その一方で、美味、旨さの秘密、秘訣をめぐる疑問が沸騰し、難問の解決を目指すといった次第。
そんなこと考えたり、探ったりしてたりしたら、料理なんて味わえないし、ちっとも美味しくないんじゃない?なんてよく言われますけど、幸いにして私の頭の中、常にそんな風ですから、なんてことない作業。頭の中では瞬時にし「旨い」「けどなんで?」という思考が平行して駆け巡る。
ほんとに美味を楽しんでます。そうじゃなきゃ、つまりは美味じゃなきゃ、探求心も芽生えず、頭をもたげてきませんから。いや、音楽を聴いている時、ことにコンサートの時だって、そんな状態です。
ともあれ、疑問解決のために橋本さんに連絡。袁さんに尋ねてもらいました。
判明した正式な料理名は「脆皮辣炸鶏」。「辣」の字が入っているのは下拵えに「カイエンペッパー」を使用。普段はたっぷり、しかし、今回は控え目、なんてのは先の通り、山下さんに聞いた話でした。
「下拵えの際「甘味は「水あめ」を使用。釜焼きで80%火を通した後、熱油をかけて揚げて仕上げる」ということで、疑問氷解。釜焼きにした後で、油をかけて仕上げていたわけです。
そうか、こういう「脆皮炸鶏」もあり、なんだと納得。
そのうち、このスタイルの「脆皮炸鶏」を味わってみたい。
下拵えして、釜焼きで火を通して、最後は油をかけて仕上げる「脆皮炸鶏」、「赤坂璃宮」の銀店の看板料理、名品として数えられること間違いなし。
そうそう、香港では様々な祭事、四季の行事の際には鶏を丸ごと一羽料理して、神様や先祖へのお供えにします。
そんなことからするとこの「脆皮辣炸鶏」、鶏を丸ごと一羽を使った料理ですから、正月にちなんだ料理だってことに食べ終わってから気づいたのでありました。