さて、最後の締めくくりの「麺・飯」、今回は「咸魚煲仔飯/塩魚の豚挽き肉入り土鍋ごはん」。
この6月の「赤坂璃宮」の銀座店の最後に登場した「咸魚肉餅煲仔飯」と基本的には同じです。ですが、6月の時には一人前用の小ぶりの煲仔で登場。今回は、大きな土鍋で登場。その量、8人前分ぐらいはありそうなぐらいたっぷり。それに「咸魚」の種類、前回は「馬友」でしたが、今回は「曹白」。
「曹白」はニシン科のこのしろで、身は平べったくて、小骨が多い。香港の中華資本のデパートやスーパーで比較的簡単にゲットできる瓶入りオイル漬けの「咸魚」のほとんどは「曹白」だったりします。塩漬け醗酵でもいくら生っぽさが残っていて香り、というか独得の臭みのある「梅香」が特徴だったりする「馬友」に比べ、匂い、臭みは控え目。それに、身が平べったいせいか乾いた感じで、塩味も強い感じのものが多い。その分、肉餅に使うには「馬友」よりもむしろ「曹白」の方がむいてるんじゃないか、っていうのが私の持論。
香港では「梅香」の「馬友」は値段も高価。なんせ質のいいもの、香りのいいもの程、値段が高くなる。それにくらべて「曹白」は質、状態が安定したものが多く、しかも比較的値段も手ごろ。ということでは、家庭で使うには格好ですし、特に瓶詰めのものだと、使いきれない分、保存もできますから使い勝手もよくて、重宝です。
今回の「咸魚煲仔飯」の肉餅は慈姑も入って、歯ざわりもよし。それに「曹白」を使ってることもあってか、肉餅自体の味付け、調味は控え目。とまあ、そのあたり、香港の広東料理店や一般家庭での味付け、調味と変わりなし。そうか、これも、袁さんならではの味加減、なのかもしれません。ほっと心和む優しい味付け。そう、お袋の味にも通じます。ほのぼのとした感じです。
そして締めくくりのデザートは「芋頭渣渣/タロイモのデザート」。これまた、香港ではごくごく一般的なデザート。広東料理の店よりも、餐廳や咖啡舗、糖品の専門店などで常備されているもので、家庭でも頻繁に作られるもの。香港気分を満喫しました。
というわけで、今回のコース、料理の組み立て、味付け調味、香港そのままの味、風味だったのに、盛り上がりました。そして、袁國星さんの料理手腕に魅せられました。東京で香港の味に出会えるのは、ほんとに嬉しい限り。要注目の料理人です。譚さん、頼もしい助っ人みつけていたんですね。香港の伝統の味、懐かしい味、これから袁さんのどんな料理に出会えるのか楽しみです。