2008/05/12

春の広東地方の郷土料理の6















 この日の宴の花、「大菜」のひとつ「婆参荷包翅」の登場です。

 「このなまこ、でかいね!どこで採れたもんなの?」
  と斉藤さん。
 「八尾さん、よろしく!」 
 と、今回、料理紹介の話は八尾さんにまかせっぱなし。
 「「婆参」と申しまして、東南アジア産のなまこでして、日本で(収穫する)ものとは、大きさが違います」と八尾さん。
 付け加えれば、香港では「豬婆参」、母豚の乳房に似た形状ってことで、ことにインドネシア産のものが良質とされ、戻すと柔らかく、また、味が濃いってのがその特徴。

 「このふかひれの姿煮、これもでかいね!」
 と、斉藤さん。
 眼鏡の奥の瞳がきらきらとハートマーク。

 「荷包翅」については、2006年12月24日の当ブログで触れてきましたっけ。
 改めて紹介すれば、「荷包翅」は金山勾の高茶翅(アオザメ)などによるもので、その名称、財布のような形態をしていることにちなんだもの。

 見かけは日本の中国料理店の多くで出会える「ふかひれの姿煮」に使われているふかひれに似ています。
 ふかひれの形態をそのまま残した「排翅」ですが、日本などで一般に「排翅」として流通している「よりきり/牙揀翅」、「もうか/摩加翅」とは、資質、味、風味が異なります。
 翅針は細いものの、滑らかな舌触りで、柔らかな噛みごたえ、独特の風味を持ってます。

 扇状になったふかひれの根元は、乱雑で不揃いですが、それこそは原ひれから手間隙かけて戻された証。
 日本の中国料理店で一般に流通している根元が綺麗に処理された「よしきり/牙揀翅」、「もうか/摩加翅」の「排翅」は、専門業者によって戻し加工処理が施された製品化されたふかひれで、磯臭い匂いが除かれずにいるものもあって、むしろ磯臭いのが当たり前、なんて認識もあるぐらいですから。
 そのあたり、内臓、ことに胃、小腸、大腸、直腸の処理にも通じることかもですね。

 なんてことを書いてるうちに、かえすがえすも「ヘイフンテラス」で「気仙沼産!」のふかひれを試さなかったことが、今となっては悔やまれてなりません。
 って、私もしつこい?
 いや、執念深いだけのことです!!!!!

 今回の「婆参荷包翅」、以前、家庭画報の取材の際に出会ったのは「鮑汁」が利いたこくのある味。
 それに比べて、ライトで、すっきりとした味わいで、だしの味、風味の印象が強い。その分、ぷりぷりの舌触り、歯触りで、くねっと身をよじらせるような「婆参」の柔らかさ。それに「荷包翅」も、だしをふくんだ「翅針」の塊を頬張った時のぐじゅっとした触感、素材の資質、持ち味を認識。

 そんな「婆参荷包翅」とぴったりだったのが、04年のグラン=エシェゾー。
 「福臨門のしっかりしただしには、やはりあいますね」と、それを選んだ青木さん。
 
 青木さん、前日に開栓を頼んでいたそうで、その点、抜かりがない。 おまけに、景山さんの選んだコルトン('98)、海津さんの選んだコス=デストゥルネル('94)も同様に24時間前に開栓していた、なんて話に、目を丸くしました。
 ワイン好きは、やることがちゃう!
 そこまでやるか?
 と、関心しきり。
 おそれ入りました。

 むろん私だって、それに負けじと……
 って、あ、そか、メニューを考え、素材の調達を按配したくらい。
 岸さんと福臨門のスタッフには、手数と苦労のかけっぱなし……
 でした、ね。

 画像は「婆参荷包翅」。
 しっかりしただし。ぷりぷりの舌触りの「婆参」。
 だしを含んだ「荷包翅」のじゅわの触感、旨さがよみがえります。