2008/05/27
春の広東地方の郷土料理の11~レバ、ハツ、ニラ、モヤシ炒め
そして「韮菜銀芽炒心肝」。
「え~、これは・・・・「レバニラ炒め」でございます。 あ、ハツも入っておりますので!」
もったいぶった表情ながら、ユーモアを忘れない八尾さんの料理説明。
「レバニラ炒め」という一言に、メンバー一同、鳩が豆鉄砲を食らったみたいに「エッ!」と驚きの表情。 そして、かすかなどよめきが、ひたひたと。
「福臨門の「レバニラ炒め」? そんなのあり?なの?」
なんて声も聞かれたりして!
私は、思わず、クス!
八尾さん、さすが辻調技術研究所出身。
勉強、研究の合間に、大阪人を中心に、関西人なら日常茶飯のボケとツッコミのやりとりも、しっかり鍛えられてきた様子です。
あ、そだ、言っときますが、一般に「大阪弁=吉本」なんて認識があるようですけど、それは大きな間違い!
吉本の芸人の大半が使っているのは、関西共通語。
大阪弁、厳密には浪速言葉、狭義には船場言葉とは異なりますので。
岸さんのところで調達可能な内臓のリストを福臨門に送り、戻ってきた可能な料理のリストは、予想外の多さでした。今回、実現出来たのはほんの一部。そんな中に「炒豬潤」、「炒豬心」とあったのを見つけ、いっそ「レバ/肝臓」と「ハツ/心臓」を炒め合わせるってのがいいかも、というのがコースに組み入れたそもそものきっかけのひとつ。
おまけに、今回、春の素材に内臓料理を!という構成内容を青木さんに提案したところ、「「モツ盛り合わせ下町風、香菜添え」を!」という青木さんのの熱い思い、期待に応えるには、格好な一品かも。なんてこともあって、今回のコースに組み入れた次第。
今回の「青木宴~春編」のコースからすればコース外れの番外編、スペシャルエクストラといった趣の一品です。
「レバ、ハツ、ニラ、モヤシ炒め」は、ウケけました。
めちゃくちゃにウケけました。
「これって、ご飯のいらない「レバ、ハツ、ニラ、モヤシ炒め」、ですね!」
と、青木さんが漏らした一言が、そのすべてを物語る。
そうです。
「レバ、ハツ、ニラ、モヤシ炒め」は「おかず」のはず。
それが、食べてるのは「おかず」とは思えない「レバ、ハツ、ニラ炒め」!
素材の吟味、厚み、大きさなどの切り分け、その下拵え、それぞれの分量とその見事なバランス。
「おかず」ではなく、見事な料理の一品です。
何と言ってもレバ、ハツの炒め加減が見事です。
そう、関西の食関係、料理人が頻繁に口にし、関西発の食に関わるブログで頻繁に見かけることの多い「火入れが凄い、絶妙!」って言葉が、そのまんま当てはまる。
レバもハツも、食べている最中に、口の中でそれぞれの持ち味、資質、味、風味が、ぐんぐんと浮かび上がってくる。それが、しっかりわかります。
「エ!、こんなの、あり?」
というような
「レバ、ハツ、ニラ、モヤシ炒め」です。
ハツはざらっとした舌触り。こりっとした張りのある噛み応え。
噛み締めれば、あの「血」の味、鉄分を帯びた金属質の味、風味が浮かび上がる。
レバは火が通って、むっちり。なのに、噛み締めれば、まずはあのねっとり感が歯茎に触れ、ぷるんと弾けながら、ぐじゅとした中に、これもまた「血」の味が。
同時に、レバに含まれた脂のこくのある甘さ、旨味が、滲み出す。溢れ出す。
クセのあるニラも、さすが、ハツ、レバと一緒では、むしろ爽快な青さが浮かび上がる。
いや、クセのある強い個性を持ったニラだからこそ、ハツ、レバとしっかり張り合い、共存、ってことでしょう。
ニラという素材の持ち味、個性を引き出しての結果、ってことです。
それに、もやしはさっぱり。それもまた、持ち味、真価を発揮。
「いや~、凄いですね、この料理。レバにしろハツにしろ、それぞれの持ち味、しっかり出ていて、その特徴がほんとよくわかりますね。驚きました!」
と、景山さん。
「それに、ローヌの「CAIRANNE」、あってますねえ・・・・・」
と、遠い目で、深いため息!
番外の料理、エクストラスペシャルの「韮菜銀芽炒心肝」。
思わぬ波紋を生んで、強烈な印象を刻み付けることになったのでありました。