2006/12/20

蟹黄魚翅撈飯(3)

 「燉」式のふかひれ料理には、ふかひれと火腿(いわゆる中国ハムと呼ばれている豚の腿肉の発酵加工食品)の肘の部分とともに湯煎蒸にした「肘子燉魚翅」がある。
 ふかひれと干鮑を組み合わせた「干鮑燉魚翅」というのもある。
その存在は知っているが、私はまだ食べたことがない。

 また、丸ごとの冬瓜を使った「冬瓜中」にふかひれを加えることもある。

 「燉」式の料理の極めつけと言えるのが「佛跳牆」だ。
 ふかひれだけでなく、干鮑(干し鮑)、花膠(魚の浮き袋)、海参(干しなまこ)、瑤柱(干し貝柱)、冬菇(干し椎茸)など、干貨素材、鹿のアキレス腱はじめとした漢方素材などを上湯とともに壷に入れて密封し、湯煎蒸しにしたものだ。
 お坊さんがその香りにひかれ、たまらず垣根を飛び越えて、正体を確かめ、美味に酔いしれた、といった伝説、いわくいわれのある料理である。

 冬場の広東料理の名物である蛇のくずひき仕立てのスープである蛇羹に、ふかひれを加えた「魚翅蝦羹」というのもある。

 青蟹の雌の膏蟹の蟹肉、ミソを使ったのが「蟹黄魚翅」。
 膏蟹のミソの味、風味の濃厚で濃密な味わいは格別だ。
 家庭画報06年12月号の「ふかひれ、上海蟹、燕の巣~中国料理の三大美味を楽しむ」で、私の好きなふかひれ料理として紹介することになったのも、そもそもは「蟹黄魚翅」を好んで食べてきたことによる。

 そして、ふかひれを卵と炒めたのが桂花魚翅。

 他に、豆腐を潰して味付けし、蒸して後、煎り焼きにする「琵琶豆腐」の具、あるいは飾りものにふかひれが使われることもある。

 また、80年代の半ばすぎまではスープ入りの大ぶりの餃子仕立てだったが、その後、椀に二湯(二番だし)を張り、スープ仕立てにするのが主流になった「灌湯餃」をはじめ、魚翅を飾りものに使った点心類も豊富にある。

 香港の福臨門の九龍店を初めて訪れたのは81年3月11日。夜の食事でのことだった。
 その日、食べた料理の記録が手元にある。以来、今日に至るまでに、香港の九龍店(当初は麼地道、後に金巴利道に移転)、香港島店(当初は洛克道、後に壮士頓道に移転)を中心に、東京の福臨門も含めて、以上挙げてきた福臨門のふかひれ料理のほとんどを食べてきた。