2006/12/08

蟹黄魚翅撈飯(1)

 家庭画報の編集部から中国料理の特集をやるのでお手伝いいただけないかとの話があり、快くお引き受けした。家庭画報06年12月号の「ふかひれ、上海蟹、燕の巣~中国料理の三大美味を楽しむ」がそれである。
 お手伝い、とはいっても私がこれまで体験してきた香港、中国本土、日本でのふかひれ、上海蟹、燕の巣の料理、その歴史、背景、ことに日本におけるそれらの料理の現状などを話し、また、編集部のプランを伺い、相談に応じた次第だ。
 併せて、ふかひれ、上海蟹、燕の巣の料理から私が好きな一品も紹介したいとのことだった。但し、日本で食べられるのもので、という条件付きである。

 即座に思い浮かんだのは福臨門酒家のことだ。
 というのもふかひれの種類、料理の豊富さ、素材の吟味、調理、料理内容の充実。なによりも旨さ、美味しさは群を抜いている。

 ことに原ひれ、つまりは、収穫し、天日干しにしたひれを戻す技術をはじめとする下ごしらえ、ふかひれの料理に不可欠な上湯の質を考えれば、福臨門をしのぐ店は日本にはない。
 燕の巣の料理についても同様だ。
 上海蟹についても、素材の吟味、質、大きさなどからすれば、他店に類を見ない。

 好きな料理をと尋ねられ、素材ごとにこれまでに食べたものを思い浮かべた

 私がこれまで香港や日本の福臨門で食べたふかひれ料理は、以下の通りだ。
 まず、ふかひれ料理の基本ともいえる「紅焼魚翅(醤油煮込み)」と「清湯魚翅(澄まし仕立て)」。

 澄まし仕立ての「清湯魚翅」に、蟹肉を加えたものが「蟹肉魚翅」である。

 そのバリエーションとも言えるのが「蟹肉干撈魚翅」。
 ふかひれと蟹肉を和えたもので、皿に盛られているが、スープはなし。
 その代わり、スープ、つまりは上湯が椀盛りで添えられ、ふかひれと蟹肉の和えものを食べながら、
スープを食べるという寸法である。

 ふかひれだけがスープなしで皿で供され、同様に別に椀に盛られたスープ、上湯を食べるのが「高湯魚翅」である。