2006/12/24

蟹黄魚翅撈飯(11)

 81年3月11日、初めて訪れた福臨門で食べたふかひれの料理は「紅焼生翅」だった。
 手元の旅行メモにそう記してある。
 当時、福臨門に出向くまでに、すでにいくつかお気に入りの店をみつけ、香港に出向けば必ず足を運んでいた。

 たとえば「陸羽茶室」。ことに飲茶の点心に魅せられ、香港に出かけるたびに訪れたものだ。

 「陸羽茶室」が開くのは午前7時。それから11時頃までは、おばちゃんたちが、日本のかつての駅弁売りと同じく、肩から大きな盆を抱え、点心の名前を挙げながら行き来している。
 それが、11時前後になると、テーブルにわら半紙に赤字で印刷した陸羽茶室のメニューが用意される。メニューに頼みたいものを鉛筆で印を入れて注文するスタイルに変わる。

 「陸羽茶室」の飲茶の点心の名、また、そのすべてを知りたかった私は、わら半紙に赤字で印刷されたメニューの1年分をなんとかゲットしたい、という思いにかられ、機会があれば「陸羽茶室」に通った。
 飲茶を楽しむ時間が無い時には、入り口を入ってすぐ左にある勘定場で、メニューを貰い受けられるように頼み込み、それを入手したものだ。

 新鮮な魚介を扱う海鮮料理を看板にする店としては「小杬公海鮮菜館」と「叙香園酒楼」の九龍店を見つけ、すでに何度か出向いていた。

 「小杬公海鮮菜館」については後に詳しく触れるつもりだが、48年に香港島で営業を開始し、新鮮な遊水海魚、つまりは海で取れる魚介による海鮮料理をいち早く看板にしてきた。
 香港の海鮮料理の先駆者的な店である。

 一方の「叙香園酒楼」は、広東地方の伝統的な郷土料理、家郷菜を提供してきたことで知られる。
 香港島の洛克道に本店があり、その後、九龍店を開き、九龍店は主に海鮮料理を看板にするようになった。

 「叙香園酒楼」の九龍店では、3回目に訪れた際、「佛跳牆」のミニサイズ版を特別注文し、味わったこともある。

 それより、「叙香園酒楼」を初めて訪れた時、隣のテーブルで地元の人が食べていた土鍋煮込みの料理が気になった。
 マネージャーにその料理名を尋ねたところ「砂窩大魚頭保」、草魚のアラの炒め土鍋煮込みだと教えられた。
 メモに料理名を書いてくれるとともに、テーブルの上にあったカードに印刷されたメニューを取り出し、指差してくれた。それには旬の素材を使った郷土料理や惣菜的な料理が紹介されてあった。

 以来、香港の海鮮料理と同時に、広東地方の郷土料理、家庭料理の虜となり、やがて、探索、調査、研究を開始することになる。