2010/04/06

「いつまでも若く/FOREVER YOUNG」~東京のボブ・ディランの4

 ボブ・ディランの東京公演の最終日(29日)。
 帰宅してクールダウンするのに時間がかかりました。そんなわけでコンサート報告のブログアップ、1週間遅れと相成った次第。

 それにしても東京公演の最終日、どうしてまたクールダウンに時間がかかったのか! 興奮した、感激した、というような事態でもなく、頭の中「堤防が決壊して洪水」さながらの「ごちゃ混ぜの混乱/ミックスド・アップ・コンフュージョン」状態(って、ディラン・マニアなら通じるはず!)。

 ボブ・ディランの公演。毎日、構成、雰囲気が変わりました。 で、東京の最終公演は「(ハード&ディープ)ブルース・ナイト、そして男と女の狭間のあれこれ!」ってことになりますか。それにしてもハードでディープなブルースが相次いだのには脳天クラクラ。おまけにディランは曲によってオルガン、ハーモニカ全開。ソロやらリフやらギターのチャーリー(・セクストン)との掛け合いも。

 幕開けは低音がうねるスロー・ブギの「雨の日の女」。ディランのだみ声、迫力と凄味あり。次いでリズムの明快なフォーク・ロック調の「イッツ・オール・オーバー・ナウ・ベイビー・ブルー」。惜別の歌。昨日までのことは綺麗さぱりかたをつけたから、もう後は振り返らない、なんて意志きっぱりの潔さ。さらには「我が道を行く」。 ディラン、オルガンで頑張ります。その歌いぶり、つっけんどんで突き放すような感じ。

 続いて「マイ・ワイフズ・タウン」の登場に驚きました。妻の故郷は地獄!なんて歌ですから。しかも、ディープなシカゴ・ブルース・スタイルで。ってことはうらみつらみ有りってことなのか。追い討ちかけるように「アイ・ドント・ビリーヴ・ユー」つうのが強烈。しかもだみ声とハーモニカ全開。歌い方、崩しちゃってましたが、ギターのリフが原曲の姿をとどめる。

 それから「スピリット・オン・ザ・ウォーター」。4ビートのスインギーな演奏、サウンドですけど、その歌詞「あなたなしでは・・・」なんて、それまでの展開とは裏腹。そこで「コールド・アイアン・バウンド」。都合7回あった公演で、欠席は2回。それがこの曲を耳にするのは3度目。

 前にもふれたようにロバート・ジョンソンの「ウォーキング・ブルース」が思い浮かぶ強力なリフを持ったブギ・スタイルのブルースのこの歌、『タイム・アウト・オブ・マインド』で初めて聞いた時にはさほど、という感じだったのが、映画『ボブ・ディランの頭の中』での再録音、それに今回21日に聞いたニュー・バージョンが鋭く胸に突き刺さる。おまけに、さっき聞いた「マイ・ワイフズ・タウン」がフラッシュバックして、頭の中で2曲が重なる。

 なんてことで、この曲の意味、解釈、考えて、この日も頭クラクラになったのでありました。おまけに続いたのは暗喩を込めた「廃墟の街」。頭のクラクラは沸騰状態。洪水で防波堤決壊状態に陥ったわけです。

 「ザ・レヴィーズ・ゴナ・ブレイク」ではまたまたオルガン全開。カントリー・ワルツの「ホエン・ディールズ・ゴナ・ダウン」ではハーモニカのソロで和ませてくれましたが、続く「追憶のハイウェイ61」ではギンギンにハード・ロック。ここでもディランのオルガン全開。そう、「ザ・レヴィーズ・ゴナ・ブレイク」と「追憶のハイウェイ61」こそがこの日のハイライト。

 そして「サンダー・オン・ザ・マウンテン」に続いて、いつもなら「やせっぽちのバラード/ミスター・ジョーンズ」のはずが、ステージ上ではガサガサとなんだか慌しい空気。それが見ている側にも伝わってきました。そしたら「ミスター・ジョーンズ」とは違うイントロが。

  「ン!?、何これ」と思う間もなく「もしかして?」。
 なんと「いつまでも若く/FOREEVER YOUNG」。ステージ上のがさがさとした慌しい空気は、いきなりの曲目変更だったのだと納得。

 それより、その歌、ディランの歌、今のディランのありのままを物語る感じだったのに、吃驚。
 この日まで、この曲を聞くまで、前、向いてまっすぐ突き進むゴーイング我が道を歩むディランから、歳のことなど(御年68歳)微塵も感じなかった。ですが「いつまでも若く/FOREEVER YOUNG」を歌うディランは、その歳がむき出しに!

 今のディラン、ディランの生身を目の当たりした感じでした。
 いぶし銀のような渋くて格別な味わい!他の曲にはなかったことです。
 なんてことで頭の中はますますクラクラ。
 まだ収まりがつきません!