それから「子姜炆滑鶏/伊達鶏と新生姜の煮込み」。
これは先月「子姜国産牛/和牛と新生姜の炒め」が登場したのをきっかけに、袁さんにリクエスト。食事中に現れた袁さんに感謝の意を伝えたら
「だって、ネットで食べたいって書いてたでしょ?それにお応えしました!」。
は、はい、仰せの通りで!と、ひれ伏す私でありました。
新生姜が出回る時期になると必ず食べたくなるのが「子姜炆滑鶏/伊達鶏と新生姜の煮込み」。
新生姜と鶏肉のぶつ切りをシンプルに「炒」したもの、二番だしの「二湯」で煮含めた「炆」の2種の料理方法があります。
「炒」の場合、新生姜のひり辛が直接的。で、「炆」の場合、とろみのあんが「甘酢」仕立てというのが特徴で、新生姜の味わいがよりフクザツになります。
甘酢あんが絡んだ新生姜のぶつ切り、まず唇に触れるのはこくのある「甘酢」あん。「酢豚」のあんをご想像ください。さらに、新生姜をばりっと噛み締めると、ひりっとした辛味が舌を刺す。ところが、甘酢あんに包まれてますから、甘酸っぱさと濃密なこくのある甘味が絡み合い、重層的な味になる。しかも、新生姜らしい鮮烈な爽快さが浮き立ち、なんだか身が引き締まるような感じになります。その味、風味が格別。
そして鶏肉。これまた甘酢あんにくるまれてますけど、そこに、新生姜の味、風味が加味されて、味わい爽快。それより、驚いたのは今回の鶏肉、伊達鶏のしまりのある肉質、噛み応え、さらにはジューシーで旨味たっぷりな味、風味。
これまで前菜や蒸し物で登場してきた伊達鶏、肉の柔らかさばかりが目立つ感じで、味わい、風味、ぼんやり、茫洋という印象でした。ところが、今回の伊達鶏、肉にしまりがあってしっかりした噛み応え。それでいて、ジューシー。しかも、旨味、風味が感じられる。火を通した伊達鶏の旨さ、味、風味がこんなに鮮烈に感じたのは初めて。
素材自体のよさ、甘味、旨味、風味のある伊達鶏の肉質、持ち味を引き出した袁さんの腕、技の成果じゃない?なんて思いました。しかも、新生姜、さらには甘酢あん、二湯との組み合わせが絶妙です。
「これ、旨い!ほんとに旨い!」
「新生姜が旨い!こんな風にして甘酢仕立てにして食べると、旨いんだね。このひりっとした辛味が新鮮!」
「それに鶏肉が旨い!」と、全員、絶賛の声しきり。
春の朧、霞のかかった春の風情にあって、一瞬、目が覚めるような爽快なひり辛の鮮烈な味わい。甘酢あんのこくある甘さとすっきりの爽快感。 これも春ならではの味わい。
広東小菜の旬の味を存分に味わいました。