2010/04/26

賽螃蟹~蟹もどき“卵白の淡雪炒め”の1

 「dancyu」の5月号、「人生が変わるたまご料理」特集、玉子好きなんで楽しみました。
 「なるほど!」という記事もあれば、「をいをい!」なんて記事もある。
 驚いたり、「勘弁してよ!」とあきれ返ったり、腹を抱えて笑ったり、ふ~んと笑い飛ばしたりして、ほんと私、性格悪いよな~ということを実感しました。
 
 嬉しかったのは我が敬愛する料理人、狐野芙美子さんの久々の登場。
 料理は「ウフ・マヨネーズ」。ビストロ料理の定番でシンプルな料理ですが、それだけに奥深く、自分流を極めるのは難しい。ですが、弧野さんの料理を見ていると、実際に試さないではいられなくなります。もちろん、早速実践。

 もっとも、これまでdancyuで紹介されてきた弧野さんの料理紹介もそうでしたが、レシピの間隙にひそむ肝心なポイントが触れられていなかったりすることがある。おそらく弧野さんにとっては当たり前。ですから、詳しい紹介は必要なしと判断し、触れられてないんでしょう。ですが、実際にレシピに倣って調理始めると「ン!?」なんて、疑問が続出。そのあたり料理体験に照らし合わせて適切に判断し、現場処理するしかない。
 
 おそらく担当の筆者は撮影現場で同時に調理体験しなかったか、普段、台所に立ってないかで、見落とし、聞き落とし。その辺、編集担当者のフォローが欲しいところですが、担当編集者もおそらく筆者と同様の体験しかないんでしょう。

 今回も茹で時間など具体的に紹介はされていますが、実際にやってみると時に難題、課題が勃発。その点をクリアーすれば弧野さんの料理の(再現)成功率、出来上がった料理の満足度は高い。ことに今回はマヨネーズについて再勉強という収穫がありました。

 続いて紹介されてた「世界一」と称される「スクランブルエッグ」の秘密。
 ですが、レシピ、写真からすると、見るからに生クリームの味が支配的そうな「大味」な感じ。なんだか近頃流行の「ふわふわ感」とか「柔らか~い!」触感重視のようで、素材の玉子の味、どうなの?
 なんてところに疑問を覚え、そそられない。作ってみたいという気にもならない。

 そして話題のフードスタイリスト、飯島奈美さんの「目玉焼き」。
 「目玉焼き」。シンプルな料理だけに、実は奥深い。それぞれに好みもあるはず。
 その基本をおさらい、というのが今回の飯島さんの登場の目的なんでしょうが、ところが、その深遠の奥義、極意の追求は、いまひとつ甘い。

 今回紹介されてる調理方法など我が母もやっていたことで、母の側で見て覚えたのと同じく、基本の基。油の引きかた、その分量。加える水は少量ずつ、按配しながら加減見て。フライパンに蓋を被せるにしても、黄味を白い膜で覆うなら蓋をしたまんま。黄味の色をそのまま残したいなら蓋をずらす。

 そんなこと「目玉焼き」を何回も作ってりゃ、そんぐらいの工夫は誰だってやるでしょう。当たり前のことしか紹介されてません。あ、そうか、そんなこともやんない、焼き方を知らない人の為のものですか?なんだか上から目線な気配濃厚。

 それより、飯島さん指導の「目玉焼き」。
 油の使用量、控え目な感じ。そのせいか「目玉焼き」の縁、カリカリって風なんですが、なんだか縁の見た目が焦げっぽい。焦げっぽくて苦味もありそう。

 実は私も母に倣ったように、飯島奈美さん方式で焼くことがあります。
 ですが、油の分量少なかったり、さらに、余計な油を拭い取ったりするうち、水加減の按配次第で「目玉焼き」の縁は、カリカリと同時に焦げっぽくで苦味がでる。
 それから逃れる工夫こそ知りたいとこなんですが、その奥義の追求、紹介はなし。

 私は、焦げ目、苦味のある縁のカリカリは苦手です。それに、黄味は黄味のまんまもいいですけど、うっすら霞が覆った「目玉焼き」けに仕上たほうが、黄味はよりこくをまし、とろり濃厚な味になる、なんてことで水を慎重に按配しながら蒸し焼きにします。

 もしくは、油を加減多めにして「フライド・エッグ」にしちゃうことが多い。
 アメリカのドライヴ・インのレストランやトラック・ストップ、それにパン・ケーキ・ハウスなんかでお目にかかる「目玉焼き」。

 煎り焼き、つまりソテーというより、玉子を油で揚げちゃうディープ・フライ、もしくはその一歩手前の感じの調理です。そうすれば「目玉焼き」の縁はまさしく「酥」の状態になります。しゅわっとしていて、気泡のぷちぷち感を残しながら、カリとした焼き加減になりますから。当然、焦げ臭さや苦味はありません。

 ま、ディープ・フライにすれば、玉子は油をたっぷり吸い込みますから、脂っこくなるのは否めない。けど、しゅわ・ぷち・かり・さくっとした触感が堪りませんから!

 それからベーコンの炒め方。ベーコンの脂身でベーコン自らを焼き上げるという方法もありますけど、これまた焦げと苦味を生みやすい。それより、誘い油じゃないですけど、油を足して煎り焼きにする。そのほうがよりクリスピーで脂っこくなく、しつこさもないクリスピーなベーコンに仕上がります。当然、焦げ臭さ、苦味はなし。

 「目玉焼き」を焼くときの油って、ついつい加減しがちですよね。
 実はそれが失敗のもと、だったりします。油を多めに使うほうが、実は簡単に旨い「目玉焼き」を作りやすい。焦げ加減の苦味のあるカリカリじゃなく、シュワ感、しっとり感もある適度なカリカリ感のある「目玉焼き」が作れます。

 なんてことは「目玉焼き」を作り続けていればわかるはず。
 ま、油を使いすぎると脂っこくなりそうだしカロリー過剰で太るから、というのもあるんでしょう。ですけど、そんなことより焦げ加減、苦味のないカリカリの縁の「目玉焼き」のガイダンスを求める向きには、今回の飯島さんの記事は物足りない。
 ともあれ、飯島奈美さんの「目玉焼き」、話題の人の登場というだけで内容希薄。

 それから「龍吟」のまかないの「たまごかけご飯」とアレンジ・バージョン。
 味の濃い調味料、香りの強いクセのある香味野菜をごちゃ混ぜ。おまけに、玉子にウニやキャビアなど豪華で「濃い」素材を使ってウルトラ技。

 それからすると「あ、この人、素材の味、風味の足し算と、豪華素材を使って目を惹く創作料理を考える人!」ってことが即座にわかります。ひと口食べて、インパクトのあるわかりやすい明解な味、ってことですね。「龍吟」が評判なのもなんとなく納得。

 それより宮下裕史さん執筆の「哲学する卵」にあったポール・ボキューズに教わったという谷昇さんの「目玉焼き」の話は、拾い物でした。
 もちろん、早速試しました。これがかなりいけます。その料理方法を知らずにいたことを後悔したほど。

 それからもうひとり、イタリアンの小林さんの料理にも興味津々ながら、素材は「ほろほろ鳥の玉子」なんてことでギブ・アップ、写真を眺めて涎をこぼすだけでした。