「dancyu」の5月号、「人生が変わるたまご料理」特集。
中国料理のたまご料理も紹介されています。
その2が「CHEF'S」の「炎の「たまごトマト炒め」。これが驚きの一品。目を丸くしました。
1、トマト(大3個)を湯剥きにし、四つ割りにして、種や水分を取り除いておく。
2、卵(L玉)2個をボウルに入れて、しっかり泡立つまで混ぜる
3、中華鍋にサラダ油大さじ2/3を入れ、2を一気に入れる。大きく混ぜながら全体に火を入れ、皿に取り出しておく。
というここまでのプロセスは納得。ところがです。以下、?????と疑問符続出
4、中華鍋にサラダ油大さじ2を入れる。強火で、中華鍋から煙りがでるまでしっかり熱したところに、トマトを入れる
(ン!? 中華鍋に入れた油、強火で煙が出るまで熱したら、酸化して、ヘタりませんか?)
5、ガスの火を鍋の中に引火させる!!!!(その実況画像あり!)
(ン!? 酸化した油に火をつけてどうする?)
6、中華鍋の中の炎をトマトにからませるようにお玉でかき混ぜる。このときに燻したような独特の風味がつく
(ン!? このとき燻したような独特の風味って、トマトは炎に包まれ、焼け焦げて炭化するんじゃないですか? 燻したような独特の風味って、それのこと?なら、苦味やえぐ味がつくはずですが)
以下、火が収まり、トマトが崩れはじめたところで、砂糖、塩、中国醤油を順に入れて味付けするとレシピの実況中継画像あり。それも砂糖をたっぷり使うのがこの料理の特徴だそうで。
ちなみに砂糖を使う理由として紹介文には「上海“高級”料理の特徴で、砂糖がぜいたく品だったという背景がある」との解説が!
確かに、かつてどこの国でも砂糖はぜいたく品でした。けど、砂糖っても色々ありますよね。はたしてどんな種類の砂糖なのか説明なし。というのも、日本と中国の砂糖事情、いささか異なるからです。しかも、いきなり「上海“高級”料理」なんて話が出てきて、その説明もなし、ですから面くらいます。
ちなみにCHEF'S 、店紹介のキャプションに「上海上流社会で培われた繊細な料理を味わえる」なんてあります。CHEF'Sの料理の紹介の際、しばしば語られる「上海上流社会で培われた料理」の実態、その真相については、今だ私には不明のまま。もちろん、そんな話を知って、興味津々。上海料理の歴史を調べましたが、その上海の「上流社会」における料理、ってことについては、今だ闇の中。
その辺り、お店の方がそう仰るならってことで受け止めておくのが賢明なんじゃないかと思うんですが、「上海“高級”料理の特徴」と断言するからには、なんらかの根拠、実態の把握があってのこと、なんでしょうけどその提示はなし。
ま、それはともかく、煙が立つほど油を熱し、酸化して、へたった油。しかも、それに火をつけ燃え盛る炎でトマト炒めたら、トマトは焼け焦げ、炭化して、素材の持ち味、損なわれるには誰にだってわかるはず。そこに砂糖を入れる、ってことは砂糖の甘味で味を補正ってことしか考えられない。
疑問に思って何人かの(中国)料理人に尋ねたところ
「CHEF'S独特のやり方ですよね、普通はありえない」、
「油が酸化しますし、火を入れたら焼け焦げになって、素材の持ち味、壊しますから」
と、私の考えたような意見が大半。
筆者は「CHEF'Sならでは」とさせるものは「ずばり「火の味」」。
さらに「トマトの酸味と砂糖の甘さ、そしてそれを包み込む燻した香り」と絶賛。
早い話、燻した香りなんかじゃなく、過剰に熱した油、その煙、油の焼け焦げの臭い、なんじゃないでしょうか。
念の入ったことには、燻した香りを家庭で再現する油の作り方まで紹介されてます。
私にとっては初めて知った「燻油」製法。これまで知っていた中国料理での「燻油」にはなかったものだけに、こんなのもありなんだ、と勉強しました。
要は中華料理で鍋肌に直接醤油をたらしたときに生まれる焼け焦げの味、もっとわかりやすく言えば屋台の焼きそばのソース味の焼け焦げに似た「ゲス」な味、強烈な香り、というよりも匂い。あれに通じるものがあるんじゃないでしょうか。
「火の味」についての筆者の熱弁、読めば読むほど、その美味よりも「ゲス」な味、風味への愛着、熱意が思い浮かびます。そうか、上海の上流階級の料理ばっかり食べてると、たまに「ゲス」な味も食べたくなる、ってことなんでしょう。