続いては「生根魚丸煲/魚のすり身団子とお麩の土鍋煮込み」。
実はこの料理、「赤坂璃宮」銀座店の「家郷菜」のコースの一品に「生根」(揚げ麩)を使った料理があるのをみっけ!
なら「蝦子生根豆腐」はじめ「生根」を使った料理のリクエスト可能? と、橋本さんを通して袁さんに願い出た次第。
そして登場したのがこの「生根魚丸煲/魚のすり身団子とお麩の土鍋煮込み」。
土鍋の中、「生根魚丸煲」は煮え滾り、熱々のまんまの登場。アテンドの柏木さん、火傷しないかといつもひやひや。しかも、小皿に取り分けられてなお熱いまんま、というあたり、袁さんの腕の凄さ、素晴らしさを物語ってます。
「魚丸」はいつも通り「鱸」の様子。「髪菜」も入っています。そんな「魚丸」を揚げ、揚げ麩の「生根」、干し椎茸と煮込んだもの。煮込みはおそらく二湯(二番だし)でしょう。さらに、絹さや、香菜も。
揚げて、さらには出しで煮込まれた「魚丸」を食べるとみかんの皮を干した「陳皮」の柑橘の味、風味と苦味が利いています。同時に、ひねた独特の醗酵味、旨味、風味が口中にほのかに広がる。
「あ!これってもしかして?」なんて思ったら、案の定、小はまぐり、浅蜊などを塩漬け醗酵させた「蜆介醤」。「魚丸」を噛み締めて浮かび上がる「蜆介醤」の味、風味。その使い方、分量、つまりは行きすぎない匙加減が絶妙です。
「生根」を噛み締めればグジュっとなって、押し潰されて悲鳴を上げそうな頼りなさげな触感。同時に、煮含められただしの味、旨味が口中に広がる。その穏やかで優しい触感、じんわり滲み出すだしの味、旨味、風味が格別です。
むろん干し椎茸も旨味、風味、しっかり。それに絹さやの青み、清廉な味わいが爽快。さらに香菜の独特の青みとくせのある風味も実に効果的。ほのぼのとして心温まる一品です。
この「生根魚丸煲/魚のすり身団子とお麩の土鍋煮込み」、まさに広東小菜、煲仔菜として香港の広東料理店では馴染みのもの。
食堂的風情の小菜店でも食べられますが、この袁さんの手になる「生根魚丸煲/魚のすり身団子とお麩の土鍋煮込み」は、やはり上品な味付けで、風味が豊かで、しみじみとした味わいもあり。
こうなるとやっぱり袁さんに「蝦子生根豆腐」をリクエストしたくなります。