2009/06/02

郷土料理が旨い~09年5月の『赤坂璃宮』銀座店の3

  そして「鮮魚二食」の2品目の「油泡球/ハタ切り身の炒め」。
 「はた」の切り身の炒めもの。料理名からすると「油通し」ってことになります。
 この料理、これまでなかなか注文する機会がなく、食べそびれなんてことがほとんど。
 というのも、「はた」を食べるなら一匹丸ごと「清蒸海斑」にするか、上湯で煮浸しにした「上湯浸海斑」、もしくは醤油煮込み料理の「紅炆海斑」、中国式唐揚げの「油浸海斑」ってことになります。それとも「斑腩」の部位を醤油煮込みした「紅炆斑腩」か「油浸斑腩」なんて風で。

 以上、上げた「はた」の料理からも明らかなように、「はた」の切り身、もしくはぶつ切りを炒めた(油通し)した「油泡斑球」の順位はうんと後ろの方。なかなかその出番は回ってはこない。なんて方、私以外にも多いんじゃないでしょうか。ことに香港での滞在日数や訪れる店も限られたりすると、絶望的、だったりしますから。

 それでも、なんでだか日本の広東料理店のメニューに「はた」に限らず魚の切り身の炒めものが、結構、定番的なようで見かけることが多い。人気があるんでしょうか?
 私は、2度ばかり試しましたが、いずれも散々な目にあって以来、注文したことがありません。

 実は魚の切り身の炒め物、簡単そうでいて、技が物言う調理の難しい一品。 そうです「鍋」の技こそがその出来上がりのすべてを決める、といっても過言ではないかも。

 「油泡斑球」は香港でも一般的で、これまでに何度か食べた経験あり。ですが、これぞ!というのには、滅多に出会ったことがありません。
 まずは、魚の素材自体の問題。それに、下拵えと鍋の技、ことに「鑊気」鍋の気の有、無しで料理の出来栄えが決まっちゃいますから。

 素材で言えば、やはり「はた」。
 譚さんのおっしゃる通りです。異議なし! 
 次なる問題は下ごしらえ、つまりは魚の切り分けと下味、衣つけ。
 それから、如何にして調理するかという鍋の火の扱いの問題。油を媒介にするわけですから、その沸点の見極めもね。そして、素材の火の通し方、そのタイミングの見計らいに経験と技を要します。

 これが「えび」あたりだと、そこそこの技術でも一応のものが仕上がったりする。ところが、「帶子」、つまりは生の帆立、それに魚、ことに「はた」の切り身となると、火の通し方、ビミョーです。そう、火の通りの按配を見計らうタイミングの見極めが肝心。なんて、自分でやれるわけもなく、食べるだけなのにねえ!とわかっていながら、オヤジ(私、です)はほざきます。

 私にとって「油泡斑球」が魚料理の順番の後方で、なかなか注文しない訳も、その辺にあります。香港でも「油泡斑球」を自分で注文して食べるとなると、店がきまっちゃいますから。

 なんて、長い前置き。
 はたして「赤坂璃宮」銀座店の「油泡球」の出来栄えや、如何に。
 日本で食べた「油泡斑球」では間違いなくベスト。
 なんて、袁さんが料理してんですから、香港の味、風味まんまなわけで、日本のそれとは比較するのが間違ってますよね。

 まず、感心したのは、魚の身の切り方。
 魚の身は腹から尾に向かって狭まっていきます。その身を半分にして、腹半ばあたりは2センチ弱ほどの厚さ。で、尾に近い身は、幅たっぷり、つまりはぶつ切り。画像でそれがしっかり確認できます!
 「はた」の下拵え、素材のそのままの感じで、すっきり、さっぱり。日本の広東料理店なら、一歩はみだし目の下味付けというのが一般的だと聞きました。というのも、多くの客にとって納得の行く「中華料理」らしい「濃い味」にはならないからだそうです。

 「はた」の身はみっちり肉厚。火を通すと肉厚の身が「はらり」とはがれ落ちる感じ。しかも、ほろほろの触感あり。蒸した「はた」なら、ほろほろの感じに、しゅわ感が入り混じる。それが、油を通した「はた」の身は、ほっくり感がむき出しになる。だからこそ、その切り身は程々の厚み、もしくは、ぶつ切りがぴったしなんだと、納得できます。
 もちろん、その炒めかた、油通し、火の通り加減がジャスト!だからこそ、その触感を生み出せることは言うまでもありません。そのタイミング、火のとおりの加減の見極めに、技があり。余熱の火も計算ずく、なんでしょう。

 最初、まんま、何もつけずに食べると、素材のよさ、持ち味がしっかりわかる。腹半ばの部位の身はともかく、尾に近い身のぶつ切りはほんのり油がベタな感じ。 あ、そか!それなら「蝦醬」か「蠔油(オイスターソース)」をちょっぴりつけて!
 なんてことで、アテンドの山下さんに早速「蝦醬」と「蠔油」をお願い。
 「あ、これ、いい!これ、何だっけ?「蝦醬」っていうの?これ、ちょっぴりつけると味が引き締まる感じ。わかります、エージさんの言う「はらり」の感じの身の旨さ!」なんて声が上がります。
 
 「オイスター・ソースだと、オイスター・ソースそのものの味が濃厚だし、べったりオイスター・ソースの味になっちゃうから、もったいないね。でも「蝦醬」の方が塩分濃厚なのに「はた」にぴったり、なのが不思議ですね。もっとも、ちょっぴりでいい感じ!」なんて声も上がります。
 なんたって「はた」ですから、贅沢この上ない。
 ごっつあんです、なんてよりも、ナンマンダ、ナンマンダブ!
 その美味を存分に味わったのでありました。