2008/09/03

8月の「赤坂璃宮」銀座店の1

 「8月の~」なんて、とっくに9月。本来はもっと早くに報告のつもりで、書き上げていたファイルが行方不明!情けない話です。申しわけありません!

 ところで、この「赤坂璃宮」銀座店シリーズ(って、これでまだ3回目ですが)、開始以来、「ヘイフンテラスの謎と不思議」以来、久々に様々な方々からの反応がありました。
 ことに料理人や料理店のスタッフからメールを頂戴したり、たまたま電話でお話したり、出会う機会があった際「赤坂璃宮」見てますよ!なんてことから、話が盛り上がり、料理内容の詳細を改めて問い合わされたり、話が盛り上がったなんてことは数知れず。 

 そういえば、SANMIGUELさん、コメントどうもありがとうございました。他にもいろんな方からコメント戴きました。 そんなことから改めて「赤坂璃宮」、というよりも譚さんの仕事、料理に関心を持ち、譚さんに敬意を払う方の多さを再認識。日本の中国料理界では、ビッグな存在です。

 さて、「8月の「赤坂璃宮」銀座店」の幕開けは、もはや定番の「香港焼味拼盆/璃宮特製焼き物前菜盛り合わせ」。皮付き豚バラ肉の焼き物の「焼肉」、家鴨のローストの「焼鴨」、特製の蒸し鶏など四種。今月の付け合せは酢漬け(?)の大根で、さっぱり。

 「それにしても、これうまいよね!」と、「焼肉」にご満悦の仲間の声。
 実際、旨い。それも、毎回食べて、飽きないぐらい旨い。それに、毎回、旨さを増していくのがすごい。これほどの「焼味」、しかも香港そのままの味を楽しませてくれる「焼味」は、東京では滅多に出会えない。さすが「焼味名人」の梁さん、その腕、技は冴えてます。
 ということなら、次回は、焼き物関係、特別にリクエスト?なんて、欲がでます。さて、一体何をリクエストするかは、登場してのお楽しみ!

 そして「湯」は、なんと「金銀菜煲豬蹄/広東白菜と豚スネ肉のスープ」が登場。それも、スープは大きな鍋、具は大皿に盛り付けて!と、香港の広東料理店で鍋煮込みのスープの「煲湯」をサービスするときのスタイルそのままで。

 そうです!「金銀菜煲豬蹄/広東白菜と豚スネ肉のスープ」は、香港のほとんどの広東料理店のメニューにある日替わりスープの「例湯」に登場。家庭でも作られることの多いスープのひとつ。日本語のメニューにも明らかなように、じっくり時間をかけて広東白菜と豚スネ肉を鍋で煮込んだ(煲湯)料理です。

 その広東白菜、画像でもお分かりの通り、あのでっかい白菜とは違って小ぶりのもの。いまや日本で最も馴染み深い中国野菜となった「青梗菜」に、見た目、大きさは似ています。もっとも、「青梗菜」の軸は緑ですが「広東白菜」の軸は白。本場、広東の「広東白菜」は、もっと小ぶりで、軸はふっくりぷっくら、丸みを帯びていて、日本に直輸入されていたり(あ、もしかして例の事件以来、ダメになったかも)、ミニ・広東白菜ということで栽培もされてます。

 この料理、「金銀」とあるのがミソ。見逃せないポイントです。
 実は干したもの、新鮮なものと、2種の広東白菜を使ってあるのが「金銀菜」という料理名の由来です。

 まずはスープに挑戦。
 「このスープ、野沢菜の味噌汁みたいに、ひねた味がするのね!」
 「そうなんだよね。干した広東白菜のひねた味です。干すと漬物みたいに醗酵して、ひねた味になって、スープの具材にして煮込むと、こく、旨味、風味を増すってわけで。ほら、新鮮な広東白菜だと、甘味と、白菜独得の味がでるぐらいで、こくとか旨味、風味はでないでしょ?だから、干したのと新鮮なのを組み合わせるわけです」と、知ったかぶりの私です。

 「それより、牛のスネ肉ってシチューとかカレーに使うけど、豚のスネ肉って、普段、買わないし、お肉屋さんでもみかけないけど」。
 言われて見れば、その通り。多分、肉屋に出回るよりも、加工業者に回されることが多いからでしょう。ですが、香港、広東、それに中国本土では「湯」、だしを作るのにかかせませんから、市場で塊のまんま簡単に入手可能。
 極上のだしの「上湯」をとるのには、豚の赤身肉の「痩肉」が必需品。ですが、家庭で、それも鍋煮込みのスープの「煲湯」を取るには、むしろスネ肉の利用頻度の方が高いようです。

 「それが、牛のスネ肉って、固いけど、煮込めば柔らかくなるし、だしもでるでしょ?でも、牛のスネ肉に限らず、牛肉って、案外、クセが強くて、独得の香り、というか匂いがあるから、中国料理ではあまりだしには使われないんですよ。そのクセをいかしただしをとるってこと以外は。

 たまたま日本人は牛肉の味、風味に慣れてるから、抵抗ないみたいですけど、ほんとは、すごくクセがあるもんでね。それに比べると豚肉の方がクセがなくて、だしをとるには向いてるし、旨味のあるだしがとれますから!

 だから、このスープの要の味、旨味、コクは豚のスネ肉使ってるからです。そこに、干した白菜を加えて、もう一味旨味、風味を増してるわけで」と、またまた知ったかぶりの私です。

 「ねね、スープもいいけど、これ、どうやって食べるの?スープの具にして食べるわけ?」。
 「だめだめ、スープに入れて具にしちゃ、元も子もない。これは、たまり醤油の「老抽」をだしでわったタレにつけて食べるもんです。早い話、スネ肉も白菜もだしがら、旨味は全部、スープの中。ですけど、たれにつけて食べると、なかなかイケるんですよ。
 ひとつの料理で、おかずが2品、という按配。これが「煲湯」のいいところ。だから、香港とか広東地方じゃ、こうやって、スープと具は別皿に分けて出すわけです」と、私。

 「なるほど、こうやって食べれば旨いワ!」と、私の話に納得。
 「でも、旨さから言えば、このスープだね!」。
 そうです。豚のスネ肉の旨味、コク、風味。干した広東白菜の酸味、ひねた味、新鮮な広東白菜の甘味と爽快な味のエッセンス、エキスたっぷりのスープは、しっかりした味わいで、風味も豊か。
 手間隙かけて煮込んだ「煲湯」は、格別の旨さでした。