寒い夜は鍋に限ります、なんていうのは香港などでも変わらない。
TVの天気予報で寒波がやってきたことを知れば「今夜は鍋!」と気もそぞろ。冬が短い香港では寒波がやってくる日々を待ちわび続けるお洒落な若者が少なくない。
というのも、その日の為にわざわざ買い込んだダウンのパーカやコートに袖を通し、見せびらかせるから、っていうのが一番の理由。そう、リッチなマダム、マドモアゼルなら毛皮のコートを颯爽と着込み、背筋を伸ばして買い物やパーティーにお出かけです。
ともあれ、寒波が訪れた日の夜は、鍋の専門店が大盛況。「寒い、寒い!」を声高に連発しながら鍋の専門店に足を運んで「火鍋」を囲みます。
「火鍋」でも、昔ながらの鍋が「打邊爐」。ここ最近は、鍋の真ん中に仕切りがあって「清湯」、辛味味の「辣湯」など、2種のだしを用意した鴛鴦式が一般的。
「火鍋」じゃないなら料理店で、体をぽかぽか暖めてくれるこ時期ならではの料理を食べます。大衆的な食堂風情の店なら、やはり煲仔飯。客寄せもあって店頭に小さなコンロをずらりと並べ、土鍋を乗っけて色々な煲仔飯を炊いている光景は、香港ならではの風物。
煲仔飯の種類も色々ありますが、最も一般的なのが、豚肉の腸詰の「臘腸」、家鴨のレバー、血入りの「潤腸」、塩漬けの豚ばら肉の「臘肉」、塩漬けにして干した家鴨の「油鴨」等を具にした「腊味煲仔飯」。
料理もこの時期ならではのものがある。
タロ芋の「荔芋」と皮付きの豚ばら肉を炊き合わせた「荔芋扣肉」、「荔芋」に「油鴨」をココナッツ・ミルクで炊き合わせた「荔奶鴨煲」などはその代表的なもの。いずれも「中秋」が開けてからしばらく、季節の料理を紹介した小菜のメニューに登場します。
本格的な料理店での冬の料理は「野味」。
中でも「三蛇」、「五蛇」の蛇の葛引きの羹(あつもの)の「蛇羹」はその最たるもの。若い連中はさほど関心もないようですが、食にうるさい人、ある程度の年代の人なら滋養供給の意味もあって口にすることが多いようです。それぐらい「蛇羹」はごく一般的、日常的な一品で「野味」という認識など、さほどない様子。
もっとも「秋風が立てば、蛇は肥え~」と語られるように、蛇が登場し始めるのは中秋を過ぎてから。冬眠を控えて滋養をつけた蛇の料理が店に並びはじめます。
私も遅い秋から冬にかけて香港に出向いた時など、まず口にするのが「蛇羹」。というのも、香港に出向くとなると、たいていの場合、出発間際まで仕事に追われ、徹夜同然で体力も消耗。そこで、香港に到着するや否や、遅い午後の飲茶に駆け込んで、まずは「蛇羹」を一碗。鼻筋がすっと通って、みるみる元気になりますから。疲労回復にはもってこい。
画像は「蛇羹」。ちょっとわかりづらいですが、ふかひれ、それも「海虎翅」の「生翅」入りです。